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第3部 欺いた青春篇
第3章 夏の特別合宿【6】
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「四の五の言わずに、さっさと食べなさい」
そう言って天地は、俺の前に鉢一杯に盛られたかき氷を置く。
おやつって、こんな半強制的に食わせられるような、そんなものだったかしら?
ともあれ、今の俺は糖分を欲し、更にこの知恵熱と夏の暑さでオーバーヒートしかかっていた身体を冷やすには、かき氷ほど最適なものは無かった。
ちくしょう……もうこの夏はかき氷を一口も口にしないと誓ったばかりだというのに、とんだ掌返しだ。
情けないよ、自分の意思の脆さが。
「いただきます」
用意されたスプーンを持ち、俺は鉢に盛られた氷を口の中に流していく。
体が冷え、蜜の甘さがこの疲れた身体の隅々までに行き渡っていく気がする。うめぇ……うめぇよ……。
「そんな悲しい顔してかき氷を食べるなんて、岡崎君は情緒不安定なの?」
「なんだかな……敗北した気分になってな……」
「負け犬なのね」
「…………」
ホント、酷い物言いするよなぁ。
死体蹴りもいいところだよ。
「でも大丈夫よ岡崎君、岡崎君が負け犬でも、わたしが居れば勝利は約束されているから」
「お前は勝利の女神かよ」
「俗にそう言われてるわね」
「確か勝利の女神の名前ってニーケーじゃなかったっけ?」
「ああ、あの子はわたしの後輩よ。この前焼きそばパンを買って来させたわ」
「勝利の女神がパシリ扱いされてるっ!」
というか勝利の女神の先輩ってなんなんだよ。圧勝の女神とでもいうのか?
是非あやかりたいものだよ、本当にそうであったなら。
「どう?美味しい?」
「うん……美味い」
「そう、やっぱりわたしのチョイスに狂いは無かったわね。岡崎君のツボは心得てるつもりだから」
「ほう、ツボねぇ」
「経絡秘孔は常に突けるわよ」
「お前は北斗神拳の使い手だったのかっ!」
「お前はすでに死んでいた」
「知らない内に亡き者にされてるっ!!」
というかむしろ、自分が死んでることに気づく人なんかいないよな。
なんせもう、死んでいるのだから。気づくための意識すら無いのだから。
「そういえば岡崎君、岡崎君はかき氷を食べている時、頭がキーンってなることあるのかしら?」
「ああ、あれね。うんまあ、あるな」
「わたしは無いのよ。だからあれがどういう感覚なのか、キーンっていう擬音から想像できる痛さが、どんなものなのか理解できないのよね」
「へえ……」
そういえば稀にいるらしいな、かき氷を食べても頭が痛くならない人っていうのが。
確かあれって、体質の問題じゃないっていうのは聞いたことがあるけれど、俺もそこまで医学的なことに詳しいわけではないので、これ以上のにわか知識を披露するような真似はよしておこう。
「そうだなぁ……片頭痛みたいにズキズキするんじゃなくて、本当にキーンっていう瞬間的なものなんだよなあれって。う~ん……他に良い表現が出てこないな」
キーンはキーンであって、他にそれっぽいものや似たものがないからな。
ずーんもないし、バーンもないし、普通の頭痛かと言われれば、そうでもないし……八方塞がりだ。
「ふむ……どうやら期待したわたしが愚かだったみたいね」
「期待?なにが?」
「岡崎君の語彙能力を期待したのが悪かったわね」
「……ボキャブラリーが貧弱で悪かったな」
「ボキャ貧」
「縮めるなよ……」
「ボキャ天」
「それはタモリの冠番組だっ!」
ボキャブラリーに富んでいるというよりは、ネタの引き出しに富んでいるよなコイツって。
ホント、羨ましい限りだよ。
そんないつもの調子のやり取りをしていた俺と天地だったのだが、突然その時、俺のスマートフォンがポケットの中で震え出したのだ。
一瞬ではなく、ずっと震えている。なにかしらの通知ではなく、おそらく通話の呼び出しだ。
俺はスマートフォンを取り出し、そしてその画面に表示されている名を確認し、何故か不穏な空気を感じ取った。
虫のしらせとも言っていいだろう。なんせ昨日の今日だったから、そう思わざるを得ない。
そう、そこに表示されていた名前は……神坂さんの名前だった。
そう言って天地は、俺の前に鉢一杯に盛られたかき氷を置く。
おやつって、こんな半強制的に食わせられるような、そんなものだったかしら?
ともあれ、今の俺は糖分を欲し、更にこの知恵熱と夏の暑さでオーバーヒートしかかっていた身体を冷やすには、かき氷ほど最適なものは無かった。
ちくしょう……もうこの夏はかき氷を一口も口にしないと誓ったばかりだというのに、とんだ掌返しだ。
情けないよ、自分の意思の脆さが。
「いただきます」
用意されたスプーンを持ち、俺は鉢に盛られた氷を口の中に流していく。
体が冷え、蜜の甘さがこの疲れた身体の隅々までに行き渡っていく気がする。うめぇ……うめぇよ……。
「そんな悲しい顔してかき氷を食べるなんて、岡崎君は情緒不安定なの?」
「なんだかな……敗北した気分になってな……」
「負け犬なのね」
「…………」
ホント、酷い物言いするよなぁ。
死体蹴りもいいところだよ。
「でも大丈夫よ岡崎君、岡崎君が負け犬でも、わたしが居れば勝利は約束されているから」
「お前は勝利の女神かよ」
「俗にそう言われてるわね」
「確か勝利の女神の名前ってニーケーじゃなかったっけ?」
「ああ、あの子はわたしの後輩よ。この前焼きそばパンを買って来させたわ」
「勝利の女神がパシリ扱いされてるっ!」
というか勝利の女神の先輩ってなんなんだよ。圧勝の女神とでもいうのか?
是非あやかりたいものだよ、本当にそうであったなら。
「どう?美味しい?」
「うん……美味い」
「そう、やっぱりわたしのチョイスに狂いは無かったわね。岡崎君のツボは心得てるつもりだから」
「ほう、ツボねぇ」
「経絡秘孔は常に突けるわよ」
「お前は北斗神拳の使い手だったのかっ!」
「お前はすでに死んでいた」
「知らない内に亡き者にされてるっ!!」
というかむしろ、自分が死んでることに気づく人なんかいないよな。
なんせもう、死んでいるのだから。気づくための意識すら無いのだから。
「そういえば岡崎君、岡崎君はかき氷を食べている時、頭がキーンってなることあるのかしら?」
「ああ、あれね。うんまあ、あるな」
「わたしは無いのよ。だからあれがどういう感覚なのか、キーンっていう擬音から想像できる痛さが、どんなものなのか理解できないのよね」
「へえ……」
そういえば稀にいるらしいな、かき氷を食べても頭が痛くならない人っていうのが。
確かあれって、体質の問題じゃないっていうのは聞いたことがあるけれど、俺もそこまで医学的なことに詳しいわけではないので、これ以上のにわか知識を披露するような真似はよしておこう。
「そうだなぁ……片頭痛みたいにズキズキするんじゃなくて、本当にキーンっていう瞬間的なものなんだよなあれって。う~ん……他に良い表現が出てこないな」
キーンはキーンであって、他にそれっぽいものや似たものがないからな。
ずーんもないし、バーンもないし、普通の頭痛かと言われれば、そうでもないし……八方塞がりだ。
「ふむ……どうやら期待したわたしが愚かだったみたいね」
「期待?なにが?」
「岡崎君の語彙能力を期待したのが悪かったわね」
「……ボキャブラリーが貧弱で悪かったな」
「ボキャ貧」
「縮めるなよ……」
「ボキャ天」
「それはタモリの冠番組だっ!」
ボキャブラリーに富んでいるというよりは、ネタの引き出しに富んでいるよなコイツって。
ホント、羨ましい限りだよ。
そんないつもの調子のやり取りをしていた俺と天地だったのだが、突然その時、俺のスマートフォンがポケットの中で震え出したのだ。
一瞬ではなく、ずっと震えている。なにかしらの通知ではなく、おそらく通話の呼び出しだ。
俺はスマートフォンを取り出し、そしてその画面に表示されている名を確認し、何故か不穏な空気を感じ取った。
虫のしらせとも言っていいだろう。なんせ昨日の今日だったから、そう思わざるを得ない。
そう、そこに表示されていた名前は……神坂さんの名前だった。
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