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第一章〜ユニオンレグヌス〜
2話✡︎ユリナとカナ✡︎
しおりを挟むその頃エルフ族の国セレスでは。
水を一杯に満たした精霊石で作られた大皿を覗き込み、水占いをしている一人のエルフの少女がいた。
白い家着の様なローブを着ている、エレナに本当に良く似ている見間違える程に……
ただ、まだ幼さの残る顔立ちで瞳こそ空色ではあるが髪は金色、彼女はエレナの娘ユリナ。
ユリナはエレナを心配して、様子を伺っているユリナの占いは未来だけでなく過去も少しは見通せる。
エレナ程では無いがエレナの教えをちゃんと受け継いでいる。
ユリナは難しい顔をし水鏡の横に置いてある銀色の鈴を鳴らす。
「誰か居ますか?」
と細くはっきりとした声で言う。
「お呼びですか?ユリナ様」
すぐに召使いが答える。
「昨夜、私のお母様が何者かに襲われた様です、お母様は無事にセレティアのサイスに着いたのですが心配です。
私が向かいますので、手練れ三十名程直ぐに集めて下さい。」
召使いが答える。
「エレナ様が⁈ユリナ様お気持ちは分かりますが。
ユリナ様は今、弓兵師団長をエレナ様から引き継がれ、簡単にエルドから離れる訳に参りません。
直ぐに三十名集め向かわせますが、ユリナ様は留まり下さい。」
ユリナは難しい顔をしながら、少し考えていると、青いローブを着たエルフの若い男が言う。
「俺が行こうか?」
ユリナが何で居るの?と言う感じで言う。
「サイ?」
サイが軽く笑いながら
「いや、ユリナが今日困るって占いが教えてくれてさ、来てみたんだ。」
サイはユリナの幼馴染の魔法使い。
氷と風の魔法を得意とする、エルフ族の上位魔導師である。
ユリナは占いこそするが魔法はエレナに遠く及ばないが弓は負けず劣らない、サイはエレナから魔法を教わり、祝福の力を除けば魔法の力はエレナに負けず劣らない。
「俺の魔法はエレナさんから教わったし大切な師匠だからな、ユリナが行けないなら俺が行くよ」
ユリナは少し安心した様に、それでいて心配しながらも強気に見せながら。
「ねえ?女の子の家に勝手に入ってその態度は何?」
サイはえッ?と言う顔した。
「ちゃんと召使いには挨拶したぞ」
そうサイは慌てて答える。
ユリナはそれを見て、クスッとほんの少し笑った。
「ありがとう。サイ罰としてお母さんの護衛しっかりやってね」
ユリナは明るく言いサイも笑みを浮かべた。
「あぁ」
そう答えユリナの部屋を後にする。
しばらくして、ユリナの屋敷の広場に弓兵隊が集まり始め騒がしくなる。
「本当にお母さんは、なんで護衛も連れずに、慌てて行ったんだろう」
ポットに紅茶を入れて召使いが部屋に来て、話を合わせる様に答える。
「私がお尋ねした時。
(セレティアの祭壇が汚されてしまう)
と言われて、ユリナ様には気づくまで伝えない様に言われました。」
彼女はエレナの屋敷に仕える召使いのカナ、元はエレナが弓兵師団を率いて居た時のエレナの側近で小隊長も務めて居た。
その為エレナに深い信頼を寄せ忠実である、エレナがその昔カナを救ったらしく、それから屋敷の召使いとして屋敷にいる。
「カナさん、二日前にはお母さんの行き先を聞いてたの?」
そう聞くユリナに向い。
「はい。」
カナは美しい笑顔で答える。
その笑顔を見てユリナは不思議に思う。
(何でカナさんはお母さんの事をいつも信頼してるんだろう?
大丈夫って思えるからあんな笑顔が出来……)
「大丈夫ですよ、エレナ様は無事に帰って来られます。エレナ様は巫女であり、セレスの国で最高位のエヴァスをお持ちの戦士でもありますから」
カナは何も心配する様子も無くユリナを落ち着かせようとしている。
ユリナは以前からの疑問をカナに聞く。
「カナさん何故お母さんは、エヴァスになれたの?
私は弓が得意でセンティネル•レンジャー……
サイは魔法でセンティネル•ウィザードお母さんは両方凄いけど……
センティネルとエヴァスの差は凄く大きくて、両方出来るからってなれる物じゃ無いと思う。
お母さんは女神の祝福を授かる前から、エヴァスの称号を持ってたけど、なんで?」
カナは優しい笑顔で答える。
「どうしても知りたいですか?
それは……
私がこの屋敷に着たことを、良く考えれば解るかも知れませんよ?」
謎が深くなりもっと解らなくなった顔してユリナが困惑してる、その様子を見てカナが話を続ける。
「エヴァスの称号は水の守人、森の守人と言われるエルフ族の中で、水の女神エヴァに関わる神殿を守らなければなりません。
それだけでなくエルフ族を守る為に、負ける事は許されないのです。
戦士としても戦にしても……
二千年前のオーク族との戦で、エレナ様は戦士の一族相手に、セレス軍全軍を率いて五倍の敵を軍ね被害も少なくし追い払いました。
ですがその戦いもエレナ様の強さの秘密があってこそ成せたのです。」
カナは自慢気に話を続ける。
「ユリナ様もエレナ様に言われてませんか?
もし戦が起きた場合、私を必ず側に連れて行く様にと、言われてませんか?」
ますますユリナは解らなくなった。
「確かに言われてるけど、シルバー•レンジャーのカナさんを必ずって」
少し間を置いてカナが笑顔で言う。
「でしたら、私とデュエルしてみます?」
ユリナはえ?と言う顔をするそれは当然である。
シルバー•レンジャーとセンティネル•レンジャーの違いは歴然である。
形としては主人からカナが稽古してもらう形になるのだが……
問題はカナの言い方だ、まるでユリナより強い様な同等の様な言い方をしたからである。
「エレナ様の強さの秘密、何故私がこの屋敷に居るのか、知りたく無いですか?」
まるで挑発する様にカナが言う。
「いいでしょう。支度をして広場へ」
ユリナは目つきを少し鋭くしてそう答えた。
「かしこまりました。」
丁寧なお辞儀をしてカナが立ち去る。
ユリナは部屋の扉を閉めて、支度を始める、家着の様にしつらえたローブを脱ぎ捨て白いライトアーマーに着替える、その様子は僅かな苛立ちを伺わせる。
開き戸のタンスを開けるとそこには、弓と矢筒が二組あるが、何故か弓を取る事をためらい、そこは矢筒だけを取り壁に掛けてある弓を手に取る。
何故この弓を手にしたのかユリナも不思議な気がした。
その弓は鋼で出来ているが、弓の両端と中央に精霊石が埋め込まれていて、魔力を込めると普通の弓と同じ様に扱える、エレナが以前使っていた特殊な弓である。
矢筒には二十本ほどの矢が入って居るが、五本抜く、そして鋼の矢を代わりに三本入れた。
その矢筒を肩からかけ深く深呼吸をして、弓の弦を軽く鳴らし、弓を確かめセンティネルの印が鮮やかな空色で中央に大きく描かれ、その印を囲う二重線の間に幾つもの弓が書かれた白いマントを身につけ部屋を後にした……
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