✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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第二章〜記憶の石板〜

18話✡︎神の涙✡︎

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 エレナの屋敷は広い、そもそもエレナの家はエルフ族王家の正統な一族であるが、王位の継承権を放棄した王族である。
 騒乱の時代に戦争が続き、国が疲弊しそれでも権力闘争、派閥闘争が絶えないそんなエルド宮と王宮に嫌気がさした一族である。

 その為に政治の場には顔を出さず、王宮には何かの行事で挨拶に行く程度で、争いに巻き込まれる事を極力避けていた。
 だが現在の王が余命百年程と言われ始め一族の主エレナがエヴァスであり、巫女でありエルフ族の英雄でもある。
 そしてユリナがエルフ族、ヒューマン族の王族の血を引いてる為、エレナの一族が王権に復帰する事を望む声がこの数十年あがり始めていた。



 ユリナが屋敷の庭で魔力を高めて意識を自然の流れに身を委ねている。
 静かに浅く息を吸い、静かに吐き出し呼吸を整えている、呼吸法の修練をしているのだ。

 あれから五日たちユリナ達は屋敷に帰って来ていた。

静かに集中しているユリナ……
その近くで……
「なんでお前はいつもスグに怒るんだよー!」
またウィンダムとリヴァイアサンが喧嘩しながら寄って来る。
「カナさんあの子達がユリナ様に怒られるか賭けません?」
アヤが屋敷の二階にあるテラスで、カナと楽譜を見ながら曲と舞の勉強をしながら話す。
「アヤさんそれは賭けにならないと思います。」
カナは明るい笑顔で答えると。
「コラッ二人とも!さっきから邪魔ばっかりして!あっちでやりなさい‼︎」
アッサリ怒られる幼竜達。
「ほら」
クスクスと笑いながらカナが言う。


 エレナは自分の部屋で、オーク族の国から過去に密偵が届けて来た情報を見つめて不思議に思っていた。
 騒乱の時代が終わり、六百年前までは細かく、他国の情報をチェックしていたが、ユリナが生まれてからも、平穏な日々が続いて巫女として、母親として過ごして来たので、この六百年の間は手をつけて居なかったのである。

 アグド国はこの二千年の間に軍事力は騒乱の時代から見ても倍以上になっている、屈強で好戦的な一族……その戦力は脅威にも感じるが、何処の国とも小競り合いもしてない、それがかなり強い違和感を感じさせていた。
 そこにユリナが二匹の幼竜を肩に乗せやってくる。

「はいリヴァイアサン、お母さんの所に帰りなさい、お母さんこの子達いると、練習出来ないよ。」
「でもこの子達にだいぶ、慣れて来たじゃないこの子達が幼竜でいる時は遠慮しなくていいからね。
あと、ウィンダムが遊んでる時に使う風はユリナも使えるから良く見とくといいよ。」
「ふーん……そういえば夢の中で言ってたプレゼントって何?」
ユリナが楽しみにしていた様で嬉しそうに聞いて来た。


「あ、忘れてたゴメンね。」
エレナは手を合わせてウィンクして謝る。
「サイスであんな騒ぎだったし、ユリナが凄い事したから、要らないかな?って思って、そのままだったね。」
そう言いながらエレナは引き出しから、小箱を取り出して机に置く。


「凄いこと?私何かしてた?」
ユリナは自覚無いようだったのでエレナが話す。
「あの時、祭壇の間でウィンダムから魔力を借りたでしょ?
あれは私にも出来ない凄い事なのよ、ユリナの才能なのかな?って」
笑顔でエレナが言う。
「え?私普通にウィンダムに借りるよって言って借りたけど……何んで?」

「守護竜の魔力を全身に行き渡らせるのは同化と同じだから。
私がしたらドラゴンナイト化しちゃうかな……でもユリナは祝福の力だけを解放出来たよね。
つまりユリナちゃんは、守護竜の力を使い分けれる天才かな?って」
そうエレナは笑顔でユリナに言いながら小箱をユリナに渡した。
「そんなユリナに、これをあげるね。
空けてごらん」

 エレナの言葉に戸惑いながらユリナは小箱をあけると、そこにはエレナがしてるネックレスと、同じデザインのネックレスが入っていた。
 赤いガーネットの様な色と、青いサファイアの様な色との二色がゆっくりと交互に変化し続けている、とても不思議な宝石が埋め込まれている。
「綺麗……」
ユリナが見つめながら囁く。
「エレナ、これアルベルトの竜魔石……
砕けなかったってことは……神の涙だよね?」
ウィンダム驚きながら言う。


「そうウィンダム、これはあの人の竜魔石、最後に砕けない様に自分の魔力を全て注ぎ込んで、私に渡してくれたのよ……
ユリナにってあの人が言ってくれてたわ」
 そうエレナは言うと静かに立ち、神の涙を手に取りユリナの首にかけ、エレナの手でフックを付けながら言う。

 ユリナはそれがウィンダムの様子で非常に貴重なものだと、理解して本当に受け取っていいのか戸惑いながらも、エレナの言葉を聞く。
「あの人はちゃんとユリナに形見を残してくれたの……神の涙を……
ユリナ、神の涙に口付けをしてごらん」

 ユリナは不思議に思うが父の形見でもある、神の涙を手に取り綺麗な唇で可愛くキスをすると。

 神の涙が赤色と青色に光溢れる様に輝く、その輝きは部屋の窓からも溢れ出す程である。
「お母さんこれは?」
ユリナが驚きながらもその綺麗な輝きに見惚れながら聞く。

「神の涙がユリナを持ち主と認めたの、これで例えユリナの手元からから離れても、必ずユリナの元に帰ってくるからね。」
そうエレナが言うとその輝きは静かに収まっていく。

「お母さん、この神の涙って……ただの竜魔石じゃないよね?」
「神の涙はね、全ての生きし者が望む神聖な行いをしようとした時に、神々を地上にお呼びする力があるって、言い伝えられているのよ」
そう説明していると、ウィンダムが言う。
「とりあえず、僕のお家にして良いんだよね?」
とエレナに聞き、エレナは笑顔で。
「はーい、ルクスが前住んでたけど好きに使ってね」


「エレナさん呼んだ~?」
いきなり光竜ルクスが神の涙から出てきた……

ウィンダムは久しぶりに顎が外れた……

「…………」
エレナとユリナはビックリしながら、全員があぜんとする。

「あ、ウィンダムさん久しぶり!顎大丈夫?」
ルクスは女の子の守護竜らしい……

「な、なぜルクスが神の涙に、アルベルトと一緒に天界に帰ったんじゃないの?」
ウィンダムが聞くとルクスは不思議そうに聞く。
「えっ?アルベルト様が竜魔石に私を戻してユリナ様をお守りする様に、そうこと使ってました。
今まで何も無かったので、ずっとこの中でお待ちしてました。」

「ちょっと待って、今からこの神の涙が僕のお家になるはずだったんだけど……
と言うか僕がユリナの守護竜なんだけど……」
「お母さん……これって……騒がしいのが一人増えたってこと?」
ユリナは状況が掴めなくてエレナに聞く。

「あのルクスちゃん、ルーメン様には何て言われてるのかな?
そもそも守護竜って継承出来るの?」
 エレナはルクスに光りの神ルーメンから了承を得てるのか、そして肝心なことを聞いてみる。

「ルーメン様から許されてます。
あと守護竜の継承はありません、私はこと使っているだけですからご心配無く。」
ルクスは笑顔で答える。

「ユリナ、ごめんもうちょっと心の中にお邪魔しまーす」
ウィンダムはユリナの首すじからユリナの中に帰ろうとする。
「ウィンダムさんとなら、私大丈夫ですよちょっと部屋が女の子っぽい部屋ですけど、遠慮しないで下さい」
ルクスはウィンダムを引き止めるが、ウィンダムは逃げ出す。

ユリナはウィンダムを捕まえて言う。
「ウィンダム?女の子に恥かかせるの?
貴方も私が呼吸法練習してる時に毎回邪魔してるんだから、女の子と一緒になれば少しは落ち着くんじゃないの?」

ユリナの目が楽しんでいるエレナは心で囁く、
(それはユリナにも言えるかもね)
「もうしないから許してぇぇ!」
ウィンダムはユリナに超高速で、逃げ込んだ。
「もう……ウィンダムさん」
ルクスはちょっと寂しそうにする。

 ちょうどその時カナとアヤが部屋に入って来た、エレナは?と思い。
「カナ、あの人の羊皮紙見せてくれない?」
そうカナに言うとカナは笑顔で羊皮紙を渡した。

 エレナはその羊皮紙を開くと、そこには変わらないアルベルトの文字が、
エレナはまだ羊皮紙を見てなかったのである。
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