The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

010【2】

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「フッフッフッ……ではキョウスケ、市庁舎に向かいましょうか」

「はい、マモンさん」

マモンとキョウスケの一行合わせて七人は遊歩道を越え、シンアルの街に入ると市庁舎へと向かったのだが、市庁舎は既に閉庁しており、鍵がかけられていた。

「おいおいやっぱり鍵閉まっちゃってるじゃん。どうするんだよ」

「フッフッフッ……心配ご無用。こんなこともあろうかと市庁舎の鍵は一本わたしが保有している。牛頭、鍵を」

「我は馬頭に渡しましたマモン様」

「我は警備員に返しましたでござるマモン様」

「お前らあああああああああっ!!!」

「す……すいませんマモン様!」
「うっかりしてたでござるマモン様!」

流れるようにヘマを仕出かすマモン一行。
そんな一行を見て、ジャックはやれやれと溜息をついた。

「こんな奴等の支援で大丈夫なのかねぇ……ちょっと見せてみろ!」

するとジャックはマモン達を払いのけ、市庁舎の扉の鍵穴を調べる。

「……これならいけるかもしれない」

ジャックは懐からピッキング用の道具を取り出し、鍵穴を探っていく。
すると瞬間、市庁舎の鍵がカチリと音を立てて扉は開いた。

「すごいっ!ホントに開いた!!」

「ヘッヘッヘッ……まっ元盗賊だからな。これくらいの扉、なんら苦労なく破れれるよ」

ジャックは自慢げに笑い、扉を開く。
市庁舎の中は閉庁時間を超え、職員は誰一人と残っていなかった。

「気をつけてください……もしかしたら警備員が巡回してる可能性がありますから」

マモンが先頭に立ち、一行は庁舎の廊下を歩いていく。

「フフフ……この歳になってこんなスパイみたいなこと出来るなんて。冒険って楽しいわねぇ~キョウスケ」

「僕はヒヤヒヤしてもう帰りたい気分だけどね……」

無邪気なカコと臆病なキョウスケ。同じ親子でも性格はここまで違っていた。

「ん……階段から足音が聞こえる!みんな隠れるぞっ!」

するとグレイが警備員の足音を聞きつけ、隠れるよう指示するが、マモンはそれを制する。

「フッフッフッ……まあここは任せて」

マモンがそう言うと、警備員の魔物は階段を下り、彼らと鉢合わせする。
マモンの後ろには牛頭と馬頭、そして見知らぬ者も含まれていたため、警備の魔物は焦って一歩後退りした。

「ま……マモン市長!どうやってここに!それにこの大勢の方々は!?」

慌てて警備員はマモンに問いかけるが、マモンは微笑を浮かべただけで何も返答しない。

「市長っ!いくら市長とて閉庁時間の市庁舎の出入りは禁じられているのは分かってますよね?このこと報告させてもらいますよ!!」

警備員は何も言わないマモンに対して、そう言い捨て、マモンの横を通り過ぎようとしたその時だった。

「フッフッフッ……マテリアル・セット・ジェット!」

すると突如、それまで黙っていたマモンはマテリアル魔法を唱え、左薬指の黒い石がギラリと光った。
その直後、警備員の足はいきなりその場で止まり、そしてそのまま床に倒れた。

「キャッ!……これって……」

カコは倒れた警備員を見て、口を両手で塞ぐ。

「……まさか殺したのか?」

グレイがマモンに問うと、マモンは微笑してグレイの質問に受け答えた。

「まさか……少し眠ってもらっただけです。ジェットには相手を沈静化させる効果がありますが、近距離でしかその効果は発揮出来ないのでね」

よく耳を凝らしてみると、警備員の魔物からは寝息が聞こえ、気持ち良さそうに眠っていた。

「な……なんだ、そうだったの……わたしすっかり驚いちゃったわ。あれ?キョウスケは驚かなかった?」

「う……うん、まぁ少しは……」

「あら……フフッ、クールになったじゃないキョウスケ」

「クール……?そうなのかな?」

本人は首を傾げているが、以前までのキョウスケならば逃げ惑っていただろうこの出来事。
しかし彼は確実に成長していた。そんな成長した息子の姿をカコは垣間見れたような、そんな気がした。

「市長室はこの階段を上って三階にあります。警備員が起きてしまう前に向かいましょう」

マモンの先導で一行は階段を上り、三階の廊下の奥にある市長室へと辿り着く。
市長室にはマモンの仕事机、来客用のソファなど豪華な設備となっており、大きな窓も着いている。
照明は点灯していないが、大きな窓のおかげで月明かりが入り、かろうじて部屋の中を歩いて回れる程には明るい場所だった。

「さてキョウスケ、君に渡したいという物はこれだ」

そう言ってマモンが仕事机の引き出しから取り出したのは、周りに白い小石のようなものが着いたブレスレットだった。

「こ……これは?」

「月の石のブレスレットだ。月の一部が欠け、それがこの惑星に落ちた時の隕石で出来ていると言われている貴重な品だ。これを着けていれば魔力の回復が早くなる。今の君には必要だろう」

「……なるほど、見繕うってそういうことだったんですね」

ベルゼブブの侵攻は日に日に着実に進んでいる。そんな中、キョウスケの成長を長らく待っている時間など、もうこの世界には無かった。
だからこそ見繕う……装備を固め、キョウスケの補填をしようとマモンは考えたのだ。

「し……しかしマモン様!そのブレスレットは世界に二つしかない品」
「そんな貴重な物を手放しても良いのでござるか?」

牛頭と馬頭が心配する中、しかしマモンは笑っていた。

「フッフッフッ……心配はありがたいが牛頭と馬頭よ。商売には先を見越して、あえて貴重な物を手放すということもやってのけなければならない時があるのだ。しかしそれは将来への投資となる。わたしはこの少年に物を『あげている』のではなく『投資している』のだよ」

「な……なるほど」

「うむ……なるほどでござる」

牛頭と馬頭は理解したのかしてないのか分からないような複雑な顔をしており、そんな二人は放っておいてマモンはキョウスケに向き直る。

「実はこのブレスレット、ベルゼブブの奴から市長になる際に貰ったもの物なのだ。だからもう一つのブレスレットは奴が持っている。これで君と奴との条件は五分五分になったに過ぎないがな」

「ベルゼブブもこれを……着けてみていいですか?」

「うむ」

キョウスケはマモンから月の石のブレスレットを受け取り、右手に装備する。すると、月の石に秘められた月の力がキョウスケの右手を通して全身に広がり、月の力のおかげなのか、彼はとても安らかな気分となった。

「すごい……身体中から魔力が溢れてるような気がします!」

「フッフッフッ……気に入ってもらえたようで何よりだ。しかし皮肉な運命だなこのブレスレットも。ベルゼブブが渡したこのブレスレットを、今度はベルゼブブを倒そうとするデビルサモナーの手に渡ることになる。なんとも皮肉だ……」

マモンはこの皮肉な運命を、しみじみと感じた。もしかしたら、このブレスレットが二つになった時からこうなることは決まっていたかのような、そんな感慨深い運命を。
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