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第4章 エキドナの遺跡
005【1】
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キョウスケ達はなんとか遺跡から逃げ切り、市街地と遺跡の間にある遊歩道を歩いていた。
「ゼーゼー……ヘッヘッ……文字通り人に呑まれるってのを体験したのは初めてだったぜ」
息を切らしながら、ジャックは言う。今回の作戦、最も体を張っていたのはジャックであり、相当数の魔物の行進を体全体でせき止めていたため、かなり疲弊していた。
「ジャックさん本当にお疲れ様」
「ヘッヘッ……ありがとよキョウスケ。それでグレイ……石碑の謎は解けたのかよ?」
ジャックの問いに、グレイは首を縦に振って答える。
「あぁ……結構とんでもないことが分かってしまった」
「そういえばグレイ、逃げる時に言ってたよね。僕にも関係があるって……」
「そうだ。キョウスケいいか、ショックを受けずに聞いてくれ」
するとグレイは足を止め、キョウスケに向き直る。そんなグレイの真剣な表情を見て、キョウスケの背筋も真っ直ぐになった。
「いいか、あのエキドナの石碑の中には魔獣の母と呼ばれたかつてのエキドナではなく、シュンジが最期の力でこの世に召喚した、新たなエキドナが封印されている……」
キョウスケはグレイの言葉に息を呑む。父親であるシュンジが最期の力で『あるもの』を魔物として召喚したという話は、以前グレイから聞いていたからだ。
「と……父さんが最期の力で召喚したエキドナ……それってつまり……」
「そうだ……あの石碑にはお前の母親カコさんが封印されているってことだ」
キョウスケは愕然とし、そしてそのショックのあまりその場で膝から崩れた。
「キョウスケっ!しっかりしろ!」
「母さんが……石碑に……」
あまりのショックで倒れそうになっていたキョウスケを、ギリギリのところでジャックが支えた。
衝撃も衝撃。背後を雷で撃たれたような、そんな大衝撃だった。
「ど……どういうことなんだよグレイ!キョウスケの母ちゃんが何でエキドナで、何で封印されてるっていうんだ!!」
何も知らないジャックには、グレイの言っていること全ての意味が分からなかった。
「……キョウスケの父親、デビルサモナーのシュンジは知ってるな?」
「あぁ、話だけならな。ベルゼブブを死の淵まで追い詰めた英雄さんだろ?」
「そう……シュンジが死ぬ前、最後の決戦を前に魔界に住んでいたキョウスケの母親のカコさんとまだ赤ん坊だったキョウスケを人間世界に帰すことになったんだ。だがその道中、ベルゼブブの軍隊に襲われてな……キョウスケは助かったがカコさんは殺されてしまったんだ」
「……そいつは残酷極まりねぇ話だな」
ジャックは眉間にシワを寄せる。それは残酷でもあり、余りにも哀しい悲劇の話だったからだ。
「あぁ……残酷だ。その後なんとか駆けつけたシュンジがキョウスケだけを人間世界に送り、魔物が人間世界に入らないよう、その世界の鍵を破壊したんだ。そしてベルゼブブにシュンジは立ち向かったが、俺の力も足りず……シュンジはベルゼブブに殺された。しかしその死に際に、シュンジは最期の力を振り絞ってある魂を呼び出し、それを魔物として転生させたんだ」
何も知らないジャックでも、ここまで言われればその答えは自ずと分かった。
「まさか……その魂ってのがキョウスケの母ちゃんってことか!」
「そうだ……だがシュンジはベルゼブブに見つからないよう、その魔物を遠くに飛ばしてしまってな。カコさんを魔物にして転生させたということまではシュンジから伝えられていたが、まさかエキドナにしたとは思わなかった……」
「もしかしたら……魔獣の母ってのに絡めたんじゃないのか?」
「そうかもしれん……フッ……まあいかにもシュンジがやりそうなことだけどな」
グレイが笑うと、先程までジャックに掴まり、うな垂れていたキョウスケが自分の足で立ち上がった。
「そっか……父さんは母さんの居る場所のヒントを残してくれたんだね」
「あぁ……そしてもしかしたら、カコさんが石碑になっているのは、シュンジがわざと石碑のまま召喚したのかもしれない」
「えっ!?じゃ、じゃあ母さんが石碑になってるのは誰かがやったんじゃなく、父さんがわざとやったってこと!?」
グレイの推察に、キョウスケは目を丸くする。
しかし何故そのようなことをする必要があったのか、キョウスケには全く見当がつかなかった。
「そういうことだな。というのも、石化した状態になると動けなくはなるが、意識は保ち続けることが出来るんだ。だから周りに気を取られずに、カコさんは人間世界にいるお前を間近で見守ることが可能だったってわけだ」
「そ……そうか……そうなんだ。父さんと母さんはそこまで考えて僕のことを……」
この何十年、キョウスケは母親と共に暮らすことが出来た。しかしその時キョウスケが見ていた母親の姿は幻影であり、それはエキドナに転生した母親が石化してもなお、強大な魔力を使って映し出していたものだったのだ。
そしてその母親を転生させたのは、父親の最期の力である。
全てはキョウスケを一人にしないために、成長を見守るために、文字通り命を懸けた両親から子へ送る愛情だったのだ。
「お前のとーちゃんとかーちゃん……ホントにお前のことが好きなんだなぁ……」
「うん……そうだね。ってジャックさんすごい涙の量じゃないですか!!」
「バカヤロウ!これは涙じゃねぇ!汗っかきなんだいオイラはっ!!」
ジャックは号泣し、逆にキョウスケがそれを慰めることになってしまった。
しかしそんな中、グレイには引っかかることが幾つかあった。
「……ただ気になることがある。もし石化した状態でシュンジがカコさんを召喚したのだとしても、もうシュンジが死んでから数十年経つ……シュンジの魔力が断たれた今、既に石化は解けているはずなんだ。それにあの場所はマモンが取り仕切っている場所……もしかしたら、あの石碑の存在をベルゼブブも知っている可能性が高い」
「……つまりどういうこと?」
キョウスケが尋ねると、グレイは眉間にシワを寄せる。
「つまりベルゼブブは、その石碑が仇であるシュンジの妻だと知って、マモンにカコさんの石化を継続させるよう指示しているってことだ……ただマモンはそんなこと知らずに指示に従ってるだけだろうがな。でないと、あんな石碑が目立つようなことはしないだろうさ」
マモンは所詮、石碑を管理しているに過ぎない。その真意を知っているのはベルゼブブだけだろうとグレイは判断した。
「ゼーゼー……ヘッヘッ……文字通り人に呑まれるってのを体験したのは初めてだったぜ」
息を切らしながら、ジャックは言う。今回の作戦、最も体を張っていたのはジャックであり、相当数の魔物の行進を体全体でせき止めていたため、かなり疲弊していた。
「ジャックさん本当にお疲れ様」
「ヘッヘッ……ありがとよキョウスケ。それでグレイ……石碑の謎は解けたのかよ?」
ジャックの問いに、グレイは首を縦に振って答える。
「あぁ……結構とんでもないことが分かってしまった」
「そういえばグレイ、逃げる時に言ってたよね。僕にも関係があるって……」
「そうだ。キョウスケいいか、ショックを受けずに聞いてくれ」
するとグレイは足を止め、キョウスケに向き直る。そんなグレイの真剣な表情を見て、キョウスケの背筋も真っ直ぐになった。
「いいか、あのエキドナの石碑の中には魔獣の母と呼ばれたかつてのエキドナではなく、シュンジが最期の力でこの世に召喚した、新たなエキドナが封印されている……」
キョウスケはグレイの言葉に息を呑む。父親であるシュンジが最期の力で『あるもの』を魔物として召喚したという話は、以前グレイから聞いていたからだ。
「と……父さんが最期の力で召喚したエキドナ……それってつまり……」
「そうだ……あの石碑にはお前の母親カコさんが封印されているってことだ」
キョウスケは愕然とし、そしてそのショックのあまりその場で膝から崩れた。
「キョウスケっ!しっかりしろ!」
「母さんが……石碑に……」
あまりのショックで倒れそうになっていたキョウスケを、ギリギリのところでジャックが支えた。
衝撃も衝撃。背後を雷で撃たれたような、そんな大衝撃だった。
「ど……どういうことなんだよグレイ!キョウスケの母ちゃんが何でエキドナで、何で封印されてるっていうんだ!!」
何も知らないジャックには、グレイの言っていること全ての意味が分からなかった。
「……キョウスケの父親、デビルサモナーのシュンジは知ってるな?」
「あぁ、話だけならな。ベルゼブブを死の淵まで追い詰めた英雄さんだろ?」
「そう……シュンジが死ぬ前、最後の決戦を前に魔界に住んでいたキョウスケの母親のカコさんとまだ赤ん坊だったキョウスケを人間世界に帰すことになったんだ。だがその道中、ベルゼブブの軍隊に襲われてな……キョウスケは助かったがカコさんは殺されてしまったんだ」
「……そいつは残酷極まりねぇ話だな」
ジャックは眉間にシワを寄せる。それは残酷でもあり、余りにも哀しい悲劇の話だったからだ。
「あぁ……残酷だ。その後なんとか駆けつけたシュンジがキョウスケだけを人間世界に送り、魔物が人間世界に入らないよう、その世界の鍵を破壊したんだ。そしてベルゼブブにシュンジは立ち向かったが、俺の力も足りず……シュンジはベルゼブブに殺された。しかしその死に際に、シュンジは最期の力を振り絞ってある魂を呼び出し、それを魔物として転生させたんだ」
何も知らないジャックでも、ここまで言われればその答えは自ずと分かった。
「まさか……その魂ってのがキョウスケの母ちゃんってことか!」
「そうだ……だがシュンジはベルゼブブに見つからないよう、その魔物を遠くに飛ばしてしまってな。カコさんを魔物にして転生させたということまではシュンジから伝えられていたが、まさかエキドナにしたとは思わなかった……」
「もしかしたら……魔獣の母ってのに絡めたんじゃないのか?」
「そうかもしれん……フッ……まあいかにもシュンジがやりそうなことだけどな」
グレイが笑うと、先程までジャックに掴まり、うな垂れていたキョウスケが自分の足で立ち上がった。
「そっか……父さんは母さんの居る場所のヒントを残してくれたんだね」
「あぁ……そしてもしかしたら、カコさんが石碑になっているのは、シュンジがわざと石碑のまま召喚したのかもしれない」
「えっ!?じゃ、じゃあ母さんが石碑になってるのは誰かがやったんじゃなく、父さんがわざとやったってこと!?」
グレイの推察に、キョウスケは目を丸くする。
しかし何故そのようなことをする必要があったのか、キョウスケには全く見当がつかなかった。
「そういうことだな。というのも、石化した状態になると動けなくはなるが、意識は保ち続けることが出来るんだ。だから周りに気を取られずに、カコさんは人間世界にいるお前を間近で見守ることが可能だったってわけだ」
「そ……そうか……そうなんだ。父さんと母さんはそこまで考えて僕のことを……」
この何十年、キョウスケは母親と共に暮らすことが出来た。しかしその時キョウスケが見ていた母親の姿は幻影であり、それはエキドナに転生した母親が石化してもなお、強大な魔力を使って映し出していたものだったのだ。
そしてその母親を転生させたのは、父親の最期の力である。
全てはキョウスケを一人にしないために、成長を見守るために、文字通り命を懸けた両親から子へ送る愛情だったのだ。
「お前のとーちゃんとかーちゃん……ホントにお前のことが好きなんだなぁ……」
「うん……そうだね。ってジャックさんすごい涙の量じゃないですか!!」
「バカヤロウ!これは涙じゃねぇ!汗っかきなんだいオイラはっ!!」
ジャックは号泣し、逆にキョウスケがそれを慰めることになってしまった。
しかしそんな中、グレイには引っかかることが幾つかあった。
「……ただ気になることがある。もし石化した状態でシュンジがカコさんを召喚したのだとしても、もうシュンジが死んでから数十年経つ……シュンジの魔力が断たれた今、既に石化は解けているはずなんだ。それにあの場所はマモンが取り仕切っている場所……もしかしたら、あの石碑の存在をベルゼブブも知っている可能性が高い」
「……つまりどういうこと?」
キョウスケが尋ねると、グレイは眉間にシワを寄せる。
「つまりベルゼブブは、その石碑が仇であるシュンジの妻だと知って、マモンにカコさんの石化を継続させるよう指示しているってことだ……ただマモンはそんなこと知らずに指示に従ってるだけだろうがな。でないと、あんな石碑が目立つようなことはしないだろうさ」
マモンは所詮、石碑を管理しているに過ぎない。その真意を知っているのはベルゼブブだけだろうとグレイは判断した。
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