英雄のいない世界で

赤坂皐月

文字の大きさ
65 / 149
THE GROUND ZERO Chapter4

第12章 破皇の再臨【4】

しおりを挟む
「でもマジスター……そんな何百年も前からある剣が、あの爆発に耐えられるのかな?」

 そう、僕はあの未曽有の大爆発をこの目で直に見て、そしてその爆発が残した惨状を今も見ている。

 一つの要塞どころか、マグナブラ荒野の象徴であるエトワール・ロックの半分を丸ごと消し去ったほどの脅威。その脅威に、たった一本の、しかも何百年も昔から存在する剣が耐え抜けるとは、現実的に考えたら不可能である。

 例えそれが、伝説の剣と呼ばれていようともだ。 
 
「さあどうだろうな……現実的に考えれば無理だろうが、しかしこの世界には、現実と同じ分だけ奇跡もある。それにああなったルーナを止めるのは、いくらわしでも無理だぞ?」

 そう言ったマジスターの指さす方向を見ると、誰よりも先に太陽の剣を探し始めたルーナの姿が、随分と小さくなるまで離れてしまっていた。

 そうと決めたら真っ直ぐに突っ込んで行く……ホント猪みたいな子だな。

「そうだね……マジスターが無理なら、僕も止めれないよ。というか僕の場合、止めたら返り討ちを食らいそうだ……」

「カッカッカッ! じゃあ決まりだな!」

「二人ともなにボケっと突っ立ってるのよっ! ほら探す探すっ!」

 遠くからルーナの叱咤する声が聞こえ、僕達は彼女の背を追うため、その場から歩み始めた。

『フン、やっと探す気になったか人間よ』

 しばらく聞こえなかったライフ・ゼロだと名乗る者からの声が、再び聞こえてきた。

(別に僕はお前をまだ、ライフ・ゼロだと認めたわけじゃないからな)

『キッキッ……うぬがどう思おうが構わん』

(えらい余裕だな)

『うぬが何と言おうと、我がライフ・ゼロだという現実は変わらんからな。うぬが我を見つけた時、あっと驚くであろう』

(ドッキリっていうのは、正体不明のモノが現れたりするから驚くのであって、僕は仮にもお前の正体が分かっちゃってるから、そこまで驚かないぞ)

『おやおや、それは残念だ』

 どこまでも余裕綽々しゃくしゃくの様子な上、僕を弄んでくるライフ・ゼロ……だと思われる声。

 半信半疑であるとはいえ、もしコイツが本当にライフ・ゼロだったとしても、僕はそこまで驚かないだろう。

 しかしそれは、その正体が分かっているからではない。その余裕から、態度から、言ってしまえば声からも、凄味というか、只者ではないという威圧感のようなものを感じるからだ。

 だが、何故コイツは僕のことを『同類』だと言ったのだろうか……僕は大魔王でも無ければ、魔物ですらないというのに。

 その真意とは……。

「ちょっと、コヨミ!」

 僕がライフ・ゼロとの会話を終えて、考えに更けていると、右耳の方から超至近距離でルーナの怒鳴り声が、僕の鼓膜を突き破るかのように飛んできた。

「うわっっ!!? な……なんだビックリしたぁ!!」

「ビックリしたぁ……っじゃないわよっ!! ずっっっっとぼけーっとしてて!! 探す気あるの!?」

「あるよ。だけど今は、その探してくれって言ってきた依頼主と話してたんだよ」

「話してたって……そのライフなんとかっていう人の声が聞こえてきたってこと?」

「ライフ・ゼロだよ……ゼロよりなんとかの方が文字数多いのに……」

「名前なんかその内覚えるからいいのよ! それよりアンタ、今もその人と話せれるの?」

「え? まあ大丈夫だと思うけど……」

「それだったらその人に、今周りの風景が見えるかどうか訊いてみてよ」

「風景が? なんで?」

「だってアンタが言うには、その人その剣の中に封印されてるんでしょ? だったら外の風景が見えれば、剣のある位置の手掛かりが掴めるじゃない」

「ああ、なるほど」

 確かに良いアイデアかもしれない。

 僕はルーナの指示通り、ライフ・ゼロ……だと思われるやつを、こちらから呼び出してみることにした。

(おい、聞こえてるか?)

『……うぬ、人間の分際で我を馴れ馴れしく呼び出すな』

(お前は僕を呼びだしてくるくせに、文句言うなよな……)

『フン……して、なにようだ?』

(お前、周りに何か見えるか?)

『周り? 周りというのは、外のことか?』

(そうだ。何か手掛かりになるような物が見えたりしないか?)

『ちと待て』

 それから僅か数秒ほど待ち、再び声が聞こえてきた。

『うむ……どうやら若干、我の力が降ってきた巨大な魔力により回復しているようだ。以前までは剣の外側などまったく見えなかったのだが、今はしかと見えたぞ……が、しかし』

(しかし?)

『うむ、見えぬ』

(見えないだって? さっきは剣の外側が見えるって言ってたじゃないか)

『剣の外側は見える……が、その剣自体がどうやら、真っ暗な場所かあるいは何かの下敷きになってしもうて、何も見えん』

(まさかあの爆風で、どこか遠くに吹き飛んだとか!?)

『そうかもしれんが、しかしうぬとこうして念波で会話ができている以上、そう遠くには飛んでないはずだ……むむっ!』

(今度は何だ?)

『僅かだが、光が見える。横に筋のような光が……どうやらこの剣は、何かの下敷きになってしまってるようだな』

 何かの下敷きか……そういえば僕らがバイクを止めた場所にも、爆発の影響で崩れた岩がいくつか転がってたな。

 多分それらの落石の、どれかの下敷きになっちまっているということなのだろうが、しかし無数というほどではないにしろ、バイクを止めた場所とそれ以外の場所にも多くの岩が転がっていたため、それら全てを根こそぎ調べ尽くすには、膨大な時間が掛かってしまう。

 もう少しはっきりとした情報が欲しいところだが……。

『む……んん?』

(今度はどうした?)

『いや、光の先に何か見える』

(本当か!? どんなものだ?)

『どんなものか……残念だが我には説明できん……』

(説明できないだと?)

『あれは我の知らぬ物だ。しかもそれが二つもある』

(う~ん……どんな形をしているかくらいは説明できないか?)

『注文の多い人間だな……そうだな……馬車よりも小さい、車輪が二つくっついている物だ。一つが黒くて、もう一つが……なんだあれは? シマシマと言えばよかろうか?』

(車輪が二つで、一つが黒で、もう一つがシマシマ!? そうか! 分かったぞ場所が!)

 もしこの声の主が本当にライフ・ゼロであって、本当に太陽の剣に封印されているのであれば、どうやら捜索するまでも無いほど、僕達の至近距離に太陽の剣は落ちていたようだ。 

 まさに伝説の剣を手にする千載一遇のチャンスではあるが、しかしそれを見つけることは、その伝説自体が偽りだったという証明にもなってしまうわけだ。

 そして僕達は認めなければならない……ライフ・ゼロがまだこの世にいるという事実を。

 なんて皮肉な話なんだろうな……ホントによくできた話だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん
ファンタジー
「攻撃力ゼロのポーターなんて、配信の邪魔なんだよ!」  3年尽くしたパーティから、手切れ金の1万円と共に追放された探索者・天野蓮(アマノ・レン)。  絶望する彼が目にしたのは、ダンジョン深層で孤立し、「お腹すいた……」と涙を流すS級美少女『氷姫』カグヤの緊急生放送だった。  その瞬間、レンの死にスキルが真の姿を見せる。  目的地と受取人さえあれば、壁も魔物も最短距離でブチ抜く神速の移動スキル――【絶対配送(デリバリー・ロード)】。 「お待たせしました! ご注文の揚げたてコロッケ(22,500円)お届けです!」  地獄の戦場にママチャリで乱入し、絶品グルメを届けるレンの姿は、50万人の視聴者に衝撃を与え、瞬く間に世界ランク1位へバズり散らかしていく!  一方、彼を捨てた元パーティは補給不足でボロボロ。 「戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう知らん。俺は、高ランク冒険者の依頼で忙しいんだ!

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

勘違いで召喚して来たこの駄女神が強引すぎる 〜ふざけたチートスキルで女神をボコしながら冒険します〜

エレン
ファンタジー
 私は水無月依蓮《みなづきえれん》、どこにでもいる普通の女子高生だ。  平穏な生活を送っていた私は、ある日アルテナと名乗る女神に召喚されてしまう。  厨二臭いその女神が言うには、有給休暇で異世界冒険したいから、従者としてついて来なさいとの事。  うん、なんだその理由は。  異世界なんて興味ない、とっとと私を元の場所に返せ。  女神を殴ったり踏みつけたりしてやっと返してもらえるかと思いきや。  え? 勝手に人間を異世界に呼ぶのは天界の掟で禁止? バレたら私も消される?  ふざけるなー!!!!  そんなこんなで始まる私とポンコツ女神アルテナのドタバタ異世界冒険。  女神が貴族をハゲさせたり、「器用貧乏・改」と言うふざけたスキルを習得したり、ゴブリンの棲家に突撃する羽目になったり、手に入れた家が即崩壊したり、色々起きるけど全てを乗り切って見せる。 全ては元の世界に帰るために!!

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

処理中です...