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第2部 青春の続き篇

第3話 ロシアンボトル【1】

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 こういう事を言うのは非常にメタ発言たるものに近くなってしまい、本当に申し訳ないと思っているが、敢えて言わせてもらう事にしよう。

 昨今のストーリーの中に、俺と天地のイタズラシーンが無く、それはあたかもそういうやり取りが無くなってしまったのではないかと誤解を招きそうな気がしたので、今回はその事について釈明したいと思っている。

 結論から言うと、俺と天地魔白のイタズラ戦争は未だ休戦協定など結ばれてなく、言わば戦闘状態であった。北緯三十八度線など、俺達の間では皆無だ。

 五月からこの六月下旬まで、学校のある平日の朝に、俺に安息が約束された日など一度も無かった。本当だぞ?

 しかしその趣向は少しずつだが、変わりつつあった。

 というのも天地曰く、一方的なイタズラには限度があるし、時間的にも辛いということだ。

 限度というのは、それは俺と天地の間に交わされた約束の事である。

 まず其の一、他のクラスメイトに迷惑をかけない。

 これは俺達の間の戦争であり、他の人間には決して干渉してはならない戦いでもあった。それと、あの血糊事件のような事は二度と起こしてはならないという、教訓も踏まえてのものでもある。

 そして其の二、怪我をしない程度のイタズラにしておく。

 もし怪我なんかが生じた場合、それはその後に控えている授業などに支障が出てしまう。学生の本分は一応勉学である為、それを欠くような事が決して起きぬようにと、この規定を盛り込んだのであった。

 それから其の三、器物は破損しない。

 大体が俺達の戦う戦場は、俺の座席の周辺となっている。しかしそれは俺の机であって、俺の所有物では決してない。学校の備品だ。

 そんな備品を壊したとなると後々面倒事が起きかねないので、このような規定を設けた。これは天地からの提案でもある。

 以上の三項により、天地のイタズラの範囲は狭められたと言っても過言ではないだろう。テレビ業界がコンプライアンスだなんだで、企画を制限、委縮されているのと同じようなものである。決してこれは嫌味ではない。

 まあとにかく、俺にとっては悪くない事では無い。むしろ生命の安全は約束されているので、喜ばしい事だろう。

 そして時間についてだが、これは天地がイタズラを仕掛けるのに手間取る時間である。
 
 というのも、天地は毎日七時前に登校し、クラス委員長の早良より早く教室の前で待機して、工作に勤しんでいたのだが、何と言っても朝が早過ぎて体が着いて行かないという事だった。

 それもそのはず、天地は毎日自分の弁当を自分で作っている。(毎週月曜日は俺の分も作ってくれる)つまり弁当を作る時間も逆算すれば、天地は毎日五時頃には起床しているという事になる。

 毎朝七時に起きるのにも苦労している俺にとっては、もはや毎日五時起きなど修行でしかない。そんなものを続けるのは酷だろう。

 それらを理由に、天地は一時期、確かに手を抜いていた時もあったが、しかしだ、それでも毎日俺の為にイタズラを仕掛けてくれた。それにはなんというか、俺としては『有り難迷惑』ではなく、『有り難い迷惑』といったところではあった。

 だが天地自身、そんな手を抜いている自分自身が嫌だったらしく、なので新しい秘策をこの日実施する事にしたそうだ。

 これはその、とある日のイタズラについての話である。
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