サキュバスを腹上死させた魔王ですが世界中から狙われるようになりました

釧路太郎

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第二部

第三話 天才科学者と元ヤン 後編

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 意識が戻った俺は保健室のベッドの中にいた。
 初めて保健室のベッドで寝てみて思ったのだが、このベッドは意外と硬くてちゃんと寝るのには向いていないように感じてしまった。睡眠用のベッドじゃないので仕方ないのかもしれないけど、もう少し柔らかい方が体が痛くならなくて済むと思う。
「よかった。アスモ君が目を覚まさないかもって思っちゃって心配してたんだよ。あんまり無茶なことしちゃだめだからね」
 いつの間にか制服からジャージに着替えていた三賛斎月夜姫ではあったが、相変わらず前髪で片目を隠しているので表情が読み取りにくかった。心配はしているようにも見えるけれど、俺が意識を失う原因を作ったのはお前だろうという言葉を投げかけてもいいのか不安になるくらいに心配そうな表情で俺の事を見ているのだ。
「あんなことしちゃダメだよ。アスモ君が強いってのはみんな知ってることだけどさ、あんまりむしりすぎるのは良くないと思うんだ。ほら、今回みたいに耐性が出来てない状態で私の攻撃を受けちゃったから昏睡状態になって丸々二日も起きなかったんだからね。自信があるのはいい事だと思うけど、あんまり自分の事を過信しすぎない方がいいと思うよ。私だってあんまりアスモ君の事を攻撃したりしたくないんだからね。でも、アスモ君にわかってもらうためにはやらないといけないことだもんね」
 俺が目覚めたばかりだから三賛斎月夜姫の言っていることが理解出来ていないだけなのだろうか。それとも、三賛斎月夜姫が言っていることなんて正常な状態で聞いても理解出来るものではないのだろうか。今の俺にはその判断が全くつかない状態なのだ。
「丸二日もこんなベッドで寝てたって事か。それで背中がバキバキになっていたいはずだ。でも、なんで俺は二日間も眠ってしまったんだ?」
「やだなぁ。それは私がアスモ君に刺したナイフに込めた呪いのせいだよ。本当は完全に命を奪うつもりだったんだけどね、やっぱり魔王のアスモ君には私程度の力じゃ命までは奪えなかったんだよね。でも、それってやっぱり悔しいって思っちゃってさ、アスモ君が目を覚ましそうになるたびに追加で呪いを込めてぶっさしてたんだよ。それなのにさ、少しずつ耐性が出来ちゃったみたいで効果がだんだんと薄くなっちゃってるんだもんな。今じゃ一回刺しても一時間くらいで目覚めようとしちゃうんだよ。もう少し効いてくれてもいいと思うんだけど、アスモ君は月夜の呪いなんて効きたくないのかな?」
 この世の中に自ら進んで呪いを受けたいなんて言う奇特な生き物はいるのだろうか。広い世の中探してみたらいるのかもしれないが、俺の身近にはそんな人間は一人もいなかったと思う。研究者の中には自らを実験台として検証をしようとする者もいるかもしれないが、普通の人間が三賛斎月夜姫の攻撃を受けてしまえば二度と目を覚まさないような気もしているのだ。
「呪いなんて受けたくないよ。どんな小さな呪いでも気分的に良くないよね。なんでそんなに俺の事を殺したいって思うのかな。いや、なんとなく理由はわかるけどね」
「そうなんだ。アスモ君は魔王なだけあって勘もいいのかな。で、その理由って何だと思うのかな?」
 多分、俺が三賛斎青海青梅や三賛斎カルナと甘く楽しい大人な時間を過ごしてしまったということに対する制裁みたいなものなのだろう。俺に向かってきた二人を相手しただけではあるのだけど、月夜姫サイドから見た場合はそういう理由もどうでもいい事になってしまいそうだ。自分の姉弟子が魔王の手によって汚されるというのが耐えらえないのかもしれないな。
「あ、そんな理由じゃないよ。私はそんなことで怒ったりしないよ。だって、アスモ君は私のモノってわけでもないからね。私のモノになりたいって言うんだったら受け入れてあげてもいいんだけど、その時はちゃんと羊仗先生に許可を取りにいかないとね。羊仗先生が月夜たちの事を許してくれるなんて思えないけど、その時は別の方法を二人で探して新しい世界に旅立とうね」
 つまり、俺を殺して別の世界に一緒に旅立ちたいという事なのだろうか。俺にそんなつもりは毛頭ないし、他の世界に行きたいだけであれば死んで生まれ変わるとい不確定要素の多い事なんてせずに、うまなちゃんに頼んで別の世界を創ってもらうだけなのだ。
 ただ、そうした場合は三賛斎月夜姫と一緒にいられるとは思えないな。
「俺の場合は死ななくても別の世界に行けるんだけど」
「アスモ君はそう思ってるのかもしれないけど、それって本当に別の世界に行ってるって言えるのかな。本当は今みたいにベッドの中で目覚める前に見ている夢の話かもしれないよ。さっき見ていたことが本当の事だとアスモ君は自信を持って言えるのかな?」
 その可能性は無きにしも非ずと言えるのかな。あんなにはっきりとした体験が俺の妄想や夢の世界の話だとは思えない。今までの事が全部そうだったとしたら、俺が経験してきたことは一体何だったんだろう。
 ふと視線を三賛斎月夜姫の方へとやると、三賛斎月夜姫はちょっとだけ嬉しそうに手を組んでいたのだが、その手の中からナイフの刃先が鈍い光をまとって俺に向いていたのだった。
 ナイフに見覚えはないのだけど、なんとなく俺の胸に突き刺さった刃の形に似ているように思えたのだった。
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