The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

008【2】

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「グレイ!ヒートブレス!!」

先に攻撃を仕掛けたのはキョウスケの方だった。
グレイはそれに応じて、上空をホバリングしているマモンのいる方向に向かって一発の火球を飛ばす。

「フッ……甘いわ!」

するとマモンは左羽を一振りし、右側へと横移動をする。しかしその最小限の行動だけで、グレイの放った火球を避けるには十分だった。

「そんな豆鉄砲一発を飛ばしたとて、このわたしには当たらんぞ!」

「クッ……!」

キョウスケは苦い表情を浮かべる。
マモンの言う通り、ヒートブレスを一発ずつ撃ったところで、見切られてしまい、避けられるのが関の山。
しかし自らの魔力の消耗を抑えるため、いたずらに連射をし、無駄打ちが出るということは避ける必要があった。

「飛んでいられては距離の詰めようも無いが……とにかくヤツに近づくぞキョウスケ!」

「うん!」

二人はその場を走り出し、マモンの飛んでいる遺跡の真ん中へと向かう。

「近づいてくるか……だがそちらの攻撃が当たりやすくなるのと同じで、近づけばわたしの攻撃も当たりやすくなる。それを今し方教えてやろう」

マモンが呟くと、両指に着いていた十個の指輪の一つ、右人差し指の赤い石の着いた指輪が強く光り始めた。

「マテリアル・セット・ルビー!」

そう唱えると、マモンの両手から炎が湧き上がり、その炎を投げるような仕草をとる。すると炎は火炎の玉となり、キョウスケとグレイ目掛けて飛んできたのだ。

「うわっ!!」

「キョウスケ!」

キョウスケの丁度足元に火炎の玉は当たる。火炎の玉が当たった地面は燃え上がったが、彼は辛うじてそれを避け切った。

「あ……危なかったぁ……」

キョウスケの額に冷や汗が浮かび上がる。
しかし彼は足を止めることなく、地面から出ている炎を背後に、マモンに向かって走る。

「ほう……避けたか」

マモンがキョウスケの動きに感心していると、先を走っていたグレイが遂にマモンの飛んでいる場所の真下に到達していた。

「キョウスケ!!」

「ヒートブレス!!」

グレイの合図と共に、キョウスケは魔技を唱える。真上を捉えたとなれば、距離が離れていた先程とは異なり、いくら横移動したところで追撃を浴びせられることが出来る。
状況は完全にグレイが有利。
しかしマモンはニヤリと笑う。不吉な笑みをして。

「マテリアル・セット・ダイアモンド!」

マモンが唱え、今度は右中指の透明に輝く石が光り輝く。
直後、グレイの放ったヒートブレスはマモンに直撃した。

「…………チィッ!!」

直撃したはずなのに、グレイは苦々しい表情をしながら舌打ちをする。
マモンはそれを避けようともしてなかった。しかしそれは、避けるのを諦めていた訳ではない。

「フッフッフッ……どうした?その程度か?それでは魔王ベルゼブブは倒せんぞ」

炎が収まり、マモンの姿が見えてくる。
するとマモンの周囲には透明の膜のようなものが張っており、彼自身は無傷であった。

「気づいていると思うが、わたしの魔法は宝石や鉱石を元に魔力を使って発現させる魔法、マテリアル魔法だ。通常の魔法より多少魔力は消費するが、より強力な魔法を打ち出すことが出来る」

マモンを覆っていた透明の膜は消え、真下にいるグレイを見下す。
その間に追いついたキョウスケも、グレイと共にマモンを見上げた。

「くっ……マテリアル魔法……厄介な魔法を持ってやがる」

「どうするグレイ……このままじゃ歯が立たないよ」

ヒートブレスを受け止められたキョウスケは弱気になる。避けられるのを防ぐために近づいたが、受け止められては意味がない。
更にここは相手にとっても至近距離。攻撃は当てやすく、完全に二人は不利な状況に立たされていた。

「だったら……ハウンドボイス!」

するとグレイは自分の真下の地面に向き、口から衝撃波を出し、空中へと飛び上がった。
マモンとの距離はどんどんと近づく。

「これならどうだっ!!」

グレイとマモンとの間はすでに目と鼻の先。
これでは回避することも、バリアを張ってガードすることもままならない。

「ヒートブレス!!」

キョウスケは唱え、グレイの口元に火炎が溜まる。

「うおおおおおおおおおっっ!!!」

せっかくものにしたチャンスを逃さぬよう、キョウスケは有りっ丈の魔力をこの火球に込める。
グレイの口元の炎はさらにたぎり、勢いを増す。

「食らえっ……マモオオオオン!!」

グレイはキョウスケが注いだ魔力を無駄にしないよう、一寸残らず炎へと変換し、火球を吹き出した。
だがその時……マモンはニヤリと笑い、それはグレイの目にも映る。
火球は確かにマモンに当たった。大きな火炎がマモンを覆い尽くし、焼いていく。
グレイはキョウスケの隣に上手く着地した。

「やっ……たのかな」

「分からん。ただ……アイツは笑っていた……ヒートブレスを受けるその瞬間に」

燃えている炎を見ながら、二人の心には腑に落ちない何かが残っていた。
まだ終わったと思えない、そんな不安感が。

「っ!グレイあれっ!」

キョウスケが指差す。その指先は空中で燃えている炎であり、その炎の中で青い光が輝くのを彼は見た。
その刹那。

「マテリアル・セット・ジェダイト・サファイア!」

声が聞こえ、炎の真下の地面から勢いよく水の柱が伸び、それは燃え上がる炎を瞬時に鎮火させた。

「ブラボーブラボー……今のはなかなか良かった」

水の柱が消え、薄く焦げたマモンがその姿を現した。

「今の一発は二つの魔法を使わされたよ。防御力を瞬間的に上げるジェダイト、そして今の水の柱サファイア。これは随分と魔力を食われてしまったもんだ……デビルサモナー、君も同じだろうがね?」

「うっ……」

二つの魔法を組み合わせ、更に通常でもマテリアル魔法の魔力の消費は激しく、マモンはなかなかの魔力を消費していた。
だが、それ以上にキョウスケは先程の一発に魔力を掛けていた。
人間は魔力を無くしても、生命力を削られることは無い。だが、魔力が無くなれば当然魔技は使えなくなる。
これは、戦場に剣も鎧も装備せず、素っ裸で駆けているのと同じことだ。

「キョウスケまだいけるか?」

「うん……ただもしかしたらあんまり後が無いかも」

キョウスケの握っている魔札、いつもなら赤い光をギラギラと照らしているのだが、今の魔札が照らす光はいつもに比べると弱々しいものだった。

「フッフッフッ……デビルサモナーとてまだまだ青いか。それではこちらから行かせてもらうぞっ!!」

マモンの左人差し指にある、大海原のように青い宝石。その宝石が魔力を得て、輝きを増す。

「マテリアル・セット・サファイア!」

マモンが唱えると、キョウスケとグレイの足元に水が溢れ出てくる。

「クッ……!な、なんだこれは!!」

グレイが言うや否や、湧き出てきた水は二人の足をまるで鷲掴みしたかのように固定し、身動きがとれなくなる。

「サファイアの水は変幻自在に姿を変えることができ、先程のような柱にもなれば腕にもなる。どうだね?底なし沼に浸かったような気分だろ?」

「くっ……ダメだビクともしないっ!」

キョウスケは足を抜くため踏ん張るが、全く歯が立たず、足元の水は更にうねり始めた。
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