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BACK TO THE OCEAN Chapter1
第17章 星空の下【2】
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「だからこんなマズイものは我が処分しよう! そうしよう! 我からの慈悲だと思って感謝をするが良い! では手始めにうぬのから……」
誰も頼んでいないことを自己完結させ、ライフ・ゼロはすっと、僕の目の前にあるカップに手を伸ばしてくる。
なるほど……さっきまでの下手な嘘、コイツそういう魂胆だったのか。
マズいのではなく、美味かった。だからあえて嘘の感想を言って、僕達から二杯目三杯目を手に入れようとした、ということか。
姑息なことをしやがる。
だから僕は、ヤツの手が僕のカップに辿り着くや否や、蓋の上に手を乗せ、押さえつけて固定し、取れないようにしてやった。
「お前……僕のこと嫌いなんじゃないのか? そんな気遣い、嫌いなやつにする必要無いだろう?」
自分で自分の表情を見ることはできないが、しかし多分今の僕は、すごく黒い笑みを浮かべているのだろう。
口元が自然と、にやついてしまう。
自分のことをサディストだとは思ったことは無いが、しかしこの時ばかりは、もしかしたらそういう傾向が僕にもあるのかもしれないと、少し自分を疑ってしまった。
「ぐ……ぬぬ……フンッ! そうだ! うぬなど嫌いだっ! じゃあルーナは……」
ライフ・ゼロはむっとした表情でそんな捨て台詞を吐いてから、僕のカップから手を離し、今度はルーナの方へ手を回す。
だがルーナも僕と同様、カップの上に手を置いて、ライフ・ゼロから横取りされるのを阻止した。
「大丈夫よゼロ。わたし案外、好き嫌いは少ないから?」
「うにに……そ……そうかそうか! 好き嫌いが少ないことは良いことだ! ではマジスター……」
ルーナには捨て台詞は吐かなかったものの、しかし苦笑いと悔しさを織り交ぜた、なんとも言えない表情をライフ・ゼロはしてみせ、そして今度こそとばかりに、マジスターの方に振り返ったが、しかし彼はもう既に、ライフ・ゼロの手が伸びる前にカップの上に手を置いていた。
「ライフ・ゼロ……余裕があれば分けてやっても良かったが、わしも限界でな」
「ぬうううううううううううっっ!! うぬらっ! 我はマズいと言っておるのに、何故急にそんな心変わりしとるのだあああああああっ!!!」
全員から否定され、抑えていた感情を大爆発させるかのようにして、ライフ・ゼロは座ったまま、その悔しさを全身で表すように、手足をバッタバッタと動かし始めた。
その姿はまさに、我がままを言って親を困らせる子供そのものだった。
「ははは、そうかぁ、そんなに口に合わなかったかぁ~」
するとマンハットは、そんな暴走状態のライフ・ゼロの元に歩み寄り、そして自分の分のカップをそっとヤツに差し出した。
「マズくてもよかったら僕の分をどうぞ。僕はパンだけで十分だから」
「え……そ……そうか? むむ……その……ありがたい」
瞬時に手足を止め、そう呟くように言うと、ライフ・ゼロはマンハットから差し出されたカップを受け取り、もう返さないぞと言わんばかりに、それを抱きかかえた。
そんなライフ・ゼロの姿を見て、マンハットは今まで聞いてきた中で、最も大きな笑い声をあげた。
「ははは! どうやらそれなりに気に入ってもらえたようだ!」
それからシングルバーナーで沸かしたお湯をルーナに、そして僕に、それからマジスターで、最後がまたライフ・ゼロにといった順番でカップに注いでいく。
ルーナが美味しい美味しいと言い続けながら食べている間、僕は三分耐え、そしてついに、その時がやって来た。
「よしっ! いただきま~す!」
フォークで麺を巻き、そしてそれを僕は、躊躇無く口へと運んでいく。
「うおっ! 美味いっ!」
お湯を入れる前の乾物とは思えないほど麺はモチモチしており、少し縮れているお蔭で麺がスープに絡み付き、程よくトマトスープの味を楽しめることができる。
一体何なんだ、この魔法のような食べ物は?
「これは僕と数人の練魔術師で、研究をする時とかに、手軽に食事を取るために、半分趣味のような感じで作ったものなんだ。僕達はこれを片手間の食事と名付けたんだ」
マンハットは一人、パンをかじりながら言う。
「片手間の食事……しかしこれが趣味で作った物って……普通に売り出せるくらい、クオリティが高いじゃないか」
「まあ、自分で言うのもなんだけど、確かにコイツはクオリティが高い。でもマグナブラでは、そういう生産工場を建てるにはそれなりに面倒な手続きがあってね……それにこれは僕達の、あくまで趣味だったからね」
「なるほど……」
「コイツに僕達の技術を注ぎ込んでいる時は、それは楽しかった……それこそ、仕事を忘れることができるくらいに。練魔術とは本来、僕達人類をより豊かにするために、賢者が編み出した技術なんだ。でも……人間は強欲だから、それだけでは収まりが利かない……」
そう言い切ったマンハットの表情には、影が差していた。
プライベートでも白衣を着用し、趣味でも片手間の食事なんて物を作りだすほど、練魔術に没頭している彼が、そのメインである仕事を忘れたくなる……ということか。
彼がマグナブラを出た理由は、その仕事にあるのかもしれない……僕はそう推測し、そして思い切ってマンハットに直接、訊いてみることにした。
「……マンハットさん、アンタは一体、マグナブラでどんな研究をしていたんだ?」
「僕は……魔石機構の研究をしていたんだ。最初は魔石発電施設第四高炉の建造のために」
「魔石発電施設第四高炉……確か、第三高炉がレジスタンスに襲撃された後、その後釜になるために作られた、新しい発電所だっけ」
「そう……なんだけど、第四高炉の建造に関しては、実は襲撃がある前からもう決定していたんだ。だから僕は、その魔石高炉の開発を進めていた……んだけど」
「だけど?」
「魔石高炉は今や既存技術だからね。その縮小化にそこまで手間取ることは無かった。開発の目途が着いたところで、僕はその後、兵団の兵器開発局へと回されたんだ」
「なるほど……そこで作ったのがマテリアルガントレットだったってわけか」
僕はそれで納得がいったのだが、しかしマンハットは首を横に振った。
「いや……そうじゃない。確かにそれを作るのも仕事の内には入っていたが、しかしそれは僕が既に開発した、超小型魔石機構の技術を流用することですぐに形にはなった」
「はあ……」
なんというか……マンハットの話を聞けば聞くほど、彼がどれだけ優れた人間かが分かってしまう。
彼のような人間を、本当の天才っていうんだろうな。
しかしそんな天才が苦悩したこととは一体、何なのだろうか?
「僕が兵器開発部に入ってメインで任されていたのは……超小型の反対、大型の魔石機構の開発だったんだ」
「大型の?」
「ああ、しかもただ大きくすれば良いというものじゃない。従来の魔石機構には無いほどに、魔石の力を最大限に引き出すことのできる魔石機構を開発せよとの御達しだった。僕はそれが、新たな兵器に使われるという情報だけを知らされて開発を行い、そしてそれは完成した」
「魔石の力を最大限に……もしやっ!!?」
すると突如、そこまでマンハットの話を黙って聞いていたマジスターが反応し、食いついてきた。
「マンハット術師、アンタが兵器開発局で開発していたメインの物とは……元素爆弾……ではないか?」
「なっ!? げ……元素爆弾をっ!!」
元素爆弾……マグナブラ荒野に存在する一枚岩、エトワール・ロックの半分を吹き飛ばし、そして多くのレジスタンスの人間を、本拠地であるユスティーツフォートごと無に葬り去った、最強にして最悪の兵器。
あれを作ったのが……片手間の食事という美味い飯を作り、僕が右腕に装備している、マテリアルガントレットを作った人間と同じ……だというのか?
誰も頼んでいないことを自己完結させ、ライフ・ゼロはすっと、僕の目の前にあるカップに手を伸ばしてくる。
なるほど……さっきまでの下手な嘘、コイツそういう魂胆だったのか。
マズいのではなく、美味かった。だからあえて嘘の感想を言って、僕達から二杯目三杯目を手に入れようとした、ということか。
姑息なことをしやがる。
だから僕は、ヤツの手が僕のカップに辿り着くや否や、蓋の上に手を乗せ、押さえつけて固定し、取れないようにしてやった。
「お前……僕のこと嫌いなんじゃないのか? そんな気遣い、嫌いなやつにする必要無いだろう?」
自分で自分の表情を見ることはできないが、しかし多分今の僕は、すごく黒い笑みを浮かべているのだろう。
口元が自然と、にやついてしまう。
自分のことをサディストだとは思ったことは無いが、しかしこの時ばかりは、もしかしたらそういう傾向が僕にもあるのかもしれないと、少し自分を疑ってしまった。
「ぐ……ぬぬ……フンッ! そうだ! うぬなど嫌いだっ! じゃあルーナは……」
ライフ・ゼロはむっとした表情でそんな捨て台詞を吐いてから、僕のカップから手を離し、今度はルーナの方へ手を回す。
だがルーナも僕と同様、カップの上に手を置いて、ライフ・ゼロから横取りされるのを阻止した。
「大丈夫よゼロ。わたし案外、好き嫌いは少ないから?」
「うにに……そ……そうかそうか! 好き嫌いが少ないことは良いことだ! ではマジスター……」
ルーナには捨て台詞は吐かなかったものの、しかし苦笑いと悔しさを織り交ぜた、なんとも言えない表情をライフ・ゼロはしてみせ、そして今度こそとばかりに、マジスターの方に振り返ったが、しかし彼はもう既に、ライフ・ゼロの手が伸びる前にカップの上に手を置いていた。
「ライフ・ゼロ……余裕があれば分けてやっても良かったが、わしも限界でな」
「ぬうううううううううううっっ!! うぬらっ! 我はマズいと言っておるのに、何故急にそんな心変わりしとるのだあああああああっ!!!」
全員から否定され、抑えていた感情を大爆発させるかのようにして、ライフ・ゼロは座ったまま、その悔しさを全身で表すように、手足をバッタバッタと動かし始めた。
その姿はまさに、我がままを言って親を困らせる子供そのものだった。
「ははは、そうかぁ、そんなに口に合わなかったかぁ~」
するとマンハットは、そんな暴走状態のライフ・ゼロの元に歩み寄り、そして自分の分のカップをそっとヤツに差し出した。
「マズくてもよかったら僕の分をどうぞ。僕はパンだけで十分だから」
「え……そ……そうか? むむ……その……ありがたい」
瞬時に手足を止め、そう呟くように言うと、ライフ・ゼロはマンハットから差し出されたカップを受け取り、もう返さないぞと言わんばかりに、それを抱きかかえた。
そんなライフ・ゼロの姿を見て、マンハットは今まで聞いてきた中で、最も大きな笑い声をあげた。
「ははは! どうやらそれなりに気に入ってもらえたようだ!」
それからシングルバーナーで沸かしたお湯をルーナに、そして僕に、それからマジスターで、最後がまたライフ・ゼロにといった順番でカップに注いでいく。
ルーナが美味しい美味しいと言い続けながら食べている間、僕は三分耐え、そしてついに、その時がやって来た。
「よしっ! いただきま~す!」
フォークで麺を巻き、そしてそれを僕は、躊躇無く口へと運んでいく。
「うおっ! 美味いっ!」
お湯を入れる前の乾物とは思えないほど麺はモチモチしており、少し縮れているお蔭で麺がスープに絡み付き、程よくトマトスープの味を楽しめることができる。
一体何なんだ、この魔法のような食べ物は?
「これは僕と数人の練魔術師で、研究をする時とかに、手軽に食事を取るために、半分趣味のような感じで作ったものなんだ。僕達はこれを片手間の食事と名付けたんだ」
マンハットは一人、パンをかじりながら言う。
「片手間の食事……しかしこれが趣味で作った物って……普通に売り出せるくらい、クオリティが高いじゃないか」
「まあ、自分で言うのもなんだけど、確かにコイツはクオリティが高い。でもマグナブラでは、そういう生産工場を建てるにはそれなりに面倒な手続きがあってね……それにこれは僕達の、あくまで趣味だったからね」
「なるほど……」
「コイツに僕達の技術を注ぎ込んでいる時は、それは楽しかった……それこそ、仕事を忘れることができるくらいに。練魔術とは本来、僕達人類をより豊かにするために、賢者が編み出した技術なんだ。でも……人間は強欲だから、それだけでは収まりが利かない……」
そう言い切ったマンハットの表情には、影が差していた。
プライベートでも白衣を着用し、趣味でも片手間の食事なんて物を作りだすほど、練魔術に没頭している彼が、そのメインである仕事を忘れたくなる……ということか。
彼がマグナブラを出た理由は、その仕事にあるのかもしれない……僕はそう推測し、そして思い切ってマンハットに直接、訊いてみることにした。
「……マンハットさん、アンタは一体、マグナブラでどんな研究をしていたんだ?」
「僕は……魔石機構の研究をしていたんだ。最初は魔石発電施設第四高炉の建造のために」
「魔石発電施設第四高炉……確か、第三高炉がレジスタンスに襲撃された後、その後釜になるために作られた、新しい発電所だっけ」
「そう……なんだけど、第四高炉の建造に関しては、実は襲撃がある前からもう決定していたんだ。だから僕は、その魔石高炉の開発を進めていた……んだけど」
「だけど?」
「魔石高炉は今や既存技術だからね。その縮小化にそこまで手間取ることは無かった。開発の目途が着いたところで、僕はその後、兵団の兵器開発局へと回されたんだ」
「なるほど……そこで作ったのがマテリアルガントレットだったってわけか」
僕はそれで納得がいったのだが、しかしマンハットは首を横に振った。
「いや……そうじゃない。確かにそれを作るのも仕事の内には入っていたが、しかしそれは僕が既に開発した、超小型魔石機構の技術を流用することですぐに形にはなった」
「はあ……」
なんというか……マンハットの話を聞けば聞くほど、彼がどれだけ優れた人間かが分かってしまう。
彼のような人間を、本当の天才っていうんだろうな。
しかしそんな天才が苦悩したこととは一体、何なのだろうか?
「僕が兵器開発部に入ってメインで任されていたのは……超小型の反対、大型の魔石機構の開発だったんだ」
「大型の?」
「ああ、しかもただ大きくすれば良いというものじゃない。従来の魔石機構には無いほどに、魔石の力を最大限に引き出すことのできる魔石機構を開発せよとの御達しだった。僕はそれが、新たな兵器に使われるという情報だけを知らされて開発を行い、そしてそれは完成した」
「魔石の力を最大限に……もしやっ!!?」
すると突如、そこまでマンハットの話を黙って聞いていたマジスターが反応し、食いついてきた。
「マンハット術師、アンタが兵器開発局で開発していたメインの物とは……元素爆弾……ではないか?」
「なっ!? げ……元素爆弾をっ!!」
元素爆弾……マグナブラ荒野に存在する一枚岩、エトワール・ロックの半分を吹き飛ばし、そして多くのレジスタンスの人間を、本拠地であるユスティーツフォートごと無に葬り去った、最強にして最悪の兵器。
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