The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

009【2】

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「いいか少年、君の努力も必要だがそれだけでは時間が足りない。特に魔力を増加させるのには何年もの月日がかかる。そこで後から君にプレゼントを送ろう。もうこの短時間で出来ることは、君を強くするよりかは、君を強くするよう見繕う他ない」

「見繕う……ですか」

キョウスケはマモンの言っている意味の全てを理解した訳ではないが、マモンは今の自分をもっと強くする方法を知っているということだけは分かった。

「お願いしますマモンさん……僕をどうにかベルゼブブに対抗出来るよう強くしてください」

何であれ、キョウスケに手段を選択している暇など無かった。
世界を滅ぼそうとする最終戦争ハルマゲドン。それは遠い未来ではなく、現在刻々とその時は迫っていたのだから。

「……分かった。もうこの腐り切った世界を救うのは君達しかいないだろう。わたしのような悪魔はその手伝いをするだけで精一杯……すまないな」

「いえ……僕達もなんだか調子に乗っていたような気がしますし、ここでマモンさんに自分の弱さを教えてもらえたのは幸運だったと思います。ありがとうございます」

「愚かな自分に気づけた……すまなかったなマモン」

二人はマモンに礼をする。
己を鍛えるにはまず、己の弱さを知ること。その点において、このマモンとの一戦は二人にとって大きな収穫と成り得た。

「フッフッフッ……さて、そろそろ石化を解く程の魔力は回復しただろう。君の母親を解放せねばな」

「はいっ!」

マモンは立ち上がり、自慢のハットを被り直す。石化を治すための鉱物スギライトは、マモンの右薬指で紫色に怪しく光っていた。

「サファイアの水の柱があっただろ。あれを弱めていたのは、どうやら君の母親だったようだ」

マモンがそういうと、キョウスケは目を細めた。

「やっぱり……母さんが」

「石化してもなおサファイアの水を抑える程の力を持ち合わせているとは……彼女は本物のエキドナではないがそれに匹敵する程の力があるやもしれん。物凄く強力な魔力の持ち主だ」

「……もしかしたら、父さんは僕なら母さんを見つけ出せると思ってこんな強い魔物に転生させたのかもしれませんね。僕の力になれるように」

「フッフッフッ……両親に感謝せねばな」

「……そうですね」

しかしキョウスケの心の内には、一つのわだかまりがあった。
それは両親の大き過ぎる恩恵であり、自分は自分の力では一向に前に進めていないのではないかという、もどかしい気持ちがキョウスケにはあった。
これは自分の冒険であるはずなのに、親に導かれて、やっとこすっとこ、その導かれた道を歩いているような、そんな気が彼にはしたのだ。
石碑の前に三人は立つ。先程は白光を出し、サファイアの水を抑え込むほどの魔力を放出していた石碑だったが、今は何も無く、普通の石碑となっている。

「それでは……マテリアル・セット・スギライト!」

マモンの右薬指の紫色の鉱物が輝きを増し、その光が真っ直ぐに石碑に向かって照射される。
その刹那、石碑は少しずつ崩れ始め、ボロボロと石が遺跡の床に落ちてきた。

「マ……マモンさん、母さんは大丈夫ですよね……?」

「心配はない、石化は体の表面を石にしているもの。すなわち、その表面の石を取り除けば石化は解けるということだ」

瞬間、ビシビシという不吉な音がし、石碑の縦方向に大きなヒビが入る。それを見てキョウスケの背筋がゾクッとした。

「……グレイ、これホントに大丈夫だよね?」

「フッ……そんなに心配なら自分の手で砕いてみればいいんじゃないか?」

「そんな空手家みたいなこと出来ないよ……」

どうやら心配しているのはキョウスケだけであり、グレイとマモンはむしろ順調に石化が解けていることの表れであり、安心していた。
そして縦ヒビの入った石碑は半分に割れ、石の塊はガラガラと大きな音をたてて一気に崩れ落ちた。

「か……母さん?」

石碑は完全に崩れ落ち、周囲に砂煙が舞い上がり、視界が遮られる。

「ゲホゲホゲホッ!!んもう!何よこれぇ~」

すると砂の舞う先から女性の声が聞こえ、その声はキョウスケも、そしてグレイも聞いたことのある声だった。

「ん?あれ?あっ!これ足が二足じゃ無くて蛇じゃない!どうやるのかしら?ニョロニョロする感じ?」

ガリガリと落ちた石や砂を掻き分けて、こちらに進んで来る。
そしてついに、彼女はキョウスケとグレイの視界が明るみになっている場所までやってきた。

「あらっ!キョウスケにグレイさんじゃない!いきなり目の前が明るくなったと思ったら、あなた達がやってくれたのね」

その姿は間違いなく、キョウスケの母親カコその人だった。
下地が黄色のオレンジのボーダーが入ったシャツ、そしてお気に入りのデニム素材のエプロン姿。そこまではキョウスケが人間世界で見たカコと同じ姿だった。
ただ、人間の時と違うのはエキドナであるため、二足ではなく尻尾。足部が蛇になっていた。

「母さん……やっと会えた……本物の母さんにっ!!」

キョウスケは嬉しさのあまり、カコに飛びつく。そんな息子を、カコは優しく受け止めた。

「本物……あぁ!じゃあわたし今は魔物ってことね!じゃあここは魔界なのかしら?それにしても立派な岩場ねぇ~グランドキャニオンみたい」

カコは片手で我が子を抱きながら、周りの景色を眺めていた。

「いや……順応早過ぎやしませんかカコさん……もっとこう驚いたり、キョウスケとの出会いに感動したりとか」

あまりに状況の呑み込みが早いカコに、思わずグレイは唖然としてしまう。

「モチロンびっくりしてますよグレイさん。それにキョウスケとグレイさんにこうやって生身で再会出来るのは嬉しいわ。だけどね、わたしさっきまであなた達と一緒に戦っていたのよ!わたし水の柱を防いでたんだから!!」

「あっ、じゃあやっぱりあれは母さんだったんだ」

キョウスケは思い出す。水の柱の中で意識が飛んだ時に聞いた声を、そしてサファイアの水を抑えていた謎の光を。
あれは全て、カコが自らの意思でやっていたことだった。

「キョウスケが苦しんでる声が聞こえた気がしたからね……分かるのよ母さんには!」

「はぁ……やっぱ母さんには敵わないなぁ」

母は強し、それを実際に体現したのがキョウスケの母親カコだった。
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