ヒトコイラヴァーズ 悪魔の女との青春物語

赤坂皐月

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第2部 青春の続き篇

 第4話 図書館の住人【1】

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 漫画は読むものの、文庫本などの字面を辿っていくような本を、俺はあまり読む機会が無かった。

 機会というか、読む気が無かったとも言っていいだろう。

 だから、俺の住んでいる街に立派な市立の図書館が建っていようとも、俺はそこに足を踏み入れる事など今まで一度も無かったのだ。

 しかし、今回に限り、俺はこの図書館へ行かねばならない急用が発生した。

 特例の特令とも言っていい。

 その原因は、天地魔白からのこんな一言である。

『七月七日、星を見に行くから、星座の一つや二つは覚えてきなさい』

 六月最後の日、昨日に天地からの勅命を受け、俺はその指示通りに七月一日の今日、図書館へと向かう事にしたのである。

 我ながらなんと命令に従順であるのか……しかし、せっかく星を見に行くのだから、知らないよりも知っていた方が見ていて楽しいだろうと思ったので、いつもは渋々といった感じで行くのだが、今回ばかりは、俺にしては積極的に足を運んでいる方だった。

 クロスバイクのペダルを漕ぎに漕ぎ、隣町との町境に図書館はあった。

 駐輪場にクロスバイクを止め、しっかり鍵をかけてから、図書館の中へと足を踏み入れていく。

 館内の階層は一階のみであり、横には広くないが縦に長い図書館だった。天井は丸いドーム状というか、トンネルのような、そんな感じになっている。

 確か一、二年前くらいに内装が改装されたとかなんとか、本好きの徳永から聞いた事があったような気がしたが、なるほど、確かに外側は外壁が少し痛んでたりと、古びた印象を感じたものだが、中はそれとは一転、とても清潔というか、まるで新設された建物のように、綺麗な空間が広がっていた。

 図書館であるがため、本棚は無数に陳列されており、図書館初心者の俺は表示板を頼りに、天文学のコーナーに入り、星座とか星の事に関して書いてありそうな本を探す。

 しかし天文学の本が並ぶ棚だけあって、無数の星や星座に関する書籍がつらつらと配列されており、図書館の使用も、ましてや天文学に関してもビギナーである俺には、サッパリどの本を読めばいいのか分からなかった。

 とりあえず、それっぽい本を棚から七冊引き抜き、本棚が並んでいる場所から少し離れた所にある、読書スペースへと移動する。

 読書スペースは意外に人が多く、大机と無数の椅子が何重にも並んでいるが、半分ほど座席は埋まっていた。

 近年、読書離れが進み、図書館が次々と閉鎖しているという話を耳にした事があるが、こういう人達がいる限り、やはり図書館というものは必要な存在なのだなと、利用してみて初めて、そんな事に気づけたような気がする。

 彼ら、彼女らにとっては、ここはオアシス。知力が湧き出てくる泉のような、そんな存在。

 決して渇いてしまってはならない、そんな存在なのだろうと。

 俺は座席に着き、七冊もの分厚い天文学の本を机に置く。場合によってはもしかしたら、周りからそういう勉強をしている人に見えられなくもない……か?

 まあ取り敢えず、俺はまず一冊、分厚い本を適当にチョイスして、その本を開く。開いた瞬間、星についての名前やら説明やらが文章になって、その本にはズラッと陳述されていた。

 まあ天文学の本なのだから、それらの事が記されているのは当たり前なのだが、しかしその情報量と文字の多さに、俺は一瞬目が眩みそうになった。

 まあ俺も、近年の若者ばりに活字離れした人間なので、その文字の数だけで圧倒されてしまい、苦手意識が潜在的に働いてしまう。

 というかそもそも、天文学についてビギナーどころか、無知同然の俺が、こんな本を初っ端から選んだ事がそもそもの間違い。お門違いも甚だしいといったところだった。

 しかし、これは俺が捻くれ者であるが故なのだろうか、自らの活字離れを認めたくない、近年の若者だと言われて、一括りにされたくないという、なんともへそ曲がりな理由で、俺は本に向かい合う事を続行する。

 読んでいれば、どんな本だっていつかは理解出来るはず!と、なんともまあ根拠の無い自論を糧に、どうにか長い長い文章を読み進めていく……が、それは僅か三十分も保たなかった。

 気づけば俺は、本を持ったままその場で眠りこけてしまっていた。

 本当に情けない。自分が浅ましい。

 だが、ここで寝た事を、俺は反省はするが、決して後悔はしなかった。

 何故なら俺は、今までにない最高の目覚めを。

 図書館に現れた天使によって、その眠りから解かれたのだから。
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