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BACK TO THE OCEAN Chapter1
第17章 星空の下【4】
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「あの男が……そうか、これで全てが僕の中で繋がったよ……」
「な……何がだよ?」
僕はマンハットに、恐る恐る訊き返す。
それもそのはず、マンハットは今までの穏やかな表情とは異なり、憎しみを色濃くした暗い表情を浮かべ、両手には力一杯の拳が握られていた。
「あの男なんだよ……元素爆弾の計画を立案し、そしてレジスタンスへ向けて使用許可を出したのは」
「セブルスが……」
「ああ、立案の頃はまだ、あの男が中枢管理委員会の長官になったばかりの時だったけど、もうその頃には、グリードが王国の実権の多くを握っている時だったから、その時からあの二人は癒着していたんだろう」
「ということは、そんな前から既に、全ての計画は仕組まれていたということなのか!?」
「おそらくはね。王を暗殺し、グリードを王国のトップに上げ、自分は大臣の座に着き、王族暗殺の罪を着せたレジスタンスを、元素爆弾で口封じする……そういう筋書きだろう。あの男なら……やりかねない」
「マンハット、あんたセブルスのことを知っているのか?」
「知っているというほどではないが、あの男とは何度か計画の打合せの際に顔を合わせている。その時から只者じゃないって雰囲気はあったけど、それを僕の中で決定づけたのは、マグナブラの小隊がレジスタンスに壊滅させられたあの時だった」
「あの時か……」
マグナブラとレジスタンスの兵が、最初で最後の正面衝突を起こしたあの戦い。
そして……僕の後輩、ジョンが戦死したあの戦い。
「あの戦いが起こった後、あの男は兵器開発局にすぐやって来て、まだ実験途中の魔石機構を、突然使用すると言い出したんだ。まだ僕はその時、作っている物が元素爆弾として使われることを知らなかったから、思わぬ緊急事態にただ愕然としながら、その指示に従ってたんだけど、今やっとあの男の全ての狙いが分かったよ……」
マンハットは握っていた拳の力を抜き、そして一息吐いてから、再びその場に座り直した。
「ごめんコヨミ君、話を逸らしてしまったね」
「いや、いいんだ。アンタも僕と同じってことが再確認できたから」
「同じ? 僕と?」
「ああ……僕もセブルスに……王を暗殺した罪を着せられて、国を追われたんだ」
「罪を……着せられた? 君が?」
「表上では僕は、王を暗殺するためにレジスタンスを手引きしたってことになっている……だけど本当はセブルスがギルワード王の首を刎ね、その首を僕は見せられ、あの場で王族もろとも、殺されるところだったんだ」
「そう……なのか……君もあの男に、一杯食わされたんだね。しかも王の暗殺の罪だなんて……滅茶苦茶だ……」
マンハットには、僕の言っていることを疑る様子は無かった。
なんせ僕は罪人として追われている身、セブルスは一国の国防大臣……僕かアイツか、どちらが怪しいかと問われれば、普通なら間違いなく僕が怪しいと判断されるだろう。
しかしマンハットは知っている。セブルスの中に渦巻く、漆黒の闇を。
あの男の腹の黒さを知っているから、僕のことを信じてくれているのだろう。
この人なら……僕も信用できそうだ。同じ立場に立たされた人間として。
「マンハットさん……僕達の仲間になってくれないか?」
「えっ? 僕が?」
マンハットは僕の突然の申し出に、目を丸くしていたが、しかし僕は続ける。
「確かに僕達にはまだ成果が無い。ただの理想しか語れない、ありきたりな集団だ。だけどアンタのその技術があれば、僕達はどんな相手とも対等に渡り合い、十分な成果を得ることができるようになるはずだ」
「…………」
「それにアンタ、この片手間の食事の話をした時に言ったじゃないか? 『練魔術とは本来、僕達人類をより豊かにするために、賢者が編み出した技術なんだ』ってさ。それがアンタが持つ、自分の思想……意思なんだろ?」
「……ああ、そうだ。練魔術は人類を滅ぼすためにあるんじゃない。人類に新たな進化を与えるために作られたもの……僕はそう信じたいと思っている」
「しかしアンタは作ってしまった。意図知れず、人類を滅ぼす可能性のある兵器を」
「それは……そうだ……」
「だからその過ちを、アンタの意思で潰すんだ。いや、アンタの意思でしか潰すことはできない!」
「僕の意思で……」
マンハットは自分の中の考えを巡らせるようにして、そう一言呟く。
するとそこに、マジスターがマンハットに向けて、追い打ちをかけるように頭を下げ、乞い願った。
「わしからも頼むマンハット術師! アンタの技術を是非、わし達に分け与えてくれ!」
「わ……わたしからもお願いします!」
そう言って、マジスターの後に、ルーナもその場で頭を下げた。
「み……皆さん」
「僕達も全力でアンタの意思の実現に力を貸す。だからマンハットさんお願いだ! 僕達の力になってくれ!」
そして僕もみんなと同様、マンハットに頭を下げた。
こんなに必死になって頭を下げたのは多分、生まれて初めてだったかもしれない。
しかしそれだけ、僕達には彼が必要だった。彼の能力では無く、彼自身が必要だったから。
「わ……分かりましたから、顔を上げてください!」
マンハットの焦るような声が聞こえ、頭を上げてみると、彼はふうと一息ついて、両肩を落としていた。
「コヨミ君の言う通り、僕は大きな過ちを侵してしまった。そしてそれから目を背けて、逃げようともした……しかしやはり、自分の過ちをそのままにしておくわけにはいかない。自分の蒔いた種は、自分で摘み取るしかない……」
「ああ……僕達も協力するよ。その摘み取る作業を」
「そうか……ありがとう。ふふ、これで僕も、今日から狼だ」
「嫌われ者だけどな?」
「大丈夫だよ、いつかは好かれる時が来るさ」
「そうなればいいんだけどな」
そんな日が来るのは果たしていつだろうかと、僕が物思いに更けると……。
「……そうだそうだ! 良いことを思いついたぞっ!」
そんなシリアスムード全開の中で、今までずっと黙り込んでいたライフ・ゼロが突如声をあげた。
しかもこれまた、このムードには相応しくない、喜々とした声を。
「……なんだよライフ・ゼロ、その良いことって?」
「我らが人間どもを手懐ける方法だっ! この飯を大量に作って、世界中の人間に分け与えれば、きっと人間どもは我らに服従するだろう!」
ライフ・ゼロは空になった片手間の食事のカップを握って、目を光らせながら堂々とそんなことを言ってみせた。
「はあ……お前……」
僕はその、ライフ・ゼロの空気の読めていない発言に大きな溜息を吐いたのだが、しかしそれを聞いてマンハットは吹き出し、そして大笑いをし始めたのだ。
「はははははっ!! いやぁ~その発想は無かった! 確かにイメージ戦略としては効果テキメンだろうね!」
「キッキッキッ! そうだろ?そうだろ?」
「かか……カッカッカッ! 実に良い方法を考えついたなライフ・ゼロ!」
「そうか? そうか? もっと我を褒めよっ! キッキッキッキッ!!」
いつの間にかマジスターも参加し、褒められ、上げられ、よいしょされ、ライフ・ゼロは鼻高々と、有頂天になっちゃっていた。
もうこうなったらシリアスもクソも無い……せっかく僕が珍しく格好良くキメていたのに、その全てをライフ・ゼロが根こそぎかっさらっていってしまった。
でもまあ……これで僕達にまた、頼れる仲間が一人増えたというわけだ。
練魔術師。しかも彼は多才な上に、天才だ。
彼がいるだけで僕達は、お世辞ではなく本当に、世界と渡り合える技術力を手にしたと言っても、過言では無いだろう。側溝に嵌った車を助けただけで、これだけの戦力を得れたのは、まさに棚から牡丹餅だ。
そして彼の参戦によって、僕達の戦いにもより目的が増した。元素爆弾の根絶、廃棄。
おそらくこの先、元素爆弾の存在が明るみになれば、暁の火の本拠地があるバルマヒルが、それを黙って見過ごすわけがないだろう。
必ず同等か、それ以上の物を作りだし、そしてそれはやがて、世界中に拡散していく。
強いモノは誰だって、自分の手中に収めようとするものだ。それこそ、現代兵器が世界に拡散していったように。
だからその拡散を、僕達で止める。止めてみせる。
これはマンハットの意思でもあり、そして僕達も、その恐怖を目の当たりにした者として、二度と使用されないよう、あの爆弾をこの世から葬り去る権利があり、義務がある。
もしかしたら、暁の火を滅ぼすより長い時間が掛かってしまうかもしれない。いや……それ以上に、この先の人類の、永遠の悩みの種となっていくかもしれない。
しかし僕達の未来に、あの爆弾は必要の無いものだ。必要の無いものは自然、淘汰されなければならない。
そうなるよう、必要のない物だと世界に仕向けるため、僕達は戦い続ける。呼び続ける。
そしてそれを世界が認めた時、初めて僕達は、嫌われ者で無くなるのかもしれないな……。
「な……何がだよ?」
僕はマンハットに、恐る恐る訊き返す。
それもそのはず、マンハットは今までの穏やかな表情とは異なり、憎しみを色濃くした暗い表情を浮かべ、両手には力一杯の拳が握られていた。
「あの男なんだよ……元素爆弾の計画を立案し、そしてレジスタンスへ向けて使用許可を出したのは」
「セブルスが……」
「ああ、立案の頃はまだ、あの男が中枢管理委員会の長官になったばかりの時だったけど、もうその頃には、グリードが王国の実権の多くを握っている時だったから、その時からあの二人は癒着していたんだろう」
「ということは、そんな前から既に、全ての計画は仕組まれていたということなのか!?」
「おそらくはね。王を暗殺し、グリードを王国のトップに上げ、自分は大臣の座に着き、王族暗殺の罪を着せたレジスタンスを、元素爆弾で口封じする……そういう筋書きだろう。あの男なら……やりかねない」
「マンハット、あんたセブルスのことを知っているのか?」
「知っているというほどではないが、あの男とは何度か計画の打合せの際に顔を合わせている。その時から只者じゃないって雰囲気はあったけど、それを僕の中で決定づけたのは、マグナブラの小隊がレジスタンスに壊滅させられたあの時だった」
「あの時か……」
マグナブラとレジスタンスの兵が、最初で最後の正面衝突を起こしたあの戦い。
そして……僕の後輩、ジョンが戦死したあの戦い。
「あの戦いが起こった後、あの男は兵器開発局にすぐやって来て、まだ実験途中の魔石機構を、突然使用すると言い出したんだ。まだ僕はその時、作っている物が元素爆弾として使われることを知らなかったから、思わぬ緊急事態にただ愕然としながら、その指示に従ってたんだけど、今やっとあの男の全ての狙いが分かったよ……」
マンハットは握っていた拳の力を抜き、そして一息吐いてから、再びその場に座り直した。
「ごめんコヨミ君、話を逸らしてしまったね」
「いや、いいんだ。アンタも僕と同じってことが再確認できたから」
「同じ? 僕と?」
「ああ……僕もセブルスに……王を暗殺した罪を着せられて、国を追われたんだ」
「罪を……着せられた? 君が?」
「表上では僕は、王を暗殺するためにレジスタンスを手引きしたってことになっている……だけど本当はセブルスがギルワード王の首を刎ね、その首を僕は見せられ、あの場で王族もろとも、殺されるところだったんだ」
「そう……なのか……君もあの男に、一杯食わされたんだね。しかも王の暗殺の罪だなんて……滅茶苦茶だ……」
マンハットには、僕の言っていることを疑る様子は無かった。
なんせ僕は罪人として追われている身、セブルスは一国の国防大臣……僕かアイツか、どちらが怪しいかと問われれば、普通なら間違いなく僕が怪しいと判断されるだろう。
しかしマンハットは知っている。セブルスの中に渦巻く、漆黒の闇を。
あの男の腹の黒さを知っているから、僕のことを信じてくれているのだろう。
この人なら……僕も信用できそうだ。同じ立場に立たされた人間として。
「マンハットさん……僕達の仲間になってくれないか?」
「えっ? 僕が?」
マンハットは僕の突然の申し出に、目を丸くしていたが、しかし僕は続ける。
「確かに僕達にはまだ成果が無い。ただの理想しか語れない、ありきたりな集団だ。だけどアンタのその技術があれば、僕達はどんな相手とも対等に渡り合い、十分な成果を得ることができるようになるはずだ」
「…………」
「それにアンタ、この片手間の食事の話をした時に言ったじゃないか? 『練魔術とは本来、僕達人類をより豊かにするために、賢者が編み出した技術なんだ』ってさ。それがアンタが持つ、自分の思想……意思なんだろ?」
「……ああ、そうだ。練魔術は人類を滅ぼすためにあるんじゃない。人類に新たな進化を与えるために作られたもの……僕はそう信じたいと思っている」
「しかしアンタは作ってしまった。意図知れず、人類を滅ぼす可能性のある兵器を」
「それは……そうだ……」
「だからその過ちを、アンタの意思で潰すんだ。いや、アンタの意思でしか潰すことはできない!」
「僕の意思で……」
マンハットは自分の中の考えを巡らせるようにして、そう一言呟く。
するとそこに、マジスターがマンハットに向けて、追い打ちをかけるように頭を下げ、乞い願った。
「わしからも頼むマンハット術師! アンタの技術を是非、わし達に分け与えてくれ!」
「わ……わたしからもお願いします!」
そう言って、マジスターの後に、ルーナもその場で頭を下げた。
「み……皆さん」
「僕達も全力でアンタの意思の実現に力を貸す。だからマンハットさんお願いだ! 僕達の力になってくれ!」
そして僕もみんなと同様、マンハットに頭を下げた。
こんなに必死になって頭を下げたのは多分、生まれて初めてだったかもしれない。
しかしそれだけ、僕達には彼が必要だった。彼の能力では無く、彼自身が必要だったから。
「わ……分かりましたから、顔を上げてください!」
マンハットの焦るような声が聞こえ、頭を上げてみると、彼はふうと一息ついて、両肩を落としていた。
「コヨミ君の言う通り、僕は大きな過ちを侵してしまった。そしてそれから目を背けて、逃げようともした……しかしやはり、自分の過ちをそのままにしておくわけにはいかない。自分の蒔いた種は、自分で摘み取るしかない……」
「ああ……僕達も協力するよ。その摘み取る作業を」
「そうか……ありがとう。ふふ、これで僕も、今日から狼だ」
「嫌われ者だけどな?」
「大丈夫だよ、いつかは好かれる時が来るさ」
「そうなればいいんだけどな」
そんな日が来るのは果たしていつだろうかと、僕が物思いに更けると……。
「……そうだそうだ! 良いことを思いついたぞっ!」
そんなシリアスムード全開の中で、今までずっと黙り込んでいたライフ・ゼロが突如声をあげた。
しかもこれまた、このムードには相応しくない、喜々とした声を。
「……なんだよライフ・ゼロ、その良いことって?」
「我らが人間どもを手懐ける方法だっ! この飯を大量に作って、世界中の人間に分け与えれば、きっと人間どもは我らに服従するだろう!」
ライフ・ゼロは空になった片手間の食事のカップを握って、目を光らせながら堂々とそんなことを言ってみせた。
「はあ……お前……」
僕はその、ライフ・ゼロの空気の読めていない発言に大きな溜息を吐いたのだが、しかしそれを聞いてマンハットは吹き出し、そして大笑いをし始めたのだ。
「はははははっ!! いやぁ~その発想は無かった! 確かにイメージ戦略としては効果テキメンだろうね!」
「キッキッキッ! そうだろ?そうだろ?」
「かか……カッカッカッ! 実に良い方法を考えついたなライフ・ゼロ!」
「そうか? そうか? もっと我を褒めよっ! キッキッキッキッ!!」
いつの間にかマジスターも参加し、褒められ、上げられ、よいしょされ、ライフ・ゼロは鼻高々と、有頂天になっちゃっていた。
もうこうなったらシリアスもクソも無い……せっかく僕が珍しく格好良くキメていたのに、その全てをライフ・ゼロが根こそぎかっさらっていってしまった。
でもまあ……これで僕達にまた、頼れる仲間が一人増えたというわけだ。
練魔術師。しかも彼は多才な上に、天才だ。
彼がいるだけで僕達は、お世辞ではなく本当に、世界と渡り合える技術力を手にしたと言っても、過言では無いだろう。側溝に嵌った車を助けただけで、これだけの戦力を得れたのは、まさに棚から牡丹餅だ。
そして彼の参戦によって、僕達の戦いにもより目的が増した。元素爆弾の根絶、廃棄。
おそらくこの先、元素爆弾の存在が明るみになれば、暁の火の本拠地があるバルマヒルが、それを黙って見過ごすわけがないだろう。
必ず同等か、それ以上の物を作りだし、そしてそれはやがて、世界中に拡散していく。
強いモノは誰だって、自分の手中に収めようとするものだ。それこそ、現代兵器が世界に拡散していったように。
だからその拡散を、僕達で止める。止めてみせる。
これはマンハットの意思でもあり、そして僕達も、その恐怖を目の当たりにした者として、二度と使用されないよう、あの爆弾をこの世から葬り去る権利があり、義務がある。
もしかしたら、暁の火を滅ぼすより長い時間が掛かってしまうかもしれない。いや……それ以上に、この先の人類の、永遠の悩みの種となっていくかもしれない。
しかし僕達の未来に、あの爆弾は必要の無いものだ。必要の無いものは自然、淘汰されなければならない。
そうなるよう、必要のない物だと世界に仕向けるため、僕達は戦い続ける。呼び続ける。
そしてそれを世界が認めた時、初めて僕達は、嫌われ者で無くなるのかもしれないな……。
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