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BACK TO THE OCEAN Chapter4
第23章 フォースネットワーク【4】
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「どうする! このままでは見つかってしまうぞ!」
焦るライフ・ゼロは僕に迫って、打開策を問うてくる。
「どうするって言っても、お前魔王だったんだろ? だったら何かこういう時の秘策とかないのか!?」
「バカ言え! 我はこんな敵地に侵入して、コソコソなどしたことが無いから対処法など分からん!」
「クソッ……!」
ライフ・ゼロのことをアテにしていたわけでは無いが、しかしこのままでは本当にマズい。
僕はとりあえず周囲を見渡す。この室内にあるのは、マンハットの操作しているネットワークターミナルと幾多のサーバのみ……身を隠すとしたら、サーバの物陰に潜むくらいしかないだろう。
しかしもし隠れて、運良く見つからなかったとしても、出入口は僕の目の前にあるこの扉のみであり、ここを固められてしまったら、脱出することができなくなってしまう。
こんなところで悠長にかくれんぼなどしている時間は、僕達には残されていない……絶体絶命の状況に切羽詰っていた僕だったが、しかしその時、僕はあることに気がついた。
そう、それは自分の今の姿。今僕は、兵団の制服を着用している。
「そうだ……二人とも、今から僕が見張りの気を引きつけるから、その間にここから脱出してくれ」
僕のその一言で、ライフ・ゼロは僅かに眉をピクリと動かし、そしてマンハットはキーボードやマウスを操作していたその手を止めた。
「気を引きつけるって……まさか彼らと戦うのかい?」
マンハットが僕にそう問いかけてくるが、しかし僕は首を横に振った。
「いや、ここで死傷者を出したら、それこそ後の作戦に響いてしまう。大丈夫、穏便に済ませるから」
「穏便にって……」
「ふん……マンハット、今はこやつの考えに乗っておこう。それともうぬには、なにか他の策があるというのか?」
「えっ!? いや……それは……無いけど」
すると意外なことに、ライフ・ゼロが僕の援護をし、マンハットは言葉を詰まらせてしまった。
「だったらこやつの思い付きに付き合うのも悪くないだろう……自信はそれなりにあるようだからな?」
そうライフ・ゼロは、僕にプレッシャーを掛けるような物言いをし、ニヤリと笑みを浮かべてみせる。
コイツ……こんな危機的状況の中で、僕の実力を測ろうとしてやがるな。
測るんだったら、見せてやろうじゃないか、僕の実力を。
「よし、見取り図のデータの保存、終わったよ!」
そう言ってマンハットは、ネットワークターミナルからレコードプレートを引き抜き、コートのポケットにそれを入れると、僕達の居る扉の前まで駆け寄ってきた。
「じゃあ僕が先に出るから、二人は兵士の様子を見て、ここを脱出してくれ」
「待て、我は剣の中に戻る。そしたらマンハットだけ逃げればよかろう?」
「えっ? あっ、そっか」
もう、外に居ることが当たり前のようになってしまっているため、ついライフ・ゼロが満月の剣の中に戻れることを、僕は忘れてしまっていた。
「ほれ、ボケっとしてないでさっさと剣を寄越せ」
「おう」
僕は腰に下げている満月の剣を、催促してくるライフ・ゼロに渡す。
すると奴は紫色の光に包まれ、姿を消し、そこには剣だけが残った。
しかしこうしてみると、便利な能力だよなこれ。姿を消したり、現したりが自由にできるのだから。
『なにが便利な能力だ!』
そう思った直後、唐突に頭の中からライフ・ゼロの声が聞こえてきた。
『剣に戻るのは自由に行えるが、ここから出るには、うぬにいちいち召喚してもらうしか方法が無いのだぞ? しかも剣の中はせまっ苦しいし……ああああっ! 早く外に出たいっ!!』
自分から剣に入ることを提案してきたのに、早速外に出たがるライフ・ゼロ。
だったら最初から提案するなよ……と言いたくなるところだが、しかし今は、そんなしょうもないことで口論をしている暇は無い。
(分かった、終わったらすぐに出してやるから。それまでの我慢だ)
『む……うう……分かった。すぐに出すのだぞ』
(ああ)
ライフ・ゼロを宥めた僕は、それから意識を外に戻し、今度はマンハットに声を掛けた。
「よし……じゃあマンハット、見つからないよう気をつけて」
「分かったよ。コヨミ君も、あまり無茶はしちゃダメだよ」
「ああ」
満月の剣を再び腰に携え、そして僕は扉を潜り、施設を飛び出した。
すると外では、二人の兵士が並んで歩いており、施設の中から僕が出てきたところで、二人は同時に立ち止まった。
「あれ? って、ちょっとアンタ!」
真っ直ぐと歩いて行く僕を呼び留めるように、一人の、僕と同じ兵団の制服を着ている男が、僕の元へと駆け寄って来た。
「そこは俺達が警備するよう言われてるんだ。アンタ、何の用でこの中に入ってたんだ?」
男はそう、僕に尋ねてくる。
彼の言葉から察するに、どうやら彼は僕のことを、兵士だと思っており、自分の持ち場を荒らされたことに対して、不満を持っている……といった感じだろう。
ならばこの作戦でいけるかもしれない……。
「あんた達がここの警備をしてたのか……ほう」
僕は自分が今出せる最大限の威圧感を醸し出し、見張りの兵士の前ににじり寄る。
そして……。
「バカヤロオオオオオオオオオオオオウッッ!!」
精一杯の大声を出して、僕は彼らを怒鳴りつけた。
見張りの兵士は二人とも、僕からの不意打ちを受け、面食らっている……ここで終わっては、ただ急に怒鳴ってきた変な人になってしまうので、今瞬時に思いついた言い訳を、僕は付け足す。
「お前ら! ここの警備をほったらかしにしてどこに行ってたんだ!」
僕がそう言うと、見張りの兵士は二人顔を合わせてから、右に居る、少し体格が太めな男が弁明をしてきた。
「どこへって……工事現場の方で事故があったから、その処理の手伝いをしていたんだよ……」
「事故? なるほど、そういうことだったか……」
まあ、それは知っているんだけど、今はとりあえず話を繋げるために、知らなかった振りをしておく。
「しかし緊急時だからといって、警備を任された場所の扉を、開けっ放しでそのまま行くというのは見過ごせんな?」
「それはその……すまなかった」
太めの体格をした兵士は、自分に落ち度があったことを素直に認め、僕に謝罪をしてきた。
まあ、開けっ放しにしておいてくれたおかげで、僕達は中へ苦労せず侵入できたのだから、本心ではよくやらかしてくれたと褒めたいところだったが、それは心の内に秘めておこう。
「それじゃあ僕は持ち場に戻るから。今後は気をつけるように」
そう言って僕は、その場を立ち去ろうとする。するとその時……。
「ん? んん……?」
今までずっと黙っていたもう一人の、体格が細めな兵士が、その時になって急に、僕の制服をまじまじと見つめてきたのだ。
マズイ……何かおかしなところでもあったか……?
「その制服……アンタ、こっちの兵士じゃないな?」
兵士ではないことがばれてしまったかと、内心ヒヤヒヤしていたのだが、しかしそうではなく、どうやら彼は、僕がアクトポートの駐在兵でないことを見抜いたらしい。
確かに彼の着用している制服をよく見てみると、色や形は僕のとそっくりだが、しかし左腕に着いているエンブレムが少しだけ違った。
「……ああ、そうだ。マグナブラから来た」
「やっぱり派遣されてきた兵士だったか。いやすまない、足止めをしてしまって。細かいところが気になるタチでな……」
「いや、別に大丈夫だ。それより細かいことが気になるなら、今後は場を離れる時は、扉の鍵をしっかり閉めるようにしてくれよ?」
「ハハハ、これは一本取られたよ! ああ、今後はしっかり心掛けるよ」
「うん……じゃあ頑張れよ」
「ああ、アンタもせっかくアクトポートまで来たんだ、この街を楽しんで帰れよ」
「そうだな……そうさせてもらうよ」
それから僕は彼らに背を向け、右手を挙げてその場を去ろうとする。
上手く欺くことはできたのだが、しかしやっぱり考えてしまうな……僕はもう、兵士ではなくなってしまったんだな……と。
歩く度に、あの二人の兵士との距離が開いていくように、今の自分の道を進めば進むほど、過去の居場所が遠退いていく……そんな気がしてならなかった。
焦るライフ・ゼロは僕に迫って、打開策を問うてくる。
「どうするって言っても、お前魔王だったんだろ? だったら何かこういう時の秘策とかないのか!?」
「バカ言え! 我はこんな敵地に侵入して、コソコソなどしたことが無いから対処法など分からん!」
「クソッ……!」
ライフ・ゼロのことをアテにしていたわけでは無いが、しかしこのままでは本当にマズい。
僕はとりあえず周囲を見渡す。この室内にあるのは、マンハットの操作しているネットワークターミナルと幾多のサーバのみ……身を隠すとしたら、サーバの物陰に潜むくらいしかないだろう。
しかしもし隠れて、運良く見つからなかったとしても、出入口は僕の目の前にあるこの扉のみであり、ここを固められてしまったら、脱出することができなくなってしまう。
こんなところで悠長にかくれんぼなどしている時間は、僕達には残されていない……絶体絶命の状況に切羽詰っていた僕だったが、しかしその時、僕はあることに気がついた。
そう、それは自分の今の姿。今僕は、兵団の制服を着用している。
「そうだ……二人とも、今から僕が見張りの気を引きつけるから、その間にここから脱出してくれ」
僕のその一言で、ライフ・ゼロは僅かに眉をピクリと動かし、そしてマンハットはキーボードやマウスを操作していたその手を止めた。
「気を引きつけるって……まさか彼らと戦うのかい?」
マンハットが僕にそう問いかけてくるが、しかし僕は首を横に振った。
「いや、ここで死傷者を出したら、それこそ後の作戦に響いてしまう。大丈夫、穏便に済ませるから」
「穏便にって……」
「ふん……マンハット、今はこやつの考えに乗っておこう。それともうぬには、なにか他の策があるというのか?」
「えっ!? いや……それは……無いけど」
すると意外なことに、ライフ・ゼロが僕の援護をし、マンハットは言葉を詰まらせてしまった。
「だったらこやつの思い付きに付き合うのも悪くないだろう……自信はそれなりにあるようだからな?」
そうライフ・ゼロは、僕にプレッシャーを掛けるような物言いをし、ニヤリと笑みを浮かべてみせる。
コイツ……こんな危機的状況の中で、僕の実力を測ろうとしてやがるな。
測るんだったら、見せてやろうじゃないか、僕の実力を。
「よし、見取り図のデータの保存、終わったよ!」
そう言ってマンハットは、ネットワークターミナルからレコードプレートを引き抜き、コートのポケットにそれを入れると、僕達の居る扉の前まで駆け寄ってきた。
「じゃあ僕が先に出るから、二人は兵士の様子を見て、ここを脱出してくれ」
「待て、我は剣の中に戻る。そしたらマンハットだけ逃げればよかろう?」
「えっ? あっ、そっか」
もう、外に居ることが当たり前のようになってしまっているため、ついライフ・ゼロが満月の剣の中に戻れることを、僕は忘れてしまっていた。
「ほれ、ボケっとしてないでさっさと剣を寄越せ」
「おう」
僕は腰に下げている満月の剣を、催促してくるライフ・ゼロに渡す。
すると奴は紫色の光に包まれ、姿を消し、そこには剣だけが残った。
しかしこうしてみると、便利な能力だよなこれ。姿を消したり、現したりが自由にできるのだから。
『なにが便利な能力だ!』
そう思った直後、唐突に頭の中からライフ・ゼロの声が聞こえてきた。
『剣に戻るのは自由に行えるが、ここから出るには、うぬにいちいち召喚してもらうしか方法が無いのだぞ? しかも剣の中はせまっ苦しいし……ああああっ! 早く外に出たいっ!!』
自分から剣に入ることを提案してきたのに、早速外に出たがるライフ・ゼロ。
だったら最初から提案するなよ……と言いたくなるところだが、しかし今は、そんなしょうもないことで口論をしている暇は無い。
(分かった、終わったらすぐに出してやるから。それまでの我慢だ)
『む……うう……分かった。すぐに出すのだぞ』
(ああ)
ライフ・ゼロを宥めた僕は、それから意識を外に戻し、今度はマンハットに声を掛けた。
「よし……じゃあマンハット、見つからないよう気をつけて」
「分かったよ。コヨミ君も、あまり無茶はしちゃダメだよ」
「ああ」
満月の剣を再び腰に携え、そして僕は扉を潜り、施設を飛び出した。
すると外では、二人の兵士が並んで歩いており、施設の中から僕が出てきたところで、二人は同時に立ち止まった。
「あれ? って、ちょっとアンタ!」
真っ直ぐと歩いて行く僕を呼び留めるように、一人の、僕と同じ兵団の制服を着ている男が、僕の元へと駆け寄って来た。
「そこは俺達が警備するよう言われてるんだ。アンタ、何の用でこの中に入ってたんだ?」
男はそう、僕に尋ねてくる。
彼の言葉から察するに、どうやら彼は僕のことを、兵士だと思っており、自分の持ち場を荒らされたことに対して、不満を持っている……といった感じだろう。
ならばこの作戦でいけるかもしれない……。
「あんた達がここの警備をしてたのか……ほう」
僕は自分が今出せる最大限の威圧感を醸し出し、見張りの兵士の前ににじり寄る。
そして……。
「バカヤロオオオオオオオオオオオオウッッ!!」
精一杯の大声を出して、僕は彼らを怒鳴りつけた。
見張りの兵士は二人とも、僕からの不意打ちを受け、面食らっている……ここで終わっては、ただ急に怒鳴ってきた変な人になってしまうので、今瞬時に思いついた言い訳を、僕は付け足す。
「お前ら! ここの警備をほったらかしにしてどこに行ってたんだ!」
僕がそう言うと、見張りの兵士は二人顔を合わせてから、右に居る、少し体格が太めな男が弁明をしてきた。
「どこへって……工事現場の方で事故があったから、その処理の手伝いをしていたんだよ……」
「事故? なるほど、そういうことだったか……」
まあ、それは知っているんだけど、今はとりあえず話を繋げるために、知らなかった振りをしておく。
「しかし緊急時だからといって、警備を任された場所の扉を、開けっ放しでそのまま行くというのは見過ごせんな?」
「それはその……すまなかった」
太めの体格をした兵士は、自分に落ち度があったことを素直に認め、僕に謝罪をしてきた。
まあ、開けっ放しにしておいてくれたおかげで、僕達は中へ苦労せず侵入できたのだから、本心ではよくやらかしてくれたと褒めたいところだったが、それは心の内に秘めておこう。
「それじゃあ僕は持ち場に戻るから。今後は気をつけるように」
そう言って僕は、その場を立ち去ろうとする。するとその時……。
「ん? んん……?」
今までずっと黙っていたもう一人の、体格が細めな兵士が、その時になって急に、僕の制服をまじまじと見つめてきたのだ。
マズイ……何かおかしなところでもあったか……?
「その制服……アンタ、こっちの兵士じゃないな?」
兵士ではないことがばれてしまったかと、内心ヒヤヒヤしていたのだが、しかしそうではなく、どうやら彼は、僕がアクトポートの駐在兵でないことを見抜いたらしい。
確かに彼の着用している制服をよく見てみると、色や形は僕のとそっくりだが、しかし左腕に着いているエンブレムが少しだけ違った。
「……ああ、そうだ。マグナブラから来た」
「やっぱり派遣されてきた兵士だったか。いやすまない、足止めをしてしまって。細かいところが気になるタチでな……」
「いや、別に大丈夫だ。それより細かいことが気になるなら、今後は場を離れる時は、扉の鍵をしっかり閉めるようにしてくれよ?」
「ハハハ、これは一本取られたよ! ああ、今後はしっかり心掛けるよ」
「うん……じゃあ頑張れよ」
「ああ、アンタもせっかくアクトポートまで来たんだ、この街を楽しんで帰れよ」
「そうだな……そうさせてもらうよ」
それから僕は彼らに背を向け、右手を挙げてその場を去ろうとする。
上手く欺くことはできたのだが、しかしやっぱり考えてしまうな……僕はもう、兵士ではなくなってしまったんだな……と。
歩く度に、あの二人の兵士との距離が開いていくように、今の自分の道を進めば進むほど、過去の居場所が遠退いていく……そんな気がしてならなかった。
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