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勇者の試練
勇者の試練 第二十八話
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二人で試練を乗り越えることが重要だと言われているし、その意味も分かって入るつもりなのだ。
だが、この中にいる生命体は俺と柘榴ちゃんだけだというのは少し異常な気もする。
決して開けることの出来ない扉を利用して誰も逃げられない空間に毒をばら撒くなんて常軌を逸していると思われても仕方ないと思う。俺が試練を与える側の立場であればこの状況はとても歓迎することが出来ないだろう。
それがわかったうえで俺と柘榴ちゃんはこの洞窟の最深部を目指して進んでいた。
いかにも蝙蝠が住んでいそうな洞窟になってはいたけれど、当然蝙蝠なんていないしそれ以外の動物も存在していない。
いるとすれば、幽霊の類だろうか。
「何階まで降りてきたのかわからないけど、いつの間にか洞窟になってるんだね」
「そうね。上がったり下がったり半地下みたいな場所を通ったりもしたからここが何階かなんてわかりにくいわよね。もしかしたら、最初の階層の迷路で道を間違えてしまったという可能性も無きにしも非ず。かもしれないわね」
「その可能性は無いといいな。ここからまた一階まで戻るのは面倒以外の何物でもないよ」
「それもそうね。あと三階も下りれば野城圭窮が待っているところに出られると思うわよ。と言っても、彼はもうこの世にいないんだけどね」
魔物の死骸は何度か見かけることもあったのだけど、それらは全て腐敗が始まっていて原型がわからない状態であった。
備わっている高い魔力が己の体の腐敗を止めているのかもしれないが、それはかえって痛々しい姿に見えてしまうのだ。どんなに強い魔物でも確実に息の根を止めてしまうだけでなく、その姿も完全に消し去ってしまうというのは恐ろしいものである。
「あんなに強そうな魔物でも安らかな感じになってるんだね」
「アレは自分が死んだことにも気付いてないんじゃないかしら。ちょっとでも触れた瞬間に汚染されて意識を失ってしまうからね。対処法は一つだけあるんだけど、この程度の強さでは難しいでしょうね」
「参考までに聞いておきたいんだけど、その対処法ってどんなやつなのかな?」
「それはとても単純でわかりやすいものよ。毒に負けないように耐性を作り続けるだけでいいって事なの。毒に触れた瞬間から抗体を作り出して毒素が無くなるまで耐えればいいだけの話なのよ。ほら、簡単で単純な話でしょ」
「簡単そうには聞こえるけどさ、耐性を作り続けるってどうしたらいいの?」
「さあ、それは私の領分ではないのでわからないわね。とんでもない魔力を持っていればそれも可能なのかもしれないけど、そんな魔力量があるのであれば毒にもかからないと思うんだよね。この前倒した魔王で何とか少しは耐えられるかもしれないって感じだと思うんだけど、毒が無くなるまで維持し続けることなんて不可能でしょうね。私も敵が同じような毒を使ってきたりしたら全力で逃げるわ。結局のところ、あわないことが一番の対策になるって事なのよ」
どんな脅威でも遭遇しなければ問題無いという当たり前の話なのだが、この洞窟のように出口が無い場所ではそれも難しいだろう。触れた瞬間に死ぬような危険なモノから逃げることも出来ない。危険だという事にも気付くことが出来ない。
そんな状況の中、彼らは何を思い何を感じていたのだろう。
その答えは永遠にわからない。
「新しい階段が出てきたね。もう少しで試練も終わりになると思うけど、お兄ちゃんは準備万端かな?」
「準備って、何かあるのかな?」
「しいて言うのであれば、心の準備ってやつかな。普通に生きていると絶対に見られないものを見てしまうのって、結構精神に来ると思うんだ。だから、どんなのがあっても大丈夫だって自信を持ってもらいたいな」
そこまで言うのであれば恐ろしいモノが見れると思うのだが、それに対してどのような準備をすればいいのかがまったく分からない。
毒に対して触れなければいいという対処法と同じように、そこまで恐ろしいモノであるのならば見なければいいという対処法が一番だと思う。でも、わざわざそれを伝えてきた柘榴ちゃんの事だから、他にも何か避けることが出来ないようなトラップを仕掛けているような気もしていた。
階段を降りてもう間もなく野城君のいる階層に近付くと思った瞬間、体の半分が腐り落ちつつも残り半分は再生し続けるという状態になっている魔物がいた。
完全に死んでしまっているのだが、その体に残された魔力によっていつまでも朽ちることが無いのも気の毒に思えてしまった。
俺が彼の立場であればの話だが。俺はそのまま何も異変に気付かずに日々過ごしていたのかもしれない。体の半分は再生しようと努力しているのもわかるが、それを俺たちに見せてくるのは良くないのではないかと思っていた。
「少しだけ空気が変わったような気がするのだけど、お兄ちゃんは何か感じてるかな?」
「肌寒いなって思ってはいるけど、何か重要なアイテムや敵がいるかもしれないと思うと我慢した方がいいのかなとも思うよね」
「敵はいないと思うけれど、こんな感じの洞窟だったら何か特別なお宝はあるかもしれないわね。でも、そんなのを探している余裕なんて無いような気もするんだけど」
もしかしたら、俺たちがこうしている間にもうまなちゃんは大変なことになっているかもしれない。
そんな事を考えてしまうと、俺は無性に宝探しなんてしてみたいなと思ってしまうのだが、そんな子供みたいなことは出来ないと気持ちを切り替えるのであったさ。
だが、この中にいる生命体は俺と柘榴ちゃんだけだというのは少し異常な気もする。
決して開けることの出来ない扉を利用して誰も逃げられない空間に毒をばら撒くなんて常軌を逸していると思われても仕方ないと思う。俺が試練を与える側の立場であればこの状況はとても歓迎することが出来ないだろう。
それがわかったうえで俺と柘榴ちゃんはこの洞窟の最深部を目指して進んでいた。
いかにも蝙蝠が住んでいそうな洞窟になってはいたけれど、当然蝙蝠なんていないしそれ以外の動物も存在していない。
いるとすれば、幽霊の類だろうか。
「何階まで降りてきたのかわからないけど、いつの間にか洞窟になってるんだね」
「そうね。上がったり下がったり半地下みたいな場所を通ったりもしたからここが何階かなんてわかりにくいわよね。もしかしたら、最初の階層の迷路で道を間違えてしまったという可能性も無きにしも非ず。かもしれないわね」
「その可能性は無いといいな。ここからまた一階まで戻るのは面倒以外の何物でもないよ」
「それもそうね。あと三階も下りれば野城圭窮が待っているところに出られると思うわよ。と言っても、彼はもうこの世にいないんだけどね」
魔物の死骸は何度か見かけることもあったのだけど、それらは全て腐敗が始まっていて原型がわからない状態であった。
備わっている高い魔力が己の体の腐敗を止めているのかもしれないが、それはかえって痛々しい姿に見えてしまうのだ。どんなに強い魔物でも確実に息の根を止めてしまうだけでなく、その姿も完全に消し去ってしまうというのは恐ろしいものである。
「あんなに強そうな魔物でも安らかな感じになってるんだね」
「アレは自分が死んだことにも気付いてないんじゃないかしら。ちょっとでも触れた瞬間に汚染されて意識を失ってしまうからね。対処法は一つだけあるんだけど、この程度の強さでは難しいでしょうね」
「参考までに聞いておきたいんだけど、その対処法ってどんなやつなのかな?」
「それはとても単純でわかりやすいものよ。毒に負けないように耐性を作り続けるだけでいいって事なの。毒に触れた瞬間から抗体を作り出して毒素が無くなるまで耐えればいいだけの話なのよ。ほら、簡単で単純な話でしょ」
「簡単そうには聞こえるけどさ、耐性を作り続けるってどうしたらいいの?」
「さあ、それは私の領分ではないのでわからないわね。とんでもない魔力を持っていればそれも可能なのかもしれないけど、そんな魔力量があるのであれば毒にもかからないと思うんだよね。この前倒した魔王で何とか少しは耐えられるかもしれないって感じだと思うんだけど、毒が無くなるまで維持し続けることなんて不可能でしょうね。私も敵が同じような毒を使ってきたりしたら全力で逃げるわ。結局のところ、あわないことが一番の対策になるって事なのよ」
どんな脅威でも遭遇しなければ問題無いという当たり前の話なのだが、この洞窟のように出口が無い場所ではそれも難しいだろう。触れた瞬間に死ぬような危険なモノから逃げることも出来ない。危険だという事にも気付くことが出来ない。
そんな状況の中、彼らは何を思い何を感じていたのだろう。
その答えは永遠にわからない。
「新しい階段が出てきたね。もう少しで試練も終わりになると思うけど、お兄ちゃんは準備万端かな?」
「準備って、何かあるのかな?」
「しいて言うのであれば、心の準備ってやつかな。普通に生きていると絶対に見られないものを見てしまうのって、結構精神に来ると思うんだ。だから、どんなのがあっても大丈夫だって自信を持ってもらいたいな」
そこまで言うのであれば恐ろしいモノが見れると思うのだが、それに対してどのような準備をすればいいのかがまったく分からない。
毒に対して触れなければいいという対処法と同じように、そこまで恐ろしいモノであるのならば見なければいいという対処法が一番だと思う。でも、わざわざそれを伝えてきた柘榴ちゃんの事だから、他にも何か避けることが出来ないようなトラップを仕掛けているような気もしていた。
階段を降りてもう間もなく野城君のいる階層に近付くと思った瞬間、体の半分が腐り落ちつつも残り半分は再生し続けるという状態になっている魔物がいた。
完全に死んでしまっているのだが、その体に残された魔力によっていつまでも朽ちることが無いのも気の毒に思えてしまった。
俺が彼の立場であればの話だが。俺はそのまま何も異変に気付かずに日々過ごしていたのかもしれない。体の半分は再生しようと努力しているのもわかるが、それを俺たちに見せてくるのは良くないのではないかと思っていた。
「少しだけ空気が変わったような気がするのだけど、お兄ちゃんは何か感じてるかな?」
「肌寒いなって思ってはいるけど、何か重要なアイテムや敵がいるかもしれないと思うと我慢した方がいいのかなとも思うよね」
「敵はいないと思うけれど、こんな感じの洞窟だったら何か特別なお宝はあるかもしれないわね。でも、そんなのを探している余裕なんて無いような気もするんだけど」
もしかしたら、俺たちがこうしている間にもうまなちゃんは大変なことになっているかもしれない。
そんな事を考えてしまうと、俺は無性に宝探しなんてしてみたいなと思ってしまうのだが、そんな子供みたいなことは出来ないと気持ちを切り替えるのであったさ。
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