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BACK TO THE OCEAN Chapter1
第17章 星空の下【1】
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「………………」
前回までのあらすじ……僕達はマンハットの車を脱輪の危機から救ったとして、そのお礼に食事をご馳走してもらうことになり、星が瞬く夜空の下、楽しい食事会が始まる……はずだったのだが。
「ねえルーナ、これなに?」
僕らがマンハットから手渡されたのは、よく分からない乾燥したような物が色々と入ったカップだった。
それは僕が、二十四年間培ってきた経験の中で初めて見た物体であり、とてもじゃないが料理とは思えないものであり、これが料理なら仕方ないと食べようとしたら、マンハットにお湯が沸くまで待つようにと、もったいぶられた、まさに未知の物体であった。
「わたしも知らないわよ、こんな物。ねえマジスターさんは知ってる?」
「わしも知らん……ライフ・ゼロは?」
「我が人間の食い物など知るわけなかろう! なんせ何百年と封印されておったのだからな」
「結局全員知らないのかよ……」
もはや心配を通り越して、恐怖すら湧き起こってきそうだ。
大丈夫……なのだろうけれど、しかし知らない物体を、いざ自分の口の中に入れるというのには、どうしても抵抗してしまう。
ここまで来るのに、多くの死地を乗り越えて来れたのに、最終的には得体の知らないものを食べた結果、ポックリ逝ってしまったなんてことになったら、もはや笑い話にしかならない。
まあ……死んだら笑うこともできないんだけど。
「ははは、そんなに皆さん心配なさらずとも、僕はこれでここ数日はしのいでますから大丈夫ですよ」
そう言ってマンハットは、シングルバーナーというものを使って沸かしたお湯を、その得体の知れない物の入ったカップの中に入れていく。
「すいません、用意していたのがこのバーナーだけだったので、一気に五人分は沸かせないんですよね。お湯を入れてから三分経ったら完成しますので、できた物から食べてください」
それからボトルに入った水を小さい鍋のようなものに入れ、またシングルバーナーで湯を沸かし始めるマンハット。
三分経ったらって……三分経ったらあの得体の知れない、カッサカサの物が食べれるようになるとでも言うのか?
それこそまさに、魔法じゃないか。
しかし夜もだいぶ深まり、お腹ペコペコの僕達……目の前の物が食べれる物であるのならば、それを食べないと餓死してしまう。
もうすぐ三分が経過しようとした、その時だった。
「ねえ、最初誰が食べるのよ?」
それはルーナの、思いがけない一言が発端だった。
そう、もう少しで得体の知れない食べ物、その第一号が完成しようとしている。しかしそれを食べることができるのは、たった一人。
最初の……所謂生贄をこの中から選ぶ必要があった。
「………………」
沈黙の中、マンハットを外した僕達四人は互いを睨み合う……そしてっ!
「「「「ジャンケンポンッ!!」」」」
不意に始まったジャンケン勝負で負けた、最初の犠牲者は……。
「ぐ……ぬううううううううううっ!! 我が……我が負けたああああああああっ!!」
拳を握ったまま、ライフ・ゼロは絶叫する。
ちなみに勝った僕達は全員、掌をパッと開いていた。
「我が人間如きにジャンケンで負けるなぞ……我が敗北を喫するなど……にぎゃあああああああああっ!!」
しかしその絶叫は、得体の知れない食べ物を食べることに対しての絶叫ではなく、ただジャンケンに負けたことに対しての、悔しさからきた絶叫だった。
どんだけ負けず嫌いなんだよ……。
「うるさいわっ!」
「うわっ!」
僕は直接、ライフ・ゼロに面と向かって怒鳴られてしまった。
おそらくいつものように、僕の考えていることを聞いたのだろう。怒鳴るくらいなら、聞かなければいいものを。
「ほらゼロ、負けたんだから先に食べなさいよ」
そう言ってルーナは、お湯を入れて三分経った、一応完成品となっているらしいカップをゼロの前に差し出す。
「あっ負けた人が食べるんだ……どうやら皆さん、相当警戒されてるみたいですね。いやはや……」
この光景にマンハットも、さすがにガッカリまではしなかったものの、苦笑いをしていた。
そりゃあ人からご馳走してもらった物をこんな形で押し付け合うなんて、普通なら失礼過ぎる行為だ。
しかしいくらご馳走してもらったからと言って、そこで得体の知れない物を差し出されたら、食べる側が警戒してしまうのは、至極当然のことだろう。
しかも今回の場合は、ただ見知らぬ物というわけではなく、それが何なのかすら理解できない物なのだから、余計こちらとしては、口にするのに抵抗感を感じてしまう。
それでもまあ、せっかくの厚意をこんな形にしてしまっているのだから、すまないなマンハットさん……と、僕は心の内でそっと謝罪しておくことにした。
「ぐうう……おい、うぬ」
「なんだライフ・ゼロ」
僕はいつもの調子で答える。
「もし我が死んだら、その灰は海にばら撒け」
「……そんな面倒臭いこと、僕がすると思うか?」
確かこのやり取り、以前にもライフ・ゼロとやった気がする。
その時は確か、立場が逆だったと思うけれど。
「チッ……このたわけがっ!」
そんなことを吐き捨てるように言って、ライフ・ゼロはついに食べる覚悟を決めたのか、フォークを握り、カップの蓋を思いっ切り開けてみせた。
一体中には、どんな得体にしれない物が入っているのやら……と思いきや、しかし蓋の先にあったのは、先程までの乾燥した謎の物体が入っていたのとは異なり、その中には赤いスープに浸された、細い麺のような物が入っていた。
どうやら乾燥した塊はお湯を吸ったことによって、細い麺のようになり、更にそのお湯は何かしらの影響でスープとなったのだろう。
匂いからするに……トマトスープだろうか?
ついさっきまで食べることを恐れていたのに、この中身を見ると、この匂いを嗅ぐと、急に空腹が更に激しくなり、お腹がグルグル音をたて始めた。
多分それはライフ・ゼロも同じだったのか、蓋を開けるまでの勢いは無くなり、普通に麺をフォークに絡めて、それをモグモグと食べ始めた。
「……うむ」
それだけ言って、更に食べ進めるライフ・ゼロ。
パンと水の時はいつも、とろとろのんびり食べているライフ・ゼロだったが、しかしこれに関しては反応が違う。
バクバク、モグモグ、次々と食べ進めていき、スープまでグビグビ飲み干して、いつの間にか完食していた。
「うむ」
空になったカップを地面に置き、食べ始めた時と同じことを言うライフ・ゼロ。
そして更に、料理の感想を付け足した。
「マズイ」
「えっ?」
僕はその言葉に、拍子抜けしてしまう。
今までの反応と感想が、言ってることとやってることが、あまりにも相違していたからだ。
「マズいって……でもゼロ、それ食べ切ってるじゃない?」
そんな誰もが今思っているだろうことを、空になったカップを指差して代弁してくれたのは、ルーナだった。
「うむ……我は魔王だからな。その……どんな物でも食べれるよう、体がそうなっておる。だからどんなにマズいものでも、平然と食べれてしまうのだ」
「そうなの? でもその割には、パンを食べる時いつも遅いじゃない?」
「むむ……えっと……そうっ! 別に食べれるだけで、早食いができるわけではないからな! キ……キキッキッ!」
ルーナの疑いを上手く掻い潜ったとでも思っているのだろうか、ライフ・ゼロはいつもとは異なる、ぎこちない笑い声を発していた。
これがかつての魔王なのか……色々と下手過ぎるだろ。言い訳も嘘も。
しかし何故こんな嘘を吐くのだろうか……しかしその疑問は、この後のライフ・ゼロの言動で明らかとなった。
前回までのあらすじ……僕達はマンハットの車を脱輪の危機から救ったとして、そのお礼に食事をご馳走してもらうことになり、星が瞬く夜空の下、楽しい食事会が始まる……はずだったのだが。
「ねえルーナ、これなに?」
僕らがマンハットから手渡されたのは、よく分からない乾燥したような物が色々と入ったカップだった。
それは僕が、二十四年間培ってきた経験の中で初めて見た物体であり、とてもじゃないが料理とは思えないものであり、これが料理なら仕方ないと食べようとしたら、マンハットにお湯が沸くまで待つようにと、もったいぶられた、まさに未知の物体であった。
「わたしも知らないわよ、こんな物。ねえマジスターさんは知ってる?」
「わしも知らん……ライフ・ゼロは?」
「我が人間の食い物など知るわけなかろう! なんせ何百年と封印されておったのだからな」
「結局全員知らないのかよ……」
もはや心配を通り越して、恐怖すら湧き起こってきそうだ。
大丈夫……なのだろうけれど、しかし知らない物体を、いざ自分の口の中に入れるというのには、どうしても抵抗してしまう。
ここまで来るのに、多くの死地を乗り越えて来れたのに、最終的には得体の知らないものを食べた結果、ポックリ逝ってしまったなんてことになったら、もはや笑い話にしかならない。
まあ……死んだら笑うこともできないんだけど。
「ははは、そんなに皆さん心配なさらずとも、僕はこれでここ数日はしのいでますから大丈夫ですよ」
そう言ってマンハットは、シングルバーナーというものを使って沸かしたお湯を、その得体の知れない物の入ったカップの中に入れていく。
「すいません、用意していたのがこのバーナーだけだったので、一気に五人分は沸かせないんですよね。お湯を入れてから三分経ったら完成しますので、できた物から食べてください」
それからボトルに入った水を小さい鍋のようなものに入れ、またシングルバーナーで湯を沸かし始めるマンハット。
三分経ったらって……三分経ったらあの得体の知れない、カッサカサの物が食べれるようになるとでも言うのか?
それこそまさに、魔法じゃないか。
しかし夜もだいぶ深まり、お腹ペコペコの僕達……目の前の物が食べれる物であるのならば、それを食べないと餓死してしまう。
もうすぐ三分が経過しようとした、その時だった。
「ねえ、最初誰が食べるのよ?」
それはルーナの、思いがけない一言が発端だった。
そう、もう少しで得体の知れない食べ物、その第一号が完成しようとしている。しかしそれを食べることができるのは、たった一人。
最初の……所謂生贄をこの中から選ぶ必要があった。
「………………」
沈黙の中、マンハットを外した僕達四人は互いを睨み合う……そしてっ!
「「「「ジャンケンポンッ!!」」」」
不意に始まったジャンケン勝負で負けた、最初の犠牲者は……。
「ぐ……ぬううううううううううっ!! 我が……我が負けたああああああああっ!!」
拳を握ったまま、ライフ・ゼロは絶叫する。
ちなみに勝った僕達は全員、掌をパッと開いていた。
「我が人間如きにジャンケンで負けるなぞ……我が敗北を喫するなど……にぎゃあああああああああっ!!」
しかしその絶叫は、得体の知れない食べ物を食べることに対しての絶叫ではなく、ただジャンケンに負けたことに対しての、悔しさからきた絶叫だった。
どんだけ負けず嫌いなんだよ……。
「うるさいわっ!」
「うわっ!」
僕は直接、ライフ・ゼロに面と向かって怒鳴られてしまった。
おそらくいつものように、僕の考えていることを聞いたのだろう。怒鳴るくらいなら、聞かなければいいものを。
「ほらゼロ、負けたんだから先に食べなさいよ」
そう言ってルーナは、お湯を入れて三分経った、一応完成品となっているらしいカップをゼロの前に差し出す。
「あっ負けた人が食べるんだ……どうやら皆さん、相当警戒されてるみたいですね。いやはや……」
この光景にマンハットも、さすがにガッカリまではしなかったものの、苦笑いをしていた。
そりゃあ人からご馳走してもらった物をこんな形で押し付け合うなんて、普通なら失礼過ぎる行為だ。
しかしいくらご馳走してもらったからと言って、そこで得体の知れない物を差し出されたら、食べる側が警戒してしまうのは、至極当然のことだろう。
しかも今回の場合は、ただ見知らぬ物というわけではなく、それが何なのかすら理解できない物なのだから、余計こちらとしては、口にするのに抵抗感を感じてしまう。
それでもまあ、せっかくの厚意をこんな形にしてしまっているのだから、すまないなマンハットさん……と、僕は心の内でそっと謝罪しておくことにした。
「ぐうう……おい、うぬ」
「なんだライフ・ゼロ」
僕はいつもの調子で答える。
「もし我が死んだら、その灰は海にばら撒け」
「……そんな面倒臭いこと、僕がすると思うか?」
確かこのやり取り、以前にもライフ・ゼロとやった気がする。
その時は確か、立場が逆だったと思うけれど。
「チッ……このたわけがっ!」
そんなことを吐き捨てるように言って、ライフ・ゼロはついに食べる覚悟を決めたのか、フォークを握り、カップの蓋を思いっ切り開けてみせた。
一体中には、どんな得体にしれない物が入っているのやら……と思いきや、しかし蓋の先にあったのは、先程までの乾燥した謎の物体が入っていたのとは異なり、その中には赤いスープに浸された、細い麺のような物が入っていた。
どうやら乾燥した塊はお湯を吸ったことによって、細い麺のようになり、更にそのお湯は何かしらの影響でスープとなったのだろう。
匂いからするに……トマトスープだろうか?
ついさっきまで食べることを恐れていたのに、この中身を見ると、この匂いを嗅ぐと、急に空腹が更に激しくなり、お腹がグルグル音をたて始めた。
多分それはライフ・ゼロも同じだったのか、蓋を開けるまでの勢いは無くなり、普通に麺をフォークに絡めて、それをモグモグと食べ始めた。
「……うむ」
それだけ言って、更に食べ進めるライフ・ゼロ。
パンと水の時はいつも、とろとろのんびり食べているライフ・ゼロだったが、しかしこれに関しては反応が違う。
バクバク、モグモグ、次々と食べ進めていき、スープまでグビグビ飲み干して、いつの間にか完食していた。
「うむ」
空になったカップを地面に置き、食べ始めた時と同じことを言うライフ・ゼロ。
そして更に、料理の感想を付け足した。
「マズイ」
「えっ?」
僕はその言葉に、拍子抜けしてしまう。
今までの反応と感想が、言ってることとやってることが、あまりにも相違していたからだ。
「マズいって……でもゼロ、それ食べ切ってるじゃない?」
そんな誰もが今思っているだろうことを、空になったカップを指差して代弁してくれたのは、ルーナだった。
「うむ……我は魔王だからな。その……どんな物でも食べれるよう、体がそうなっておる。だからどんなにマズいものでも、平然と食べれてしまうのだ」
「そうなの? でもその割には、パンを食べる時いつも遅いじゃない?」
「むむ……えっと……そうっ! 別に食べれるだけで、早食いができるわけではないからな! キ……キキッキッ!」
ルーナの疑いを上手く掻い潜ったとでも思っているのだろうか、ライフ・ゼロはいつもとは異なる、ぎこちない笑い声を発していた。
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