百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎

文字の大きさ
36 / 45

第36話 イザーの思い

しおりを挟む
 左半身に深刻なダメージを受けているイザーはどう見ても無事ではないのだが、工藤珠希の姿を見つけると笑顔で右手を振っていた。
 いつもとは違って元気のないその姿に痛々しさを感じてしまった工藤珠希は思わず目を逸らしてしまったけれど、野城君にちゃんとイザーを見るように言われたので勇気を振り絞ってイザーの姿を見ることにしたのだ。

「情けない姿になっちゃってごめんね。本当はもっと余裕なはずだったんだけど、ちょっと遊び過ぎちゃったみたいでこんなことになっちゃったみたい。でも、珠希ちゃんは全然気にしなくていいんだからね。私が勝手にやったことなんだし」
「気にしなくても良いって言われてもさ、そんな大怪我しているのに気にしないわけにはいかないよ」
「これくらいだったら何にも問題ないよ。大丈夫大丈夫。腕だって時間が経てば生えてくるだろうし、これくらいなら良くあることだから平気だって。私は珠希ちゃんと違って丈夫だから問題ないんだって」

 問題無いと言われても腕が無くなっている事のどこが問題ないのだろうと思っていた工藤珠希である。見れば見るほど傷口も痛々しく感じているのだが、どうしてあの状態で正気を保っていられるのだろうと感じていた。
 ただ、方腕が無くなっている状態のイザーもそれを見ている野城君も一切慌てる様子が無いことからこの事が本当に良くあることなのかもしれない思ってもいた工藤珠希であった。

「そう言えば、珠希ちゃんは野城君に言われて助けを呼びに行ってくれたみたいだけど、誰も見つからなかったって事なのかな?」
「そうなんだよ。みんなどこかに行っちゃってるみたいで誰もいなかったんだ。ドクターポンピーノはいたんだけど、さすがに先生を連れてくることは出来ないよね。お願いすることも出来なくて一人で戻ってきちゃったんだよ」
「私としては珠希ちゃんが戻ってきてくれたことだけでも嬉しいって思うよ。珠希ちゃんが見てくれるって思ったら私はもっと頑張れちゃうからね」

「珠希ちゃんがいるとイザーちゃんもいつも以上に力を発揮しちゃうんだろうけど、張り切り過ぎちゃってイザーちゃんが力を制御できなくなってしまう可能性が高かったんだよね。珠希ちゃんに怪我をさせちゃう確率が高かったと思ったんだ」
「それはあるかもしれないね。珠希ちゃんがいたら私は張り切って本気の本気で最初っから全力でぶっ放してたかもしれないな。珠希ちゃんに怪我なんてさせちゃったら、私はうまなちゃんに殺されちゃうかもしれないよね」
「殺されてもすぐに生き返らせてもらえるとは思うけど、生き返るたびに殺されちゃう可能性も高いかな」

 本気なのか冗談なのかわからないやり取りを聞いていた工藤珠希は笑っても良いのかわからず戸惑うばかりであった。
 イザーも野城君も笑っているところを見る限りでは、冗談なんだろうなと理解は出来るのだけれど、一緒に笑う事は出来ないのだ。左腕が無くなっていて血が滴っている様子を見て笑うことなんて出来なかった。

 左腕が無いのにどうしてそんなに平気でいられるのだろうと不思議に思いながら見ていた工藤珠希とそれに気が付いて目が合ってしまったイザー。自然な感じで笑ってしまった二人を見てどこか嬉しそうな野城君。
 少しだけその状況に慣れてきた工藤珠希はどうして腕が無くなったのか聞くことにした。大怪我を負った理由を聞くのは良くないことかもしれないとは思いながらも、その理由がどうしても知りたいと思ってしまったのだ。
 直接聞くことは出来ないかもしれないので、どうにかしてその理由を聞いてみたい。そう思った工藤珠希は少しだけ違う方向から聞いてみることにしたのだ。

「沢山のサキュバス達がいたと思うんだけど、やっぱり強い人がいたのかな?」
「数が多いだけで強いなって思うようなのはいなかったかな。野生のサキュバスなんで強さもピンキリって感じなんだけど、各々が好きなように生きているから連携もとれてなくて怖さは感じなかったね。でも、数が多い分面倒くさいなとは思ったよ」
「そうなんだね。レジスタンスの人達と比べたらどんな感じなのかな?」
「私はあんまりレジスタンスの人と戦う事ってないんだけど、戦い方を見ている限りでは野生のサキュバスを相手にする方が全然楽だと思うよ。向こうは何も考えずに向かってくるだけなんだけど、レジスタンスの人ってこっちが嫌だって思うようなことを平気でしてくるからね。一人一人の強さでもサキュバスよりレジスタンスの人の方が強いって思うくらいだし」
「でも、サキュバスの人数って凄い多いって聞いたんだけど、レジスタンスの人達と比べてどうなのかな?」
「正確に数えたわけじゃないんでハッキリとした数字は言えないけど、零楼館高校に通ってる生徒と職員の数を合わせても野生のサキュバスの一割にも満たないと思うよ。数だけは本当に多かったんだよ。ただ、数だけ多くても意味ないんだけどね」

 イザーの話を聞いていると野生のサキュバスに対して何の脅威も抱いていないという事は理解出来た。だが、全く脅威を感じていない相手に対して左腕を失うという事はそれなりに脅威があるという事なのではないだろうか。
 工藤珠希はそこも気になってしまっていた。

「そんな人たちを相手にしても腕が無くなっちゃうくらい大変なことがあったって事なんだろうけど、無くなった腕が生えてくるってのは本当なの?」
「本当だよ。寝て起きれば元通りになってるとは思うけど、今回は自分が原因だからいつもより時間がかかっちゃうかもしれないな」
「自分が原因って、どういう事?」
「その辺は私が説明するよりも野城君に教えて貰った方が早いと思うんだ」

「じゃあ、俺が見てきたことや感じてきたことを珠希ちゃんに教えるね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...