英雄のいない世界で

赤坂皐月

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THE GROUND ZERO Chapter4

第13章 荒野の決戦【7】

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「悦に浸るのはまだ早いわよ。こっからが難関なんだから」

 そんな浮かれる僕に対して、冷静を貫くルーナ。
 
 確かにルーナの言う通り、ここからが最後にして最難関の場面だ。ここから僕達は、ブラースティの背中にバイクごと乗っかり、そして太陽の剣をヤツの体に刺し込まなければならない。

 一歩間違えれば危険どころか、即死しかねないような、そんな命知らずの所業。肩の力を落とすには、まだ早い。

「そうだ、こっからだよな……ルーナ、できそうか?」

「できるできないじゃない、ここまで来たらやるしかないでしょ!」

「……ああそうだ! やるしかない!」

 僕は両手で自分の頬を二回叩き、気合を入れ直す。そうだ、もうここまで来たならやるしかない!

 マジスターだって、たった一人で目の前の化物を引きつけるために頑張ってるんだし、それにブラースティを今僕達が止めなければ、マグナブラの多くの住人が犠牲となる。

 たった一体の魔物の暴走を止められなくて、なにが世界を破壊するだ……ここでやれなきゃ、ロクヨウ・コヨミの男が廃るっ!

『キッキッ、熱くなっておるところ水を差してすまんが』

 すると再び、ライフ・ゼロの声が聞こえてきた。

(なんだよ。今僕は精神統一をしているところなんだ)

『雑用ではない、有用なことだ。少なくとも、うぬの精神統一よりかはな?』

(チッ……それで?その有用なことってのは何だよ?)

『うむ、今思い出したことなのだが、あの魔物から何か虹色の光の膜のような物が出てないか?』

(虹色の光の膜ぅ?)

 僕は目を凝らして見てみる。しかしそんな膜のようなものはまったく見当たらず、見えるのはブラースティの無駄にデカい尻の部分だけだった。

(無さそうだけど)

『んん? そうか……念のため、ヤツに攻撃を与えることはできるか?』

(できるにはできるけど、その虹色の膜ってのは何なんだよ?)

『百聞は一見に如かず。とりあえずやってみろ』

(教えてくれたっていいじゃないか……たく……) 

 やれやれ……本当にわがままな魔王様なことだな。かつて手下だった魔物達はさぞ、苦労しただろうな。

 僕はかつての魔王様に言われるがまま、胸の部分にあるCQCホルスターから拳銃を引き抜き、とりあえずどこを狙えばいいのか分からないので、サイトを覗いて、ブラースティの尻の中心部分に照準を合わせた。

「えっ? 銃で攻撃するつもり?」
  
 ルーナが僕に訊いてくる。

「ああ、ライフ・ゼロがやれって」

「ええっ! せっかく気づかれずに背後に回れたのに、攻撃したら見つかる可能性があるじゃない!」

「そんなこと僕に言われても……」

 確かにルーナの言う通り、もし下手に攻撃を加えたら、ブラースティに僕達の存在がばれてしまう。

 そうなってしまっては、これまでの苦労が全て水泡と化す……本当にいいのか、攻撃して……?

『キッキッ……我の見立てにおそらく狂いはない。案ずるなとルーナに伝えよ』

(僕をスポークスマンとして使おうとするなよ!)

『うぬにしかできんことだ。伝えよ』

(ちぇっ……)

 わがままで人遣いの荒い魔王様だ……まったく。

「ライフ・ゼロが『我の見立てに狂いはない、案ずるな』だとさ」

「案ずるなって……」

「まあ何かあるんだろうさ。やってみる価値はある」

「随分と楽観的ね……」

「こういう時、どんなに悩んだってどうせ解決には至らない。頭が痛くなるだけさ」

 ここ数日で僕が得た教訓といえば、まさにこの一言に尽きる。

 僕は自分の中の迷いを全て取り払い、銃の引き金トリガーを引いた。

 撃鉄ハンマーが倒れると、爆裂音が鳴り響き、弾丸は確かに勢い良く、狙い通り真っ直ぐに発射されたはずだったが……しかし弾は、ブラースティに届くことは無かった。

 それは距離が離れていたからとか、回避されたからとか、そういう原因ではない。僕の撃った弾丸は、ブラースティの手前で一瞬の閃光を放つと、次の瞬間、完全に消滅してしまったのだ。

「な……なんだこれは……」

 僕は目の前の光景に、呆然自失してしまう。

 眼前で一体何が起こってしまったのか、さっぱり理解できなかった。

『キッキッキッ……やはり張られておったか魔防壁が』

(魔防壁……?)

 ライフ・ゼロの声が聞こえてくる。その声はどこか、得意げな感じの声色だった。

『フフン、魔防壁というのは強い魔力を持った魔物なら誰しもが使える、一種の技のようなものだ。体の周囲に自分の魔力を使用し、魔力の膜のような壁を作りだし、自分の方に向かってくる魔法や物質を消滅させることができる』

(消滅させる……弾丸が消えたのはそのせいなのか!?)

『間違いなくな。しかしヤツの場合、魔防壁を使っているというよりかは、体から強力な魔力が漏れ出して、できてしまっているというのが正解だろうな。強力な魔防壁なら、肉眼でも見ることができるからな』

(それでさっき虹色の膜が見えるか訊いてきたのか)

『そういうことだ。良かったな我の言うことをしっかり聞いておいて。もし聞いておかねばあの玉っころのように、うぬらが消滅しておったぞ?』

(考えるだけでも背筋が凍りそうだ……それでライフ・ゼロ、それだけ余裕綽々しゃくしゃくに言ってるってことは、何か攻略方法があるってことだよな?)

『なんだうぬ、嫌に冷静だな?』

(嫌にって……もう僕達には、狼狽うろたえている時間も残されてないからね)

『キッキッ、まあよい……策はモチロンある。魔防壁だって所詮は魔力だ。だったら吸い上げてしまえばよい』

(吸い上げる……ライフドレインか!)

『そうだ、幸いヤツの魔防壁は薄っぺらい。剣が魔防壁に刺されば、吸い上げることは容易だろう。しかし……』

(しかし……何だよ?)

『魔防壁は吸い上げたところで、その魔物の持つ魔力が空にならなければ、魔防壁はすぐに修復される。だから剣を前方に突きたてながら、一気にそのバイクとやらで突進するのが良かろう』

(そうか……分かった!)

 僕は拳銃をCQCホルスターに仕舞い込み、そして左腰に下げている青い鞘から白銀の剣を引き抜き、そして前方に突きたてた。
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