65 / 71
第5章 バベルの塔
001【1】
しおりを挟む
「起きなさいキョウスケ」
声を聞き、キョウスケはパッと目を覚ます。目の前には母親カコの顔があり、朝の光が差し込んでいるような気がした。
「はっ!おはよう母さん!い……今何時?早く支度して家を出ないとミレイに怒られちゃう!!」
「あらあらキョウスケ、ここはお家じゃなくて民宿のお部屋よ?寝ぼけて学校と間違えてるのかしら?」
「えっ……あっ……またか」
キョウスケが起き上がると、そこは小さな小部屋の中。
間違いなく家ではなく、シンアルにある民宿の部屋の中だった。
「わたしが起こしたから余計そう思っちゃった?」
「そうかも……あれっ?グレイとジャックさんは?」
キョウスケはすぐに気づく。部屋にはカコはいたが、グレイとジャックの姿が何処にも見当たらなかった。
「二人なら騎士団の検問が始まってないかって先に街に出て行ったわよ。それにキョウスケがあまりにもぐっすり寝てるからもうちょっと寝かせてあげようって」
「そ……そうだったんだ」
ここ数日、魔界に来てからというもののキョウスケの身には初めて起こることや、命懸けの戦闘が重なり合い疲れ果て、疲労はピークを過ぎていた。
なので周りの音も聞こえない程爆睡をしていたという訳だった。
「さっ、支度してわたし達も行きましょ?今日は忙しくなるんでしょ?」
「うん……そうだね」
こうして母親と二人で居ると、人間の世界にいるような気がするキョウスケ。
早くこんな、元の日々が戻るよう切に願うばかりだった。
荷物をまとめ、民宿を出た二人は偵察から帰って来たグレイとジャックにバッタリと鉢合わせした。
「おうキョウスケ!ぐっすり眠れたか?」
「うん、久々にちゃんと寝れた気がしたよ」
「そうか、そりゃあ良かった!起きる気配が全く無かったからさ……まっそりゃあ見慣れない魔界にいるだけでストレス溜まるだろうに、戦った相手が相手だけに疲れるのは無理ないか!」
ヘッヘッヘッと相変わらず陽気に笑うジャック。そして隣では、それに反して難しい顔をしたグレイが立っていた。
「グレイ……検問の方はどうだった?」
「うむ……本格的に騎士団の奴ら検問を敷いている。あそこから抜け出すのはほぼ無理だな。更に観光客の出入りで列も出来てたから、検問口じゃ遺跡以上に大混雑さ」
「遺跡以上って……大渋滞なんだね……」
シンアルには四つの街と外の出入り口があり、それ以外の場所は外壁で行き来を封じられている。というのも、このシンアルの街全体が戦争時になると砦の役割を果たすため、このような防壁が成されていた。
「なんせ一人一人の荷物チェックから身分証の提示までしなきゃならないんだぜ?このシンアルの街が大都市ってのを知らないのかねぇ騎士団は」
「まぁ……でもそれだけやらないといけないってことはよっぽどわたし達を捕まえるよう指示されたんでしょうねぇ」
「ヘッヘッ……こりゃ捕まったら裁判に掛けられても魔王命令で即刻死刑だぜ。今の魔界の司法はあって無いようなものだからな」
薄笑いをするジャックだが、心の底ではカコと同じように恐怖を感じていた。
昨日までの生ぬるい魔界の旅は終わりを告げ、ついに重罪人としての厳しい逃亡生活が始まったのだ。
「フッ……それに朝の新聞には一面にマモンの突然辞任の記事が載っててな。それに怒った魔王はマモンを役職完全破棄の上、突如七つ程の罪をくっつけて罪人に仕立て上げやがったよ」
「そんな滅茶苦茶な……!!」
「ベルゼブブはそういう奴なのさ。自分の意に背く者は徹底的に潰す。そうやって今の政権を維持している」
「……今の魔界に自由なんて無いんだね」
「あぁ……無い」
キョウスケの表情が陰り、グレイも言い切る。
今の魔界は魔王第一主義の王政の世界。逆らう者は反逆分子として罪人に仕立て上げ消される。
そして革命を起こそうにも、ベルゼブブとその配下である軍団のその強さに圧倒され、跡形も無く革命は抹消される。
力もあり政治も支配する……完全なる絶対王政が確立されていた。
「……さあさあしみったれた話はここまでにしてさ、これからバベルの塔へ突撃するんだ。もっと元気出していかねぇとやられちまうぞっ!」
「そうだね……よしっ行こう!っとその前に行く準備をしないと」
「何だよキョウスケ……締まんねぇな」
「へへへ……ちょっと待ってね」
ジャックの励ましで気持ちも切り替わり、キョウスケは昨日マモンから受け取ったPMMのマップシステムを作動する。
シンアルの北の路地裏にある外への抜け道、その場所にマークが着いており、ここをまず目指すこととなる。
声を聞き、キョウスケはパッと目を覚ます。目の前には母親カコの顔があり、朝の光が差し込んでいるような気がした。
「はっ!おはよう母さん!い……今何時?早く支度して家を出ないとミレイに怒られちゃう!!」
「あらあらキョウスケ、ここはお家じゃなくて民宿のお部屋よ?寝ぼけて学校と間違えてるのかしら?」
「えっ……あっ……またか」
キョウスケが起き上がると、そこは小さな小部屋の中。
間違いなく家ではなく、シンアルにある民宿の部屋の中だった。
「わたしが起こしたから余計そう思っちゃった?」
「そうかも……あれっ?グレイとジャックさんは?」
キョウスケはすぐに気づく。部屋にはカコはいたが、グレイとジャックの姿が何処にも見当たらなかった。
「二人なら騎士団の検問が始まってないかって先に街に出て行ったわよ。それにキョウスケがあまりにもぐっすり寝てるからもうちょっと寝かせてあげようって」
「そ……そうだったんだ」
ここ数日、魔界に来てからというもののキョウスケの身には初めて起こることや、命懸けの戦闘が重なり合い疲れ果て、疲労はピークを過ぎていた。
なので周りの音も聞こえない程爆睡をしていたという訳だった。
「さっ、支度してわたし達も行きましょ?今日は忙しくなるんでしょ?」
「うん……そうだね」
こうして母親と二人で居ると、人間の世界にいるような気がするキョウスケ。
早くこんな、元の日々が戻るよう切に願うばかりだった。
荷物をまとめ、民宿を出た二人は偵察から帰って来たグレイとジャックにバッタリと鉢合わせした。
「おうキョウスケ!ぐっすり眠れたか?」
「うん、久々にちゃんと寝れた気がしたよ」
「そうか、そりゃあ良かった!起きる気配が全く無かったからさ……まっそりゃあ見慣れない魔界にいるだけでストレス溜まるだろうに、戦った相手が相手だけに疲れるのは無理ないか!」
ヘッヘッヘッと相変わらず陽気に笑うジャック。そして隣では、それに反して難しい顔をしたグレイが立っていた。
「グレイ……検問の方はどうだった?」
「うむ……本格的に騎士団の奴ら検問を敷いている。あそこから抜け出すのはほぼ無理だな。更に観光客の出入りで列も出来てたから、検問口じゃ遺跡以上に大混雑さ」
「遺跡以上って……大渋滞なんだね……」
シンアルには四つの街と外の出入り口があり、それ以外の場所は外壁で行き来を封じられている。というのも、このシンアルの街全体が戦争時になると砦の役割を果たすため、このような防壁が成されていた。
「なんせ一人一人の荷物チェックから身分証の提示までしなきゃならないんだぜ?このシンアルの街が大都市ってのを知らないのかねぇ騎士団は」
「まぁ……でもそれだけやらないといけないってことはよっぽどわたし達を捕まえるよう指示されたんでしょうねぇ」
「ヘッヘッ……こりゃ捕まったら裁判に掛けられても魔王命令で即刻死刑だぜ。今の魔界の司法はあって無いようなものだからな」
薄笑いをするジャックだが、心の底ではカコと同じように恐怖を感じていた。
昨日までの生ぬるい魔界の旅は終わりを告げ、ついに重罪人としての厳しい逃亡生活が始まったのだ。
「フッ……それに朝の新聞には一面にマモンの突然辞任の記事が載っててな。それに怒った魔王はマモンを役職完全破棄の上、突如七つ程の罪をくっつけて罪人に仕立て上げやがったよ」
「そんな滅茶苦茶な……!!」
「ベルゼブブはそういう奴なのさ。自分の意に背く者は徹底的に潰す。そうやって今の政権を維持している」
「……今の魔界に自由なんて無いんだね」
「あぁ……無い」
キョウスケの表情が陰り、グレイも言い切る。
今の魔界は魔王第一主義の王政の世界。逆らう者は反逆分子として罪人に仕立て上げ消される。
そして革命を起こそうにも、ベルゼブブとその配下である軍団のその強さに圧倒され、跡形も無く革命は抹消される。
力もあり政治も支配する……完全なる絶対王政が確立されていた。
「……さあさあしみったれた話はここまでにしてさ、これからバベルの塔へ突撃するんだ。もっと元気出していかねぇとやられちまうぞっ!」
「そうだね……よしっ行こう!っとその前に行く準備をしないと」
「何だよキョウスケ……締まんねぇな」
「へへへ……ちょっと待ってね」
ジャックの励ましで気持ちも切り替わり、キョウスケは昨日マモンから受け取ったPMMのマップシステムを作動する。
シンアルの北の路地裏にある外への抜け道、その場所にマークが着いており、ここをまず目指すこととなる。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる