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第1部 青春の始まり篇
第3章 天地魔白の秘密【4】
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「ははは……確かに言い回しがきつ過ぎたみたいだね。ごめんね神坂さん、今後は気をつけるよ」
徳永は苦笑し、神坂さんに軽く会釈する程度に頭を下げた。
「いやいや!徳永君にはそんな気も無いのに、あたしが勝手に勘違いしただけだから……こちらこそごめんなさい」
対する神坂さんは両手を忙しなく振り、ついでに首も横に振って、全身で徳永への気配りを見せている。なんと憐憫の情の深い方なのだろうか……。
「徳永、これはもう土下座するしか報いる方法は残ってないぞ」
「土下座かぁ……でもそんな事したら、神坂さんもっと困っちゃうよ?」
「……確かに、それは一理あるな」
もし神坂さんに土下座なんてしようものなら、どうしたらいいものか迷いあぐね、仕舞いには泣き出してしまいそうな気がするし、それは彼女の為にも止めておいた方がいいだろう。
「さて……どこまで話したかな……あぁそうだ!天地さんが学校を休んだ理由だっけ?そう、僕はあるホームページを見たんだよ」
話の流れは支流から再び本流へと戻り、徳永は俺の知らない天地の正体をさらっと暴きだしていたのだった。
「天地電産、東証一部上場の大企業で、近年弱体化している日本の電化製品産業に現れたダークホースとも呼ばれるほど急成長を成している企業だよ。彼女はおそらく、この会社の一人娘なのさ」
天地電産……そういえばうちのお袋がよくアマチ製の掃除機は吸い込みが良くていいなんて絶賛していたし、テレビのコマーシャルなんかでキツネが小躍りしているものを見た事があり、それが確か天地電産だとかなんとか、最後に企業名を言っていた気がする。
「そんなまさか……苗字が同じなだけだろ?」
まさかそれを聞いただけで、ああそうなんですかと鵜呑みにする程、俺も馬鹿正直じゃない……が、どうやら神坂さんは「ええっ!!」っと感嘆の声をあげて信用しているようだった。
神坂さん……少しは疑うって事も知った方が良いと思いますよ……なんだか彼女が将来、特殊詐欺なんかに引っかからないかが心配だ。いや、もしかしたら今ですらもう引っかかっているかもしれん。もしそんな奴がいたら、俺が市中引きずり回しの後、獄門に掛けてやる。
「ふふっ……実はこの事を知ったのは入学式の時なんだ。チハが五組だったからたまたま名簿を見たら天地さんの名前が載っててね。まさかと僕も思ったんだけど、チハは憶えてるかな?入学式の時に校門に一つだけ大きな花環が置かれてたでしょ?」
「花環……ああ、あのでっかい造花のか。でもあれって学校側が用意した物じゃないのか?」
「うん、最初は僕もそう思ったんだけどね。でもよくよく見たら、花環の上の方に小さな立札が隠されてあって、そこに天地電産贈って記されてあったんだ」
なるほど、どおりで一県立高校の入学式にしては派手なもん飾ってるなとは思ったのだが、まさかそんな裏があったとはね。しかしそんな目立たない立札をつけるくらいなら、飾らなければいいのに。
「多分あれは天地さん自身の僅かながらの抵抗だったんじゃないかな?親が勝手に学校に花環を送って、それを知った天地さんが急いで小さい立て札に取り換えたとか?」
まっ、これは僕の憶測でしかないけどねと徳永。しかしそれがもし……徳永が言っている事が事実なら、天地は神坂さんが中学の頃に聞いた噂通り、正真正銘のお嬢様って事になるじゃないか。
まさか昨日、俺がその話題を天地に振った時、あいつがその答えをはぐらかしたのは真実だったから……という事になるのだろうか。何だか余計に、天地魔白という人物が分からなくなっちまった……。
「まあとにかく、僕がチハに天地さんの事について尋ねていたのは、そういう経緯があって興味を持ったからなんだよ。本当は最初に話せば良かったのかもしれないけど、でもそんな事知ったらチハだって天地さんの事、普通の友達として見れなくなっちゃうんじゃないかなぁって思って黙ってたんだ」
「……徳永、一つお前に忠告してやる。そういう言ったら駄目だと思う事はな、棺桶に入るその時まで黙ってねえといけないんだよ」
何故なら俺は今、知ってしまったんだからな。そして知ってしまった以上、もう今までの様に天地を見る事は出来ない。今までの様な関係でいるフリなら出来るかもしれないが、心の中で何かしらの躊躇は生まれる。
もう俺の中ではただのクラスメイトではない……あいつは……天地魔白は天地電産の社長令嬢。大物だったらいざ知らず、俺の様な小者には嫌でもそういう卑しい目線でしか見れなくなっちまう……本当に自分の惨めさが嫌になってくるな。
「……ごめんチハ、確かに君の言う通りだ。これは僕が伝えるべき事じゃなく、天地さんから直接話して貰うべき事だったね。本当にゴメン……」
いつもの薄ら笑いは無く、徳永は深刻な顔をして俺に頭を下げる。そんなピリピリしている俺と徳永を見て、神坂さんも戸惑いのあまり泣き出しそうな顔をしていた。
「…………もういい徳永。どんなに謝られても後には戻れないし、それにどちらにしろ、近い内に俺はその事を知るようになっていたかもしれん。その時が少し早まっただけさ」
徳永も悪気があったわけでは無いし、俺だって天地の事を暗に探っていたんだ。俺だって十分悪い。それに神坂さんの不安げな表情が、俺にはどうしても我慢ならんかった。
「その代わり教えてくれ、お前が知ってる天地の事に関してな」
このまま中途半端な情報だけを持っていては、きっと天地は昨日の様に話をはぐらかしてくるに違いない。こうなった以上、俺は天地についてとことん知っておくべきだ。それが俺なりのケジメってやつなのかもしれん。
最初はただのクラスメイトだったってのに……一体俺にとって天地魔白とは何なんだ……?
「……分かった!僕の掴んだ情報全てをチハに教えるよ。僕が持っていても、それは情報にしかならないけど、チハならきっと、もっと有効的な活用をしてくれるかもしれないしね」
徳永もどうやら理解してくれた様だった。こうなったからには後悔するのではなく、開き直るしかないという事を。
徳永は苦笑し、神坂さんに軽く会釈する程度に頭を下げた。
「いやいや!徳永君にはそんな気も無いのに、あたしが勝手に勘違いしただけだから……こちらこそごめんなさい」
対する神坂さんは両手を忙しなく振り、ついでに首も横に振って、全身で徳永への気配りを見せている。なんと憐憫の情の深い方なのだろうか……。
「徳永、これはもう土下座するしか報いる方法は残ってないぞ」
「土下座かぁ……でもそんな事したら、神坂さんもっと困っちゃうよ?」
「……確かに、それは一理あるな」
もし神坂さんに土下座なんてしようものなら、どうしたらいいものか迷いあぐね、仕舞いには泣き出してしまいそうな気がするし、それは彼女の為にも止めておいた方がいいだろう。
「さて……どこまで話したかな……あぁそうだ!天地さんが学校を休んだ理由だっけ?そう、僕はあるホームページを見たんだよ」
話の流れは支流から再び本流へと戻り、徳永は俺の知らない天地の正体をさらっと暴きだしていたのだった。
「天地電産、東証一部上場の大企業で、近年弱体化している日本の電化製品産業に現れたダークホースとも呼ばれるほど急成長を成している企業だよ。彼女はおそらく、この会社の一人娘なのさ」
天地電産……そういえばうちのお袋がよくアマチ製の掃除機は吸い込みが良くていいなんて絶賛していたし、テレビのコマーシャルなんかでキツネが小躍りしているものを見た事があり、それが確か天地電産だとかなんとか、最後に企業名を言っていた気がする。
「そんなまさか……苗字が同じなだけだろ?」
まさかそれを聞いただけで、ああそうなんですかと鵜呑みにする程、俺も馬鹿正直じゃない……が、どうやら神坂さんは「ええっ!!」っと感嘆の声をあげて信用しているようだった。
神坂さん……少しは疑うって事も知った方が良いと思いますよ……なんだか彼女が将来、特殊詐欺なんかに引っかからないかが心配だ。いや、もしかしたら今ですらもう引っかかっているかもしれん。もしそんな奴がいたら、俺が市中引きずり回しの後、獄門に掛けてやる。
「ふふっ……実はこの事を知ったのは入学式の時なんだ。チハが五組だったからたまたま名簿を見たら天地さんの名前が載っててね。まさかと僕も思ったんだけど、チハは憶えてるかな?入学式の時に校門に一つだけ大きな花環が置かれてたでしょ?」
「花環……ああ、あのでっかい造花のか。でもあれって学校側が用意した物じゃないのか?」
「うん、最初は僕もそう思ったんだけどね。でもよくよく見たら、花環の上の方に小さな立札が隠されてあって、そこに天地電産贈って記されてあったんだ」
なるほど、どおりで一県立高校の入学式にしては派手なもん飾ってるなとは思ったのだが、まさかそんな裏があったとはね。しかしそんな目立たない立札をつけるくらいなら、飾らなければいいのに。
「多分あれは天地さん自身の僅かながらの抵抗だったんじゃないかな?親が勝手に学校に花環を送って、それを知った天地さんが急いで小さい立て札に取り換えたとか?」
まっ、これは僕の憶測でしかないけどねと徳永。しかしそれがもし……徳永が言っている事が事実なら、天地は神坂さんが中学の頃に聞いた噂通り、正真正銘のお嬢様って事になるじゃないか。
まさか昨日、俺がその話題を天地に振った時、あいつがその答えをはぐらかしたのは真実だったから……という事になるのだろうか。何だか余計に、天地魔白という人物が分からなくなっちまった……。
「まあとにかく、僕がチハに天地さんの事について尋ねていたのは、そういう経緯があって興味を持ったからなんだよ。本当は最初に話せば良かったのかもしれないけど、でもそんな事知ったらチハだって天地さんの事、普通の友達として見れなくなっちゃうんじゃないかなぁって思って黙ってたんだ」
「……徳永、一つお前に忠告してやる。そういう言ったら駄目だと思う事はな、棺桶に入るその時まで黙ってねえといけないんだよ」
何故なら俺は今、知ってしまったんだからな。そして知ってしまった以上、もう今までの様に天地を見る事は出来ない。今までの様な関係でいるフリなら出来るかもしれないが、心の中で何かしらの躊躇は生まれる。
もう俺の中ではただのクラスメイトではない……あいつは……天地魔白は天地電産の社長令嬢。大物だったらいざ知らず、俺の様な小者には嫌でもそういう卑しい目線でしか見れなくなっちまう……本当に自分の惨めさが嫌になってくるな。
「……ごめんチハ、確かに君の言う通りだ。これは僕が伝えるべき事じゃなく、天地さんから直接話して貰うべき事だったね。本当にゴメン……」
いつもの薄ら笑いは無く、徳永は深刻な顔をして俺に頭を下げる。そんなピリピリしている俺と徳永を見て、神坂さんも戸惑いのあまり泣き出しそうな顔をしていた。
「…………もういい徳永。どんなに謝られても後には戻れないし、それにどちらにしろ、近い内に俺はその事を知るようになっていたかもしれん。その時が少し早まっただけさ」
徳永も悪気があったわけでは無いし、俺だって天地の事を暗に探っていたんだ。俺だって十分悪い。それに神坂さんの不安げな表情が、俺にはどうしても我慢ならんかった。
「その代わり教えてくれ、お前が知ってる天地の事に関してな」
このまま中途半端な情報だけを持っていては、きっと天地は昨日の様に話をはぐらかしてくるに違いない。こうなった以上、俺は天地についてとことん知っておくべきだ。それが俺なりのケジメってやつなのかもしれん。
最初はただのクラスメイトだったってのに……一体俺にとって天地魔白とは何なんだ……?
「……分かった!僕の掴んだ情報全てをチハに教えるよ。僕が持っていても、それは情報にしかならないけど、チハならきっと、もっと有効的な活用をしてくれるかもしれないしね」
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