百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎

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第41話 シャワーを浴びるために

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 助けを呼びに来た時は誰もいなかった。
 それは間違った記憶なのではないかと思ってしまうくらいに校舎内は活気にあふれていた。戦いの準備をしているとは思えないくらいに和気あいあいと楽しそうに準備をしている姿は少し異常に見えたのだが、戦いの前の高揚感がそうさせているのかもしれないと思った工藤珠希であった。

「そうだ、イザーちゃんの怪我を治してもらうことにしよう。その方がいいよね?」
「いや、今はこのままでいいかな。怪我を治すって言っても、さすがに腕が無いってのはどうしようもないと思うんだよね。明日の朝になったら生えてくるのはわかってるんだし、ここは大人しくしてた方がいいんじゃないかなって思うよ」
「そんな気持ちじゃだめだよ。治してもらうのに痛みを感じるかもしれないけど、今のままだったら出血多量で死んじゃうかもしれないんだよ。凄く血が出てて服も何もかも真っ赤になってるじゃない」

「あ、これは私の血じゃなくてサキュバス達の返り血だと思うよ。あと、爆死したアスモデウスの肉片と血も混ざってるかもしれないけどね」
「まあ、シャワーくらいなら借りてもいいんじゃないか。その時はちゃんと花序の人がついてくれると思うから安心していいぞ」

 野城君はイザーではなく工藤珠希に向かって話しかけてきた。
 シャワーを浴びているイザーを介助するのはちょっと嫌だなと思って聞いていた工藤珠希は野城君の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべてしまった。
 その変化を見逃さなかったイザーは小さく舌打ちをした後に野城君の事を鋭い目つきでじっと見つめていた。

「シャワーを浴びるにしても、いったんはドクターポンピーノに相談してみなくちゃね。イザーちゃんだけじゃなく珠希ちゃんも疲れてると思うし、何か対処してもらうのもありなんじゃないかな」
「こんな血だらけのまま教室に行くのは良くないもんね。でも、ポンピーノにと詰められるのはイヤだな。その時は珠希ちゃんが私の事をかばってね」

 思わずうなずいてしまった工藤珠希ではあったが、どうやってかばえばいいのだろうという事が頭の中を駆け巡ってしまい、何をどう説明したらいいのかさっぱりわからないまま処置室についてしまったのだ。

 ノックをしてからすぐに返事が返ってきたのでそのまま処置室に入ったところ、そこにはファイルとにらめっこをしているドクターポンピーノがいた。
 誰が入ってきたのか確認するためだけに一瞬ファイルから視線を移したドクターポンピーノは工藤珠希と目が合うとニコリとほほ笑んでくれた。

「さっきは誰も見つからなくて大変だったね。でも、残念なことに君が出ていってから数分もしないうちにみんな戻ってきたんだよ。もう少し粘っていたら誰か連れて行けたかもしれないね」
「そうだったんですね。今も校舎内に人があふれかえってるみたいですけど、さっき見てた誰もいない校舎は何だったんだろうって思いますよ」
「君にも都合があるように、他のみんなにもそれぞれ都合ってものがあるからね。そっちの二人みたいに年がら年中暇だって事もないだろう。二人とも暇ではないって言いたそうにしてるけれどさ、私たちから見たら二人とも暇そうに見えるって事だよ」

 文句を言おうとしたイザーと野城君だったが、実際に暇だと思われても仕方ないような行動しかしていないという事もあって反論らしい反論も出来ず、おとなしくシャワーだけでも使わせてもらえないか聞いてみることにした。

 特に反対される事もなく、無事にシャワーを使うことが出来るのだが、左腕が無く左足も満足に動かせない状態のイザーがどのようにしてシャワーを使えばいいのか困ってしまっていた。
 介助をしてくれる人を探すにしてもどこに居るのか見当もつかなかった。

「何、どうかしたの?」
「イザーちゃんがこんな状態でどうやってシャワーを浴びればいいんだろうって考えてたんです。どこかにお風呂の解除をしてくれる人っていないんですかね?」

「ああ、そんな事で悩んでたのか。そんなのは気にしないで奥にあるシャワーを使うといいよ。手前のは何の変哲もないごく普通のシャワーだけど、他のシャワーよりスペースが広い方のシャワーは汚れを自動で判断して洗浄してくれるんだよ。生き返らせるためにいったん身を清める必要があるんだけど、私一人でそれをやるのは大変だという事でシャワーが全部勝手に綺麗にしてくれるようにしたんだよ。この技術を発展させればみんな立ってるだけで綺麗になるって事だからね」
「それって、亡くなった人を立たせてやるって事ですか?」
「そんな事はしないさ。シャワー室を見て貰えばわかるんだけど、ビーチチェアに寝かせればあとはシャワーが勝手にやってくれるって話だよ。鼻とか耳にもやっちゃうみたいだから生きている人を寝かせて洗ってもらうのは良くないんじゃないかなって思うんだけどさ、立ったままだったら耳は我慢するとしても鼻と口ははいらないように気を付けてくれれば大丈夫なんじゃないかな」

 三人同時にイザーの姿を見つめていた。
 その視線に気付いたイザーではあったが、誰とも目を合わそうとせずにじっとシャワールームを見つめていた。

「すっかり忘れてたんだけど、私の着替えってどうすればいいのかな?」
「その辺はボクが売店で買ってきてあげるよ。サイズとかは気にしなくても良いよね?」
「極端に大きかったり小さかったりしなければいいかな。お使い頼んじゃってごめんね」
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