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日中その三
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いつもは朝から大声でやかましい鮭川昇《さけかわのぼる》が不自然に大人しかった。よくよく聞いてみると一緒に話している熊山眠《くまやまねむり》と熊山巡《くまやまめぐり》もいつもより元気が無いように見えた。
そんなグループの中でも鹿沢翔《しかさわかける》だけはいつも以上に声が大きくなってた。
「昇は大人しいけど何か変なモノでも食べて腹を壊したのか?」
「そんなんじゃねえよ。何となく気分が乗らないだけだよ」
「元気しか取り柄のないお前が大人しいってこっちまでおかしくなりそうだぜ。ねむちゃんもめぐちゃんも大人しいけど、今日はもしかしてみんなでブルーになる日だったっけ?」
「そう言うの良いから。私も巡も最近はあんまり調子が良くないんだよね」
「そうだよね。私も眠も夜中に目が覚めることが多くて、睡眠足りてないのかも」
「なんだよなんだよ、そんなことで悩んでいるなら俺が解決してやるよ。俺が一発元気になれる曲を演奏してスカッと眠らせてやるって」
「いや、お前の演奏はアドリブ多すぎてちゃんとした曲になってないじゃないか。時々部活中に聞こえてくるけど騒音でしかないわ」
「ちょっとちょっと、昇はいつも厳しいな。俺だってこれから一流ミュージシャンになって稼いでいく予定なんだから下手な期間は見逃してくれよ。柔道もそうだともうけど、こういうのは日々の努力の積み重ねが大事なんだよ」
「あのな、それを言わせてもらうと、基礎を身に着けてからの反復練習をしないと上手くならないと思うぞ」
「あちゃー、そんな正論言われたら俺は何も言い返せないじゃん。もっと気楽にやろうぜ。そうそう、お前らの元気を取り戻す方法を思いついたんだけど聞いてくれよ。今度の休みに路上ライブやろうと思ってるんだけど、ねむちゃんもめぐちゃんも応援しに来てくれよ。昇は部活が終わった後の強制な」
「部活が終わった後とか無理だろ、終わるの夜だぞ。何時から何時までやってるつもりだよ」
「私らも無理だよね。その日は親戚のお見舞いに行く予定だからさ」
「お世話になってるおじさんだからキャンセルできないもんね」
「まじかよ。俺だけ友達誘えないとか辛すぎるっしょ。昇はそうでもないけど、ねむちゃんとめぐちゃんみたいなかわいい子が応援してくれてたら他のギャラリーも盛り上がると思たんだけどな。他に暇そうな奴いないかクラスのみんなに聞いてみるわ」
鹿沢翔は軽音楽部に所属しているのだけれど、この学校に軽音楽部という部活は存在していない。正確に言うと僕たちが入学するずっと前に廃止されていたそうだ。なんでも、著しく規律を乱す行為があったとかでそれ以降も何度が部活としての申請が出されていたものの、その申請が通ることは無く全て却下されていたそうだ。
これは偏見になってしまうかもしれないけれど、鹿沢翔のような性格の人が多かったとしたらそれもやむを得ない事ではあるだろう。みんながみんなそうではないと思うけれど、極一部のおかしい人が目立ってしまうことは仕方ない事だとは思うのだ。
鹿沢翔はクラスのみんなに声をかけると言っていたけれど、そのクラスのみんなに僕は含まれていないようだった。他のクラスメイトにも断られていた鹿沢翔だったのだが、誰も来てくれないのはマズいと思たのか、一度僕を見て目があったのだけれど、彼は僕に話しかけることも無く自分の席へと戻っていった。彼の演奏を聞いたことがある人は進んで見に行こうとは思わないだろう。彼の演奏は聞くというよりも動きを見るパフォーマンスに重点を置いているのだ。それ自体は問題ではないのだけれど、素人が聞いても明らかにおかしいリズムとよくわからない展開で頭が痛くなってしまうという特別な演奏を行ってしまうのだ。
時代が変われば彼の演奏が認められるようになるかもしれないけれど、少なくとも今の時代では彼の演奏が受け入れられることは無いだろう。それはいつも一緒にいる熊山姉妹や鮭川も感じているようだった。鹿沢の親友である鮭川も部活を口実に断っているみたいだけど、熊山姉妹は明らかに嘘だとわかる理由で断っているのにも気付かない鹿沢は本当は良いやつなのかもしれないなと思うところもあった。
「どうしたら俺の演奏を世間に認めてもらえるのかな?」
「そんなの簡単よ。あんたが世界一になればいいじゃない」
「そうね。世界一になればみんな認めるわよ」
「でもよ、音楽で世界一ってどうやって決めるんだ?」
「音楽にも柔道みたいに世界大会とかオリンピックみたいなのがあったとしても、勝敗ってどうやってつければいいんだろうな。結局売り上げ枚数とかそんなんで決めるんじゃないか?」
「メジャーどころかインディーズでも販売してない俺にはスタートラインにすら立っていないってことかよ」
鮭川が言っていたことではないけれど、鹿沢はもう少し基礎を練習してちゃんと聞ける音楽にしないとスタートラインに近付くことも出来ないんじゃないかと思っていた。熊山姉妹や鮭川もきっと同じことを思っているのだけれど、友達想いの彼らがその事を指摘することは無いだろう。彼のバンド仲間も鹿沢に従うだけのお飾りなので意見をすることも無いらしい。
僕が考えるに、鹿沢に必要なのは彼をちゃんと否定して正しいレールに乗せてあげるような人が必要だろう。そんな人はきっとこれから先も彼の前には現れないと思うけれど。
そんなグループの中でも鹿沢翔《しかさわかける》だけはいつも以上に声が大きくなってた。
「昇は大人しいけど何か変なモノでも食べて腹を壊したのか?」
「そんなんじゃねえよ。何となく気分が乗らないだけだよ」
「元気しか取り柄のないお前が大人しいってこっちまでおかしくなりそうだぜ。ねむちゃんもめぐちゃんも大人しいけど、今日はもしかしてみんなでブルーになる日だったっけ?」
「そう言うの良いから。私も巡も最近はあんまり調子が良くないんだよね」
「そうだよね。私も眠も夜中に目が覚めることが多くて、睡眠足りてないのかも」
「なんだよなんだよ、そんなことで悩んでいるなら俺が解決してやるよ。俺が一発元気になれる曲を演奏してスカッと眠らせてやるって」
「いや、お前の演奏はアドリブ多すぎてちゃんとした曲になってないじゃないか。時々部活中に聞こえてくるけど騒音でしかないわ」
「ちょっとちょっと、昇はいつも厳しいな。俺だってこれから一流ミュージシャンになって稼いでいく予定なんだから下手な期間は見逃してくれよ。柔道もそうだともうけど、こういうのは日々の努力の積み重ねが大事なんだよ」
「あのな、それを言わせてもらうと、基礎を身に着けてからの反復練習をしないと上手くならないと思うぞ」
「あちゃー、そんな正論言われたら俺は何も言い返せないじゃん。もっと気楽にやろうぜ。そうそう、お前らの元気を取り戻す方法を思いついたんだけど聞いてくれよ。今度の休みに路上ライブやろうと思ってるんだけど、ねむちゃんもめぐちゃんも応援しに来てくれよ。昇は部活が終わった後の強制な」
「部活が終わった後とか無理だろ、終わるの夜だぞ。何時から何時までやってるつもりだよ」
「私らも無理だよね。その日は親戚のお見舞いに行く予定だからさ」
「お世話になってるおじさんだからキャンセルできないもんね」
「まじかよ。俺だけ友達誘えないとか辛すぎるっしょ。昇はそうでもないけど、ねむちゃんとめぐちゃんみたいなかわいい子が応援してくれてたら他のギャラリーも盛り上がると思たんだけどな。他に暇そうな奴いないかクラスのみんなに聞いてみるわ」
鹿沢翔は軽音楽部に所属しているのだけれど、この学校に軽音楽部という部活は存在していない。正確に言うと僕たちが入学するずっと前に廃止されていたそうだ。なんでも、著しく規律を乱す行為があったとかでそれ以降も何度が部活としての申請が出されていたものの、その申請が通ることは無く全て却下されていたそうだ。
これは偏見になってしまうかもしれないけれど、鹿沢翔のような性格の人が多かったとしたらそれもやむを得ない事ではあるだろう。みんながみんなそうではないと思うけれど、極一部のおかしい人が目立ってしまうことは仕方ない事だとは思うのだ。
鹿沢翔はクラスのみんなに声をかけると言っていたけれど、そのクラスのみんなに僕は含まれていないようだった。他のクラスメイトにも断られていた鹿沢翔だったのだが、誰も来てくれないのはマズいと思たのか、一度僕を見て目があったのだけれど、彼は僕に話しかけることも無く自分の席へと戻っていった。彼の演奏を聞いたことがある人は進んで見に行こうとは思わないだろう。彼の演奏は聞くというよりも動きを見るパフォーマンスに重点を置いているのだ。それ自体は問題ではないのだけれど、素人が聞いても明らかにおかしいリズムとよくわからない展開で頭が痛くなってしまうという特別な演奏を行ってしまうのだ。
時代が変われば彼の演奏が認められるようになるかもしれないけれど、少なくとも今の時代では彼の演奏が受け入れられることは無いだろう。それはいつも一緒にいる熊山姉妹や鮭川も感じているようだった。鹿沢の親友である鮭川も部活を口実に断っているみたいだけど、熊山姉妹は明らかに嘘だとわかる理由で断っているのにも気付かない鹿沢は本当は良いやつなのかもしれないなと思うところもあった。
「どうしたら俺の演奏を世間に認めてもらえるのかな?」
「そんなの簡単よ。あんたが世界一になればいいじゃない」
「そうね。世界一になればみんな認めるわよ」
「でもよ、音楽で世界一ってどうやって決めるんだ?」
「音楽にも柔道みたいに世界大会とかオリンピックみたいなのがあったとしても、勝敗ってどうやってつければいいんだろうな。結局売り上げ枚数とかそんなんで決めるんじゃないか?」
「メジャーどころかインディーズでも販売してない俺にはスタートラインにすら立っていないってことかよ」
鮭川が言っていたことではないけれど、鹿沢はもう少し基礎を練習してちゃんと聞ける音楽にしないとスタートラインに近付くことも出来ないんじゃないかと思っていた。熊山姉妹や鮭川もきっと同じことを思っているのだけれど、友達想いの彼らがその事を指摘することは無いだろう。彼のバンド仲間も鹿沢に従うだけのお飾りなので意見をすることも無いらしい。
僕が考えるに、鹿沢に必要なのは彼をちゃんと否定して正しいレールに乗せてあげるような人が必要だろう。そんな人はきっとこれから先も彼の前には現れないと思うけれど。
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