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第4章 エキドナの遺跡
006【1】
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「失礼しますマモン市長」
「失礼致すマモン市長」
シンアルにある市庁舎。その市長室に牛と馬の頭を持つ人身の鬼、牛頭と馬頭は入って行く。
「牛頭と馬頭か……どうした?」
マモンは本日の市長の仕事を終わらせ、市長室の大きなソファにどっかり座り込み、休憩していた。
「実は遺跡の出入りを管理している者から」
「遺跡に尋ね人が入ったと、報告を受けましてござる」
「ほう……尋ね人」
マモンは片目を開け、ギョロリとその鳥の目を牛頭と馬頭の方に向ける。
「そんなものはベリト様に報告し、騎士団に捕らえさせておけ。市長の仕事じゃない」
フンッと鼻息をたてて言い放ち、マモンは両目を瞑ってソファに身を任せる。確かにマモンの言う通り、犯罪者を追いかけるのは市長の仕事ではなく、このシンアルの街の治安を守っているベリトの率いる騎士団の仕事だった。
しかし牛頭と馬頭は顔を合わせ、困った表情をする。
「し……しかしマモン市長、その尋ね人なのですが……」
「あのケルベロスなのでござるが……」
牛頭と馬頭が言葉を言い終わる前に、マモンは両目を見開き、ソファから飛び起きた。
「な……な、な、な、なんだとおおおおおおお!!アイツが……ケルベロスがあの遺跡に入ったと言うのか!!!」
「であります」
「でござる」
マモンは冷や汗を流し、深刻な表情をする。
「マズイ……もしあのエキドナの石碑がケルベロスの手に渡るようなことがあれば、わたしの市長の椅子どころか、魔王様から直々に厳罰を下されることになり兼ねんぞ……」
そんな苦悶するマモンを見て、牛頭と馬頭も互いに複雑な表情をし合う。
モチロン、マモンが罰を受ければその下に着いている自分達にも危険が及ぶと考えたからだ。
「ど……どう致しましょうマモン市長……」
「罰を受けるのは本望ではないのでござる……」
グヌヌ……とマモンは両手の人差し指をこめかみに当て、グリグリとそれを回す。
マモンにとっては、市長の椅子が奪われるよりも、魔王ベルゼブブの怒りに触れる方がよっぽど恐ろしかった。
「ぬっぬっ……ぬぬーん!!閃いた!!!」
するとマモンは突然ソファから立ち上がり、こめかみに当てていた人差し指を外して腕を広げる。
「おおっさすが市長!!」
「何か閃きになりましたでござるか!!」
牛頭と馬頭は揃ってマモンの方へ身を乗り出す。
「あぁ……我らに救われる道はもうこれしかない……ケルベロスには闇に落ちてもらう」
フッフッフッ、と不敵に笑うマモンだが、牛頭と馬頭にはその言葉の詳しい意味が理解出来てなかった。
「市長……失礼ながら我らにはその言葉の意味が分かりません」
「我ら武力はあれど、知力はまったくでござる」
「ぬああ!お前らもうちょっと筋肉だけじゃなく頭も鍛えろ!!この脳筋共が!!!」
「こ…これから出来るだけ励みます」
「励むでござる……」
シュン、と牛頭と馬頭は肩をすぼめる。
そんな二人を見て、マモンも言い過ぎたと顔を曇らせ反省する。
「すまんちょっと言い過ぎた……だから怒らんでくれ」
「そんな市長!謝らないでください!!」
「我らのおつむが足りないのがいけないのでござる!!」
マモンが謝る姿を見て、牛頭と馬頭は慌ててマモンの元に駆け寄る。上司であるマモンに頭を下げさせるなど、部下の二人にとっては申し訳ないことこの上ないことだった。
「お前ら……わたしはお前らのような部下を持って幸せだああああ!!!」
牛頭と馬頭に囲まれながら、その場で泣き崩れるマモン。カネにがめつい彼だったが、情にも貪欲であり、それ故に涙脆い部分があった。
「い……いえいえ……我らもマモン市長とは長らくの付き合い」
「我らもマモン市長に着けて、嬉しいことこの上ないでござる」
そんな号泣するマモンを見て、牛頭と馬頭は共に苦笑いを浮かべる。
実はこの光景、牛頭と馬頭にとっては日常的であり、かと言って本気で泣いている上司のマモンをぞんざいに扱うことは出来ず、いつもこうしてマモンが泣き止むまで見守っていた。
「はぁ~……ひとしきり泣いたらスッキリしたわ」
マモンはスーツのポケットからポケットティッシュを取り出し、鼻をかむ。
ちなみに涙脆いマモンは、いつも二つポケットティッシュを常備していた。
「スッキリされて何よりでございます」
「我らにもマモン市長の気持ち、伝わっているでござる」
「うむ……ではわたしもお前らに伝わるよう説明せねばな。つまり闇に落とすとは、ケルベロスをわたし達の手で葬るということだ」
そのマモンの一言に、牛頭と馬頭は面食らう。
「わ……我々の手で……」
「ござるか……」
「そうだ……確かにお前らが言いたいことは分かる。ケルベロスはデビルサモナーと共に魔王様を消滅の淵まで追い込んだ強者……しかし!今やケルベロスを操るデビルサモナーはもうこの世にいない。ケルベロスだけなら、ここにいる全員が協力して戦えば、なんとか倒すことができるのではないかと考えたのだ!」
マモンは自信有り気に拳を硬く握り締める。しかし遺跡の監視から直接報告を受けた牛頭と馬頭には、もう一つの不安要素が存在した。
「しかしマモン市長……実はこの報告には続きがありまして」
「ケルベロスは他にも魔物一体と人間を一人連れていたらしいのでござる」
「へっ……?そうなのか?」
マモンは唖然とする。そう、マモンの策はあくまでケルベロス一体だけならの話であり、その仲間がいる時のことまでは含まれてなかった。
「失礼致すマモン市長」
シンアルにある市庁舎。その市長室に牛と馬の頭を持つ人身の鬼、牛頭と馬頭は入って行く。
「牛頭と馬頭か……どうした?」
マモンは本日の市長の仕事を終わらせ、市長室の大きなソファにどっかり座り込み、休憩していた。
「実は遺跡の出入りを管理している者から」
「遺跡に尋ね人が入ったと、報告を受けましてござる」
「ほう……尋ね人」
マモンは片目を開け、ギョロリとその鳥の目を牛頭と馬頭の方に向ける。
「そんなものはベリト様に報告し、騎士団に捕らえさせておけ。市長の仕事じゃない」
フンッと鼻息をたてて言い放ち、マモンは両目を瞑ってソファに身を任せる。確かにマモンの言う通り、犯罪者を追いかけるのは市長の仕事ではなく、このシンアルの街の治安を守っているベリトの率いる騎士団の仕事だった。
しかし牛頭と馬頭は顔を合わせ、困った表情をする。
「し……しかしマモン市長、その尋ね人なのですが……」
「あのケルベロスなのでござるが……」
牛頭と馬頭が言葉を言い終わる前に、マモンは両目を見開き、ソファから飛び起きた。
「な……な、な、な、なんだとおおおおおおお!!アイツが……ケルベロスがあの遺跡に入ったと言うのか!!!」
「であります」
「でござる」
マモンは冷や汗を流し、深刻な表情をする。
「マズイ……もしあのエキドナの石碑がケルベロスの手に渡るようなことがあれば、わたしの市長の椅子どころか、魔王様から直々に厳罰を下されることになり兼ねんぞ……」
そんな苦悶するマモンを見て、牛頭と馬頭も互いに複雑な表情をし合う。
モチロン、マモンが罰を受ければその下に着いている自分達にも危険が及ぶと考えたからだ。
「ど……どう致しましょうマモン市長……」
「罰を受けるのは本望ではないのでござる……」
グヌヌ……とマモンは両手の人差し指をこめかみに当て、グリグリとそれを回す。
マモンにとっては、市長の椅子が奪われるよりも、魔王ベルゼブブの怒りに触れる方がよっぽど恐ろしかった。
「ぬっぬっ……ぬぬーん!!閃いた!!!」
するとマモンは突然ソファから立ち上がり、こめかみに当てていた人差し指を外して腕を広げる。
「おおっさすが市長!!」
「何か閃きになりましたでござるか!!」
牛頭と馬頭は揃ってマモンの方へ身を乗り出す。
「あぁ……我らに救われる道はもうこれしかない……ケルベロスには闇に落ちてもらう」
フッフッフッ、と不敵に笑うマモンだが、牛頭と馬頭にはその言葉の詳しい意味が理解出来てなかった。
「市長……失礼ながら我らにはその言葉の意味が分かりません」
「我ら武力はあれど、知力はまったくでござる」
「ぬああ!お前らもうちょっと筋肉だけじゃなく頭も鍛えろ!!この脳筋共が!!!」
「こ…これから出来るだけ励みます」
「励むでござる……」
シュン、と牛頭と馬頭は肩をすぼめる。
そんな二人を見て、マモンも言い過ぎたと顔を曇らせ反省する。
「すまんちょっと言い過ぎた……だから怒らんでくれ」
「そんな市長!謝らないでください!!」
「我らのおつむが足りないのがいけないのでござる!!」
マモンが謝る姿を見て、牛頭と馬頭は慌ててマモンの元に駆け寄る。上司であるマモンに頭を下げさせるなど、部下の二人にとっては申し訳ないことこの上ないことだった。
「お前ら……わたしはお前らのような部下を持って幸せだああああ!!!」
牛頭と馬頭に囲まれながら、その場で泣き崩れるマモン。カネにがめつい彼だったが、情にも貪欲であり、それ故に涙脆い部分があった。
「い……いえいえ……我らもマモン市長とは長らくの付き合い」
「我らもマモン市長に着けて、嬉しいことこの上ないでござる」
そんな号泣するマモンを見て、牛頭と馬頭は共に苦笑いを浮かべる。
実はこの光景、牛頭と馬頭にとっては日常的であり、かと言って本気で泣いている上司のマモンをぞんざいに扱うことは出来ず、いつもこうしてマモンが泣き止むまで見守っていた。
「はぁ~……ひとしきり泣いたらスッキリしたわ」
マモンはスーツのポケットからポケットティッシュを取り出し、鼻をかむ。
ちなみに涙脆いマモンは、いつも二つポケットティッシュを常備していた。
「スッキリされて何よりでございます」
「我らにもマモン市長の気持ち、伝わっているでござる」
「うむ……ではわたしもお前らに伝わるよう説明せねばな。つまり闇に落とすとは、ケルベロスをわたし達の手で葬るということだ」
そのマモンの一言に、牛頭と馬頭は面食らう。
「わ……我々の手で……」
「ござるか……」
「そうだ……確かにお前らが言いたいことは分かる。ケルベロスはデビルサモナーと共に魔王様を消滅の淵まで追い込んだ強者……しかし!今やケルベロスを操るデビルサモナーはもうこの世にいない。ケルベロスだけなら、ここにいる全員が協力して戦えば、なんとか倒すことができるのではないかと考えたのだ!」
マモンは自信有り気に拳を硬く握り締める。しかし遺跡の監視から直接報告を受けた牛頭と馬頭には、もう一つの不安要素が存在した。
「しかしマモン市長……実はこの報告には続きがありまして」
「ケルベロスは他にも魔物一体と人間を一人連れていたらしいのでござる」
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