サキュバスを腹上死させた魔王ですが世界中から狙われるようになりました

釧路太郎

文字の大きさ
148 / 206
第二部

第四話 栗鳥院家の占い師 ボーナスステージ前編

しおりを挟む
 どこまでも続いているのではないかと思えるような塀の先にあった門をくぐると何もない広大な空き地の端に小さな小屋があるのを確認することが出来た。
 庭というには何もなさ過ぎてただの空き地にポツンと小さな小屋が置いてあるだけで土地を無駄にしているとしか思えないような印象を受けてしまった。これだけ広い庭があるのであれば何か趣味で活用すればいいのにと思うのだが、逆に考えるとこれだけ広い庭があるのにもかかわらず何の趣味も持っていないのかと疑問に思ってしまった。広さだけを考えると大抵のスポーツはできると思うし、畑を作れば相当な量の作物を育てることもできるだろう。
「私が案内できるのはここまでですので。栗鳥院蘭島様はあの家の中にいらっしゃると思います。呼びかけても返事は返ってこないと思いますが、鍵は開いていると思うのでそのまま勝手に入って大丈夫ですよ。私たちに懸けられていた呪いを解いてくださりありがとうございました。いつの日かこのお礼をさせてもらいに伺いますのでよろしくお願いいたします」
 俺をここまで案内してくれた少女は深々と頭を下げるとそのままクルリと後ろを向いて駆け足で離れていった。どことなくうまなちゃんに似ている印象を持ってしまったが、うまなちゃんに比べるとまだまだ子供だなと思ってしまうのは誰にも言わないでおこう。
 これだけ広い庭に何もないとは思えずに慎重に一歩ずつ足を前に進めているのだけど、どこにもトラップが仕掛けられている形跡はなかった。地面に何もないということは空にあるかもしれないと思い上を見上げてみたのだが、そこには雲一つない青空が広がっているだけであった。
 結局、慎重に行動したのは時間をかけて門から家まで歩いてきたという結果に終わってしまった。
 呼びかけても返事がないから勝手に入っても大丈夫だと言っていたけど、そんなことをして本当に大丈夫なのだろうか。一応礼儀として挨拶くらいはして中に入ろうかと思って玄関前に立ち止まって呼び鈴を探してみたタイミングで中から声が聞こえてきた。
「申し訳ないですが今は留守にしてるのでまた四年後に来てください。玄関の鍵は開いていますが誰もいないので中に入って確かめようとしても無駄ですからね。本当に今は留守にしてるので中に入ったりしないでくださいよ」
 一瞬留守電の応答かと思ってしまいそうになったけれど、すりガラス越しに見える人影が明らかに俺の様子をうかがっているシルエットになっていたので騙されはしなかった。そもそも、そんなことでだまされる奴なんていないだろうし、四年後に来いと言われて素直にそれだけの時間を待つ人もいないだろう。俺は何のためらいもなく引き戸を開けたのだ。音もなくあいた引き戸に少し違和感を覚えたが、レールから室内に視線を移したときに目が合った寝間着姿の女性はすぐに体を布団の中に隠して俺から目をそらしていた。
「あ、あの、本当に四年後に来てもらえますか。なんだったら、私の親戚の子を紹介するんでそっちに先に行ってもらえたらいいかなって思うんです。その子は私と違って格闘技もやってて体に自信があるみたいなんで魔王さんの相手にふさわしいと思います。なので、今日のところは本当に帰ってもらってもいいですか。お願いします」
「いや、そう言われてもな。素直に帰るわけにはいかないでしょ」
「や、やっぱりそうですよね。でも、本当に今は無理なんです。ちょっと魔王さんに会うようにコンディションを整えてなくて、障り鬼にもっと苦戦すると思ってたからこんなに早いって思ってなかったんです。だから、四年後、せめて三年後にもう一度来てもらえたらちゃんと相手しますので」
「その四年後とか三年後って、何か理由があるのかな。例えば、三年後から四年後に懸けて俺の運勢が悪くなっているとか」
「いえ、そういうわけじゃないです。魔王さんの運勢的には今が一番最悪の時期だと思います。と言いますか、魔王さんがうまなさんと出会った時からずっと運勢は下降の一途をたどっているといってもいいでしょう。うまなさんとその仲間のイザーさんと関わるのは魔王さんの運勢的にとっても良くないって占いに出てるんですよ」
「ああ、それは何となくわかるかも。うまなちゃんたちに出会ってから俺も面倒ごとに巻き込まれるようになっちゃってるし、気づいた時にはいろんな世界に飛ばされるようになってるからな。そういう意味では、今もなんで俺が君たち一族からうまなちゃんを助け出さないといけないんだろうって思ってるんだよ」
「えっと、私もなんでうまなさんを捕まえているのか理由はわからないんです。おじい様とおばあ様が栗鳥院家の再興のために栗宮院うまなを捕まえろって言ってたんですけど、私の占いではうまなさんを捕まえたって栗鳥院家の運勢が良くなるとは出てないんですよね。むしろ、うまなさんと仲良く良い関係を築いた方が将来的にはプラスになるって出てるんですよ」
 確かにな。俺が栗鳥院家の一員で栗宮院うまなの事を知っている立場だったとしたらこの女と同じようにうまなちゃんと共存する道を選ぶだろう。その方がメリットも大きいと思うのだが、中には二番手ではなく一番手になるために栗宮院うまなの事が邪魔だと考える奴もいたりするのかもしれないな。その考えも何となくは理解出来るのだが、今まで見てきた栗鳥院家の面々を見てもうまなちゃんに対抗できるような人材はそろっていないとしか思えないんだよな。
「俺もあんたと一緒でうまなちゃんと敵対しない方がいいとは思うけどな。でもさ、三年後か四年後に来いってのはそれと違う理由なんでしょ。その頃には俺の運勢がもっと悪くなっててあんたの運勢が物凄く良くなってるってことなのかな?」
「それも違います。私は毎日不幸を避けているので運勢は悪くなったりしないんですよ。と言っても、毎日運勢の悪くない場所に家を移動させてるんです。この家はホバークラフトになってるんで簡単に移動することが出来るんですよ」
 布団から顔だけを出して嬉しそうにそう話す女を見て思ったのだが、移動する家の水回りはどうなっているんだろうということだった。ワンルームで他に部屋も見当たらないのでそういったことはどうしているのだろうと、純粋な好奇心で考えてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...