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第二部
第一話 栗鳥院家のサキュバス 前編
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最恐最悪の魔王と呼ばれていた俺が瞬き以外の行動が出来ないほど追い詰められていた。ちょっとでも体を動かすとその場所が切り刻まれてしまうという恐怖に襲われているのだが、今まで俺に対峙してきた奴らがどんな気分だったのか改めて思い知る結果となってしまった。
「私は何度もアスモちゃんに忠告したよね。うまなちゃんの居場所を探すつもりがないんだったらそう言ってくれれば私も考えたんだけどさ、そうやって他の女の子にうつつを抜かすような感じだと私も本気で怒っちゃうかもしれないよ」
本気で怒っちゃうよと言ってるイザーちゃんではあるけど、もうすでに怒っているようにしか思えない。俺に向けられている殺気に耐えることが出来ているのが不思議だと思うくらいで、もしも願いが叶うのであればこの場から一刻も早く立ち去りたい。それくらい恐ろしいものが俺の目の前にいるのだ。
「私も鬼じゃないんで本当のラストチャンスを上げるよ。アスモちゃんは今度こそ女の子にうつつを抜かさないで真面目にうまなちゃんの事を探してね。それが出来たら、私がアスモちゃんの事を可愛がってあげるからね」
可愛がるというのはどういう意味だろうか。おそらく、俺の想像しているようなことではなく恐ろしい拷問的な何かなんだろう。このままでは俺がうまなちゃんを助け出しても助け出さなくても殺されてしまうという事ではないだろうか。いや、殺されたところで俺に何のデメリットもないと思う。仮に俺が死んだとしても簡単に生き返ることが出来ると思うし、俺が行き変える場所はずっと住んでいるあの懐かしい城の地下研究所のはずだ。そう思えば死んだ方が俺にとっていいことなんじゃないか。
「そうそう、うまなちゃんも私もアスモちゃんの居場所は簡単に特定出来るようになってるんでどこに隠れても無駄だからね。別の世界線にいても見つけるのは簡単だし、別の高次元にいたとしても見つけちゃうよ。まあ、他の世界線とか別次元に紛れ込んでくれた方が簡単に見つけられちゃうって事なんだけどさ」
目しか動かすことの出来ない俺はなるべくイザーちゃんと目を合わせないようにしているのだが、気付いた時には俺の事をじっと見つめているイザーちゃんとばっちり目が合ってしまっていたのだ。向こうから合わせにきているのではなく俺から合わせに行っているとしか思えない感じになってるけど、俺は絶対にイザーちゃんの目を見ようとなんてしていないのだ。
「もう、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。アスモちゃんはそんなに弱い人じゃないんだからもっと自信持ってよ。それでも世界を震撼させた大魔王なのかな。今のアスモちゃんの事を見たらアスモちゃんの支配下にいる魔物たちはどう思うんだろうね」
今まで感じていたイザーちゃんの殺気が消えたような気がする。心なしか先ほどよりもイザーちゃんの表情も柔らかくなっていて本気で俺の事を心配しているようにも思えてきた。今だったら俺も何か話せるんじゃないかと思い、勇気を振り絞って口の中に少しだけたまっていた唾を飲み込んだ。
「俺は世界を震撼させた魔王なんかじゃないよ。たまたま俺が転生した先の世界に俺よりも強い奴がいなかっただけだから。あの時は本気で俺がどの世界にいる誰よりも強いって信じてたんだけど、イザーちゃんと出会ってその考えが間違いだったって思い知らされたよ。自分の事を井の中の蛙だって理解したからね」
「嫌だな、私の事を買いかぶり過ぎだよ。私はアスモちゃんよりもずっとずっと弱い可憐な女の子だよ。どんな魔物にだって力でわからせられるような女の子なんだからね。だから、私の事をそんなに恐れる必要なんてないんだからね。アスモちゃんが私の事をそんなに怖がってたらさ、みんなも私の事を怖い人だって勘違いしちゃうかもしれないじゃない」
イザーちゃんの最後の一言に物凄いプレッシャーが込められていたと思うのだが、そこでまた俺は恐怖を感じてしまっていた。まるで心臓を素手で掴まれているような感覚だったのだが、イザーちゃんはいつもと変わらぬ涼しい顔で人を殺すことなんて出来ないような態度を見せていた。だが、その奥底には俺の事をいつでも殺せるという気持ちが隠れているようにしか思えないのである。
「そんなわけで、次の女の子にうまなちゃんの居場所を聞かなくちゃダメだからね。これが本当のラストチャンスだよ。もしも、うまなちゃんの事を聞き出すことが出来ないのに女の子にうつつを抜かすようなことがあったら、私がうまなちゃんを探し出してアスモちゃんは死んだほうがましなんじゃないかって思うような目に合わせちゃうからね。なんて、冗談だけど」
イザーちゃんの笑顔を見ていた俺は汗腺全てから冷たい汗が流れ落ちているのを感じていた。本当に冗談なのかもしれないが、俺にはうまなちゃんの事を見つけられなければ世界が崩壊するまで毎時間拷問を続けるという宣告にしか聞こえなかった。どんなに頑張ってうまなちゃんの事を聞き出そうとしたって知っている人がいなければ聞き出すことなんて出来ないのだ。
いや、彼女たちはうまなちゃんの居場所を本当は知っていたのかもしれない。俺の聞き方がダメだっただけなのかもしれない。もう少し時間をかけてじっくりと聞き出していたら誰か一人くらいはうまなちゃんの居場所を知っている人がいたのかもしれないな。もしかしたら、一人だけではなく全員がうまなちゃんの居場所を知っていたという可能性だってあるかもしれない。
「もしかして、今まで俺が出会った人たちってうまなちゃんが監禁されてる場所を本当は知っていたとかさ、そんな話ってあると思う?」
「さあ、私にはわからないな。でも、うまなちゃんを攫ったのは栗鳥院家の人間なんだよね。それだけは間違いないからね」
という事は、誰か一人くらいは知っていた人がいた可能性もあるという事だろう。俺はそこに気付くことが出来なかったけれど、次の相手にはしっかりとうまなちゃんの居場所を聞き出すことにしないといけない。
「だって、栗鳥院家の人間は血だけじゃ説明できないくらい強固な絆で結ばれているからね。世界が違っても情報は全部共有してるんだし」
「私は何度もアスモちゃんに忠告したよね。うまなちゃんの居場所を探すつもりがないんだったらそう言ってくれれば私も考えたんだけどさ、そうやって他の女の子にうつつを抜かすような感じだと私も本気で怒っちゃうかもしれないよ」
本気で怒っちゃうよと言ってるイザーちゃんではあるけど、もうすでに怒っているようにしか思えない。俺に向けられている殺気に耐えることが出来ているのが不思議だと思うくらいで、もしも願いが叶うのであればこの場から一刻も早く立ち去りたい。それくらい恐ろしいものが俺の目の前にいるのだ。
「私も鬼じゃないんで本当のラストチャンスを上げるよ。アスモちゃんは今度こそ女の子にうつつを抜かさないで真面目にうまなちゃんの事を探してね。それが出来たら、私がアスモちゃんの事を可愛がってあげるからね」
可愛がるというのはどういう意味だろうか。おそらく、俺の想像しているようなことではなく恐ろしい拷問的な何かなんだろう。このままでは俺がうまなちゃんを助け出しても助け出さなくても殺されてしまうという事ではないだろうか。いや、殺されたところで俺に何のデメリットもないと思う。仮に俺が死んだとしても簡単に生き返ることが出来ると思うし、俺が行き変える場所はずっと住んでいるあの懐かしい城の地下研究所のはずだ。そう思えば死んだ方が俺にとっていいことなんじゃないか。
「そうそう、うまなちゃんも私もアスモちゃんの居場所は簡単に特定出来るようになってるんでどこに隠れても無駄だからね。別の世界線にいても見つけるのは簡単だし、別の高次元にいたとしても見つけちゃうよ。まあ、他の世界線とか別次元に紛れ込んでくれた方が簡単に見つけられちゃうって事なんだけどさ」
目しか動かすことの出来ない俺はなるべくイザーちゃんと目を合わせないようにしているのだが、気付いた時には俺の事をじっと見つめているイザーちゃんとばっちり目が合ってしまっていたのだ。向こうから合わせにきているのではなく俺から合わせに行っているとしか思えない感じになってるけど、俺は絶対にイザーちゃんの目を見ようとなんてしていないのだ。
「もう、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。アスモちゃんはそんなに弱い人じゃないんだからもっと自信持ってよ。それでも世界を震撼させた大魔王なのかな。今のアスモちゃんの事を見たらアスモちゃんの支配下にいる魔物たちはどう思うんだろうね」
今まで感じていたイザーちゃんの殺気が消えたような気がする。心なしか先ほどよりもイザーちゃんの表情も柔らかくなっていて本気で俺の事を心配しているようにも思えてきた。今だったら俺も何か話せるんじゃないかと思い、勇気を振り絞って口の中に少しだけたまっていた唾を飲み込んだ。
「俺は世界を震撼させた魔王なんかじゃないよ。たまたま俺が転生した先の世界に俺よりも強い奴がいなかっただけだから。あの時は本気で俺がどの世界にいる誰よりも強いって信じてたんだけど、イザーちゃんと出会ってその考えが間違いだったって思い知らされたよ。自分の事を井の中の蛙だって理解したからね」
「嫌だな、私の事を買いかぶり過ぎだよ。私はアスモちゃんよりもずっとずっと弱い可憐な女の子だよ。どんな魔物にだって力でわからせられるような女の子なんだからね。だから、私の事をそんなに恐れる必要なんてないんだからね。アスモちゃんが私の事をそんなに怖がってたらさ、みんなも私の事を怖い人だって勘違いしちゃうかもしれないじゃない」
イザーちゃんの最後の一言に物凄いプレッシャーが込められていたと思うのだが、そこでまた俺は恐怖を感じてしまっていた。まるで心臓を素手で掴まれているような感覚だったのだが、イザーちゃんはいつもと変わらぬ涼しい顔で人を殺すことなんて出来ないような態度を見せていた。だが、その奥底には俺の事をいつでも殺せるという気持ちが隠れているようにしか思えないのである。
「そんなわけで、次の女の子にうまなちゃんの居場所を聞かなくちゃダメだからね。これが本当のラストチャンスだよ。もしも、うまなちゃんの事を聞き出すことが出来ないのに女の子にうつつを抜かすようなことがあったら、私がうまなちゃんを探し出してアスモちゃんは死んだほうがましなんじゃないかって思うような目に合わせちゃうからね。なんて、冗談だけど」
イザーちゃんの笑顔を見ていた俺は汗腺全てから冷たい汗が流れ落ちているのを感じていた。本当に冗談なのかもしれないが、俺にはうまなちゃんの事を見つけられなければ世界が崩壊するまで毎時間拷問を続けるという宣告にしか聞こえなかった。どんなに頑張ってうまなちゃんの事を聞き出そうとしたって知っている人がいなければ聞き出すことなんて出来ないのだ。
いや、彼女たちはうまなちゃんの居場所を本当は知っていたのかもしれない。俺の聞き方がダメだっただけなのかもしれない。もう少し時間をかけてじっくりと聞き出していたら誰か一人くらいはうまなちゃんの居場所を知っている人がいたのかもしれないな。もしかしたら、一人だけではなく全員がうまなちゃんの居場所を知っていたという可能性だってあるかもしれない。
「もしかして、今まで俺が出会った人たちってうまなちゃんが監禁されてる場所を本当は知っていたとかさ、そんな話ってあると思う?」
「さあ、私にはわからないな。でも、うまなちゃんを攫ったのは栗鳥院家の人間なんだよね。それだけは間違いないからね」
という事は、誰か一人くらいは知っていた人がいた可能性もあるという事だろう。俺はそこに気付くことが出来なかったけれど、次の相手にはしっかりとうまなちゃんの居場所を聞き出すことにしないといけない。
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