33 / 71
第3章 アンダーグラウンド
012【1】
しおりを挟む
「……死んだのかな」
まだ砂煙が舞っている岩石の溜まり場を、キョウスケはグレイを背負って見ていた。
まるで自分がこんなことを思いついたとは思えないような惨状。
指示した本人も、呆気にとられていた。
「フッ……アスタロト程の悪魔になるとこんなもんじゃ死なないさ。ただ、しばらくは身動きとれないくらいのダメージは負ってるだろうよ」
「そっか……ちょっとやり過ぎたような気はしたけど」
「これくらいしないと俺達が殺されてた……俺はそう思うぜ」
「……そうだね」
やらなければ、やられていた。それほど生きるか死ぬかのギリギリの駆け引きをやっていたと思うと、キョウスケは今ここに居ることが奇跡のように感じた。
「ヘッヘッ……はぁ、死ぬかと思ったよ……」
岩場の影から、溜息混じりのいつもの笑い声が聞こえてくる。
「ジャックさんお疲れ様!ジャックさんがいなかったらこの戦い勝ててなかったよ」
「ヘッヘッヘッそうかい?いわゆるMVPってやつかなオイラ!」
ジャックは頭をさすって、照れ笑いをする。
「あぁ……間違いなくアンタのお陰だジャック。ありがとう」
「おっグレイがオイラを褒めた!これ雨降るんじゃねぇの?」
「……褒めて損した」
「ウソウソ!ありがとよグレイ!」
キョウスケに負ぶさるグレイの頭を、ポンポンと軽く触れるジャック。
グレイはその後、ブルブルブルと素早く首を横に振った。
「でもこれからどうすればいいんだろう……異界の門はこんなことになっちゃったし……」
アスタロトを倒すために崩した大岩には六芒星が記されており、それこそが異界の門の一部であった。
しかし今はこうして瓦礫と成り果て、とてもじゃないが修復できるような状態ではなかった。
「キョウスケ、悪魔の像が残ってるかちょっと探してみてくれないか?」
「悪魔の像?うん分かった」
キョウスケはグレイを負ぶったまま、岩石の山から離れ、元々大岩のあった場所へと移動する。
「おっ、もしかしてあれ全部悪魔像じゃねぇか?」
ジャックが見つけたのは、岩石が転がった衝撃で倒れた四体の悪魔像だった。
グレイはキョウスケの背中から降り、右後ろ足を庇いながら歩いて調べる。
悪魔像は倒れてはいたものの、欠けている部分もなく、奇跡的に無傷のまま残っていた。
「うん……これならいけるかもしれん。ジャック、悪いがその倒れている悪魔像を立ててくれないか?」
「えっこの銅像達をかい!?……戦いの功労者にこの労働を一人でさせるってのはちょっと酷なんじゃねぇの?」
「何が功労者だ……ただ起こすだけだ、難しいことじゃないだろ?」
「へいへい仰せのままにっと……」
ジャックはしぶしぶグレイの言うことを聞く。
何故ジャックがここまで渋るのかというと、目の前に倒れている悪魔像の大きさはおよそ1.8メートルはある巨像であり、一体起こすのにも苦労しそうなものを、四体起こすともなると、考えただけで途方に暮れるような作業だったからであった。
「おっとそうだ!その前にキョウスケ、ジャックの魔技を唱えてやってくれ」
「えっ……あっなるほどね!」
一瞬戸惑ったが、グレイの言いたいことにキョウスケは勘づく。
ジャックの魔技は、身体能力を全体的に上昇させる魔技だ。あの大岩を破壊しただけのパワーを出すことが出来るのならば、この銅像を起こすくらい朝飯前である。
「ゲッ!?言っとくけどオイラの力は雑用をするためにあるもんじゃねぇんだぞぉ!」
「使えるものは使った方が利口だろ?それとも素の状態で持ち上げるか?」
「チキショウ!ここにも暴君がいやがらぁ!!」
「ジャックさんお願いします……僕も少し手伝うから」
「ンギギ……べらぼうめっ!煮るなり焼くなり好きにしやがれ!!」
グレイには抵抗したものの、今や主人であるキョウスケに頭を下げられては観念せざるを得ないジャック。
「ありがとうジャックさん!じゃあパンプアップ・パンプキン!」
キョウスケはジャックの魔札を握り、唱える。するとジャックの身体能力は瞬く間に上がった……のだが。
「ありゃ?心なしかさっきよりパワーアップしてない気がするんだが……ちょっと待ってくれよ」
ジャックは先程、アスタロトと戦った時に発揮した能力とは違和感がある気がし、試しに悪魔像を持ち上げてみる。
すると悪魔像は見事に立ち上がったのだが、やはりジャックの中では妙なしこりが残った。
「しっかりパワーアップ出来てるよジャックさん!」
「うんそうなんだけど……そうなんだけど違うんだよなぁ~……」
側から見ると何が違うのか分からないが、ジャックには感じた。あの時のパワーアップと今のパワーアップは明らかに違うものだと。
「……もしかするとキョウスケの込める魔力の量によってパワーアップの度合いが上下するんじゃないか?俺の魔技もそうだし」
そんなジャックを見て、グレイは一つの答えに辿り着く。
「そうだ!それだよグレイ、魔力だ!!」
ジャックは導き出された答えを聞き、スッキリした表情をする。
魔技とは、デビルサモナーによって引き出されるものであり、その魔力はデビルサモナーに依存する。つまり、デビルサモナーが引き出す魔力の量によって魔技の力も増減するという、一種の等価交換が成されていたのだ。
まだ砂煙が舞っている岩石の溜まり場を、キョウスケはグレイを背負って見ていた。
まるで自分がこんなことを思いついたとは思えないような惨状。
指示した本人も、呆気にとられていた。
「フッ……アスタロト程の悪魔になるとこんなもんじゃ死なないさ。ただ、しばらくは身動きとれないくらいのダメージは負ってるだろうよ」
「そっか……ちょっとやり過ぎたような気はしたけど」
「これくらいしないと俺達が殺されてた……俺はそう思うぜ」
「……そうだね」
やらなければ、やられていた。それほど生きるか死ぬかのギリギリの駆け引きをやっていたと思うと、キョウスケは今ここに居ることが奇跡のように感じた。
「ヘッヘッ……はぁ、死ぬかと思ったよ……」
岩場の影から、溜息混じりのいつもの笑い声が聞こえてくる。
「ジャックさんお疲れ様!ジャックさんがいなかったらこの戦い勝ててなかったよ」
「ヘッヘッヘッそうかい?いわゆるMVPってやつかなオイラ!」
ジャックは頭をさすって、照れ笑いをする。
「あぁ……間違いなくアンタのお陰だジャック。ありがとう」
「おっグレイがオイラを褒めた!これ雨降るんじゃねぇの?」
「……褒めて損した」
「ウソウソ!ありがとよグレイ!」
キョウスケに負ぶさるグレイの頭を、ポンポンと軽く触れるジャック。
グレイはその後、ブルブルブルと素早く首を横に振った。
「でもこれからどうすればいいんだろう……異界の門はこんなことになっちゃったし……」
アスタロトを倒すために崩した大岩には六芒星が記されており、それこそが異界の門の一部であった。
しかし今はこうして瓦礫と成り果て、とてもじゃないが修復できるような状態ではなかった。
「キョウスケ、悪魔の像が残ってるかちょっと探してみてくれないか?」
「悪魔の像?うん分かった」
キョウスケはグレイを負ぶったまま、岩石の山から離れ、元々大岩のあった場所へと移動する。
「おっ、もしかしてあれ全部悪魔像じゃねぇか?」
ジャックが見つけたのは、岩石が転がった衝撃で倒れた四体の悪魔像だった。
グレイはキョウスケの背中から降り、右後ろ足を庇いながら歩いて調べる。
悪魔像は倒れてはいたものの、欠けている部分もなく、奇跡的に無傷のまま残っていた。
「うん……これならいけるかもしれん。ジャック、悪いがその倒れている悪魔像を立ててくれないか?」
「えっこの銅像達をかい!?……戦いの功労者にこの労働を一人でさせるってのはちょっと酷なんじゃねぇの?」
「何が功労者だ……ただ起こすだけだ、難しいことじゃないだろ?」
「へいへい仰せのままにっと……」
ジャックはしぶしぶグレイの言うことを聞く。
何故ジャックがここまで渋るのかというと、目の前に倒れている悪魔像の大きさはおよそ1.8メートルはある巨像であり、一体起こすのにも苦労しそうなものを、四体起こすともなると、考えただけで途方に暮れるような作業だったからであった。
「おっとそうだ!その前にキョウスケ、ジャックの魔技を唱えてやってくれ」
「えっ……あっなるほどね!」
一瞬戸惑ったが、グレイの言いたいことにキョウスケは勘づく。
ジャックの魔技は、身体能力を全体的に上昇させる魔技だ。あの大岩を破壊しただけのパワーを出すことが出来るのならば、この銅像を起こすくらい朝飯前である。
「ゲッ!?言っとくけどオイラの力は雑用をするためにあるもんじゃねぇんだぞぉ!」
「使えるものは使った方が利口だろ?それとも素の状態で持ち上げるか?」
「チキショウ!ここにも暴君がいやがらぁ!!」
「ジャックさんお願いします……僕も少し手伝うから」
「ンギギ……べらぼうめっ!煮るなり焼くなり好きにしやがれ!!」
グレイには抵抗したものの、今や主人であるキョウスケに頭を下げられては観念せざるを得ないジャック。
「ありがとうジャックさん!じゃあパンプアップ・パンプキン!」
キョウスケはジャックの魔札を握り、唱える。するとジャックの身体能力は瞬く間に上がった……のだが。
「ありゃ?心なしかさっきよりパワーアップしてない気がするんだが……ちょっと待ってくれよ」
ジャックは先程、アスタロトと戦った時に発揮した能力とは違和感がある気がし、試しに悪魔像を持ち上げてみる。
すると悪魔像は見事に立ち上がったのだが、やはりジャックの中では妙なしこりが残った。
「しっかりパワーアップ出来てるよジャックさん!」
「うんそうなんだけど……そうなんだけど違うんだよなぁ~……」
側から見ると何が違うのか分からないが、ジャックには感じた。あの時のパワーアップと今のパワーアップは明らかに違うものだと。
「……もしかするとキョウスケの込める魔力の量によってパワーアップの度合いが上下するんじゃないか?俺の魔技もそうだし」
そんなジャックを見て、グレイは一つの答えに辿り着く。
「そうだ!それだよグレイ、魔力だ!!」
ジャックは導き出された答えを聞き、スッキリした表情をする。
魔技とは、デビルサモナーによって引き出されるものであり、その魔力はデビルサモナーに依存する。つまり、デビルサモナーが引き出す魔力の量によって魔技の力も増減するという、一種の等価交換が成されていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる