The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

009【1】

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「やった……勝った……」

キョウスケは力が抜け、片膝をつく。
マモンは立ち上がる気配も無く、ただ地面に倒れ込んでいた。

「どうにか……やり遂げたな」

グレイはよろめきながらも、キョウスケの隣にやって来る。
この場にいる全員が満身創痍。立っているのもやっとだった。

「そうだね……母さんのおかげだよ」

「母さん……の?カコさんの……声が聞こえたのか?」

「うん……水の柱の中で気絶した時に、僕を起こしてくれたんだ。それに足が動くようになったあの光も、多分母さんが僕達を助けるために」


「そうか……じゃあ……一刻も早くカコさんを救わないと……な」

二人は再び歩き始め、マモンの倒れている場所までやって来る。
マモンの着けているスギライトの指輪、これを使えば石化は解け、カコを救うことが出来る。

「……フッフッフッ……あの瞬間に力を覚醒させるとは……わたしも多少侮っていた」

するとマモンは笑い始め、顔を上げる。
余程お気に入りなのか、ハットだけは肌身離さずキッチリと被っていた。

「俺達の勝ちだ……右薬指の指輪を渡して貰おうか……」

グレイが言うと、マモンは更に笑い、体を動かし始める。
ゆっくりと両腕で体を持ち上げ、胡座をかいてその場に座った。

「石化はわたしが解こう……というより、わたししか解けない。マテリアル魔法を使える者にしかあれは解けないからな……だが、魔力を回復するまで少し話をさせてくれ」

二人はマモンを警戒したが、マモンに戦うような気配はもう無く、二人も挙げている腕を下ろした。

「まずはそうだな……わたしはこれでベルゼブブとの約束は一応果たした。シンアルの市長になり、あの石碑を守る……その結果が奪われたということになろうと知ったことでは無い。守ったという事実はあるのだからな」

「フン……それでどうする。その程度の言い訳でベルゼブブが許すだろうか?」

「ムリムリ絶対無理……降格で終わればいいが、下手したらパンデモニウムに落とされかねん。それにわたしももう市長はやりたくない。毎日演説して……書類に判子……そして議会で右に左にうだうだ言われ……もうこりごりだ」

マモンは俯きながら、首を横に振る。
どうやら色々と彼も彼なりに苦労しているようだった。

「わたしはこれから辞職し、商売の道に戻ろうと思っている。といっても、今の商売は全てベルゼブブの監視下に置かれまともな商いがされていない。だから闇商店とはなるが、そこから始めようと思っている」

「……グレイ、闇商店って?」

キョウスケは怪しい響きの言葉が出てきたので、グレイに尋ねる。

「闇商店ってのは要するに魔王非公認の店ってことだ。今ベルゼブブは全ての商売を監視下に置いていて、奴の許可が無ければ商売は出来ないんだ」

「へぇ……でもそれってすごく危ないことだよね?」

するとマモンはそんなキョウスケの言葉に、静かに笑った。

「フッフッフッ……モチロン危険だよ。並の経営しか出来ない魔物ならすぐ倒産するか即監獄に行ってしまう程な。だがわたしは違う……君はこの遺跡に来た人集りを見てどう思った?」

「えっ!……すごい魔物の数だなって思いました」

「そう、わたしは人を集めることに才を持っているその自負がある。人が集まる所には必ずカネも集まる。しかし、時には人を集めるためにカネも使わなければならない。だがここが商いの才が最も見込まれるところ。ここでしくじる奴はただの凡人だ」

「は……はぁ……なるほど」

マモンの熱い商人トークに、思わず圧倒されてしまうキョウスケ。
そんなキョウスケに気づき、マモンは「おっと」と言って軽く口をつぐんだ。

「失敬、こういう話になるとつい熱くなってしまうんだ。ただ少年は若いから故、君に一言。『人を集めるのにカネは惜しむな』これだけ言っておくことにしよう。もし君が将来、そんな仕事に就く日が来たら思い出したまえ」

「は……はい」

小学六年生である、今のキョウスケにはイマイチこの言葉に共感は持てなかったが、それは将来持つことになるかもしれない一言ではあった。

「さて……あともう一つ君達に聞いておきたいことがある。君達は本当にベルゼブブを倒すつもりでいるのかな?」

唐突な核心を突いた質問に、キョウスケとグレイは少し動揺する。

「……あぁ、そのつもりだ」

「そうかね。ではわたしから一言、このまま行けば君達は必ず死ぬ」

歯に衣着せないマモンの一言に、二人の言葉は詰まる。
この一戦がその証拠であり、二人には言い返す言葉が無かった。

「わたしはベルゼブブの更に更に更にまだ更に弱い存在だぞ。それなのに君達は大苦戦し、見ろ自分の体の傷を。ベルゼブブはその傷よりもさらにえぐい傷を残すからな」

キョウスケとグレイの体は傷だらけであり、体力も魔力も共に限界を振り切っていた。
だが、これではベルゼブブには全く歯が立たない。それどころか返り討ちにされるだろう。
そんな不安が、二人には尽きなかった。

「わたしが見たところ、ケルベロスは甘い評価だが、まだ能力が開花していないだけだからこれからの伸び代は十分見込まれる。ただデビルサモナー、君の方はこの短い時間でベルゼブブに追いつく程の力を持てるとは思えない。デビルサモナーのシュンジだって、何年もかけて手に入れた力でやっとベルゼブブを追い詰めたんだ。それ以上になると言うのなら、それは今の君には無理だな」

はっきりとマモンは駄目出しをする。
しかしそれは二人の希望を踏みにじるためではなく、二人が希望を膨らませ過ぎて、地に足が着いていないのを恐れたからである。

「僕の力が……」

キョウスケは俯く。
自分でも分かっていた。自分の力はまだまだ魔王ベルゼブブにも、そして父にも遠く及ばないことを。
だが言葉にして他人から言われると、心にこたえるものがあった。
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