ヒトコイラヴァーズ 悪魔の女との青春物語

赤坂皐月

文字の大きさ
65 / 103
第2部 青春の続き篇

第5話 七夕の日【11】

しおりを挟む
「まあまあ岡崎君、誰にだって黒歴史の一つや二つ、あるものよ」

「……お前まさか、お前の黒歴史がばれたから、わざと誘導して俺に黒歴史を作らせたのか!」

「あのね岡崎君……そこまで出来たら、もはやわたしは予言者よ。それにあなたがそんなこと言うと知ってたら、わたしがあんなに笑うはずないじゃない」

「あっ……確かに」

「語るに落ちただけよ。自分の行いを呪いなさい」

 天地の言う通り、自分が熱くなって、自分が自分の思いを口にしただけ。

 つまりは誰のせいでもなく、自分のせい。

 どうやら岡崎千羽矢という男は、後先のことも考えず、それでもなお、自分の気持ちを、自分の口で表現出来るような、そんな男になったらしい。

 人間として、男として、それはほんの少しだけでも、成長したと言ってもいいんじゃないだろうか?

「『お前が俺を愛してる内は、俺はそれまでお前を愛し続けるし、俺がお前を愛し続けるなら、それまでお前は俺を愛していてくれ』……記憶したわ」

「復唱するな!」

「なによ、良い言葉じゃない。『迷言』は何度だって口ずさみたくなるものよ」

「せめて『名言』にしてくれよ!」

 確かに言葉としても、俺の立場も現在進行形で迷走しちゃってるけどさぁ……。

「でもさっきの言葉、なんか岡崎君が優位に立ってるようで腹立つわね」

「まあ……勢いで言ったからな。正直そこまで言葉の配慮はしてない」

「そう、じゃあわたしも勢いで言っちゃうわね」

 すると天地は、俺の両手を手放し、しかし俺の上に馬乗りになった体勢は崩そうとはせず、そのまま両手を地面に着いて、俺の目と鼻の先で、宣戦布告ともとれるような、こんな事を言ってきやがったんだ。

「愛され続けたいなら、わたしを奪ってみなさい?岡崎君?」

 まるで囁くように、誘うかのように、天地魔白は俺に、そう告げた。

 俺の両手を突如自由にしたのは、そういう意味なんだろう。俺に向けて、挑戦的な、ニンマリとした表情をしているのは、そういう事なのだろう。

 そしてこの挑戦は、いわずもがな、受ける以外に俺の選択肢は無いのだろう。

「俺のキャラを守る為に前もって言っておくが、俺はお前以外には、こんな事するようなやつじゃないからな」

 そんな事を言いながら、俺は解放された両手を彼女の背中へと回す。絡みつけるように、覆い囲むように。

 そしてそのまま、彼女の体ごと俺の方へと引き寄せ、そして俺は……奪ってやった。

 彼女の唇を、奪ってやった。

 その後の事を、少しだけ話すとするならば……どうにか帰りの終電には間に合った俺達は、無事電車で四十分もかかる距離を、あの重い天体望遠鏡を担いで歩かずには済んだのだった。

 それから電車に乗って、天地の家まで帰って来たのだが、その間、俺達二人は手を繋ぐのではなく、腕を組み、絡め合い、改札を通る時以外は片時も、その腕が離れることは決して無かった。

 七月七日、七夕の日。
 
 天の川に橋が架かり、織姫と彦星が繋がり合うように、俺と天地も、やっと初めて繋がり合えたような、そんな気がする一日であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夜の声

神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。 読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。 小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。 柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。 そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。

恋い焦がれて

さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。 最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。 必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。 だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。 そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。 さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。 ※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です ※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません) ※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。 https://twitter.com/SATORYO_HOME

病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する

藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。 彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。 そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。 フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。 だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。 柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。 三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

家出令嬢が海賊王の嫁!?〜新大陸でパン屋さんになるはずが巻き込まれました〜

香月みまり
恋愛
20も離れたおっさん侯爵との結婚が嫌で家出したリリ〜シャ・ルーセンスは、新たな希望を胸に新世界を目指す。 新世界でパン屋さんを開く!! それなのに乗り込んだ船が海賊の襲撃にあって、ピンチです。 このままじゃぁ船が港に戻ってしまう! そうだ!麦の袋に隠れよう。 そうして麦にまみれて知ってしまった海賊の頭の衝撃的な真実。 さよなら私の新大陸、パン屋さんライフ〜

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...