The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

010【3】

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「しかしキョウスケ、そのブレスレットを手にしたとて先程わたしが言った通り、君とベルゼブブは五分五分になったに過ぎない。あとは君が成長し、奴を越えなければならないことは忘れぬようにな」

「はいっ!」

「うむっ返事がよろしいようで何よりだ!さて……牛頭と馬頭よ、お前達は金庫の中の物を持って行く仕度をしてくれ。わたしはその間にこの机に残す辞職願いを書いておく」

「ははっ!」
「承知したでござる!」

そう言うとマモンは机に向かい、辞職願いをしたため、牛頭と馬頭は金庫からあらかじめマモンがまとめておいたカネや宝石などを取り出し始めた。

「ヘッヘッ!キョウスケスッゲー宝貰ったじゃねぇか!月の石のブレスレットなんて滅多にお目にかかるどころか、普通なら触れることなんて出来ねぇ品だぜ?」

「そ……そうなの?」

「あぁっ元盗賊のオイラが言うんだ間違いねぇ!……つっても素人でもそのブレスレットがどれだけ貴重なのかは分かるがな」

ジャックは愉快に笑っているが、キョウスケはそのことを聞き、急に右手が重くなったような、そんな見えない重圧を感じた。

「ヘッヘッ!顔強張らせて、そんなにビビるなよキョウスケ!どんなに貴重な物だろうが道具は道具だ。ずっと飾ってあるより、使われる方が道具も喜ぶのさ」

「そっか……」

「良いこと言うわねぇ~ジャックさん。わたしもシュンジさんとの婚約指輪がくすんでいくのを見て、よく月日を感じるもの……今じゃくすんじゃって、これが白金だったなんて思えないもの」

カコは左薬指に今もはめている、シュンジとの婚約指輪を見ながら時間の流れを感じる。
苦しい日々も楽しい日々も、この指輪には全て刻まれている。そんなような気が、カコにはした。

「フッ……しかしこれで魔力の回復が早くなるのならば、今までの二倍は魔技を唱えられるようになるかもしれないな」

「そうだね……グレイも新しい魔技を覚えたし、母さんとジャックさんの魔技もあるし……確かにこのブレスレットはしっかり役立てなくっちゃ!」

キョウスケはぐっと右手の拳を握る。
その腕には、月の石のブレスレットが淡い白い光を輝かせており、それはキョウスケにさらなる力を与えていた。

「つうかグレイ、お前いつの間に新しい魔技覚えたのかよ!成長早過ぎやしねぇか!?」

「フッ……元々俺は本来の力が弱まってこうなってるだけで、それが徐々に解放されていってるだけだ。本来ならまだ魔技の種類はあるはずなんだ」

「あっそうなのか……でも羨ましいぜ……オイラなんかまだまだ一つだし、それ以上あるか分かんねぇしな」

ジャックはグレイに差をつけられた感じがし、少し落ち込む。だがそんな時、カコがジャックの肩にポンと手を差し伸べた。

「心配しなくても大丈夫よジャックさん。キョウスケだって短い間にこんなに成長したんですもの。あなただって成長出来るわよ」

「ヘヘッ……そっか。まあキョウスケが出来るならオイラも出来るよな!」

ジャックはカコに励まされ、元気を取り戻す。

「……僕ってそんなにみんなに言われる程メンタル弱かったのかな?」

キョウスケが言うと、全員が揃ってキョウスケの方を振り向いた。

「えぇ、テレビの怪談話で震え上がったり、お化け屋敷どころか真っ暗な部屋に入っただけでも逃げ出したりしてたじゃない」

「フン、それに俺と最初に会った時もミレイにずっとしがみついてたしな」

「そういやオイラと最初に会った時も餓鬼を見て震えてたもんなキョウスケ」

「……なんでみんな揃って、僕の臆病エピソード持ってるの」

なんだか自分から振った話なのに、物凄く後悔したような気分にキョウスケはなった。

「会話を楽しんでいるところ悪いですが、準備が整いましたので庁舎を出ましょうか。もしかしたらもうすぐ先程の警備員が目を覚ますかもしれませんし……」

「あっ……そうですね。急ぎましょうか」

マモンは辞職願いを机に置き、牛頭と馬頭が金庫から取り出した荷物の一部を背負い、残った荷物を牛頭と馬頭が背負う。
市長室を出て、階段を下り一階に辿り着くと、警備員はまだその場で眠っていた。

「よっぽど眠かったんですかねこの警備員は……まっこちらとしても好都合。朝まで眠っておいてもらいましょうか」

そのまま通り過ぎるフリをして、マモンは再び左薬指の黒い石を光らせる。

「マテリアル・セット・ジェット……これで彼は朝まで起きませんね」

魔法にかかった警備員は再び寝息に深みが増す。これほどの眠りになると、ちょっとやそっと揺らしたくらいでは起きないだろう。

「……鬼か」

そんな用心なマモンを見て、グレイはぼそりと呟くが、牛頭と馬頭はその呟きを聞いていた。

「マモン様は鬼ではない。鬼は我らで」
「マモン様は悪魔でござる」

「……そういう意味じゃないんだけどな」

相変わらず何処か抜けている彼らを、何故抜け目の無いマモンがここまで買っているのか、それがグレイには分からなかった。
市庁舎を出た一行は、庁舎から少し離れた噴水の前で立ち止まった。

「さてここまで離れれば大丈夫でしょう……牛頭と馬頭はその荷物をわたしの隠れ家の方に持って行っておいてくれ。いいか?隠れ家の方だからな」

「了解しましたマモン様!」
「了解致したマモン様!」

マモンの指示を受け、牛頭と馬頭は荷物を持ってその場を去って行く。

「……何故お前はあいつらを支配下にしてるんだ?お前ほど用心な奴ならもっと優秀なやつを支配下に置きそうだが」

グレイが尋ねると、マモンはフッと微笑する。

「確かに彼らは優秀とも有能とも言えないでしょうね。ですが、優秀な者は優秀な故に裏切り兼ねない。しかし彼らはその点は心配いりませんし、こうやって仕事も並にこなしてくれますしね。まっ多少手は掛かりますが、それも愛着だと思えば」

「なるほど……そういうことか」

グレイは納得する。
能力の良し悪しではなく、ようは相手を信用出来るか出来ないか。
マモンは牛頭と馬頭を信用しており、また牛頭と馬頭もマモンを信用している。それだけの簡単な話だった。

「さて……では何故わたしだけここに残ったかと言いますと、実は今日ベルゼブブからの緊急の呼び出しがあり、バベルの塔の監視を司る騎士団の長ベリトがデモンズスクエアに向かったそうです」

「あぁそのことなら知ってるよ。オイラもそれでバベルの塔に入れさせて貰えなかったんだ」

「なるほど知ってましたか……では話は早い。実は昼間にベリトから連絡が来てましてね。明日よりシンアルの街の出入口全てに封鎖線を張り、デビルサモナー及びケルベロスとその一味を捜索するため、一斉検問を行うと」

「い……一斉検問!?」

キョウスケは目を見開く。
一斉検問が行われれば、シンアルの出入口は全て通れなくなってしまうため、しばらくの間街を出られなくなる。
世界を救うため、そしてミレイを連れ戻すため、一刻一秒をも争う今、それだけは何としても避けたかった。
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