37 / 45
第37話 観測者
しおりを挟む
工藤珠希を見送ったすぐ後にイザーの後を追った野城君は驚愕の光景を目の当たりにすることになる。
戦闘を開始して僅か数分も経っていないと思われる状況なのにもかかわらず、そこかしこにサキュバスの死体が転がっていて生存者の方が少ないのではないかと思ってしまう程であった。
いくら生身の戦闘に慣れていないとはいえ、この世界でそれなりに渡り歩いてきたサキュバス達が何の抵抗も出来ないまま蹂躙されている姿は現実感のない不思議な感覚で見ることしか出来なかった。
中には戦う事に自信があるサキュバスもいたようではあるが、イザーに触れる前に命を奪われてしまっている。そんな感じで実力差があり過ぎるがゆえに、誰一人として抵抗することも出来ずに一方的にサキュバスの命が減っているだけである。
圧倒的な力の差を前に何を記せばいいのかわからなくなってしまった野城君は見たままの光景を記録しているのだが、どのように言葉を選んだとしても全てが嘘くさく感じてしまっていた。
それくらいにありえない出来事が目の前で繰り広げられているという事の証拠になるのかもしれない。
一方的な力の押し付けに近い戦いではあったが、蹂躙する側のイザーにとっても納得のいくものではなかったのか、はたまた戦い足りないという思いが残っているのかわからないがイザーはサキュバスの死体を生贄に捧げて三体の悪魔を召喚してしまった。
悪魔のうち一体は野城君の事を興味深そうに観察していたのだが、自分に対する悪意に近い感情を向けてくるイザーに視線を戻すと他の二体の悪魔と同時に攻撃を仕掛けていた。
三対一の殴り合いになってしまったので完全にイザーは後手に回ることになるのだが、三体の悪魔が反撃の暇を与えないようにタイミングを合わせて攻撃をしていたこともあってイザーは攻撃を避けるだけで精一杯であった。
なぜそのタイミングできた攻撃を避けることが出来るのか不思議ではあったが、多くの世界を渡り歩いて生き残ってきたイザーの事を知っている野城君は疑問には思いはしなかった。
ただ、ここまで防戦一方になってしまっているのは最近の記憶には無い出来事であった。
この世界にまだ慣れていないからなのか、活動に限界が来ているのか不明ではあるが、悪魔の一体が少しだけ動きが遅くなって完璧だった連携にも綻びが見え始めていた。
もちろん、そんなチャンスをイザーが見逃すはずはなく反撃に出ようとしたのだが、他の二体の悪魔も当然それに気付いているのでイザーの反撃に合わせてさらにテンポを変えた攻撃を繰り出していた。
悪魔らしく武器や魔法を使って戦わないことにも疑問を感じていたのだが、イザーの力によって呼び出された三体の悪魔は制約によって己の肉体の身を使って戦わなくてはいけないことになっている。後から聞いた野城君はこの悪魔らしからぬ戦いに抱いていた疑問があっさりと解けてしまった事に思わず笑ってしまった。
さらに時間が経過してもう一体の悪魔の動きも鈍くなってきたのだが、そうなるとイザーも今まで以上に反撃のチャンスが増えてきているので攻撃をしようと試みてはいるのように見えた。
しかし、そのタイミングに合わせるように最後に残った悪魔が攻撃をしているのでイザーも手を焼いているように見えていた。
ただの悪魔ではない何か特別な力を感じさせる。強者と呼ぶにふさわしい動きと先を読む力のあるように見えていた。
サキュバスの集団と戦っていた時とは違って攻撃をすることすら出来なくなっているイザーにフラストレーションが溜まっているのがわかるほど動きが雑になっていた。そんな状況をコレだけの動きが出来る悪魔が見逃すはずはなく、イザーとは違って的確に攻撃を当てるという事を意識したのかダメージを一切考慮していない軽い攻撃を何度も何度もイザーの顔面に当て続けていた。
肉体的なダメージは全くないのだが、自分が攻撃を当てることも出来ないのに向こうは自分の顔にペチペチと当てるだけの攻撃をしてきていることにイライラが募り、イザーの動きはより大きく当てることよりも一撃で倒すことに舵を切ってしまっていた。
もちろん、そんな攻撃が悪魔に当たることはなく、延々と一方的に顔を叩かれるだけの時間が過ぎていっていたのだ。
効果的な反撃がほとんど出来ていないイザーと的確に攻撃を当ててくる悪魔。
あまりにも対極的過ぎる二人の様子を見て野城君はイザーがこのまま殺されてしまうと感じていたのだ。
この戦いを見ている人がいれば全員が野城君と同じ感想を持つと思うのだが、戦っている二人にしてみるとそのような感想は出てくることはないのである。
イザーが一撃にこだわるのは相手を倒すためにはそれしかないという思いがあるからなのだが、悪魔が当てるだけの攻撃に終始していて致命傷とはいかないまでもダメージを与えるような攻撃をしないのは何故だろう。
観測者である野城君はその事に気付かなくてはいけない立場なのだが、長いことイザーと一緒に行動してきたこともあって客観的に見ることが出来なくなっていた。ほんの少しの変化も見逃してはいけない立場なのにもかかわらず、イザーが負けそうになっている珍しい状況も相まって彼女の応援を無意識のうちにしてしまっていて正しく観測することが出来なくなっていた。
悪魔が致命傷を狙わない理由なのだが、単純にイザーに反撃の隙を与えるわけにはいかないとわかっているからである。
武器も魔法も使えない今の状況で出来ることは、イザーの心をへし折って終わらせることのみなのだ。それをするためには、イザーに反撃を一切させずに自分が延々と攻撃をし続けるという事が重要になってくる。
イザーが大きな隙を見せたとしても慌てることもなく同じことを繰り返す。悪魔にとって勝てる手段がそれしかない。そういう意味でも軽い攻撃を延々と当て続けることに意味があるのだ。
戦闘を開始して僅か数分も経っていないと思われる状況なのにもかかわらず、そこかしこにサキュバスの死体が転がっていて生存者の方が少ないのではないかと思ってしまう程であった。
いくら生身の戦闘に慣れていないとはいえ、この世界でそれなりに渡り歩いてきたサキュバス達が何の抵抗も出来ないまま蹂躙されている姿は現実感のない不思議な感覚で見ることしか出来なかった。
中には戦う事に自信があるサキュバスもいたようではあるが、イザーに触れる前に命を奪われてしまっている。そんな感じで実力差があり過ぎるがゆえに、誰一人として抵抗することも出来ずに一方的にサキュバスの命が減っているだけである。
圧倒的な力の差を前に何を記せばいいのかわからなくなってしまった野城君は見たままの光景を記録しているのだが、どのように言葉を選んだとしても全てが嘘くさく感じてしまっていた。
それくらいにありえない出来事が目の前で繰り広げられているという事の証拠になるのかもしれない。
一方的な力の押し付けに近い戦いではあったが、蹂躙する側のイザーにとっても納得のいくものではなかったのか、はたまた戦い足りないという思いが残っているのかわからないがイザーはサキュバスの死体を生贄に捧げて三体の悪魔を召喚してしまった。
悪魔のうち一体は野城君の事を興味深そうに観察していたのだが、自分に対する悪意に近い感情を向けてくるイザーに視線を戻すと他の二体の悪魔と同時に攻撃を仕掛けていた。
三対一の殴り合いになってしまったので完全にイザーは後手に回ることになるのだが、三体の悪魔が反撃の暇を与えないようにタイミングを合わせて攻撃をしていたこともあってイザーは攻撃を避けるだけで精一杯であった。
なぜそのタイミングできた攻撃を避けることが出来るのか不思議ではあったが、多くの世界を渡り歩いて生き残ってきたイザーの事を知っている野城君は疑問には思いはしなかった。
ただ、ここまで防戦一方になってしまっているのは最近の記憶には無い出来事であった。
この世界にまだ慣れていないからなのか、活動に限界が来ているのか不明ではあるが、悪魔の一体が少しだけ動きが遅くなって完璧だった連携にも綻びが見え始めていた。
もちろん、そんなチャンスをイザーが見逃すはずはなく反撃に出ようとしたのだが、他の二体の悪魔も当然それに気付いているのでイザーの反撃に合わせてさらにテンポを変えた攻撃を繰り出していた。
悪魔らしく武器や魔法を使って戦わないことにも疑問を感じていたのだが、イザーの力によって呼び出された三体の悪魔は制約によって己の肉体の身を使って戦わなくてはいけないことになっている。後から聞いた野城君はこの悪魔らしからぬ戦いに抱いていた疑問があっさりと解けてしまった事に思わず笑ってしまった。
さらに時間が経過してもう一体の悪魔の動きも鈍くなってきたのだが、そうなるとイザーも今まで以上に反撃のチャンスが増えてきているので攻撃をしようと試みてはいるのように見えた。
しかし、そのタイミングに合わせるように最後に残った悪魔が攻撃をしているのでイザーも手を焼いているように見えていた。
ただの悪魔ではない何か特別な力を感じさせる。強者と呼ぶにふさわしい動きと先を読む力のあるように見えていた。
サキュバスの集団と戦っていた時とは違って攻撃をすることすら出来なくなっているイザーにフラストレーションが溜まっているのがわかるほど動きが雑になっていた。そんな状況をコレだけの動きが出来る悪魔が見逃すはずはなく、イザーとは違って的確に攻撃を当てるという事を意識したのかダメージを一切考慮していない軽い攻撃を何度も何度もイザーの顔面に当て続けていた。
肉体的なダメージは全くないのだが、自分が攻撃を当てることも出来ないのに向こうは自分の顔にペチペチと当てるだけの攻撃をしてきていることにイライラが募り、イザーの動きはより大きく当てることよりも一撃で倒すことに舵を切ってしまっていた。
もちろん、そんな攻撃が悪魔に当たることはなく、延々と一方的に顔を叩かれるだけの時間が過ぎていっていたのだ。
効果的な反撃がほとんど出来ていないイザーと的確に攻撃を当ててくる悪魔。
あまりにも対極的過ぎる二人の様子を見て野城君はイザーがこのまま殺されてしまうと感じていたのだ。
この戦いを見ている人がいれば全員が野城君と同じ感想を持つと思うのだが、戦っている二人にしてみるとそのような感想は出てくることはないのである。
イザーが一撃にこだわるのは相手を倒すためにはそれしかないという思いがあるからなのだが、悪魔が当てるだけの攻撃に終始していて致命傷とはいかないまでもダメージを与えるような攻撃をしないのは何故だろう。
観測者である野城君はその事に気付かなくてはいけない立場なのだが、長いことイザーと一緒に行動してきたこともあって客観的に見ることが出来なくなっていた。ほんの少しの変化も見逃してはいけない立場なのにもかかわらず、イザーが負けそうになっている珍しい状況も相まって彼女の応援を無意識のうちにしてしまっていて正しく観測することが出来なくなっていた。
悪魔が致命傷を狙わない理由なのだが、単純にイザーに反撃の隙を与えるわけにはいかないとわかっているからである。
武器も魔法も使えない今の状況で出来ることは、イザーの心をへし折って終わらせることのみなのだ。それをするためには、イザーに反撃を一切させずに自分が延々と攻撃をし続けるという事が重要になってくる。
イザーが大きな隙を見せたとしても慌てることもなく同じことを繰り返す。悪魔にとって勝てる手段がそれしかない。そういう意味でも軽い攻撃を延々と当て続けることに意味があるのだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる