5 / 111
引きこもりからの脱却
第一話 元引きこもり現ニート
しおりを挟む
十年間引きこもっていた俺がニートに昇格して早くも半年が過ぎた。部屋トイレ風呂だけだった活動範囲がキッチンに広がったのをきっかけにして今では誰も出歩いていない時間帯であれば家の隣にある自動販売機で売っている商品を確認することも出来るようになったのだ。元引きこもりで現ニートの俺がジュースを買うお金なんて持っていないのだから見る事だけしかできないのは仕方ない。俺にとっては再び家から出る日が来るなんて思ってもみなかったのだ。
あの忌々しい両親の会話によって俺の人生はどん底よりも深い場所があると思わせられてしまったのだった。
「父さんも母さんもいつまでも真琴の世話を出来るわけじゃないんだ。お前はこれからずっと家に引きこもっているつもりなのか?」
両親はそう言って俺の事を見つめている。俺の事なんてもうとっくの昔に諦めていつまいまのじょうきょうがでも面倒を見てくれるものだと思っていたのに、俺を見つめてくる二人の目はまだ俺の事を諦めてはいないように見えた。
妹の瑠璃は来年度からとても有名な私立高校の教員になるようなのだが、そのまま両親の代わりに俺の面倒を見てくれるようにならないかと期待してみる。が、俺を見つめる瑠璃の目は軽蔑しているようにしか見えなかった。
「そんな目で私の事を見るのやめてもらってもいいかな。私は兄貴の面倒なんて見るつもりないからね」
「そんな冷たいことを言わないで俺の事を助けてくれよ。これから父さんと母さんが酷いことを言いそうな予感がするんだ。なあ、瑠璃が一言俺の面倒を見てくれるって言ってくれたらそれでいいんだから。な、頼むよ」
俺の情けない姿を見た三人が同時にため息をついていた。俺も本当ならこんなことは言いたくなかったけど、今の俺が生きていくためには必要なことなのだ。俺が生きていくために出来ることならなんだってやるつもりだ。もちろん、働くことなんて絶対に無理だが。
「妹にまで迷惑をかけるようなことはするな。お前が何でも出来る子供だったのは父さんたちも知っているんだ。お前だって今のままじゃ良くないってことくらいはわかっているだろう。父さんたちはお前が普段どんなサイトを見ているのか知っているんだからな」
「ちょっと待ってくれ。俺が見てるサイトを知っているってどういうことだ?」
「あのね、兄貴が見てるサイトの履歴は私がチェックしてパパとママに報告してるのよ。最初は変なサイト見てるんじゃないかって思ってたんだけど、意外と真面目にニュースサイトとか科学系のサイトも見てるのよね。他にも色々と勉強になりそうなサイトとか辞典なんかも見てるわよね。そんなに勉強がしたいなら学校に行けばよかったのに」
俺だって学校に行って勉強をしたいと思っていた。その気持ちは今でも変わらない。
通信制の学校に通う事だっていいと思っていたけれど、通信制と言っても何度かは学校に行かなくてはいけないという事を聞いて断念するしかなかったのだ。もしも、学校で誰かと出会ってしまうとまた凄惨なイジメに遭ってしまう可能性が高いのだ。
「みんな真琴に多くを望んではいない。部屋からほとんど出なかったお前がこうして一緒に食事をして一緒にテレビを見てくれるようになったことも嬉しいんだ。お前が面接について調べたりしているのも瑠璃から聞いて知っているんだが、それを聞いた時に父さんと母さんは思わず涙を流してしまったよ」
両親だけではなく妹の瑠璃まで少し涙ぐんでいる。
本当に申し訳ないことではあるが、俺が面接について調べていたのは紛れもない事実である。ただ、調べていた理由は三人が思っているように働くために面接について調べていたという事ではない。俺が面接について調べていた理由は、ネットニュースで見た圧迫面接というモノが本当にあるのか気になったから調べただけなのだ。
三人には申し訳ないのだけれど、俺は別に働こうと思って面接について調べたのではないのだ。
「そこでだ、父さんの知り合いがやっている会社で真琴が働けるように頼んでおいたからな。面接の練習をしていたみたいだけど、そんなことはしなくても大丈夫だ。引きこもりだった息子が部屋を出て働きたいみたいだと相談したところ、お前の事を快く受け入れてくれることになったぞ。とりあえず、一年くらいはそこで頑張ってくれ」
「お母さんも真琴の事応援してるからね」
「あんま無理しないで頑張んなよ」
俺は働くつもりなんてこれっぽっちもないんだけど、いつの間にか勝手に働くことにされていた。どんな仕事なのか知らないし、ずっと引きこもっていた俺が知らない人と接するなんて無理だろう。
瑠璃はちょくちょく俺の部屋にきていたので話すことは何度もあったけど両親とこんなに話をしたのだって何年ぶりだろうという感じなのだ。そんな俺がいきなり知らない人と一緒に働くなんて不可能だと思わないのだろうか。
三人の目は希望に満ちている子供のように輝いているところを見ると俺とは全く別の事を考えているんだろうなと思ってしまう。
どうにかして働かなくてもよくなる方法はないかと考えてみたのだが、期待されているというのがわかっているだけに逃げることも出来ずにいたのだ。
「兄貴なら大丈夫だって信じてるよ」
部屋に入る前に言われた瑠璃の言葉が耳に残ってその日はなかなか眠ることが出来なかった。
あの忌々しい両親の会話によって俺の人生はどん底よりも深い場所があると思わせられてしまったのだった。
「父さんも母さんもいつまでも真琴の世話を出来るわけじゃないんだ。お前はこれからずっと家に引きこもっているつもりなのか?」
両親はそう言って俺の事を見つめている。俺の事なんてもうとっくの昔に諦めていつまいまのじょうきょうがでも面倒を見てくれるものだと思っていたのに、俺を見つめてくる二人の目はまだ俺の事を諦めてはいないように見えた。
妹の瑠璃は来年度からとても有名な私立高校の教員になるようなのだが、そのまま両親の代わりに俺の面倒を見てくれるようにならないかと期待してみる。が、俺を見つめる瑠璃の目は軽蔑しているようにしか見えなかった。
「そんな目で私の事を見るのやめてもらってもいいかな。私は兄貴の面倒なんて見るつもりないからね」
「そんな冷たいことを言わないで俺の事を助けてくれよ。これから父さんと母さんが酷いことを言いそうな予感がするんだ。なあ、瑠璃が一言俺の面倒を見てくれるって言ってくれたらそれでいいんだから。な、頼むよ」
俺の情けない姿を見た三人が同時にため息をついていた。俺も本当ならこんなことは言いたくなかったけど、今の俺が生きていくためには必要なことなのだ。俺が生きていくために出来ることならなんだってやるつもりだ。もちろん、働くことなんて絶対に無理だが。
「妹にまで迷惑をかけるようなことはするな。お前が何でも出来る子供だったのは父さんたちも知っているんだ。お前だって今のままじゃ良くないってことくらいはわかっているだろう。父さんたちはお前が普段どんなサイトを見ているのか知っているんだからな」
「ちょっと待ってくれ。俺が見てるサイトを知っているってどういうことだ?」
「あのね、兄貴が見てるサイトの履歴は私がチェックしてパパとママに報告してるのよ。最初は変なサイト見てるんじゃないかって思ってたんだけど、意外と真面目にニュースサイトとか科学系のサイトも見てるのよね。他にも色々と勉強になりそうなサイトとか辞典なんかも見てるわよね。そんなに勉強がしたいなら学校に行けばよかったのに」
俺だって学校に行って勉強をしたいと思っていた。その気持ちは今でも変わらない。
通信制の学校に通う事だっていいと思っていたけれど、通信制と言っても何度かは学校に行かなくてはいけないという事を聞いて断念するしかなかったのだ。もしも、学校で誰かと出会ってしまうとまた凄惨なイジメに遭ってしまう可能性が高いのだ。
「みんな真琴に多くを望んではいない。部屋からほとんど出なかったお前がこうして一緒に食事をして一緒にテレビを見てくれるようになったことも嬉しいんだ。お前が面接について調べたりしているのも瑠璃から聞いて知っているんだが、それを聞いた時に父さんと母さんは思わず涙を流してしまったよ」
両親だけではなく妹の瑠璃まで少し涙ぐんでいる。
本当に申し訳ないことではあるが、俺が面接について調べていたのは紛れもない事実である。ただ、調べていた理由は三人が思っているように働くために面接について調べていたという事ではない。俺が面接について調べていた理由は、ネットニュースで見た圧迫面接というモノが本当にあるのか気になったから調べただけなのだ。
三人には申し訳ないのだけれど、俺は別に働こうと思って面接について調べたのではないのだ。
「そこでだ、父さんの知り合いがやっている会社で真琴が働けるように頼んでおいたからな。面接の練習をしていたみたいだけど、そんなことはしなくても大丈夫だ。引きこもりだった息子が部屋を出て働きたいみたいだと相談したところ、お前の事を快く受け入れてくれることになったぞ。とりあえず、一年くらいはそこで頑張ってくれ」
「お母さんも真琴の事応援してるからね」
「あんま無理しないで頑張んなよ」
俺は働くつもりなんてこれっぽっちもないんだけど、いつの間にか勝手に働くことにされていた。どんな仕事なのか知らないし、ずっと引きこもっていた俺が知らない人と接するなんて無理だろう。
瑠璃はちょくちょく俺の部屋にきていたので話すことは何度もあったけど両親とこんなに話をしたのだって何年ぶりだろうという感じなのだ。そんな俺がいきなり知らない人と一緒に働くなんて不可能だと思わないのだろうか。
三人の目は希望に満ちている子供のように輝いているところを見ると俺とは全く別の事を考えているんだろうなと思ってしまう。
どうにかして働かなくてもよくなる方法はないかと考えてみたのだが、期待されているというのがわかっているだけに逃げることも出来ずにいたのだ。
「兄貴なら大丈夫だって信じてるよ」
部屋に入る前に言われた瑠璃の言葉が耳に残ってその日はなかなか眠ることが出来なかった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる