The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

004【2】

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「そういえば列の進みが急に止まったけどどうしたんだろう?」

キョウスケが首を傾げると、列が止まっている原因は遺跡で働く職員がその進行を制止していたからだった。
するとピンポンパンポーンっと館内アナウンスが流れ始めた。

『本日はエキドナの遺跡へお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日はここ、シンアルの市長をしておられますマモン市長がこちらにお越しになりましたので皆様に挨拶をさせていただきます』

「マモンだぁ?」

ジャックはアナウンスを聞いて眉をひそめる。
すると、入口の方から三人程の魔物が遺跡の真ん中を歩いて来ているのが見えた。
両側が牛の頭と馬の頭のボディガード、そして真ん中にいるのがシンアルの市長マモンその人だった。
マモンは漆黒のスーツ、漆黒の靴、そして漆黒のシルクハットを被っており、指には両手を含め10個の宝石の指輪をはめている。
そして何よりも特徴的だったのは、その顔は白い羽で覆われた鳥のような顔だった。

「あー……テステス……」

マモンは遺跡の真ん中に立つと、持っていたマイクのチェックをする。

「えー皆様、本日はエキドナの遺跡にお越しいただき誠にありがとうございます」

マモンは挨拶をすると、頭のシルクハットを片手で取って一礼する。

「魔獣の母と呼ばれますエキドナは今まで何処に眠っていたのか全く知られていない存在でした。しかし、今回の調査でこの遺跡が発掘され、その多くの謎が解明されつつあります。この遺跡にはそれだけの価値があり、皆様にはその歴史的発見の生き証人となって欲しいと存じます」

マモンはそれから、まるで演説をするように言葉を連ねていく。
そんな光景を見て、ジャックはアクビを一つした。

「なんだありゃ?まるで選挙活動じゃねぇか」

「まあ市長だからな、そういう意味もあるだろうよ」

退屈そうなジャックに、グレイは答える。

「そういえば僕たちの世界でも、車に乗ったり街で大声出してる人いたなぁ……」

キョウスケはダイミョウにいた時のことを思い出す。下校をする時に、よくその風景を見た気がし、一緒に帰っていたミレイが選挙カーが通るたび「うるさーい!」と演説より遥かに大きい声で怒鳴っていたのを思い出した。

「ヘッそうなのか!魔界も人間世界も政治家のやることは変わらねぇのか」

三者三様でマモンの演説風景を見ていると、マモンは締めの言葉に入っていた。

「それでは皆様に良い発見がありますよう、心からお祈りしております」

マモンはマイクを切り、再び一礼してからその場を去って行く。
するとそれと同時に、滞っていた順路の人の流れが再び動き始めた。

「さて、もうそろそろエキドナの石碑が見えて来る頃じゃないか?」

「うん……多分そろそろ見えてくるかも」

「ヘッヘッ!よ~しエキドナってのがどんなのかこの目に焼き付けてやるぜ!!」

三人は魔物の流れに乗って進んで行く。エキドナの石碑はもうすぐそこにあった。

「あっ!あれじゃないかなエキドナの石碑って!」

三人の中で、エキドナの石碑を最初に見つけたのはキョウスケだった。
エキドナの石碑は、順路のちょうど折り返しの場所に掲げられており、今の三人が歩いている地点からではまだはっきりとは見えない。ただ、全員が思ったよりもサイズは小さく感じた。

「なんか見た感じじゃあんまり大きくないんだな……オイラ魔獣の母とか言うからもっとでっかいの想像しちゃった」

ジャックは口を尖らせながら、不満そうな態度で遠くにある石碑を見る。
まるで大きな宝箱を貰ったのに、中身は米粒くらいのお宝だったような、そんな気分になった。
しかし、この中で最も怪訝そうな顔をしているのはジャックではなく、グレイの方だった。

「……違う」

グレイは目が良く、キョウスケやジャックには遠目では細かいところまで見えなかったが、グレイの目には僅かにその石碑の柄が写っていた。

「違うってどういうことなの?」

呟くグレイに、キョウスケは尋ねる。
すると、グレイは近くにいた三人にしか聞こえない程の声でこう返した。

「あのエキドナの石碑は俺の知ってるエキドナじゃない……あれは偽物の可能性がある」

「えぇっっっっ!!!!?」

キョウスケとジャックは、グレイの言葉に飛び上がるように驚く。
そう、この遺跡にあるエキドナの石碑は偽物である可能性が浮上したのだ。

「グレイどういうことだよそりゃあ!!!」

あまりの驚きに、ジャックは鉄砲弾のような勢いでグレイに聞き返す。
一方のキョウスケは驚愕のあまり、口を半開きのままにしていた。

「お前ら声がデカイ!……いいか、あれは魔獣の母であるエキドナとは違う。その理由がまず一つ、大きさがあまりにも小さ過ぎる。エキドナの体の大きさはまだ詳しく解明されてないが、テュポーン程の巨体でなければ釣り合いがとれない」

「あぁ……質問、テュポーンってのはどちらさん?」

ジャックは小さく手を挙げて、グレイに問う。

「テュポーンはエキドナが最初に子供を設けた時の父親だ。俺の先祖の父親で、体は巨体も巨体。宇宙まで届く勢いの大きさで魔獣の王として恐れられたそうだ」

「魔獣の王!すげぇ!!」

「宇宙まで!?すごい!!」

キョウスケとジャックは揃ってひどく感心する。

「ってことはさ、お前の祖先のケルベロスは王の息子の長男だから……王子ってことなのか!?」

「う……うむ、そうなるのかな?断定は出来んが」

「すげぇ!グレイ王子だ!キョウスケ、王子様だぞコイツ!!」

「グレイってそんなすごい魔物だったんだね!」

「……俺の祖先がであって、俺は王子でもなんでもないぞ」

輝く二人の目とは対照的に 、じとっとした暗い視線をグレイは返した。

「でもグレイ、違うってことはあの石碑は偽物ってことなの?」

キョウスケが尋ねると、グレイは渋い顔をする。

「まだこの距離からだと断定は出来ないが、もう一つおかしいところがあって、あの石碑はまだ新しいように見える」

「新しい?じゃああれは新しく魔物によって作られた物ってことなの?」

キョウスケは首を捻るが、グレイはその質問にノーと示すよう首を横に振る。

「石碑であることには間違いないし、人工的に作られた訳でもない。ただ、俺の知ってる魔獣の母と言われているエキドナではない。別の何かがあの石碑には封印されているということだ」

「……でもそれって他の魔物が封印されて、エキドナとして見世物にされているってことだよね」

「もし俺の推察が正しかったらな……正直なところまだ確かとは言えない。出来るなら近くでじっくり見てみたいものだが……この人の流れだと難しいな」

グレイとキョウスケが話している間にも、順路を並ぶ列は動き続けている。これでは石碑が偽物かどうか判断するには困難を極めた。

「カネもふんだくって、偽物の石碑で観光客を騙して、挙句の果てには他の魔物を石碑に閉じ込めてやがるってのか……もしそれが本当なら、つくづく業の深い野郎ってことだなあのマモンってのは」

ジャックは握り拳を硬くし、怒りに震える。銀貨20枚を計三人分取られたという私怨はありつつも、マモンのやっている非道を許すことが出来なかった。
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