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第4章 エキドナの遺跡
006【2】
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「そ……それでもマモン市長……」
「市長と我々が協力して、ケルベロスを倒すと申されるでござるか?」
決断を迫る牛頭と馬頭に、マモンはしばらく頭を抱え、そして一本の活路を見いだす。
「…………よしっ!作戦変更だ!!お前らは先に遺跡の前の遊歩道でケルベロス共に攻撃を仕掛け、わたしは遺跡に入ったところを襲撃しよう!うん、そうしよう!!!」
「えっ……?」
「へっ……?」
「はっ……?」
その場にいた三人全員が、一斉に口を半開きにした。
「何故ゆえ我々が」
「先なのでござるか?」
牛頭と馬頭は首を傾げる。そんな二人を見て、マモンは大きな溜息をついてうんざりしていた。
「お前達……仮にもし、わたしが先に行ったとして倒されてみろ。そしたら、わたしを倒したやつらをお前らが倒せるのか?」
マモンは一歩牛頭と馬頭に近づき、両方の顔を交互にじっと眺める。
魔界の縦社会の基本は強さにあり、これは首長などの政治責任者にも当てはまる。
牛頭と馬頭の上司であるマモンはモチロン、彼らよりも強い力を持っていたのであった。
「…………」
「無理でござる」
牛頭と馬頭は揃って目を伏せる。さすがに知力が少ない二人でも解くことの出来る、非常に簡単な引き算であった。
「そうだろ?そうだろ?そうなんだよぉ。つまりはお前達が先にやつらを弱らせて、その弱ったところをわたしが討つ!……どうだ完璧な作戦だと思わないかね?」
フッフッフッと腕を組みながら笑うマモン。その姿を見て牛頭と馬頭は一瞬顔を見合わせたが。
「そうですね!」
「市長、完璧でござる!」
二人はマモンに拍手を送る。するとマモンはどうどうと二人の拍手を鎮めた。
「ただし死ぬまで無理して戦うなお前達っ!命あっての人生だ、それにこの戦いは戦かったことに意味があるのだからな!!」
「そ……それは」
「どういうことでござるか?」
疑問に思った牛頭と馬頭はマモンに尋ねる。
するとマモンは、まるで演説のようにして二人の質問に答えた。
「つまり我々は戦った!戦って、抵抗して、そして負けた!それだけでも、何もしなかったのとは印象が変わってくるということだ!つまり失敗しても、我々は魔王様に許しを請うチャンスが訪れるかもしれないということなのだ!!」
「おぉっっ!!」
「おぉっっ!!」
「まぁ……もし万が一チャンスが無かったら……その時はカネを持って逃げ出せばいい!わたしはあいにく魔王様に忠誠の誓いはたててないからな!!」
「……そういえば」
「その手もあるのでござるな……」
忠誠の誓いとは、現在の魔王ベルゼブブが旧魔王のルシファーからクーデターを成功させた際、自らの直接配下となる者に誓わせたものであり、それを誓った者のみが軍を持つことを許されている。
しかし万が一忠誠の誓いを破ることがあれば、その者の魂は闇の底パンデモニウムに送られるという、ある種呪いの契約でもあった。
しかしマモンはこの誓いは立てておらず、ベルゼブブからは石碑を守るという使命だけを経て、このシンアルの市長をしていたのだ。
「いいかお前達、わたし達は勝つために戦うのではない、この危機から逃れるために戦うのだ!分かったな!!」
「ははぁっ!」
「ははぁっ!」
「さぁ行け!健闘を祈るぞ!」
「失礼しました市長!」
「失礼致した市長!」
牛頭と馬頭はマモンに敬礼し、市長室を後にする。
その廊下を歩く最中、牛頭は馬頭に問いかける。
「なぁ馬頭よ、我らもしかして市長にダシに使われてないか?」
「牛頭よ、それはいつものことでござる。そんなことは考えず、市長が遺跡に行くことを信じて我らは戦うのみだ」
「……その通りだな馬頭よ!」
牛頭と馬頭は深く考えることを止め、ただただ戦うことに専念する。
いろんな意味で、従順な部下達だった。
一方のマモンは、市長室から牛頭と馬頭が出たのを確認すると、金庫に保管しているカネをまとめ始めていた。
「ふぅ……これだけあればわたしとあいつらがしばらく食っていけるカネはあるだろう。……ベルゼブブが失敗を許すような魔王だったら、こんな世界にはなっとらんわ」
マモンはベルゼブブという悪魔を知っているからこそ、逃げる準備をしていた。決して他人の失敗は許さず、時には死をもって償わせる程の冷酷無比な悪魔、それがベルゼブブだった。
「それに市長稼業で十分稼ぐだけ稼がしてもらったしな……利用しあったのはお互い様だ」
エキドナの遺跡を観光地にしたのはマモンの提案であり、その一部の売り上げをマモンがせしめていた。
この市長生活が長く続くとは思っていなかったマモンは、こういう時のために財を蓄えていたのだ。
「さてこのカネを使ってまた商売の道に戻るか……しかし商いはベルゼブブが制限してるし……くそ、渡りにくい世の中だ!」
マモンは苦虫を噛み潰したような表情で苦悩する。
魔界の商売は全て魔王ベルゼブブの統制下にあり、認可が下りた商人にしか商売は出来ないよう定めている。
更にベルゼブブは認可をした商人からも商人税なるものを取っており、これは財力を持ち、その商人が力を持つことを恐れたからである。
財力は武力に勝るものがある。だからこそ、ベルゼブブはその心配の芽を根っこから引き抜くことにしたのだ。
「……ルシファー様の時代は良かったな。あの自由な時代はもう来ないのか」
ある程度荷物とカネをまとめたマモンはぼやきながら、金庫を一度閉める。
そしてお気に入りのハットを被り、市長室を後にした。
「さて……市長としての最後の仕事か。得も無く損しかない……嫌な仕事だ」
「市長と我々が協力して、ケルベロスを倒すと申されるでござるか?」
決断を迫る牛頭と馬頭に、マモンはしばらく頭を抱え、そして一本の活路を見いだす。
「…………よしっ!作戦変更だ!!お前らは先に遺跡の前の遊歩道でケルベロス共に攻撃を仕掛け、わたしは遺跡に入ったところを襲撃しよう!うん、そうしよう!!!」
「えっ……?」
「へっ……?」
「はっ……?」
その場にいた三人全員が、一斉に口を半開きにした。
「何故ゆえ我々が」
「先なのでござるか?」
牛頭と馬頭は首を傾げる。そんな二人を見て、マモンは大きな溜息をついてうんざりしていた。
「お前達……仮にもし、わたしが先に行ったとして倒されてみろ。そしたら、わたしを倒したやつらをお前らが倒せるのか?」
マモンは一歩牛頭と馬頭に近づき、両方の顔を交互にじっと眺める。
魔界の縦社会の基本は強さにあり、これは首長などの政治責任者にも当てはまる。
牛頭と馬頭の上司であるマモンはモチロン、彼らよりも強い力を持っていたのであった。
「…………」
「無理でござる」
牛頭と馬頭は揃って目を伏せる。さすがに知力が少ない二人でも解くことの出来る、非常に簡単な引き算であった。
「そうだろ?そうだろ?そうなんだよぉ。つまりはお前達が先にやつらを弱らせて、その弱ったところをわたしが討つ!……どうだ完璧な作戦だと思わないかね?」
フッフッフッと腕を組みながら笑うマモン。その姿を見て牛頭と馬頭は一瞬顔を見合わせたが。
「そうですね!」
「市長、完璧でござる!」
二人はマモンに拍手を送る。するとマモンはどうどうと二人の拍手を鎮めた。
「ただし死ぬまで無理して戦うなお前達っ!命あっての人生だ、それにこの戦いは戦かったことに意味があるのだからな!!」
「そ……それは」
「どういうことでござるか?」
疑問に思った牛頭と馬頭はマモンに尋ねる。
するとマモンは、まるで演説のようにして二人の質問に答えた。
「つまり我々は戦った!戦って、抵抗して、そして負けた!それだけでも、何もしなかったのとは印象が変わってくるということだ!つまり失敗しても、我々は魔王様に許しを請うチャンスが訪れるかもしれないということなのだ!!」
「おぉっっ!!」
「おぉっっ!!」
「まぁ……もし万が一チャンスが無かったら……その時はカネを持って逃げ出せばいい!わたしはあいにく魔王様に忠誠の誓いはたててないからな!!」
「……そういえば」
「その手もあるのでござるな……」
忠誠の誓いとは、現在の魔王ベルゼブブが旧魔王のルシファーからクーデターを成功させた際、自らの直接配下となる者に誓わせたものであり、それを誓った者のみが軍を持つことを許されている。
しかし万が一忠誠の誓いを破ることがあれば、その者の魂は闇の底パンデモニウムに送られるという、ある種呪いの契約でもあった。
しかしマモンはこの誓いは立てておらず、ベルゼブブからは石碑を守るという使命だけを経て、このシンアルの市長をしていたのだ。
「いいかお前達、わたし達は勝つために戦うのではない、この危機から逃れるために戦うのだ!分かったな!!」
「ははぁっ!」
「ははぁっ!」
「さぁ行け!健闘を祈るぞ!」
「失礼しました市長!」
「失礼致した市長!」
牛頭と馬頭はマモンに敬礼し、市長室を後にする。
その廊下を歩く最中、牛頭は馬頭に問いかける。
「なぁ馬頭よ、我らもしかして市長にダシに使われてないか?」
「牛頭よ、それはいつものことでござる。そんなことは考えず、市長が遺跡に行くことを信じて我らは戦うのみだ」
「……その通りだな馬頭よ!」
牛頭と馬頭は深く考えることを止め、ただただ戦うことに専念する。
いろんな意味で、従順な部下達だった。
一方のマモンは、市長室から牛頭と馬頭が出たのを確認すると、金庫に保管しているカネをまとめ始めていた。
「ふぅ……これだけあればわたしとあいつらがしばらく食っていけるカネはあるだろう。……ベルゼブブが失敗を許すような魔王だったら、こんな世界にはなっとらんわ」
マモンはベルゼブブという悪魔を知っているからこそ、逃げる準備をしていた。決して他人の失敗は許さず、時には死をもって償わせる程の冷酷無比な悪魔、それがベルゼブブだった。
「それに市長稼業で十分稼ぐだけ稼がしてもらったしな……利用しあったのはお互い様だ」
エキドナの遺跡を観光地にしたのはマモンの提案であり、その一部の売り上げをマモンがせしめていた。
この市長生活が長く続くとは思っていなかったマモンは、こういう時のために財を蓄えていたのだ。
「さてこのカネを使ってまた商売の道に戻るか……しかし商いはベルゼブブが制限してるし……くそ、渡りにくい世の中だ!」
マモンは苦虫を噛み潰したような表情で苦悩する。
魔界の商売は全て魔王ベルゼブブの統制下にあり、認可が下りた商人にしか商売は出来ないよう定めている。
更にベルゼブブは認可をした商人からも商人税なるものを取っており、これは財力を持ち、その商人が力を持つことを恐れたからである。
財力は武力に勝るものがある。だからこそ、ベルゼブブはその心配の芽を根っこから引き抜くことにしたのだ。
「……ルシファー様の時代は良かったな。あの自由な時代はもう来ないのか」
ある程度荷物とカネをまとめたマモンはぼやきながら、金庫を一度閉める。
そしてお気に入りのハットを被り、市長室を後にした。
「さて……市長としての最後の仕事か。得も無く損しかない……嫌な仕事だ」
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