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THE GROUND ZERO Chapter2
第8章 血を喰らう怪物【4】
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「いいか二人とも、ブラースティは図体はデカいがなかなかすばしっこい。ここからはとにかく前へ前へ進むんだ!」
「ええ! アイツまだ追いかけてくるの!? しかもあの見た目で素早いだなんて……」
さっきまで元気満点だったルーナも、さすがにさっきのギリギリのバイクアクションで疲れ切ったのか、マジスターのその言葉にげんなりしていた。
「あともう少しの辛抱だ! わしらには止まっている時間などひと時も無い! いくぞっ!」
言い切ると、マジスターはアクセルを回して、再び僕達の先を走り始めた。
「……ねえコヨミ、あの人わたし達よりも絶対年上よね?」
「ああ、遥かに上だろうな」
「なんであんなに元気があるのかしら……?」
「さあ……」
それは僕だって知りたいところだ。
正直ブラースティよりも、あのオッサンの方が化物なんじゃないのかと疑ってしまう。
本当に元気の良いオッサンだよ。
「まっ、あんな怪物に食べられるよりかは、もうちょっと体に鞭打って逃げた方がマシよね。もうひと踏ん張りいくわよ!」
「おう! じゃあ運転よろしく~」
「いいわよね、アンタは乗ってるだけだから……」
「乗ってるだけでも十分疲れるよ……」
「ちぇっ……いつかこの埋め合わせ、してもらうわよ!」
「……まっ僕の気が向いたらね」
「気が向かずとも埋め合わせしなさいよっ!」
ルーナはアクセルを入れ、エンジンを鳴らし、再出発する。
巨大な一枚岩、エトワール・ロックを半周するこの洞窟は全てあのブラースティ一体が作ったようで、他に同種類の魔物が潜んでいる雰囲気は無い。
なんだかあいつにトンネル工事をさせたら、交通網なんかがもっと発達しそうなものだが、いかんせん魔物だからな。その前に人間が食われてしまうか。
そんなことを、バイクの後部座席に座りながらふと考えていると、そのブラースティがバイクのエンジン音を聞きつけ、僕達が背後に逃げ込んだことに気がついたのか、再び吠えると、何故か両腕を挙げて、その爪を洞窟の天井に思いっ切り刺し込んだのだ。
「なっ! アイツ天井によじ登ってるの!?」
ルーナはブラースティの姿をミラー越しに見ながら、驚愕する。
それもそのはず、ブラースティは背中をくの字に曲げ、両腕を右へ左へ動かしながら、吸盤状になっている胴体を徐々に天井にくっつけていき、逆さ状態になったのだ。
更にその逆さ状態のまま、両手の爪をスキーで使うストックのように天井に刺し込みながら、前へ前へ僕達を追いかけ始めた。
「ああ……そういえばマジスターが、あの魔物は天井に張り付いて眠るとか言ってたな。そういうことか」
「なに呑気に頷いてるのよ! なんかアイツ、どんどん加速してきてるじゃない!」
ルーナの言う通り、ブラースティの天井を這う速度はどんどんと加速し始め、僕達との間を詰め始めた。
「壁にくっつきながらあんな動きができるなんて……いやぁ、びっくりだ」
「だーかーらぁっ! なんでアンタはそんなに落ち着いてるのよっ!」
「いやだって……僕が焦っても、僕が運転してるわけじゃないんだからさ」
「キイイイイッ! こっちは必至で運転してるのに、そうやって後ろでくつろがれると無性に腹が立つのよっ!!」
「と言われてもなぁ……それにルーナ、多分アイツは僕達に追いつけないよ」
「なんでそんな無責任なことが言い切れるのよ!」
「だってほら、アイツとの距離がそんなに変わらなくなってきてるもん」
そう、最初は距離を詰めてきたブラースティだったが、しかしその最高速度はどうやらバイクの方が勝っているようで、僕達との間はこれ以上詰まらず、一定を保つので精一杯といったところだった。
これこそまさに、人間の文明の勝利といったところだろうか。とにもかくにも、これ以上の距離が縮まらないとなると、あとはこのまま洞窟を突っ切れば僕達の勝利は約束されたようなものなのだ。
それが分かった上で、僕は安堵していたのだ。
「ホントだ……距離が縮まるどころか、むしろ少しずつだけど離れてきてるわね」
「まあ相手は魔物と言っても生物だからね。体力も無尽蔵じゃないだろうし、走り疲れるだろうさ」
「な~んだ、振り切れば案外大した相手じゃなかったってことね!」
安全が分かった時、人はどうしても油断をしてしまう。僕もルーナも、まさにその時油断し、余裕をかましていた。
だが一人、戦いにおいて経験豊富な老戦士だけはそれを見逃していなかった。
「むっ! ルーナ! 今すぐ右側に移動しろっ! 早くっ!!」
前からマジスターが、鬼気迫る表情で声を荒げる。
「えっ? 右? でも前には何も無いけど……」
「早くしろっ!! ブラースティが何かしてくるぞっ!!」
僕が振り返って確認すると、マジスターの言う通りブラースティは天井を這いながら、口の部分をもごもごしていた。
そして次の瞬間、そのもごもご動かしていた口から、ブラースティは青紫色の液体を弾丸のように勢いよく、口から発射してきたのだ。
「あっぶなっ!」
ルーナはマジスターの忠告に従い、右にハンドルを切っていたので、なんとか飛んできた液体を避け切ることができた。
的を外した液体は洞窟の地面に落下したのだが、瞬間、液体は洞窟の岩の地面を溶かし始めたのだ。
「な……なんだあの液体! 地面を溶かしやがった!」
「ブラースティめ……溶解液を噴出してきおったか。やつは巣穴を掘る時、爪で掘りながら邪魔な岩を溶解液で溶かすんだ。モチロン、逃げようとする獲物にも液を噴出して、溶かして動けないところを捕食するらしいが」
「つまりアイツは、僕達を捕らえて食う気満々ってことなのか……」
「まあ、あいつにとってわしらは、巣穴に自ら入って来てくれた餌だからな。しかもいつも食べてる吸血コウモリが食パンなら、人間ともなるとオードブルくらいの価値があるだろうよ」
「なによ魔物のくせにオードブルなんて生意気な! 食パンだってジャムとか塗ったら美味しくなるじゃないっ!」
「いやルーナ、わしが言ってるのは例えなのだが……」
「とにもかくにも! アイツのご飯にならないように前進あるのみってことでしょっ!?」
「ふ……カッカッカッ! そうだ! そういうことだルーナ!」
「……なんでこの二人は逆境に立たされれば立たされるほど、こんなに元気になるんだろう」
前向きというか、追い詰められたこの状況を楽しんでいるというか、ホント羨ましい性格だよな。
僕なんてさっきから、ずっと冷や冷やしっぱなしだというのに。
「ええ! アイツまだ追いかけてくるの!? しかもあの見た目で素早いだなんて……」
さっきまで元気満点だったルーナも、さすがにさっきのギリギリのバイクアクションで疲れ切ったのか、マジスターのその言葉にげんなりしていた。
「あともう少しの辛抱だ! わしらには止まっている時間などひと時も無い! いくぞっ!」
言い切ると、マジスターはアクセルを回して、再び僕達の先を走り始めた。
「……ねえコヨミ、あの人わたし達よりも絶対年上よね?」
「ああ、遥かに上だろうな」
「なんであんなに元気があるのかしら……?」
「さあ……」
それは僕だって知りたいところだ。
正直ブラースティよりも、あのオッサンの方が化物なんじゃないのかと疑ってしまう。
本当に元気の良いオッサンだよ。
「まっ、あんな怪物に食べられるよりかは、もうちょっと体に鞭打って逃げた方がマシよね。もうひと踏ん張りいくわよ!」
「おう! じゃあ運転よろしく~」
「いいわよね、アンタは乗ってるだけだから……」
「乗ってるだけでも十分疲れるよ……」
「ちぇっ……いつかこの埋め合わせ、してもらうわよ!」
「……まっ僕の気が向いたらね」
「気が向かずとも埋め合わせしなさいよっ!」
ルーナはアクセルを入れ、エンジンを鳴らし、再出発する。
巨大な一枚岩、エトワール・ロックを半周するこの洞窟は全てあのブラースティ一体が作ったようで、他に同種類の魔物が潜んでいる雰囲気は無い。
なんだかあいつにトンネル工事をさせたら、交通網なんかがもっと発達しそうなものだが、いかんせん魔物だからな。その前に人間が食われてしまうか。
そんなことを、バイクの後部座席に座りながらふと考えていると、そのブラースティがバイクのエンジン音を聞きつけ、僕達が背後に逃げ込んだことに気がついたのか、再び吠えると、何故か両腕を挙げて、その爪を洞窟の天井に思いっ切り刺し込んだのだ。
「なっ! アイツ天井によじ登ってるの!?」
ルーナはブラースティの姿をミラー越しに見ながら、驚愕する。
それもそのはず、ブラースティは背中をくの字に曲げ、両腕を右へ左へ動かしながら、吸盤状になっている胴体を徐々に天井にくっつけていき、逆さ状態になったのだ。
更にその逆さ状態のまま、両手の爪をスキーで使うストックのように天井に刺し込みながら、前へ前へ僕達を追いかけ始めた。
「ああ……そういえばマジスターが、あの魔物は天井に張り付いて眠るとか言ってたな。そういうことか」
「なに呑気に頷いてるのよ! なんかアイツ、どんどん加速してきてるじゃない!」
ルーナの言う通り、ブラースティの天井を這う速度はどんどんと加速し始め、僕達との間を詰め始めた。
「壁にくっつきながらあんな動きができるなんて……いやぁ、びっくりだ」
「だーかーらぁっ! なんでアンタはそんなに落ち着いてるのよっ!」
「いやだって……僕が焦っても、僕が運転してるわけじゃないんだからさ」
「キイイイイッ! こっちは必至で運転してるのに、そうやって後ろでくつろがれると無性に腹が立つのよっ!!」
「と言われてもなぁ……それにルーナ、多分アイツは僕達に追いつけないよ」
「なんでそんな無責任なことが言い切れるのよ!」
「だってほら、アイツとの距離がそんなに変わらなくなってきてるもん」
そう、最初は距離を詰めてきたブラースティだったが、しかしその最高速度はどうやらバイクの方が勝っているようで、僕達との間はこれ以上詰まらず、一定を保つので精一杯といったところだった。
これこそまさに、人間の文明の勝利といったところだろうか。とにもかくにも、これ以上の距離が縮まらないとなると、あとはこのまま洞窟を突っ切れば僕達の勝利は約束されたようなものなのだ。
それが分かった上で、僕は安堵していたのだ。
「ホントだ……距離が縮まるどころか、むしろ少しずつだけど離れてきてるわね」
「まあ相手は魔物と言っても生物だからね。体力も無尽蔵じゃないだろうし、走り疲れるだろうさ」
「な~んだ、振り切れば案外大した相手じゃなかったってことね!」
安全が分かった時、人はどうしても油断をしてしまう。僕もルーナも、まさにその時油断し、余裕をかましていた。
だが一人、戦いにおいて経験豊富な老戦士だけはそれを見逃していなかった。
「むっ! ルーナ! 今すぐ右側に移動しろっ! 早くっ!!」
前からマジスターが、鬼気迫る表情で声を荒げる。
「えっ? 右? でも前には何も無いけど……」
「早くしろっ!! ブラースティが何かしてくるぞっ!!」
僕が振り返って確認すると、マジスターの言う通りブラースティは天井を這いながら、口の部分をもごもごしていた。
そして次の瞬間、そのもごもご動かしていた口から、ブラースティは青紫色の液体を弾丸のように勢いよく、口から発射してきたのだ。
「あっぶなっ!」
ルーナはマジスターの忠告に従い、右にハンドルを切っていたので、なんとか飛んできた液体を避け切ることができた。
的を外した液体は洞窟の地面に落下したのだが、瞬間、液体は洞窟の岩の地面を溶かし始めたのだ。
「な……なんだあの液体! 地面を溶かしやがった!」
「ブラースティめ……溶解液を噴出してきおったか。やつは巣穴を掘る時、爪で掘りながら邪魔な岩を溶解液で溶かすんだ。モチロン、逃げようとする獲物にも液を噴出して、溶かして動けないところを捕食するらしいが」
「つまりアイツは、僕達を捕らえて食う気満々ってことなのか……」
「まあ、あいつにとってわしらは、巣穴に自ら入って来てくれた餌だからな。しかもいつも食べてる吸血コウモリが食パンなら、人間ともなるとオードブルくらいの価値があるだろうよ」
「なによ魔物のくせにオードブルなんて生意気な! 食パンだってジャムとか塗ったら美味しくなるじゃないっ!」
「いやルーナ、わしが言ってるのは例えなのだが……」
「とにもかくにも! アイツのご飯にならないように前進あるのみってことでしょっ!?」
「ふ……カッカッカッ! そうだ! そういうことだルーナ!」
「……なんでこの二人は逆境に立たされれば立たされるほど、こんなに元気になるんだろう」
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