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BACK TO THE OCEAN Chapter2
第18章 民衆の街【2】
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「カッカッ、コヨミだけでなく皆腹を空かせているようだし、早速店の中に入るとしようか」
「ああ、そうしよう……今にもお腹と背中がくっついてしまいそうだ」
それから僕達は五人揃って、ハンバーガーショップの中へと入って行く。ショップの中は広過ぎず狭過ぎず、大体十席程の座席が設けられていた。
しかしお昼を過ぎた後ということもあり、客席には誰一人座っておらず、まるで僕らが店を貸し切ったかのような、そんな状態となっている。
僕は人が多い場所が苦手なのだが、しかしこれだけの広い空間に、たった五人しか居ないというのも、それはそれでなんというか……気持ちが悪いというか、申し訳ないというか、そんな複雑な気持ちを抱いてしまう。
行きつけの飲み屋では、毎日のように席が空いていてもそんなに気にはならなかったのだが、やっぱり初めて来た店となると、つい気まずくなってしまう。
気にし過ぎだろうか?
「ねえ、ロクヨウは何にするの?」
「えっ、ああ……そうだな……」
ルーナに言われ、僕はレジ横のメニュー表を見る。メニュー表には文字だけが記載されており、その商品の写真なんかは一切掲載されていなかった。
まあメニュー表に写真が無いのはよくあることだ。それについては、あまり気にしていない。
それよりも気になるのは、ハンバーガーの種類。全部で三種類あり、普通のハンバーガーと、それにチーズを挟んでいるのだろうと思われるチーズバーガー、そして一際異彩を放つ、海賊バーガー……か。
あとは飲み物やフライドポテトなどのサイドメニューのみ。まあ選ぶ幅は少ないが、しかしメニューが多かったら良いってもんじゃないからな飲食店は。
やはりこの中から選ぶとしたら……。
「うん……僕はパイレーツバーガーにしようかな」
「ふふん、やっぱり」
「えっ?」
僕がパイレーツバーガーを選ぶと、ルーナはどこか得意げに笑ってきた。
「いや、アンタならそれを選ぶんじゃないかな~って思って」
「ああ……まあ、普通のハンバーガーなら今まで嫌と言うほど味わってるし、ここは変わり種に挑戦してみるのもいいかなって思ってさ」
「そういうところはチャレンジャーなのね?」
「そういうところはって……」
「まあいいわ。じゃあわたしはいつもの慎重なアンタみたいに、ハンバーガーにしておこっと!」
「ちぇっ……」
なんだかバカにされたような気もするのだが、まあこれも一種の戯れだ。そう思えば、憎まれ口だって、愛に感じられる。
……だからといって、馬鹿にされたり、蔑まれたりされるのが好きというわけではない。
僕は、マゾヒストでは無い。ここは重要だ。
それから、どうやら他の皆も個々の食べる物を決めたらしく、マジスターとライフ・ゼロもハンバーガー、そしてマンハットはチーズバーガーと、僕の他にパイレーツバーガーを選択した者は誰一人としていなかった。
なんだろう……この孤立させられた時の、急に噴き出してくる不安は。僕が推理するに、名前が海賊なだけに、海産物が入っているのだと思うんだけど……。
まあとりあえず、注文をしなければ何も始まらない。
「おーい、誰かいないのか?」
いつまで経っても店員が出てこないので、マジスターが呼んでみると、奥の方から店員だと思われる男が、ゆっくりと歩いて出てきた。
「うっ!!?」
僕はその、店の奥からやって来た男の顔を見て、思わず一歩後退りしてしまった。
その最大の理由は、男の顔。睨まれただけで怯むどころか、小心者だったらそのままチビってしまいそうなほどの鋭い眼差しに、目の下の色の濃いクマが、更にその恐ろしさにアクセントを付け足している。
背丈も高く、肌の色は黒いとまではいかないが、黒茶色の濃い肌色をしており、頭はスキンヘッド。右耳には金色の、左耳には銀色の輪っかのピアスを着けており、もう何から何まで、とにかくイカツイという言葉をそのまま形にしたような、そんな男が姿を現したのだった。
「いらっしゃいませ」
男は、その姿に相応しい、渋い声を出してそう言う。
とは言われたものの、顏は笑ってないし、やっぱり顔恐いし、とてもじゃないがウェルカムされたような気分にはなれない。むしろアンウェルカムって感じだ。
ここの店主……どちらかといえば、彼は厨房で働かせた方が良いタイプの人間だと思うぞ。接客向けでないことは、確かだ。
「注文をしたいのだが」
しかしマジスターは、そんな男の姿を見てもまったく怯むこと無く、注文を始めようとする。
「どうぞ」
それだけ言って、男は台の上に置いてあるペンとメモ帳を取った。
注文を聞いてくれる……のは、当たり前か。店員なんだし。
「ハンバーガーが三つ、チーズバーガーが一つ、パイレーツバーガーが一つで、ポテトのMサイズが五つとドリンクが五つだ」
「ハンバーガー三つ、チーズバーガー一つ、そしてパイレーツが一つ……ふむ」
すると店員の男は、そこで動かしていたペンを一時停止させた。
そう、よりにもよって、僕が頼んだパイレーツバーガーのところで。
「パイレーツバーガーはどなたが?」
男は確認をするように問い、僕達全員の顔を眺めてくる。
これ、僕が手を挙げないといけない状況なんだよな? ハンバーガーを頼んだだけなのに、まるでホールドアップを命じられたような気分だ。
「は……はい」
怖れっ放しで突っ立っていても仕方がない。僕は意を決して、右手をそろりと挙げた。
「ふむ……パイレーツバーガーは大きいサイズのハンバーガーですが、よろしいですか?」
「えっ! あ、ああ……大丈夫です」
「分かりました」
それだけ確認すると、店員の男は再びペンを走らせ始め、その他の注文をメモに書き留めた。
僕は右手をだらりと下げ、ついでに緊張が抜けた安心からか、両肩をがっくりと落とした。
彼の気迫に、殺されかけた。
それから命懸け(僕のみ)の注文が終わり、商品ができ次第、座席まで運ぶとのことだったので、僕達は五人で座れる窓際のテーブル席へと向かい、そこに腰掛けた。
座った位置は、僕の隣がマジスターで、真正面にルーナ、隣がライフ・ゼロ、そして一番窓際にマンハットという感じになった。
「うぬ、かなりビビっておったな? あの大男に」
そうやって、僕を茶化すように言ってきたのはライフ・ゼロだった。
「そりゃあお前ビビるだろうよ。あの顔だぜ? お前だってあの状況に立たされたらビビってただろ?」
「フンッ、バカを言うでないわ。我が人間如きに臆するか」
「……あの男が出て来た時、お前顔を引きつらせていたけどな?」
「んなっ!? デタラメを言うでないわっ!!」
ライフ・ゼロはムキになって、前のめりになって、怒鳴るほどではないが、声を荒げる。
最後のはライフ・ゼロが言うように、僕が即座に思いついたデタラメだ。あの状況で、ライフ・ゼロの顔をのこのこ窺っている余裕など無かった。
しかしヤツのあの反応から推測するに、多少はビビっていたようだな。
「臆しとらんわっ!!」
「はいはい」
どうせまた、僕の心を読んだのだろう。しかしこのパターン、もう飽きるほどに味わったパターンだ。
毎回毎回、それにいちいち反応するのもそろそろ面倒臭いので、僕は子供なライフ・ゼロに対して、いかにも大人的な対処法、スルーするという方法を講じてみせた。
これで僕はヤツの、一歩上手を行けるようになったということだな。
「そういえばコヨミ君とライフ・ゼロさんは、確かリンクしているんだよね?」
そう言って僕達の会話に入ってきたのは、マンハットだった。
「リンクというより、僕がライフ・ゼロの一部を取り込んだんだよ」
「違う! 我がうぬの中に、我の精神の一部を分け与えてやったのだ!」
「どっちでもいいだろそんなこと?」
「ちっともよくないっ! うぬに優先権があるように聞こえるのが、我にとっては鼻につくのだ!」
「なにおうっ!」
僕とライフ・ゼロは台の上に手を置き、そして互いに前のめりになって睨み合う。
さっきまでは、ライフ・ゼロの一歩上手を行っていたと思っていたのに、結局自分から同じ土俵に帰って来てしまっていた。
しかし誰にでもあるだろ? 譲れない一線っていうものが。
コイツはその一線を踏み越えて、僕に喧嘩を売ってきたんだ。だったら追い返すというのが、世の常であろう。
これは僕とライフ・ゼロ、どちらが先に立ち退くかの戦争だ!
「ああ、そうしよう……今にもお腹と背中がくっついてしまいそうだ」
それから僕達は五人揃って、ハンバーガーショップの中へと入って行く。ショップの中は広過ぎず狭過ぎず、大体十席程の座席が設けられていた。
しかしお昼を過ぎた後ということもあり、客席には誰一人座っておらず、まるで僕らが店を貸し切ったかのような、そんな状態となっている。
僕は人が多い場所が苦手なのだが、しかしこれだけの広い空間に、たった五人しか居ないというのも、それはそれでなんというか……気持ちが悪いというか、申し訳ないというか、そんな複雑な気持ちを抱いてしまう。
行きつけの飲み屋では、毎日のように席が空いていてもそんなに気にはならなかったのだが、やっぱり初めて来た店となると、つい気まずくなってしまう。
気にし過ぎだろうか?
「ねえ、ロクヨウは何にするの?」
「えっ、ああ……そうだな……」
ルーナに言われ、僕はレジ横のメニュー表を見る。メニュー表には文字だけが記載されており、その商品の写真なんかは一切掲載されていなかった。
まあメニュー表に写真が無いのはよくあることだ。それについては、あまり気にしていない。
それよりも気になるのは、ハンバーガーの種類。全部で三種類あり、普通のハンバーガーと、それにチーズを挟んでいるのだろうと思われるチーズバーガー、そして一際異彩を放つ、海賊バーガー……か。
あとは飲み物やフライドポテトなどのサイドメニューのみ。まあ選ぶ幅は少ないが、しかしメニューが多かったら良いってもんじゃないからな飲食店は。
やはりこの中から選ぶとしたら……。
「うん……僕はパイレーツバーガーにしようかな」
「ふふん、やっぱり」
「えっ?」
僕がパイレーツバーガーを選ぶと、ルーナはどこか得意げに笑ってきた。
「いや、アンタならそれを選ぶんじゃないかな~って思って」
「ああ……まあ、普通のハンバーガーなら今まで嫌と言うほど味わってるし、ここは変わり種に挑戦してみるのもいいかなって思ってさ」
「そういうところはチャレンジャーなのね?」
「そういうところはって……」
「まあいいわ。じゃあわたしはいつもの慎重なアンタみたいに、ハンバーガーにしておこっと!」
「ちぇっ……」
なんだかバカにされたような気もするのだが、まあこれも一種の戯れだ。そう思えば、憎まれ口だって、愛に感じられる。
……だからといって、馬鹿にされたり、蔑まれたりされるのが好きというわけではない。
僕は、マゾヒストでは無い。ここは重要だ。
それから、どうやら他の皆も個々の食べる物を決めたらしく、マジスターとライフ・ゼロもハンバーガー、そしてマンハットはチーズバーガーと、僕の他にパイレーツバーガーを選択した者は誰一人としていなかった。
なんだろう……この孤立させられた時の、急に噴き出してくる不安は。僕が推理するに、名前が海賊なだけに、海産物が入っているのだと思うんだけど……。
まあとりあえず、注文をしなければ何も始まらない。
「おーい、誰かいないのか?」
いつまで経っても店員が出てこないので、マジスターが呼んでみると、奥の方から店員だと思われる男が、ゆっくりと歩いて出てきた。
「うっ!!?」
僕はその、店の奥からやって来た男の顔を見て、思わず一歩後退りしてしまった。
その最大の理由は、男の顔。睨まれただけで怯むどころか、小心者だったらそのままチビってしまいそうなほどの鋭い眼差しに、目の下の色の濃いクマが、更にその恐ろしさにアクセントを付け足している。
背丈も高く、肌の色は黒いとまではいかないが、黒茶色の濃い肌色をしており、頭はスキンヘッド。右耳には金色の、左耳には銀色の輪っかのピアスを着けており、もう何から何まで、とにかくイカツイという言葉をそのまま形にしたような、そんな男が姿を現したのだった。
「いらっしゃいませ」
男は、その姿に相応しい、渋い声を出してそう言う。
とは言われたものの、顏は笑ってないし、やっぱり顔恐いし、とてもじゃないがウェルカムされたような気分にはなれない。むしろアンウェルカムって感じだ。
ここの店主……どちらかといえば、彼は厨房で働かせた方が良いタイプの人間だと思うぞ。接客向けでないことは、確かだ。
「注文をしたいのだが」
しかしマジスターは、そんな男の姿を見てもまったく怯むこと無く、注文を始めようとする。
「どうぞ」
それだけ言って、男は台の上に置いてあるペンとメモ帳を取った。
注文を聞いてくれる……のは、当たり前か。店員なんだし。
「ハンバーガーが三つ、チーズバーガーが一つ、パイレーツバーガーが一つで、ポテトのMサイズが五つとドリンクが五つだ」
「ハンバーガー三つ、チーズバーガー一つ、そしてパイレーツが一つ……ふむ」
すると店員の男は、そこで動かしていたペンを一時停止させた。
そう、よりにもよって、僕が頼んだパイレーツバーガーのところで。
「パイレーツバーガーはどなたが?」
男は確認をするように問い、僕達全員の顔を眺めてくる。
これ、僕が手を挙げないといけない状況なんだよな? ハンバーガーを頼んだだけなのに、まるでホールドアップを命じられたような気分だ。
「は……はい」
怖れっ放しで突っ立っていても仕方がない。僕は意を決して、右手をそろりと挙げた。
「ふむ……パイレーツバーガーは大きいサイズのハンバーガーですが、よろしいですか?」
「えっ! あ、ああ……大丈夫です」
「分かりました」
それだけ確認すると、店員の男は再びペンを走らせ始め、その他の注文をメモに書き留めた。
僕は右手をだらりと下げ、ついでに緊張が抜けた安心からか、両肩をがっくりと落とした。
彼の気迫に、殺されかけた。
それから命懸け(僕のみ)の注文が終わり、商品ができ次第、座席まで運ぶとのことだったので、僕達は五人で座れる窓際のテーブル席へと向かい、そこに腰掛けた。
座った位置は、僕の隣がマジスターで、真正面にルーナ、隣がライフ・ゼロ、そして一番窓際にマンハットという感じになった。
「うぬ、かなりビビっておったな? あの大男に」
そうやって、僕を茶化すように言ってきたのはライフ・ゼロだった。
「そりゃあお前ビビるだろうよ。あの顔だぜ? お前だってあの状況に立たされたらビビってただろ?」
「フンッ、バカを言うでないわ。我が人間如きに臆するか」
「……あの男が出て来た時、お前顔を引きつらせていたけどな?」
「んなっ!? デタラメを言うでないわっ!!」
ライフ・ゼロはムキになって、前のめりになって、怒鳴るほどではないが、声を荒げる。
最後のはライフ・ゼロが言うように、僕が即座に思いついたデタラメだ。あの状況で、ライフ・ゼロの顔をのこのこ窺っている余裕など無かった。
しかしヤツのあの反応から推測するに、多少はビビっていたようだな。
「臆しとらんわっ!!」
「はいはい」
どうせまた、僕の心を読んだのだろう。しかしこのパターン、もう飽きるほどに味わったパターンだ。
毎回毎回、それにいちいち反応するのもそろそろ面倒臭いので、僕は子供なライフ・ゼロに対して、いかにも大人的な対処法、スルーするという方法を講じてみせた。
これで僕はヤツの、一歩上手を行けるようになったということだな。
「そういえばコヨミ君とライフ・ゼロさんは、確かリンクしているんだよね?」
そう言って僕達の会話に入ってきたのは、マンハットだった。
「リンクというより、僕がライフ・ゼロの一部を取り込んだんだよ」
「違う! 我がうぬの中に、我の精神の一部を分け与えてやったのだ!」
「どっちでもいいだろそんなこと?」
「ちっともよくないっ! うぬに優先権があるように聞こえるのが、我にとっては鼻につくのだ!」
「なにおうっ!」
僕とライフ・ゼロは台の上に手を置き、そして互いに前のめりになって睨み合う。
さっきまでは、ライフ・ゼロの一歩上手を行っていたと思っていたのに、結局自分から同じ土俵に帰って来てしまっていた。
しかし誰にでもあるだろ? 譲れない一線っていうものが。
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