68 / 71
第5章 バベルの塔
003【1】
しおりを挟む
無事縄を道具屋にて入手したキョウスケ達一行は、バベルの塔へ向かうためシンアルの街の北を目指していた。
その道中、グレイは遠くから馬の蹄の音が聞こえるのを耳で聞き取った。
「マズイみんな!馬の走る音が聞こえる!」
「馬!?ってことは……まさか騎士団!」
「そうかもしれん……みんな散って隠れるんだ!」
グレイの指示通り、四人はバラバラになり思い思いの場所に隠れる。
キョウスケは建物の陰に隠れ、騎士が過ぎ去るのを耳で追う。
石畳みと馬の蹄がぶつかり合う、パカラパカラという軽快な音が近づいてき、それは止まることなくキョウスケの元を過ぎ去って行った。
「ふぅ……誰も見つからなかったみたいでよかったぁ……」
キョウスケが建物の陰から出てくると、カコは最初に居たその場所から一歩も動いていなかった。
「あれ?母さん隠れなかったの?」
「えぇ、だってグレイさんがわたしは面が割れてないから隠れる必要は無いって」
「あっそういえばそっか。追いかけられてるのは僕とグレイとジャックさんだからね」
「でもその内わたしも追われる身になるんでしょうねぇ~……女賞金首……カッコイイと思わない?」
「どうだろう……」
カコは楽しそうにうふふ、と笑ってみせる。
冗談なのか、本気でこの状況を楽しんでいるのか……四人の中で最も大物なのは自分の母親なのかもしれない。
そうキョウスケは心の中で思った。
「そういえば他の二人は……?」
キョロキョロと辺りを探すキョウスケだったが、その足元から急に声は聞こえた。
「キョウスケ、俺はここだ」
「わっ!?ぐ……グレイ!」
カコとキョウスケの丁度真下にグレイは伏せていた。
どうやらグレイの背丈が小さかったため、カコの長い尻尾に被さることで騎士からは死角となり、隠れることが出来たようだった。
「……そうやって見るとやっぱり犬と飼い主に見えるね」
「犬って言うな!ほらカコさんも何か言ってくださいよ」
「ふふっいいじゃない。こんな偉いワンちゃんならうちは大歓迎よ?」
「ワンちゃんじゃなーいっっ!!!」
グレイの怒る姿を見て、その母と子は面白可笑しく笑う。
そんな二人を見て、グレイは「嫌な奴等……」とぼそりと誰にも聞こえないくらいの声量で呟いた。
「グレイがここにいるってことは……ジャックさんもこの近くなのかな?」
キョウスケが再び捜索を始めると、今度は近くにあった四角の大きなゴミ箱が爆裂音の様な音を立てて、勢いよく蓋が開いた。
「おえっ!くっせぇ~っ!!」
「ジャ……ジャックさん!?」
そこから出てきたのは、買った縄を担いでいたジャックだった。
ジャックは目に涙を浮かべながら、咳と嗚咽を繰り返しに行い、ゴミのニオイにむせ返っていた。
「な……何でジャックさんそんな所に隠れたの!?」
「何でって隠れるために決まってるだろ?俺はキョウスケやグレイみたいにちびっ子じゃねぇんだいっ!」
ジャックの身長は165センチちょっとあり、キョウスケ達四人の中で最も背が高い。
これくらいの背丈になってくると、建物の陰に隠れてもはみ出てしまうし、ましてやカコの尻尾の裏側になど隠れる訳にもいかず、ちょうど目に入ったゴミ箱の中につかさず潜り込んだのだった。
「それにオイラだってこんなくっさい物の中になんか隠れたくなかったぜ!おかげで身体中ゴミのニオイで溢れてやがらぁ!!」
「うわホントだ……少しだけゴミのニオイがする……」
ジャックの体からは微かなゴミのニオイがし、キョウスケとカコにとってはそこまで気にするほどのものではなかったのだが、それを顕著に嫌がったのはグレイだった。
「……俺の半径5メートル以内に入らないでくれ。臭くて仕方ない」
「半径5メートルってどんだけ離れないといけないんだよっ!これくらいのニオイだったら我慢できるだろ!!」
「お前には僅かなニオイに感じるかもしれんが、俺からすると目の前にゴミ袋が常に置かれているような気になって非常に不愉快なんだ」
「ご……ゴミ袋って……」
グレイは耳も良いが、鼻も良く、ジャックに付いたゴミのニオイは微かな物であっても、グレイにはその二倍、三倍と臭いものに感じたのだ。
これにはさすがのジャックも、ショックを受け落胆した。
「わ……分かった!じゃあさオイラ今からシャワー浴びてくるからさ……」
「そんな悠長な時間は無い。さっきの騎士、シンアルの南の門に向かっていただろ。恐らく検問の状況が変わったに違いない。このまま騎士団の騎士が全部バベルの塔に戻ったら、それこそ全ての作戦が破綻してしまう。それだけは何としてでも阻止しないといけないんだ」
「そ……そんなぁ……」
「ま……まぁ緊急だしジャックさん。それに、それくらいのニオイならその内取れると思うし、気にしないでよ」
「うぅ……すまねぇなキョウスケ」
さすがに可哀想に思ったキョウスケはジャックをフォローしつつ、先を急ぐよう促し、そしてグレイにも忘れずに注意喚起をしておく。
「グレイもさ、こういう時なんだし、ジャックさんもわざとこうなった訳じゃないんだからさ。少しは我慢してね?」
「……あぁ、出来る限り我慢する。すまなかったなジャック」
「……へっ!分かってくれればそれでいいんだよ!まっオイラもなるべく気をつけるからさ!!」
グレイも反省し、ジャックもグレイのことを許す。
そんな二人をまとめる我が子を見て、母親のカコは彼女の夫で、キョウスケの父であるシュンジの面影を感じた。
「あれ?母さんどうしたの?そんなじっと見て……僕の顔に何か付いてる?」
そんな母の視線に気づいたキョウスケは、そう言って首を傾げ、カコはそれに対して微笑みを返した。
「いえ……何でもないわ。さて、みんな仲良くなったことだし、バベルの塔に乗り込むわよぉ~!!」
「か……母さんそんな堂々と言っちゃダメだよ!誰に聞かれてるか分からないんだからさ!!」
幸い、その時キョウスケ達の周りには人通りは無く、聞き耳を立てていそうな者もいなかったのは救いだった。
もし聞かれていたならば、騎士団に通報されて作戦が破綻するどころか、捕まってしまう可能性だってあった。
だからこそ、キョウスケは相手が例え母親であっても、強く注意したのだった。
その道中、グレイは遠くから馬の蹄の音が聞こえるのを耳で聞き取った。
「マズイみんな!馬の走る音が聞こえる!」
「馬!?ってことは……まさか騎士団!」
「そうかもしれん……みんな散って隠れるんだ!」
グレイの指示通り、四人はバラバラになり思い思いの場所に隠れる。
キョウスケは建物の陰に隠れ、騎士が過ぎ去るのを耳で追う。
石畳みと馬の蹄がぶつかり合う、パカラパカラという軽快な音が近づいてき、それは止まることなくキョウスケの元を過ぎ去って行った。
「ふぅ……誰も見つからなかったみたいでよかったぁ……」
キョウスケが建物の陰から出てくると、カコは最初に居たその場所から一歩も動いていなかった。
「あれ?母さん隠れなかったの?」
「えぇ、だってグレイさんがわたしは面が割れてないから隠れる必要は無いって」
「あっそういえばそっか。追いかけられてるのは僕とグレイとジャックさんだからね」
「でもその内わたしも追われる身になるんでしょうねぇ~……女賞金首……カッコイイと思わない?」
「どうだろう……」
カコは楽しそうにうふふ、と笑ってみせる。
冗談なのか、本気でこの状況を楽しんでいるのか……四人の中で最も大物なのは自分の母親なのかもしれない。
そうキョウスケは心の中で思った。
「そういえば他の二人は……?」
キョロキョロと辺りを探すキョウスケだったが、その足元から急に声は聞こえた。
「キョウスケ、俺はここだ」
「わっ!?ぐ……グレイ!」
カコとキョウスケの丁度真下にグレイは伏せていた。
どうやらグレイの背丈が小さかったため、カコの長い尻尾に被さることで騎士からは死角となり、隠れることが出来たようだった。
「……そうやって見るとやっぱり犬と飼い主に見えるね」
「犬って言うな!ほらカコさんも何か言ってくださいよ」
「ふふっいいじゃない。こんな偉いワンちゃんならうちは大歓迎よ?」
「ワンちゃんじゃなーいっっ!!!」
グレイの怒る姿を見て、その母と子は面白可笑しく笑う。
そんな二人を見て、グレイは「嫌な奴等……」とぼそりと誰にも聞こえないくらいの声量で呟いた。
「グレイがここにいるってことは……ジャックさんもこの近くなのかな?」
キョウスケが再び捜索を始めると、今度は近くにあった四角の大きなゴミ箱が爆裂音の様な音を立てて、勢いよく蓋が開いた。
「おえっ!くっせぇ~っ!!」
「ジャ……ジャックさん!?」
そこから出てきたのは、買った縄を担いでいたジャックだった。
ジャックは目に涙を浮かべながら、咳と嗚咽を繰り返しに行い、ゴミのニオイにむせ返っていた。
「な……何でジャックさんそんな所に隠れたの!?」
「何でって隠れるために決まってるだろ?俺はキョウスケやグレイみたいにちびっ子じゃねぇんだいっ!」
ジャックの身長は165センチちょっとあり、キョウスケ達四人の中で最も背が高い。
これくらいの背丈になってくると、建物の陰に隠れてもはみ出てしまうし、ましてやカコの尻尾の裏側になど隠れる訳にもいかず、ちょうど目に入ったゴミ箱の中につかさず潜り込んだのだった。
「それにオイラだってこんなくっさい物の中になんか隠れたくなかったぜ!おかげで身体中ゴミのニオイで溢れてやがらぁ!!」
「うわホントだ……少しだけゴミのニオイがする……」
ジャックの体からは微かなゴミのニオイがし、キョウスケとカコにとってはそこまで気にするほどのものではなかったのだが、それを顕著に嫌がったのはグレイだった。
「……俺の半径5メートル以内に入らないでくれ。臭くて仕方ない」
「半径5メートルってどんだけ離れないといけないんだよっ!これくらいのニオイだったら我慢できるだろ!!」
「お前には僅かなニオイに感じるかもしれんが、俺からすると目の前にゴミ袋が常に置かれているような気になって非常に不愉快なんだ」
「ご……ゴミ袋って……」
グレイは耳も良いが、鼻も良く、ジャックに付いたゴミのニオイは微かな物であっても、グレイにはその二倍、三倍と臭いものに感じたのだ。
これにはさすがのジャックも、ショックを受け落胆した。
「わ……分かった!じゃあさオイラ今からシャワー浴びてくるからさ……」
「そんな悠長な時間は無い。さっきの騎士、シンアルの南の門に向かっていただろ。恐らく検問の状況が変わったに違いない。このまま騎士団の騎士が全部バベルの塔に戻ったら、それこそ全ての作戦が破綻してしまう。それだけは何としてでも阻止しないといけないんだ」
「そ……そんなぁ……」
「ま……まぁ緊急だしジャックさん。それに、それくらいのニオイならその内取れると思うし、気にしないでよ」
「うぅ……すまねぇなキョウスケ」
さすがに可哀想に思ったキョウスケはジャックをフォローしつつ、先を急ぐよう促し、そしてグレイにも忘れずに注意喚起をしておく。
「グレイもさ、こういう時なんだし、ジャックさんもわざとこうなった訳じゃないんだからさ。少しは我慢してね?」
「……あぁ、出来る限り我慢する。すまなかったなジャック」
「……へっ!分かってくれればそれでいいんだよ!まっオイラもなるべく気をつけるからさ!!」
グレイも反省し、ジャックもグレイのことを許す。
そんな二人をまとめる我が子を見て、母親のカコは彼女の夫で、キョウスケの父であるシュンジの面影を感じた。
「あれ?母さんどうしたの?そんなじっと見て……僕の顔に何か付いてる?」
そんな母の視線に気づいたキョウスケは、そう言って首を傾げ、カコはそれに対して微笑みを返した。
「いえ……何でもないわ。さて、みんな仲良くなったことだし、バベルの塔に乗り込むわよぉ~!!」
「か……母さんそんな堂々と言っちゃダメだよ!誰に聞かれてるか分からないんだからさ!!」
幸い、その時キョウスケ達の周りには人通りは無く、聞き耳を立てていそうな者もいなかったのは救いだった。
もし聞かれていたならば、騎士団に通報されて作戦が破綻するどころか、捕まってしまう可能性だってあった。
だからこそ、キョウスケは相手が例え母親であっても、強く注意したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる