The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

005【2】

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「じゃ……じゃああの遺跡はなんなんだろう?」

「あれはマモンが勝手にやり始めたことだろうさ。石碑がエキドナであることには間違いないし、ベルゼブブに指示されて管理するだけじゃ癪だから、カネ儲けのために見世物にしたって感じだろう。さすがは貪欲を司る悪魔……強突く張りも筋金入りだ」

フンッと鼻息を立てて、グレイは呆れかえる。

「う~ん……もしマモンが母さんだって分かっていて見世物にしてるならゆるせないけど、そもそも母さんのこと知らないだろうし……なにより今の母さんはエキドナではあるから詐欺をしていたわけでもないし……うぅん……」

こちらはこちらで、キョウスケも複雑な気分になる。
アウトとセーフの境界線を綱渡りしているマモンのやり方に、怒っていいのかどうか困惑していた。

「おいキョウスケ!あいつのやってることが許されるわけねぇだろっ!!」

しかし、そこに真っ先に異議を唱えたのはジャックだった。

「アイツは知らなくてもお前のかーちゃんを見世物にしている事実は変わらないし、石化してるのもアイツなんだ!それに自分で作った遺跡なのに遺跡の保存料を……しかも銀貨20枚もふんだくるなんて許せねぇよ!!」

ジャックはその場で地団太を踏み、キョウスケを説得する。

「……最後のはお前がふんだくられた私怨だろ」

「うっ……だけど許せないだろ?あんなの詐欺だ!絶対ぶっ倒してやるっ!!」

いつも以上にハッスルしているジャックを見て、グレイはやれやれと溜息をつく。

「……どちらにしても母さんを助けてあげないといけないし、そのためにはマモンを倒さないといけないよね」

キョウスケは拳を強く握る。
直接マモンに恨みは無いのだが、母親を助けるためにはどうしても倒さねばならない敵ということには違いなかった。

「フッ……じゃあ総員一致でマモンを倒すということだな。魔王親衛隊の隊長の次は一大都市の市長が相手か……」

予想していたよりもハードな連戦に、グレイは苦笑いを浮かべる。だが、その割には満更でもない顔つきでもあった。
というのも、グレイにはエキドナの石碑の正体が判明した時からこうなることは予想出来ていた。
キョウスケなら必ず母親を助けに行くと言い出し、そのために強大な敵に立ち向かうことになっても、もう戦いを恐れることは決してないと。

「ヘッヘッヘッ……そんじゃあこれから市庁舎に乗り込んで、市長をとっちめるか!」

やる気満々に、ジャックは指をパキポキと鳴らす。だが、そんな逸る気持ちのジャックをグレイは制した。

「待てジャックそれは止めておこう。親衛隊の施設とは違って、市庁舎には働いている職員がいる。そんな魔物たちを戦いに巻き込ませるわけにはいかない」

シンアルの市庁舎には大都市だけあって多くの職員が在籍しており、昼間のこの時間帯はまだ大多数の職員が市庁舎にいることは明確だった。
そんな中を乗り込めば、それこそ無益な血が流れ兼ねない。
それだけは何としてでも避けなければならなかった。

「おっと……確かにそれは一理あるな。じゃあいつ襲撃をかけるよ?」

ジャックは首を傾げ、グレイに尋ねる。

「市庁舎は夕方には職員が全員退庁するはずだ……だがおそらく市長はその前に退庁するだろう」

「じゃあ市長を狙う機会がねぇじゃねぇか!」

「まあ待て焦るな。こういう時こそ、俺の名前を使うんだよ」

「グレイの名前を?……どういうことか分かるかキョウスケ?」

「いや……僕に言われても」

急なジャックからの振りに、キョウスケも戸惑ってしまう。
するとグレイはフッと鼻で笑い、まるで誇ったように彼らに告げる。

「フッ……俺の名前、つまり指名手配犯ケルベロスの名を使うんだよ。もし俺がこの遺跡に現れたって知れれば、ヤツは石碑を守ろうとするだろう。なんせベルゼブブからは必ず、あの石碑に俺を近づかせないよう命令が出ているはずだからな!」

「グレイを石碑に近づかせちゃいけない?でも何で?」

「そうだ!そうだ!何でお前だけなんだよ!!」

得意げに語るグレイだったが、その意味は全く二人には伝わっておらず、むしろ更なる疑問や不信感を与えた。
そんな二人を見て、グレイは更に説明を足す。

「……俺はエキドナのことも知ってるし、シュンジのパートナーだったからカコさんとも面識がある。普通の魔物なら小さいエキドナだなってところで終わるかもしれないが、俺の場合エキドナかどうか判断しつつ、更にその中身がカコさんであることを知ることが出来る。だから俺は必ず奴等からマークされているはずなんだ」

「あぁっ!なるほど!」

「そういうことか!」

キョウスケとジャックはここで初めて全てを理解し、納得する。

「そんじゃああれか、マモンはケルベロスが現れたことを知り、ケルベロスは石碑の正体を知って、それを奪いにやってくるだろうって思い込む。そんな石碑を守ろうとするマモンをオイラ達全員で襲撃するってことだな?」

「そ……そういうことだ」

ジャックの端的な分かりやすい説明に、グレイは首を縦に振る。
グレイが物事を説明する時は、詳細な部分まで説明し、それが返って遠回りになってしまうことがある。
そこは反省すべき点だった。

「そんじゃあオイラ達がこれからやらなきゃならないことは、やつらにケルベロスがここにいるってのをアピールしなきゃいけないってことだな!」

ジャックは腕を組み頷くが、しかしここでグレイは気づく。

「いや……その必要は無いかもしれん。なんせ俺達はさっき自然とメチャクチャ目立つようなことをしただろ?」

「へっ?目立つようなこと…………あっ!」

ジャックはつい先程、魔物の波に呑み込まれそうになった、ある意味重々しい記憶を思い出す。
あれだけの人前でかつ、遺跡のメインである石碑の前であんなことをしたら、それは必ず遺跡の職員が目撃し、マモンのところまで報告が行くだろう。
つまり、アピールをするどころか、自然と目立つ行為を三人は既にやっていたのだった。

「……今はこういう状況になったからいいですけど……やっぱりジャックさん、あの作戦は目立ち過ぎましたね」

「……我ながら大暴れしたような気がするしな」

キョウスケに指摘され、ちょっぴり反省するジャック。だがすぐに、その反省モードは通常モードに切り替わる。

「まっ!でも結果オーライってわけじゃねぇか!!そんじゃあやつらが待ち伏せするだろう夕方の時間まで街をぶらぶらしてようぜ!」

そう言って、ジャックは先に街の方へと向かって行く。

「街をぶらぶらするって……あいつ疲れてないのか……今度こそ俺は絶対休むからな!」

続けてグレイが歩き始める。

「さすがに僕も疲れたかなぁ……ジャックさーん、悪いけど僕も休むよ」

そして最後にキョウスケが歩き始めた。

「えぇ~……まっ休むのも戦いか。仕方ねぇ……オイラも寝ーよおっと」

ジャックは少しガッガリしつつも、遺跡に付き添ってくれた二人の意見をここは尊重する。
それから夕方まで、アスタロトとの戦いから一度も休みの無かった三人に、束の間の休息が訪れた。
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