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勇者の試練
勇者の試練 最終話
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シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は勇者が現れること自体に関しては歓迎してくれているという事なのだが、勇者が魔王を全て倒すという事に関しては反対しているらしい。
その理由としては、魔王という人類共通の敵がいることで協和をはかることが出来ていた人類が魔王を失うことによって人類同士で争うことになってしまう恐れがあるかららしい。
俺が見てきた世界でも人類同士で争う事なんて珍しくなかったし、この世界と違って人類に共通の敵がいない事もあって人類同士で争う事に関して疑問は抱いていなかった。むしろ、どこかの国同士が戦争をしている事だって何か理由があって仕方のないことなのだと思っていた面もあるのだ。
俺が住んでいた日本だって殺し合いをしてきた歴史もあるわけだし、そういった点を考えると人類というのは常に何かと争っていないといけない存在なのかもしれないと思ってしまった。
「お兄ちゃんは人間と魔物が戦うこの状況と、魔物がいなくなって人間同士で争いある状況ならどっちが自然だと思う?」
「どっちも不自然だと思う。魔物がいなくなっても人間同士で争わない方法ってないのかな」
「無いんじゃないかな。人種や価値観が違うってだけで殺し合いをするのが人間なんだよ。自己満足のために人間同士で殺し合いをするのをお兄ちゃんだって見てきたんじゃないかな。魔物だってそんな理由で同族を殺したりなんてしないよ。多分だけどね」
「魔物同士でも殺しあうことはあるような気がするんだけど、本当に人間だけなのかな」
「中には殺しあう魔物もいるかもしれないけど、国同士で殺しあうのは人間だけだと思うよ。魔物に国なんて概念があるのかは知らないけど」
うまなちゃんがやけに人間に対してネガティブな考えを持っているように思える。
ここに来るまではそんな事は無かったと思うし、素直でいい子だったように感じていた。
こんな感じになってしまったのは世界勇者協会と何か関係があるのではないかと思ったのだけど、うまなちゃんは協会の人とほとんど関わりを持っていないようであった。
「お兄ちゃんが勇者としてどうしたいのか教えてほしいんだけど、お兄ちゃんはみんなが言う通りに勇者として認められてこの世界にいる魔王を全部全部倒しちゃうつもりなのかな?」
「俺が魔王と戦うのって一人じゃ無理なんだよね。うまなちゃんたちみんなの協力が無いと何も出来ないと思うんだ。もしも、瑠璃たちみんなもうまなちゃんと同じように魔王を倒すことに抵抗があるんだとしたら、俺は勇者として魔王を倒すとか出来ないんじゃないかなと思うよ。俺一人で魔王と戦うなんて無理だし、とどめを刺すことしかできない俺に選択権なんて無いんじゃないかな。みんなが魔王と戦ってるんだったらとどめを刺すし、魔王と戦いたくないって言うんだったら俺は何もしないだけだと思う」
「私たちに決めさせるって事なのかな。それってちょっと、ズルいって思っちゃうかも。でも、私たちの意見を尊重してくれるってのは嬉しいかも。お兄ちゃんならわかってくれるって信じてたからね」
うまなちゃんは手に持っている斧をにこやかな表情で見つめながらゆっくりと近付いてくる。
何となく危険な感じがしているけど、それは斧を持っているからそう感じているだけだろう。
この時は本当にそう思っていた。
「じゃあ、私はお兄ちゃんに魔王を倒してほしくないって思ってるから、これ以上勇者の試練は受けないでほしいな。お兄ちゃんはみんなが望むことを尊重してくれるって言ってくれたもんね。お兄ちゃんが話の分かる人で本当に良かったよ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。確かに俺はみんなが戦いたくないって言うんだったらそれに従うとは言ったけど、うまなちゃん以外のみんなの意見はまだ聞いてないんじゃないかな。俺の思い過ごしかもしれないけど、愛華ちゃんはもっと戦いたそうな感じだったし瑠璃だっていろんな巨人を使ってみたいって言ってたと思うよ。柘榴ちゃんだって新しい魔法を開発するって言ってたし、みんなの意見を聞いてから決めてもいいんじゃないかな。たぶん、みんなうまなちゃんの意見を尊重してくれるとは思うけど、何も聞かずに決めるのはあまり良くないんじゃないかな」
「大丈夫だよ。これはみんなの意見だから」
「そうかもしれないけどさ、やっぱり直接みんなの意見を聞いた方がいいんじゃないかなって思うんだよ。だからさ、一度みんなで集まって話し合いをした方がいいんじゃないかな」
「お兄ちゃんの言いたいことは理解出来るんだけどさ、私がみんな大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんだよ。お兄ちゃんならわかってくれると思うんだけど、私の言っている言葉の意味が分からないかな?」
考えたくはないことではあるが、うまなちゃんが言っていることがみんなの意見だというのはそういう意味が含まれているという事なのだろう。
本当に考えたくないことではあるけど、うまなちゃん一人の意見がみんなの意見だという事は、そういう事なのだろう。
「わかったよ。そういう事なら俺はうまなちゃんの言葉を信じるよ」
「ありがとう。お兄ちゃんならわかってくれると思ってたよ。みんなはちょっと意地っ張りなところがあったから説得するのも大変だったんだけど、お兄ちゃんは物分かりが良くて助かったよ。でも、お兄ちゃんが本当に私の事をわかってくれてるか、確認しないといけないよね」
うまなちゃんの持っている斧がゆっくりと俺に近付いてきている。
その動きはとてもゆっくりに見えていたけれど、俺はその動きを最後まで目で追う事が出来なかったのだ。
その理由としては、魔王という人類共通の敵がいることで協和をはかることが出来ていた人類が魔王を失うことによって人類同士で争うことになってしまう恐れがあるかららしい。
俺が見てきた世界でも人類同士で争う事なんて珍しくなかったし、この世界と違って人類に共通の敵がいない事もあって人類同士で争う事に関して疑問は抱いていなかった。むしろ、どこかの国同士が戦争をしている事だって何か理由があって仕方のないことなのだと思っていた面もあるのだ。
俺が住んでいた日本だって殺し合いをしてきた歴史もあるわけだし、そういった点を考えると人類というのは常に何かと争っていないといけない存在なのかもしれないと思ってしまった。
「お兄ちゃんは人間と魔物が戦うこの状況と、魔物がいなくなって人間同士で争いある状況ならどっちが自然だと思う?」
「どっちも不自然だと思う。魔物がいなくなっても人間同士で争わない方法ってないのかな」
「無いんじゃないかな。人種や価値観が違うってだけで殺し合いをするのが人間なんだよ。自己満足のために人間同士で殺し合いをするのをお兄ちゃんだって見てきたんじゃないかな。魔物だってそんな理由で同族を殺したりなんてしないよ。多分だけどね」
「魔物同士でも殺しあうことはあるような気がするんだけど、本当に人間だけなのかな」
「中には殺しあう魔物もいるかもしれないけど、国同士で殺しあうのは人間だけだと思うよ。魔物に国なんて概念があるのかは知らないけど」
うまなちゃんがやけに人間に対してネガティブな考えを持っているように思える。
ここに来るまではそんな事は無かったと思うし、素直でいい子だったように感じていた。
こんな感じになってしまったのは世界勇者協会と何か関係があるのではないかと思ったのだけど、うまなちゃんは協会の人とほとんど関わりを持っていないようであった。
「お兄ちゃんが勇者としてどうしたいのか教えてほしいんだけど、お兄ちゃんはみんなが言う通りに勇者として認められてこの世界にいる魔王を全部全部倒しちゃうつもりなのかな?」
「俺が魔王と戦うのって一人じゃ無理なんだよね。うまなちゃんたちみんなの協力が無いと何も出来ないと思うんだ。もしも、瑠璃たちみんなもうまなちゃんと同じように魔王を倒すことに抵抗があるんだとしたら、俺は勇者として魔王を倒すとか出来ないんじゃないかなと思うよ。俺一人で魔王と戦うなんて無理だし、とどめを刺すことしかできない俺に選択権なんて無いんじゃないかな。みんなが魔王と戦ってるんだったらとどめを刺すし、魔王と戦いたくないって言うんだったら俺は何もしないだけだと思う」
「私たちに決めさせるって事なのかな。それってちょっと、ズルいって思っちゃうかも。でも、私たちの意見を尊重してくれるってのは嬉しいかも。お兄ちゃんならわかってくれるって信じてたからね」
うまなちゃんは手に持っている斧をにこやかな表情で見つめながらゆっくりと近付いてくる。
何となく危険な感じがしているけど、それは斧を持っているからそう感じているだけだろう。
この時は本当にそう思っていた。
「じゃあ、私はお兄ちゃんに魔王を倒してほしくないって思ってるから、これ以上勇者の試練は受けないでほしいな。お兄ちゃんはみんなが望むことを尊重してくれるって言ってくれたもんね。お兄ちゃんが話の分かる人で本当に良かったよ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。確かに俺はみんなが戦いたくないって言うんだったらそれに従うとは言ったけど、うまなちゃん以外のみんなの意見はまだ聞いてないんじゃないかな。俺の思い過ごしかもしれないけど、愛華ちゃんはもっと戦いたそうな感じだったし瑠璃だっていろんな巨人を使ってみたいって言ってたと思うよ。柘榴ちゃんだって新しい魔法を開発するって言ってたし、みんなの意見を聞いてから決めてもいいんじゃないかな。たぶん、みんなうまなちゃんの意見を尊重してくれるとは思うけど、何も聞かずに決めるのはあまり良くないんじゃないかな」
「大丈夫だよ。これはみんなの意見だから」
「そうかもしれないけどさ、やっぱり直接みんなの意見を聞いた方がいいんじゃないかなって思うんだよ。だからさ、一度みんなで集まって話し合いをした方がいいんじゃないかな」
「お兄ちゃんの言いたいことは理解出来るんだけどさ、私がみんな大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんだよ。お兄ちゃんならわかってくれると思うんだけど、私の言っている言葉の意味が分からないかな?」
考えたくはないことではあるが、うまなちゃんが言っていることがみんなの意見だというのはそういう意味が含まれているという事なのだろう。
本当に考えたくないことではあるけど、うまなちゃん一人の意見がみんなの意見だという事は、そういう事なのだろう。
「わかったよ。そういう事なら俺はうまなちゃんの言葉を信じるよ」
「ありがとう。お兄ちゃんならわかってくれると思ってたよ。みんなはちょっと意地っ張りなところがあったから説得するのも大変だったんだけど、お兄ちゃんは物分かりが良くて助かったよ。でも、お兄ちゃんが本当に私の事をわかってくれてるか、確認しないといけないよね」
うまなちゃんの持っている斧がゆっくりと俺に近付いてきている。
その動きはとてもゆっくりに見えていたけれど、俺はその動きを最後まで目で追う事が出来なかったのだ。
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