ヒトコイラヴァーズ 悪魔の女との青春物語

赤坂皐月

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第1部 青春の始まり篇

第3章 天地魔白の秘密【5】

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「あ……あの岡崎君!」

 すると突然、神坂さんが今までに見た事が無い真剣な表情で、俺と徳永の間に前からのめり込んできた。

「な……なんですか神坂さん」

 こんな表情をする神坂さんを見るのは初めてな為、幾分動揺してしまう。いつも優しくニコニコしている人が、突然怒り出した時が一番怖いという原理と同じ様なものである。

「あたしもその……協力します!何が出来るか分からないけど……でも天地さんの噂を二人に吹き込んだのはあたしだし、それにあたしも岡崎君のお友達ですから!!」

 凛とした表情を引き締め、気炎万丈に振る舞う神坂さん。徳永はどうだったかは別として、確かに神坂さんの言う通り、俺が天地の素性を知る為の、少なからずキッカケとなったのはあの噂話で間違いないだろう。

 しかし協力といっても何をして貰えばいいものか……ここで何もせずとも大丈夫なんて言うのは、少し突き放している感じがして俺的にはNGだな。かと言って、徳永の様に豊富な情報を持ち合わせている様には見えないし……弱ったものだ。

「そうだね……じゃあ神坂さんには後々やって貰う事があるかもしれないから、、取り敢えずは待機って事でね。それでいいでしょチハ?」

 徳永はそう言ってはにかみ、俺を一瞥する。どうやら俺に助け舟を出したつもりでいるらしいが、そもそも助け舟を出さなければならない様な大嵐を引き起こしたのはお前なんだからな、という意味も込めて俺は眉をひそめ、手元で徳永が見える様にしてデコピンをしてやった。

 それを見た徳永は苦笑していたが、あいつの事はともかく、待機という案にはありがたく乗っからせてもらう事にしよう。神坂さんも納得してくれるだろうし。

「それじゃあ神坂さんはいざという時の秘密兵器という事で、よろしくお願いしますね?」

「あ……あたしが秘密兵器ですか!?なんか責任重大な気がします!!」

 俺は頭で思いついたそれっぽい事を言い、おおお……とまるで、国家ぐるみの大任を帯びたかの様に武者震いをする神坂さん。ひょっとしてだと思うが、神坂さんもこの状況を多少楽しんでいるのかもしれないな……まっいいさ、神坂さんの青春の思い出作りの一つになれるだけで、俺も踊りがいがあるってもんだ。

「さて、じゃあ各々の役割分担もできたし、とりあえずチハ、僕の知っている情報を君に授けるよ。ただし、確証の段階には至ってない情報だから僕から聞いた事が全てだとは考えないでほしい」

「大丈夫だ、お前のどこから引き出したか分からない情報なんざ、三割程度しか信用しとらん」

「ははは……辛辣だなぁチハは」

 参ったと言わんばかりの苦笑いを見せる徳永だったが、俺の辛辣さなどまだまだカレーの甘口にも行き届かん程甘々だ。本当の辛辣の意味を、俺は嫌なくらいに知ってるからな。

 それから俺は、徳永の掴んだ情報とやらに耳を向けた。天地が今日休んだ理由かもしれない事やら、天地の親父の事かもしれない事や天地電産の事かもしれない事も。ちなみに全部に『かもしれない』と含んだのは、それらがほぼネットなどに流れていた情報だったからだ。

 情報源があてにならないだけあって、半信半疑、噂程度に、片手に顎を乗せて聞いていた俺だったのだが、一方の神坂さんは「へぇ」とか「おお」とか相槌を打ちながら、前のめりになって真摯に徳永の話を聞いていた。こういう身も蓋も無い噂話を聞くのが好きなのだろうか?

「……とまあそんな感じかな。ネットに流れてた情報が主だから真意は不明だけど、可能性があるものを僕なりにチョイスしたつもりだから」

「だから最初に言っただろ、俺はお前の情報など三割程度しか頼るつもりはないと」

「そういえばそうだったね……まあ僕も、その程度の気持ちで聞いてもらった方が気が楽だし、それに確証は最初に言った通り無いから、あくまで噂話を聞いてる程度にとどめておいた方がいいかもしれないね」

 何に納得したかは知らないが、徳永はうんうんと一人頷く。まあ俺からしたら、噂どころか話のキッカケになるかならないかの瀬戸際レベルだと思っているがな。

 とりあえず何にせよ、天地本人が学校に来なければ話すら出来ないからな。明日は来るだろうか……。

「ふふっ、きっと来ますよ」

 俺の独り言を聞いていたのだろう、百万ドルの夜景など見た事ないが、それに匹敵するだろう百万ドルの微笑みをにっこりと神坂さんは返してくれた。

 うむ……こういうものにはあまりすがらないタチなのだが、その瞬間、俺は大きな希望というものを持てたような気がした。
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