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第36話 イザーの思い
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左半身に深刻なダメージを受けているイザーはどう見ても無事ではないのだが、工藤珠希の姿を見つけると笑顔で右手を振っていた。
いつもとは違って元気のないその姿に痛々しさを感じてしまった工藤珠希は思わず目を逸らしてしまったけれど、野城君にちゃんとイザーを見るように言われたので勇気を振り絞ってイザーの姿を見ることにしたのだ。
「情けない姿になっちゃってごめんね。本当はもっと余裕なはずだったんだけど、ちょっと遊び過ぎちゃったみたいでこんなことになっちゃったみたい。でも、珠希ちゃんは全然気にしなくていいんだからね。私が勝手にやったことなんだし」
「気にしなくても良いって言われてもさ、そんな大怪我しているのに気にしないわけにはいかないよ」
「これくらいだったら何にも問題ないよ。大丈夫大丈夫。腕だって時間が経てば生えてくるだろうし、これくらいなら良くあることだから平気だって。私は珠希ちゃんと違って丈夫だから問題ないんだって」
問題無いと言われても腕が無くなっている事のどこが問題ないのだろうと思っていた工藤珠希である。見れば見るほど傷口も痛々しく感じているのだが、どうしてあの状態で正気を保っていられるのだろうと感じていた。
ただ、方腕が無くなっている状態のイザーもそれを見ている野城君も一切慌てる様子が無いことからこの事が本当に良くあることなのかもしれない思ってもいた工藤珠希であった。
「そう言えば、珠希ちゃんは野城君に言われて助けを呼びに行ってくれたみたいだけど、誰も見つからなかったって事なのかな?」
「そうなんだよ。みんなどこかに行っちゃってるみたいで誰もいなかったんだ。ドクターポンピーノはいたんだけど、さすがに先生を連れてくることは出来ないよね。お願いすることも出来なくて一人で戻ってきちゃったんだよ」
「私としては珠希ちゃんが戻ってきてくれたことだけでも嬉しいって思うよ。珠希ちゃんが見てくれるって思ったら私はもっと頑張れちゃうからね」
「珠希ちゃんがいるとイザーちゃんもいつも以上に力を発揮しちゃうんだろうけど、張り切り過ぎちゃってイザーちゃんが力を制御できなくなってしまう可能性が高かったんだよね。珠希ちゃんに怪我をさせちゃう確率が高かったと思ったんだ」
「それはあるかもしれないね。珠希ちゃんがいたら私は張り切って本気の本気で最初っから全力でぶっ放してたかもしれないな。珠希ちゃんに怪我なんてさせちゃったら、私はうまなちゃんに殺されちゃうかもしれないよね」
「殺されてもすぐに生き返らせてもらえるとは思うけど、生き返るたびに殺されちゃう可能性も高いかな」
本気なのか冗談なのかわからないやり取りを聞いていた工藤珠希は笑っても良いのかわからず戸惑うばかりであった。
イザーも野城君も笑っているところを見る限りでは、冗談なんだろうなと理解は出来るのだけれど、一緒に笑う事は出来ないのだ。左腕が無くなっていて血が滴っている様子を見て笑うことなんて出来なかった。
左腕が無いのにどうしてそんなに平気でいられるのだろうと不思議に思いながら見ていた工藤珠希とそれに気が付いて目が合ってしまったイザー。自然な感じで笑ってしまった二人を見てどこか嬉しそうな野城君。
少しだけその状況に慣れてきた工藤珠希はどうして腕が無くなったのか聞くことにした。大怪我を負った理由を聞くのは良くないことかもしれないとは思いながらも、その理由がどうしても知りたいと思ってしまったのだ。
直接聞くことは出来ないかもしれないので、どうにかしてその理由を聞いてみたい。そう思った工藤珠希は少しだけ違う方向から聞いてみることにしたのだ。
「沢山のサキュバス達がいたと思うんだけど、やっぱり強い人がいたのかな?」
「数が多いだけで強いなって思うようなのはいなかったかな。野生のサキュバスなんで強さもピンキリって感じなんだけど、各々が好きなように生きているから連携もとれてなくて怖さは感じなかったね。でも、数が多い分面倒くさいなとは思ったよ」
「そうなんだね。レジスタンスの人達と比べたらどんな感じなのかな?」
「私はあんまりレジスタンスの人と戦う事ってないんだけど、戦い方を見ている限りでは野生のサキュバスを相手にする方が全然楽だと思うよ。向こうは何も考えずに向かってくるだけなんだけど、レジスタンスの人ってこっちが嫌だって思うようなことを平気でしてくるからね。一人一人の強さでもサキュバスよりレジスタンスの人の方が強いって思うくらいだし」
「でも、サキュバスの人数って凄い多いって聞いたんだけど、レジスタンスの人達と比べてどうなのかな?」
「正確に数えたわけじゃないんでハッキリとした数字は言えないけど、零楼館高校に通ってる生徒と職員の数を合わせても野生のサキュバスの一割にも満たないと思うよ。数だけは本当に多かったんだよ。ただ、数だけ多くても意味ないんだけどね」
イザーの話を聞いていると野生のサキュバスに対して何の脅威も抱いていないという事は理解出来た。だが、全く脅威を感じていない相手に対して左腕を失うという事はそれなりに脅威があるという事なのではないだろうか。
工藤珠希はそこも気になってしまっていた。
「そんな人たちを相手にしても腕が無くなっちゃうくらい大変なことがあったって事なんだろうけど、無くなった腕が生えてくるってのは本当なの?」
「本当だよ。寝て起きれば元通りになってるとは思うけど、今回は自分が原因だからいつもより時間がかかっちゃうかもしれないな」
「自分が原因って、どういう事?」
「その辺は私が説明するよりも野城君に教えて貰った方が早いと思うんだ」
「じゃあ、俺が見てきたことや感じてきたことを珠希ちゃんに教えるね」
いつもとは違って元気のないその姿に痛々しさを感じてしまった工藤珠希は思わず目を逸らしてしまったけれど、野城君にちゃんとイザーを見るように言われたので勇気を振り絞ってイザーの姿を見ることにしたのだ。
「情けない姿になっちゃってごめんね。本当はもっと余裕なはずだったんだけど、ちょっと遊び過ぎちゃったみたいでこんなことになっちゃったみたい。でも、珠希ちゃんは全然気にしなくていいんだからね。私が勝手にやったことなんだし」
「気にしなくても良いって言われてもさ、そんな大怪我しているのに気にしないわけにはいかないよ」
「これくらいだったら何にも問題ないよ。大丈夫大丈夫。腕だって時間が経てば生えてくるだろうし、これくらいなら良くあることだから平気だって。私は珠希ちゃんと違って丈夫だから問題ないんだって」
問題無いと言われても腕が無くなっている事のどこが問題ないのだろうと思っていた工藤珠希である。見れば見るほど傷口も痛々しく感じているのだが、どうしてあの状態で正気を保っていられるのだろうと感じていた。
ただ、方腕が無くなっている状態のイザーもそれを見ている野城君も一切慌てる様子が無いことからこの事が本当に良くあることなのかもしれない思ってもいた工藤珠希であった。
「そう言えば、珠希ちゃんは野城君に言われて助けを呼びに行ってくれたみたいだけど、誰も見つからなかったって事なのかな?」
「そうなんだよ。みんなどこかに行っちゃってるみたいで誰もいなかったんだ。ドクターポンピーノはいたんだけど、さすがに先生を連れてくることは出来ないよね。お願いすることも出来なくて一人で戻ってきちゃったんだよ」
「私としては珠希ちゃんが戻ってきてくれたことだけでも嬉しいって思うよ。珠希ちゃんが見てくれるって思ったら私はもっと頑張れちゃうからね」
「珠希ちゃんがいるとイザーちゃんもいつも以上に力を発揮しちゃうんだろうけど、張り切り過ぎちゃってイザーちゃんが力を制御できなくなってしまう可能性が高かったんだよね。珠希ちゃんに怪我をさせちゃう確率が高かったと思ったんだ」
「それはあるかもしれないね。珠希ちゃんがいたら私は張り切って本気の本気で最初っから全力でぶっ放してたかもしれないな。珠希ちゃんに怪我なんてさせちゃったら、私はうまなちゃんに殺されちゃうかもしれないよね」
「殺されてもすぐに生き返らせてもらえるとは思うけど、生き返るたびに殺されちゃう可能性も高いかな」
本気なのか冗談なのかわからないやり取りを聞いていた工藤珠希は笑っても良いのかわからず戸惑うばかりであった。
イザーも野城君も笑っているところを見る限りでは、冗談なんだろうなと理解は出来るのだけれど、一緒に笑う事は出来ないのだ。左腕が無くなっていて血が滴っている様子を見て笑うことなんて出来なかった。
左腕が無いのにどうしてそんなに平気でいられるのだろうと不思議に思いながら見ていた工藤珠希とそれに気が付いて目が合ってしまったイザー。自然な感じで笑ってしまった二人を見てどこか嬉しそうな野城君。
少しだけその状況に慣れてきた工藤珠希はどうして腕が無くなったのか聞くことにした。大怪我を負った理由を聞くのは良くないことかもしれないとは思いながらも、その理由がどうしても知りたいと思ってしまったのだ。
直接聞くことは出来ないかもしれないので、どうにかしてその理由を聞いてみたい。そう思った工藤珠希は少しだけ違う方向から聞いてみることにしたのだ。
「沢山のサキュバス達がいたと思うんだけど、やっぱり強い人がいたのかな?」
「数が多いだけで強いなって思うようなのはいなかったかな。野生のサキュバスなんで強さもピンキリって感じなんだけど、各々が好きなように生きているから連携もとれてなくて怖さは感じなかったね。でも、数が多い分面倒くさいなとは思ったよ」
「そうなんだね。レジスタンスの人達と比べたらどんな感じなのかな?」
「私はあんまりレジスタンスの人と戦う事ってないんだけど、戦い方を見ている限りでは野生のサキュバスを相手にする方が全然楽だと思うよ。向こうは何も考えずに向かってくるだけなんだけど、レジスタンスの人ってこっちが嫌だって思うようなことを平気でしてくるからね。一人一人の強さでもサキュバスよりレジスタンスの人の方が強いって思うくらいだし」
「でも、サキュバスの人数って凄い多いって聞いたんだけど、レジスタンスの人達と比べてどうなのかな?」
「正確に数えたわけじゃないんでハッキリとした数字は言えないけど、零楼館高校に通ってる生徒と職員の数を合わせても野生のサキュバスの一割にも満たないと思うよ。数だけは本当に多かったんだよ。ただ、数だけ多くても意味ないんだけどね」
イザーの話を聞いていると野生のサキュバスに対して何の脅威も抱いていないという事は理解出来た。だが、全く脅威を感じていない相手に対して左腕を失うという事はそれなりに脅威があるという事なのではないだろうか。
工藤珠希はそこも気になってしまっていた。
「そんな人たちを相手にしても腕が無くなっちゃうくらい大変なことがあったって事なんだろうけど、無くなった腕が生えてくるってのは本当なの?」
「本当だよ。寝て起きれば元通りになってるとは思うけど、今回は自分が原因だからいつもより時間がかかっちゃうかもしれないな」
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