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第5章 バベルの塔
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魔界騎士団。
それは少数でありながら精鋭を集めた魔界ではエリートの集団であり、全員が騎士であるが故に馬を一人一頭所持している。
騎士達の馬は茶色の毛並みをしているものがほとんどだが、一頭だけ真っ赤な紅の毛並みの馬が繋がれていた。
「こ……これはベリト様!わざわざ御足労ありがとうございます!」
検問を行なっていた騎士が一人敬礼し、その周りにいた騎士達が全員敬礼する。
全身真っ赤な鎧に包まれ、これまた真っ赤なマントを装備しており、頭には王冠を被っている男の騎士。
それこそが、魔界騎士団の団長にして魔界将官の地位に立つ悪魔、ベリトだった。
「うむ……して、検問の方は順調かね?」
「ははっ……それが人の行き来が多く、四方全ての検問口で大混雑を引き起こしてまして……正直なところかなり苦難を強いられております」
「ふーむ……しかし弱ったな。我ら騎士団はアスタロトの親衛隊のように人数がいない……かと言ってバベルの塔を手薄にする訳にはいかんしな」
「どう致しましょうか?これでは埒があきません……」
「ふぅむ……」
ベリトはしばらく腕を組み、考え、ある一つの答えに辿り着く。
「致し方無い……検問は正午までとし、後は各門前にて警備という形に移行する……この街にいることは確かなのだが」
「……見えたのですか、奴等がいる姿が」
「あぁ……ただその後どこに向かったのか、それが見えない。だがバベルの塔だけは警備を怠ってはならない……そう感じるのだ」
ベリトには過去、現在、未来を見通す能力があり、デビルサモナーとその一味がマモンと接触した……ここまでは見えていた。
だがその先のことが、まるで靄がかかっているように見えず、ベリトは苦戦を強いられていたのだ。
「しかし何故いきなり見通せなくなったのでしょうか……奴等が何かの対抗魔法でも使ってるのか……?」
「いや違う……マモンがデビルサモナーに月の石のブレスレットを渡したその瞬間から、奴等の動向が全く見えなくなった。おそらく、あのブレスレットが放つ強力な魔力が邪魔をしているのだろう。代わりにマモンの動向は見えるようになったが、奴を追える程我らに人員はいない」
「ふむ……弱ったところですね……」
「まこと、その通りだな……」
騎士とベリトは共に肩を落として、ガシャリと金属音の擦れる音がする。
そもそも騎士団にとって、マモンの裏切りは予想外であり、いくら先のことを見通せるベリトでも、人の気持ちを読み取るまでのことは出来なかった。
「とりあえず検問の件について、他の門に居る者達にも伝えて参ります」
「あぁ、そうしてくれ。私はまたバベルの塔へ戻る。もし塔の緊急の鐘が鳴ったら直ぐ戻ってくるように……いいな?」
「ははっ!」
そうして、騎士は茶色の自分の馬に乗り込むと、ベリトの伝言を伝えるため街を駆けて行く。
馬の蹄がシンアルの街の石畳みを叩く音がしばらく聞こえたが、その後音は聞こえなくなった。
「私もバベルの塔を守らねばな……アスタロトの二の舞にならぬよう、ここでデビルサモナーの行く手を封じることこそが我が主君に仕える私の定め……世界を悪魔のものにするため、ここが踏ん張りどころだ」
ベリトは繋いであった紅の馬の綱を解き、跨る。
「同胞達よ、励む様に!」
「ははっ!」
ベリトが掛け声を出すと、騎士達は一斉にそちらの方に向き、ベリトに敬礼をする。
まさに選ばれたエリート集団。アンダーグラウンドの親衛隊とは異なり、統率がきっちりと成されていた。
「うむ……行くぞ!」
ベリトが手綱を引くと、紅の馬は力強く地面を蹴ってシンアルからバベルの塔への通路を走って行く。
騎士達はその赤い姿が完全に見えなくなるまで、敬礼を続けていた。
それは少数でありながら精鋭を集めた魔界ではエリートの集団であり、全員が騎士であるが故に馬を一人一頭所持している。
騎士達の馬は茶色の毛並みをしているものがほとんどだが、一頭だけ真っ赤な紅の毛並みの馬が繋がれていた。
「こ……これはベリト様!わざわざ御足労ありがとうございます!」
検問を行なっていた騎士が一人敬礼し、その周りにいた騎士達が全員敬礼する。
全身真っ赤な鎧に包まれ、これまた真っ赤なマントを装備しており、頭には王冠を被っている男の騎士。
それこそが、魔界騎士団の団長にして魔界将官の地位に立つ悪魔、ベリトだった。
「うむ……して、検問の方は順調かね?」
「ははっ……それが人の行き来が多く、四方全ての検問口で大混雑を引き起こしてまして……正直なところかなり苦難を強いられております」
「ふーむ……しかし弱ったな。我ら騎士団はアスタロトの親衛隊のように人数がいない……かと言ってバベルの塔を手薄にする訳にはいかんしな」
「どう致しましょうか?これでは埒があきません……」
「ふぅむ……」
ベリトはしばらく腕を組み、考え、ある一つの答えに辿り着く。
「致し方無い……検問は正午までとし、後は各門前にて警備という形に移行する……この街にいることは確かなのだが」
「……見えたのですか、奴等がいる姿が」
「あぁ……ただその後どこに向かったのか、それが見えない。だがバベルの塔だけは警備を怠ってはならない……そう感じるのだ」
ベリトには過去、現在、未来を見通す能力があり、デビルサモナーとその一味がマモンと接触した……ここまでは見えていた。
だがその先のことが、まるで靄がかかっているように見えず、ベリトは苦戦を強いられていたのだ。
「しかし何故いきなり見通せなくなったのでしょうか……奴等が何かの対抗魔法でも使ってるのか……?」
「いや違う……マモンがデビルサモナーに月の石のブレスレットを渡したその瞬間から、奴等の動向が全く見えなくなった。おそらく、あのブレスレットが放つ強力な魔力が邪魔をしているのだろう。代わりにマモンの動向は見えるようになったが、奴を追える程我らに人員はいない」
「ふむ……弱ったところですね……」
「まこと、その通りだな……」
騎士とベリトは共に肩を落として、ガシャリと金属音の擦れる音がする。
そもそも騎士団にとって、マモンの裏切りは予想外であり、いくら先のことを見通せるベリトでも、人の気持ちを読み取るまでのことは出来なかった。
「とりあえず検問の件について、他の門に居る者達にも伝えて参ります」
「あぁ、そうしてくれ。私はまたバベルの塔へ戻る。もし塔の緊急の鐘が鳴ったら直ぐ戻ってくるように……いいな?」
「ははっ!」
そうして、騎士は茶色の自分の馬に乗り込むと、ベリトの伝言を伝えるため街を駆けて行く。
馬の蹄がシンアルの街の石畳みを叩く音がしばらく聞こえたが、その後音は聞こえなくなった。
「私もバベルの塔を守らねばな……アスタロトの二の舞にならぬよう、ここでデビルサモナーの行く手を封じることこそが我が主君に仕える私の定め……世界を悪魔のものにするため、ここが踏ん張りどころだ」
ベリトは繋いであった紅の馬の綱を解き、跨る。
「同胞達よ、励む様に!」
「ははっ!」
ベリトが掛け声を出すと、騎士達は一斉にそちらの方に向き、ベリトに敬礼をする。
まさに選ばれたエリート集団。アンダーグラウンドの親衛隊とは異なり、統率がきっちりと成されていた。
「うむ……行くぞ!」
ベリトが手綱を引くと、紅の馬は力強く地面を蹴ってシンアルからバベルの塔への通路を走って行く。
騎士達はその赤い姿が完全に見えなくなるまで、敬礼を続けていた。
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