The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

008【1】

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「……静かだね」

「あぁ……営業時間はとっくに過ぎてるからな」

キョウスケとグレイの二人は遺跡のチケット売り場の場所へとやって来ていた。
昼間には溢れかえる程の人集りがあったこの場所も、営業時間が終わった今はもぬけの殻となっていた。
昼間には開いていた大勢の人を入れるための門も、今は閉鎖されており、代わりに門の隣にある非常扉が開いていた。

「ゲートは閉まってるけど非常扉は開いてるね」

「あぁ……マモンのやつわざわざ開けっ放しにするってことは俺達を誘ってるってことなのか?」

「どうだろう……でもどちらにしろ行かなきゃいけないよね」

二人は非常扉を潜り、遺跡の中へと入って行く。
遺跡の中は岩に囲まれているため、夕方になって日が陰ると日の光が入らないようになってしまい、真っ暗になっていた。

「真っ暗だね……」

「キョウスケ気をつけろ……何処から狙ってくるか分からないからな」

二人は警戒しながら遺跡の中を歩く。
すると突如、遺跡に置かれていた工事用の大きなマジックバルブが一斉に点灯し、遺跡の中が一気に明るくなった。

「うわっ眩しいっ!」

「くっ……マモンか!」

突然明るくなったため目が慣れておらず、二人は片目を開けるので精一杯だった。

「フッフッフッ……はじめましてケルベロス君。まさかここまで来るとは……さすがは魔王様勅命の尋ね人、やはり牛頭と馬頭だけでは倒しきれなかったか」

遺跡の真ん中、昼間に自らの演説を行った場所にマモンは立っていた。
漆黒のスーツに身を包み、漆黒の翼を携え、漆黒のシルクハットを被った、真っ白い鳥の頭。
マモンは一礼し、キョウスケとグレイの立っている場所を見る。

「フッ……お前の部下なら今頃、俺の仲間が遊んであげてるところさ。死んじゃいない」

「そうか……わたしの都合で部下を死なせるのは本望ではない」

グレイの言葉を聞き、それを素直に受け止めるかどうかはさておき、ひとまずマモンは胸を撫で下ろした。

「それにしても、どうだね君たちこの遺跡は。これはわたしの提案で新たなシンアルの旅行地となった遺跡なんだ。エキドナの石碑を最大限に利用するためにね」

マモンは両手を広げ、遺跡の広さをアピールする。

「やはりここはお前が作った箱物だったのか」

「箱物とは失敬な。ここの大穴は元々、先の大地震で折れたバベルの塔が落ちて出来た穴なんだ。バベルの塔の回収が終わった今、こうしてエキドナの石碑を利用して遺跡として売り出しているが、本当は貴重な大穴なんだぞ?わたしが作ったと言っても、せいぜい道を舗装したくらいだ」

マモンが嘘をついている様子はなく、ここは本当にかつて折れたバベルの塔が横たわって出来た大穴だった。
つまり『エキドナの石碑が眠る遺跡』というのは嘘であれ、『バベルの塔が横たわっていた跡地としての遺跡』という意味では、ここは間違いなく遺跡ではあり、人工物ではなかった。

「チッ……じゃあ遺跡の保存料ってのもあながち嘘じゃないってことか」

「そうだ。この遺跡はまだ未発掘な部分や舗装部分が足りないゆえ、入場料金は高めにとっているがこれは仕方ない……まあ最も、一部はわたしの元に入っていたがせいぜい一割程度。あとは全部遺跡の保管費用になっているのだよ」

マモンに抜かりは無く、ジャックの銀貨20枚の恨みはどうやら果たせそうにないなとグレイは心の底で思った。

「フッフッ……さてこの話はこれくらいにして、ケルベロス君、キミの要件はあのエキドナの石碑だろ?キミはあの石碑を奪いに来た……だが正直わたしには分からない。何故魔王様はあの石碑に固執し、何故君はあれを奪おうとするのか……」

やはりグレイが予想した通り、マモンはこの石碑の正体が何なのか、その事実をベルゼブブから伝えられていなかった。

「戦う前に教えてくれ、わたしは魔王に指示され何を守っていたのか。このエキドナの真の姿は何なのか……」

「それじゃあこっちにも教えてもらおうか。その石碑の石化を解く方法をな」

マモンの要求にグレイは条件を突きつける。
しかしマモンは元商売人、この程度の条件を相手が突きつけてくることは百も承知だった。
それでもあえて聞いたのだ。
自分が今まで何を守護してきたのか、その正体を知る最後のチャンスだと思ったから。

「……いいだろう。ではまず君からの条件を呑もうか。石碑の石化を解く方法、それはわたしの持っているこのスギライトの宝石で解くことが出来るだろう。スギライトには癒しと浄化の力があるからな」

マモンは右薬指に着けている、紫色の宝石が着いた指輪をグレイ達に見せる。

「なるほど……その指に着けてたものはただの成り金趣味じゃないってことか」

「フッフッ……そんな趣味に意味など無いからな。さて、ではこの石碑の正体を聞かせてもらおうか」

マモンがグレイに要求すると、それに真っ先に応えたのはグレイではなく、キョウスケだった。

「あれには……僕の母さんが封印されてるんだ」

「母親?しかしお前は……人間ではないのか?」

マモンは困惑する。
石碑の中には間違いなくエキドナが封印されているはずなのに、何故それが人間の母親なのか理解出来なかった。

「あの石碑のエキドナは普通のエキドナじゃない。デビルサモナーシュンジが自分の妻の魂を転生させて生まれたエキドナなんだ」

「デビルサモナーシュンジ!?ではそこにいる人間の子供はその息子ということなのか!」

「そうさ……シュンジの血を引く、新たなデビルサモナーさ」

マモンは驚愕する。
新たなデビルサモナーの存在に、そして自分の守っていた石碑の正体に。
それは全て、魔王ベルゼブブを唯一消滅寸前までに追い込んだ人間、デビルサモナーシュンジに繋がっていたのだ。

「デビルサモナー……その血は途絶えたと思っていたが、こうやって続いていたというのか。しかしベルゼブブもデビルサモナーではなく、その妻ですら脅威に感じ、石碑が復活しないよう躍起になっていたとは……なんとも皮肉な」

マモンはフッと笑う。
自分がその魔王の躍起に、知らぬ間に付き合わされていたと思うと馬鹿らしくなってきたのだ。

「どうするマモン、それでもまだお前はその石碑を守るために俺達とやり合うってのか?」

グレイが尋ねると、マモンはハットが脱げないよう深く被り直す。

「ベルゼブブのやり方には常に飽き飽きしていたが……うむ、君たちの話を聞いて奴との関係には踏ん切りがついたよ。だからこれから戦うのは、君たちがベルゼブブに立ち向かう力を持っているか、それを試させてもらうことにしよう」

「タダでは渡してくれない……ってことですよね」

マモンの放つ殺気を感じ、キョウスケは身構える。

「商売人はタダという言葉が嫌いなんだ。君達がどれ程わたしにとって利益となりえる人物であるか……ここで吟味させてもらうぞ!」

直後、マモンは自らの羽を大きく広げ、遺跡の真ん中から飛び立つ。
その周囲には砂煙が舞い上がった。
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