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THE GROUND ZERO Chapter2
第8章 血を喰らう怪物【3】
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「ええ、マジスターさんまた逃げる気なの!?」
そう言って不服そうにしているのは、正面衝突に最も乗り気だったルーナだった。
「ルーナ、マジスターの指示に従おう。こんな所で長々と時間を潰しちゃったら、それこそレジスタンスの奴らが追って来てしまう。あの魔物と戦って消耗した状態じゃ、僕達に勝ち目どころか逃げる目も無くなってしまう」
「むう……でも仕方ないわね。せっかく魔物相手にハーミットの力を試せるチャンスだと思ってたけど」
「え……ルーナって魔物と戦ったこと無いの?」
「無いわよ。だから残念って言ってるんじゃない」
「戦ったことも無いのに、あんなに自信満々にしてたのかっ!?」
「むしろ戦ったことが無いから、あんなに自信満々でいられたのよ!」
「め……目茶苦茶だ……」
一体どこからそんな無尽蔵に自信が湧いて出てくるのか……愚かさを通り越して、むしろ清々しいくらいだ。
その性格が羨ましく思えてくるよ、本当に。
「コヨミ、その右手に持ってる短剣、さっさとしまって! 今までよりもしっかり、わたしに体を固定させて! 早くっ!」
「えっ!? わ……分かった!」
ルーナに言われた通り、僕は手近な懐に短剣を仕舞い込み、ルーナに体を密着させて、両腕を彼女の腰にしっかり固定する。
今までで彼女に最も近づいている気がする……マズイ、こんな状況なのに胸の高鳴りを感じて……。
「よっしゃ行くわよ! 振り落とされないようにしなさいっ!」
「えっ? ……ぎゃああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
瞬間、ルーナは猛スペードで直進していたバイクのブレーキを作動させ、一気にスピードを落としながら車体を横向きに滑らせる。
地面と足との間の距離はわずか数センチ。多分擦れただけで、皮膚が持っていかれるだろう。それほどまでに速度が出ている。
「しまったブレーキを切る判断が遅れたわ! これじゃスピードを殺しきれない!」
バイクはどんどんと横滑りしたままブラースティに近づいていく。
奴もそれに気がついたのか、まるで待ち受けるかのように幾万ほどの牙のある大口を開いて、僕達を丸呑みしようとする体勢に入る。
まさに絶体絶命。
「こうなったら……一か八かっ!」
車体は横滑りしたまま、ついにブラースティの口元まで接近したその刹那!
「いっけえええええええええええええっっ!!!」
ルーナは雄叫びと共に、バイクのアクセルを全開に回し込む。
すると後輪がエンジンの駆動音と共に、タイヤと地面が擦れて、まるで悲鳴のような音を出しながら一気に回転し始めたのだ。
後輪が回転しながら、ブラースティの丁度唇であろう部分と接触。直後、その急激な回転によって発生する摩擦で、その唇の皮を削ぎ、内部の肉の部分まで一気に削り取ったのだ。
「ルギュルオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
摩擦によって削られた部分からは血液が噴出し、ブラースティは咆哮しながらその大口を僕達の方から遠ざける。
そしてバイクはというと、ブラースティとの接触でカーブができるほどまでスピードを落としきり、横に倒れそうになっていた車体が一気に真っ直ぐ進み始めたのだった。
「し……し……死ぬかと思った…………」
「ふふ……さすがのわたしも、これはマズいって思ったけど、なんとか上手くいったわね……」
もうなんだか、色々と出し尽くして満身創痍みたいな感じになっているが、しかしまだ危機を脱したわけではない。
「一気にこの化物の横を突っ切るわよ!」
「ああ……もうなんでもいいから、さっさと僕を休ませてくれ……」
「アンタ乗ってるだけじゃない……わたし運転してるのよ?」
「いいじゃん楽しそうだから。僕まったく楽しくないもん」
「わがままな子供かアンタは……ほら、また曲がるからしっかり掴まっときなさい!」
「はーい」
バイクは先程のように、倒れそうになるほど傾くことはなかったが、再び横にスライドし、そして難なく滑ることも無く、方向を切り返すことができた。
ブラースティの側方にはバイクが一台通り抜けられそうな空間が広がっており、僕達はそこを真っ直ぐに突っ切っていく。
「しかしでっかいわねこの魔物……」
ルーナの言う通り、体高だけでも四メートル前後とありそうなブラースティだが、しかし体長に至っては十五メートルをゆうに越していそうなほど長く、まさに巨大生物と言うにふさわしいほどの魔物だった。
「これだけ大きい相手となると、まともに相手にしなくて正解だったかもしれないわね」
「おいおい……さっきまで正面突破する気満々だったルーナさんはどこに行ったんだよ?」
「そのルーナさんなら、さっきお帰りになったわ。わたしこそ正真正銘、本物のルーナよ」
「自分の誤った判断を覆すために、別人格まで形成するなよ……」
「……アンタ誰? なんでわたしのバイクに乗ってるの?」
「記憶まで消そうとするなっ!」
瞬時に新しい人格を形成したり、記憶喪失になったり……どれだけ都合の良い頭の構造になってるんだよ。
器用すぎるだろ。
「まったく……他人のミスをいつまでもネチネチ……そんなんじゃ女の子にモテないわよ? アンタモテたこと無いでしょ?」
「…………」
「あっ……なんかゴメン……」
「うるせぇっ! 僕だって全盛期は……全盛期はぁ……」
「はいはい、昔のことずっと引きずってたら、次には進めないわよ?」
「ぐうう……なんで僕が諭されなければならないんだ……」
敵と戦ってもいないのに、味方から思わぬ精神的な反撃を受けたところで、バイクはブラースティの側面を抜け出し、やつの体が届かない安全地帯へと脱していた。
「ルーナ! コヨミ! 大丈夫だったか!」
先にブラースティを振り切っていたマジスターが、バイクを止めて僕達を待っていてくれた。
「ええ、なんとかね!」
「食われかけたけどね……」
「カッカッカッ!! まあなんとか生き残れたのだし、よかったよかった!」
相変わらずといった感じで、マジスターは豪快に笑ってみせる。
この妙に耳に残る笑い声がまたも聞けれたことにより、僕は今、生きていることを実感する。
といってもまだ、真後ろに敵がいる状態。安心はできないか。
そう言って不服そうにしているのは、正面衝突に最も乗り気だったルーナだった。
「ルーナ、マジスターの指示に従おう。こんな所で長々と時間を潰しちゃったら、それこそレジスタンスの奴らが追って来てしまう。あの魔物と戦って消耗した状態じゃ、僕達に勝ち目どころか逃げる目も無くなってしまう」
「むう……でも仕方ないわね。せっかく魔物相手にハーミットの力を試せるチャンスだと思ってたけど」
「え……ルーナって魔物と戦ったこと無いの?」
「無いわよ。だから残念って言ってるんじゃない」
「戦ったことも無いのに、あんなに自信満々にしてたのかっ!?」
「むしろ戦ったことが無いから、あんなに自信満々でいられたのよ!」
「め……目茶苦茶だ……」
一体どこからそんな無尽蔵に自信が湧いて出てくるのか……愚かさを通り越して、むしろ清々しいくらいだ。
その性格が羨ましく思えてくるよ、本当に。
「コヨミ、その右手に持ってる短剣、さっさとしまって! 今までよりもしっかり、わたしに体を固定させて! 早くっ!」
「えっ!? わ……分かった!」
ルーナに言われた通り、僕は手近な懐に短剣を仕舞い込み、ルーナに体を密着させて、両腕を彼女の腰にしっかり固定する。
今までで彼女に最も近づいている気がする……マズイ、こんな状況なのに胸の高鳴りを感じて……。
「よっしゃ行くわよ! 振り落とされないようにしなさいっ!」
「えっ? ……ぎゃああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
瞬間、ルーナは猛スペードで直進していたバイクのブレーキを作動させ、一気にスピードを落としながら車体を横向きに滑らせる。
地面と足との間の距離はわずか数センチ。多分擦れただけで、皮膚が持っていかれるだろう。それほどまでに速度が出ている。
「しまったブレーキを切る判断が遅れたわ! これじゃスピードを殺しきれない!」
バイクはどんどんと横滑りしたままブラースティに近づいていく。
奴もそれに気がついたのか、まるで待ち受けるかのように幾万ほどの牙のある大口を開いて、僕達を丸呑みしようとする体勢に入る。
まさに絶体絶命。
「こうなったら……一か八かっ!」
車体は横滑りしたまま、ついにブラースティの口元まで接近したその刹那!
「いっけえええええええええええええっっ!!!」
ルーナは雄叫びと共に、バイクのアクセルを全開に回し込む。
すると後輪がエンジンの駆動音と共に、タイヤと地面が擦れて、まるで悲鳴のような音を出しながら一気に回転し始めたのだ。
後輪が回転しながら、ブラースティの丁度唇であろう部分と接触。直後、その急激な回転によって発生する摩擦で、その唇の皮を削ぎ、内部の肉の部分まで一気に削り取ったのだ。
「ルギュルオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
摩擦によって削られた部分からは血液が噴出し、ブラースティは咆哮しながらその大口を僕達の方から遠ざける。
そしてバイクはというと、ブラースティとの接触でカーブができるほどまでスピードを落としきり、横に倒れそうになっていた車体が一気に真っ直ぐ進み始めたのだった。
「し……し……死ぬかと思った…………」
「ふふ……さすがのわたしも、これはマズいって思ったけど、なんとか上手くいったわね……」
もうなんだか、色々と出し尽くして満身創痍みたいな感じになっているが、しかしまだ危機を脱したわけではない。
「一気にこの化物の横を突っ切るわよ!」
「ああ……もうなんでもいいから、さっさと僕を休ませてくれ……」
「アンタ乗ってるだけじゃない……わたし運転してるのよ?」
「いいじゃん楽しそうだから。僕まったく楽しくないもん」
「わがままな子供かアンタは……ほら、また曲がるからしっかり掴まっときなさい!」
「はーい」
バイクは先程のように、倒れそうになるほど傾くことはなかったが、再び横にスライドし、そして難なく滑ることも無く、方向を切り返すことができた。
ブラースティの側方にはバイクが一台通り抜けられそうな空間が広がっており、僕達はそこを真っ直ぐに突っ切っていく。
「しかしでっかいわねこの魔物……」
ルーナの言う通り、体高だけでも四メートル前後とありそうなブラースティだが、しかし体長に至っては十五メートルをゆうに越していそうなほど長く、まさに巨大生物と言うにふさわしいほどの魔物だった。
「これだけ大きい相手となると、まともに相手にしなくて正解だったかもしれないわね」
「おいおい……さっきまで正面突破する気満々だったルーナさんはどこに行ったんだよ?」
「そのルーナさんなら、さっきお帰りになったわ。わたしこそ正真正銘、本物のルーナよ」
「自分の誤った判断を覆すために、別人格まで形成するなよ……」
「……アンタ誰? なんでわたしのバイクに乗ってるの?」
「記憶まで消そうとするなっ!」
瞬時に新しい人格を形成したり、記憶喪失になったり……どれだけ都合の良い頭の構造になってるんだよ。
器用すぎるだろ。
「まったく……他人のミスをいつまでもネチネチ……そんなんじゃ女の子にモテないわよ? アンタモテたこと無いでしょ?」
「…………」
「あっ……なんかゴメン……」
「うるせぇっ! 僕だって全盛期は……全盛期はぁ……」
「はいはい、昔のことずっと引きずってたら、次には進めないわよ?」
「ぐうう……なんで僕が諭されなければならないんだ……」
敵と戦ってもいないのに、味方から思わぬ精神的な反撃を受けたところで、バイクはブラースティの側面を抜け出し、やつの体が届かない安全地帯へと脱していた。
「ルーナ! コヨミ! 大丈夫だったか!」
先にブラースティを振り切っていたマジスターが、バイクを止めて僕達を待っていてくれた。
「ええ、なんとかね!」
「食われかけたけどね……」
「カッカッカッ!! まあなんとか生き残れたのだし、よかったよかった!」
相変わらずといった感じで、マジスターは豪快に笑ってみせる。
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といってもまだ、真後ろに敵がいる状態。安心はできないか。
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