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第二部
第四話 栗鳥院家の占い師 ボーナスステージ前編
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どこまでも続いているのではないかと思えるような塀の先にあった門をくぐると何もない広大な空き地の端に小さな小屋があるのを確認することが出来た。
庭というには何もなさ過ぎてただの空き地にポツンと小さな小屋が置いてあるだけで土地を無駄にしているとしか思えないような印象を受けてしまった。これだけ広い庭があるのであれば何か趣味で活用すればいいのにと思うのだが、逆に考えるとこれだけ広い庭があるのにもかかわらず何の趣味も持っていないのかと疑問に思ってしまった。広さだけを考えると大抵のスポーツはできると思うし、畑を作れば相当な量の作物を育てることもできるだろう。
「私が案内できるのはここまでですので。栗鳥院蘭島様はあの家の中にいらっしゃると思います。呼びかけても返事は返ってこないと思いますが、鍵は開いていると思うのでそのまま勝手に入って大丈夫ですよ。私たちに懸けられていた呪いを解いてくださりありがとうございました。いつの日かこのお礼をさせてもらいに伺いますのでよろしくお願いいたします」
俺をここまで案内してくれた少女は深々と頭を下げるとそのままクルリと後ろを向いて駆け足で離れていった。どことなくうまなちゃんに似ている印象を持ってしまったが、うまなちゃんに比べるとまだまだ子供だなと思ってしまうのは誰にも言わないでおこう。
これだけ広い庭に何もないとは思えずに慎重に一歩ずつ足を前に進めているのだけど、どこにもトラップが仕掛けられている形跡はなかった。地面に何もないということは空にあるかもしれないと思い上を見上げてみたのだが、そこには雲一つない青空が広がっているだけであった。
結局、慎重に行動したのは時間をかけて門から家まで歩いてきたという結果に終わってしまった。
呼びかけても返事がないから勝手に入っても大丈夫だと言っていたけど、そんなことをして本当に大丈夫なのだろうか。一応礼儀として挨拶くらいはして中に入ろうかと思って玄関前に立ち止まって呼び鈴を探してみたタイミングで中から声が聞こえてきた。
「申し訳ないですが今は留守にしてるのでまた四年後に来てください。玄関の鍵は開いていますが誰もいないので中に入って確かめようとしても無駄ですからね。本当に今は留守にしてるので中に入ったりしないでくださいよ」
一瞬留守電の応答かと思ってしまいそうになったけれど、すりガラス越しに見える人影が明らかに俺の様子をうかがっているシルエットになっていたので騙されはしなかった。そもそも、そんなことでだまされる奴なんていないだろうし、四年後に来いと言われて素直にそれだけの時間を待つ人もいないだろう。俺は何のためらいもなく引き戸を開けたのだ。音もなくあいた引き戸に少し違和感を覚えたが、レールから室内に視線を移したときに目が合った寝間着姿の女性はすぐに体を布団の中に隠して俺から目をそらしていた。
「あ、あの、本当に四年後に来てもらえますか。なんだったら、私の親戚の子を紹介するんでそっちに先に行ってもらえたらいいかなって思うんです。その子は私と違って格闘技もやってて体に自信があるみたいなんで魔王さんの相手にふさわしいと思います。なので、今日のところは本当に帰ってもらってもいいですか。お願いします」
「いや、そう言われてもな。素直に帰るわけにはいかないでしょ」
「や、やっぱりそうですよね。でも、本当に今は無理なんです。ちょっと魔王さんに会うようにコンディションを整えてなくて、障り鬼にもっと苦戦すると思ってたからこんなに早いって思ってなかったんです。だから、四年後、せめて三年後にもう一度来てもらえたらちゃんと相手しますので」
「その四年後とか三年後って、何か理由があるのかな。例えば、三年後から四年後に懸けて俺の運勢が悪くなっているとか」
「いえ、そういうわけじゃないです。魔王さんの運勢的には今が一番最悪の時期だと思います。と言いますか、魔王さんがうまなさんと出会った時からずっと運勢は下降の一途をたどっているといってもいいでしょう。うまなさんとその仲間のイザーさんと関わるのは魔王さんの運勢的にとっても良くないって占いに出てるんですよ」
「ああ、それは何となくわかるかも。うまなちゃんたちに出会ってから俺も面倒ごとに巻き込まれるようになっちゃってるし、気づいた時にはいろんな世界に飛ばされるようになってるからな。そういう意味では、今もなんで俺が君たち一族からうまなちゃんを助け出さないといけないんだろうって思ってるんだよ」
「えっと、私もなんでうまなさんを捕まえているのか理由はわからないんです。おじい様とおばあ様が栗鳥院家の再興のために栗宮院うまなを捕まえろって言ってたんですけど、私の占いではうまなさんを捕まえたって栗鳥院家の運勢が良くなるとは出てないんですよね。むしろ、うまなさんと仲良く良い関係を築いた方が将来的にはプラスになるって出てるんですよ」
確かにな。俺が栗鳥院家の一員で栗宮院うまなの事を知っている立場だったとしたらこの女と同じようにうまなちゃんと共存する道を選ぶだろう。その方がメリットも大きいと思うのだが、中には二番手ではなく一番手になるために栗宮院うまなの事が邪魔だと考える奴もいたりするのかもしれないな。その考えも何となくは理解出来るのだが、今まで見てきた栗鳥院家の面々を見てもうまなちゃんに対抗できるような人材はそろっていないとしか思えないんだよな。
「俺もあんたと一緒でうまなちゃんと敵対しない方がいいとは思うけどな。でもさ、三年後か四年後に来いってのはそれと違う理由なんでしょ。その頃には俺の運勢がもっと悪くなっててあんたの運勢が物凄く良くなってるってことなのかな?」
「それも違います。私は毎日不幸を避けているので運勢は悪くなったりしないんですよ。と言っても、毎日運勢の悪くない場所に家を移動させてるんです。この家はホバークラフトになってるんで簡単に移動することが出来るんですよ」
布団から顔だけを出して嬉しそうにそう話す女を見て思ったのだが、移動する家の水回りはどうなっているんだろうということだった。ワンルームで他に部屋も見当たらないのでそういったことはどうしているのだろうと、純粋な好奇心で考えてしまったのだった。
庭というには何もなさ過ぎてただの空き地にポツンと小さな小屋が置いてあるだけで土地を無駄にしているとしか思えないような印象を受けてしまった。これだけ広い庭があるのであれば何か趣味で活用すればいいのにと思うのだが、逆に考えるとこれだけ広い庭があるのにもかかわらず何の趣味も持っていないのかと疑問に思ってしまった。広さだけを考えると大抵のスポーツはできると思うし、畑を作れば相当な量の作物を育てることもできるだろう。
「私が案内できるのはここまでですので。栗鳥院蘭島様はあの家の中にいらっしゃると思います。呼びかけても返事は返ってこないと思いますが、鍵は開いていると思うのでそのまま勝手に入って大丈夫ですよ。私たちに懸けられていた呪いを解いてくださりありがとうございました。いつの日かこのお礼をさせてもらいに伺いますのでよろしくお願いいたします」
俺をここまで案内してくれた少女は深々と頭を下げるとそのままクルリと後ろを向いて駆け足で離れていった。どことなくうまなちゃんに似ている印象を持ってしまったが、うまなちゃんに比べるとまだまだ子供だなと思ってしまうのは誰にも言わないでおこう。
これだけ広い庭に何もないとは思えずに慎重に一歩ずつ足を前に進めているのだけど、どこにもトラップが仕掛けられている形跡はなかった。地面に何もないということは空にあるかもしれないと思い上を見上げてみたのだが、そこには雲一つない青空が広がっているだけであった。
結局、慎重に行動したのは時間をかけて門から家まで歩いてきたという結果に終わってしまった。
呼びかけても返事がないから勝手に入っても大丈夫だと言っていたけど、そんなことをして本当に大丈夫なのだろうか。一応礼儀として挨拶くらいはして中に入ろうかと思って玄関前に立ち止まって呼び鈴を探してみたタイミングで中から声が聞こえてきた。
「申し訳ないですが今は留守にしてるのでまた四年後に来てください。玄関の鍵は開いていますが誰もいないので中に入って確かめようとしても無駄ですからね。本当に今は留守にしてるので中に入ったりしないでくださいよ」
一瞬留守電の応答かと思ってしまいそうになったけれど、すりガラス越しに見える人影が明らかに俺の様子をうかがっているシルエットになっていたので騙されはしなかった。そもそも、そんなことでだまされる奴なんていないだろうし、四年後に来いと言われて素直にそれだけの時間を待つ人もいないだろう。俺は何のためらいもなく引き戸を開けたのだ。音もなくあいた引き戸に少し違和感を覚えたが、レールから室内に視線を移したときに目が合った寝間着姿の女性はすぐに体を布団の中に隠して俺から目をそらしていた。
「あ、あの、本当に四年後に来てもらえますか。なんだったら、私の親戚の子を紹介するんでそっちに先に行ってもらえたらいいかなって思うんです。その子は私と違って格闘技もやってて体に自信があるみたいなんで魔王さんの相手にふさわしいと思います。なので、今日のところは本当に帰ってもらってもいいですか。お願いします」
「いや、そう言われてもな。素直に帰るわけにはいかないでしょ」
「や、やっぱりそうですよね。でも、本当に今は無理なんです。ちょっと魔王さんに会うようにコンディションを整えてなくて、障り鬼にもっと苦戦すると思ってたからこんなに早いって思ってなかったんです。だから、四年後、せめて三年後にもう一度来てもらえたらちゃんと相手しますので」
「その四年後とか三年後って、何か理由があるのかな。例えば、三年後から四年後に懸けて俺の運勢が悪くなっているとか」
「いえ、そういうわけじゃないです。魔王さんの運勢的には今が一番最悪の時期だと思います。と言いますか、魔王さんがうまなさんと出会った時からずっと運勢は下降の一途をたどっているといってもいいでしょう。うまなさんとその仲間のイザーさんと関わるのは魔王さんの運勢的にとっても良くないって占いに出てるんですよ」
「ああ、それは何となくわかるかも。うまなちゃんたちに出会ってから俺も面倒ごとに巻き込まれるようになっちゃってるし、気づいた時にはいろんな世界に飛ばされるようになってるからな。そういう意味では、今もなんで俺が君たち一族からうまなちゃんを助け出さないといけないんだろうって思ってるんだよ」
「えっと、私もなんでうまなさんを捕まえているのか理由はわからないんです。おじい様とおばあ様が栗鳥院家の再興のために栗宮院うまなを捕まえろって言ってたんですけど、私の占いではうまなさんを捕まえたって栗鳥院家の運勢が良くなるとは出てないんですよね。むしろ、うまなさんと仲良く良い関係を築いた方が将来的にはプラスになるって出てるんですよ」
確かにな。俺が栗鳥院家の一員で栗宮院うまなの事を知っている立場だったとしたらこの女と同じようにうまなちゃんと共存する道を選ぶだろう。その方がメリットも大きいと思うのだが、中には二番手ではなく一番手になるために栗宮院うまなの事が邪魔だと考える奴もいたりするのかもしれないな。その考えも何となくは理解出来るのだが、今まで見てきた栗鳥院家の面々を見てもうまなちゃんに対抗できるような人材はそろっていないとしか思えないんだよな。
「俺もあんたと一緒でうまなちゃんと敵対しない方がいいとは思うけどな。でもさ、三年後か四年後に来いってのはそれと違う理由なんでしょ。その頃には俺の運勢がもっと悪くなっててあんたの運勢が物凄く良くなってるってことなのかな?」
「それも違います。私は毎日不幸を避けているので運勢は悪くなったりしないんですよ。と言っても、毎日運勢の悪くない場所に家を移動させてるんです。この家はホバークラフトになってるんで簡単に移動することが出来るんですよ」
布団から顔だけを出して嬉しそうにそう話す女を見て思ったのだが、移動する家の水回りはどうなっているんだろうということだった。ワンルームで他に部屋も見当たらないのでそういったことはどうしているのだろうと、純粋な好奇心で考えてしまったのだった。
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