✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

文字の大きさ
27 / 234
第二章〜記憶の石板〜

20話✡︎エレナの立ち入り禁止区域✡︎

しおりを挟む




 ある日エレナの屋敷の庭で幼竜の姿でリヴァイアサンが日向ぼっこをしていた、そこに優しいそよ風が吹いている、春を思わせる優しいそよ風が吹いていた。

 リヴァイアサンも時折、エレナの竜魔石から出てこうして地上世界を楽しんでいる。
優しいそよ風にうとうととしていたが少しずつ風が強くなって来た。


 やさしい……や…さ…し……くない!


 リヴァイアサンは強すぎる風に起こされた。

空は澄み渡る晴天!

木々も揺れていない!

 なのに嵐の様な風がリヴァイアサンだけに吹いている、リヴァイアサンは飛ばされそうになり芝生に這いつくばり風の吹く方を見る。

 ウィンダムだ、ウィンダムは怒っていた、凄まじい風を起こしリヴァイアサンを吹き飛ばそうとしていた。

 抵抗出来ないリヴァイアサンを見て、ウィンダムは更に強い風を吹き、リヴァイアサンを吹き飛ばした。


 リヴァイアサンは空高く飛ばされて行く……


「ふん!僕のケーキ食べて堂々とお昼寝なんてなんてヤツだ」
リヴァイアサンはウィンダムのケーキを食べたらしい。


 ウィンダムはリヴァイアサンが寝ていた場所で丸くなり、猫の様にクークーと寝始める、日がぽかぽかとしお昼寝には丁度いいが、そこに雨が降って来た。

 日は出ている雲ひとつない……が……
凄まじい雨がエレナの屋敷に降り始める、屋敷の庭のみに降り始めた。

 ウィンダムは雨に起こされた、リヴァイアサンがウィンダムに仕返しをしに来たのだ。
 ウィンダムは直ぐに突風を起こしリヴァイアサンを吹き飛ばそうとするが、雨によってリヴァイアサンは力強くなっている。


「ウィンダム!貴様ケーキぐらいで怒るとはなんたる事だ!それでも神の竜か!」
「ふざけるな!お前が盗み食いしたんだろうが!」
「はやく食べない方が悪い‼︎」


 二匹は口喧嘩しながら幼竜の姿で取っ組み合い、屋敷の庭だけが嵐になって荒れて行く。


「あ~ぁ~」
ルクスが屋敷の中から二人を心配している……訳は単純だエレナの目が座っている。


そして同じ部屋にいたユリナは二人の言い合いを聞いて弓兵師団の仕事をしていたのだが……


パキッ!


 字を書いてる途中で羽ペンを折り立ち上がった、ユリナは壁に掛けてある弓を取り矢も持たずに窓を開け放つ。

 強い風と雨が屋敷に入って来るが、エレナはさっと魔力を使い、ユリナの仕事と自分の書物を素早く守る。
 ユリナは矢を空に向けてかなりの魔力を込めてマジックアローを天に向けて放った!


 そして一、二秒後に凄まじい数のマジックアローが庭に降り注ぐ!


「ぎゃーーー‼︎」
庭から二匹の悲鳴が聞こえ嵐がおさまる。


「二人とも一週間!おやつ無し‼︎
次やったら本気で当てるわよ!」
そう二匹に向かって叫び、バンッと窓を閉めた。


ユリナはやり切った気がしていた。


「お母さんありがとう、ちょっと着替えて来るね」
「うん、ちゃんと髪も拭いて来なよ」

エレナとユリナは何事も無かったかの様に振る舞う。


(まぁ…いつもの事だからね……)
ルクスは心で呟いていた。


玄関から見ていたアンサラが言う。

「ちみたち、やっぱりアホだよね」

そう言い我関せずに玄関ホールのソファーに飛び乗り犬の様に寝始めた。


エレナが静かになった庭を気にして、窓を開けて様子を見て二匹に笑顔で言った。

「庭の片付けと、芝生も綺麗にしておいてね」


 青空の下に茫然とする二匹の幼竜がそこに居た。


 それから数日経ち、またリヴァイアサンとウィンダムが庭で喧嘩していた、以前のことが懲りたのか、派手ではなくまだ可愛げがあった。


(まぁ、これくらいなら……)
そう思いながらユリナは小さく鼻で笑い、チラッと見てから思わず二度見した!


 リヴァイアサンが小さな竜巻に飲まれ、悲鳴を上げていた、小さな風の刃に斬られているのか解らないが、リヴァイアサンから水が飛び散っている。


 ユリナが慌てて庭に出ると、二匹は慌てて喧嘩を辞めた。


「僕達遊んでただけだよ!」
ウィンダムがそう言うがそれにお構いなしに、ユリナは言う。
「今の竜巻一度やってみて!」


 えっ?と言う顔を二匹はするが、怒られないと思って、ウィンダムがもう一度竜巻を起こして、リヴァイアサンを少し舞いあげる。


「もっと強く出来る?」
「うん出来るよユリナの場合は、魔力の強さと心のイメージを風に送ってあげるんだよ。
風は心のイメージで操るの、風が流れやすいイメージを描けば速くなって。
持ち上げたり動かすイメージすれば力強い風になるんだよ。」
ウィンダムはユリナに教えてあげる様に説明してくれた。


リヴァイアサンもユリナが覚えようとしているので、体を張って悲鳴をあげている。


「こんな感じ?」
とユリナは魔力を込めて強い竜巻をイメージした。


 それはウィンダムが起こしていた竜巻の十倍はありそうな竜巻で、ユリナは素早く距離を取り、なる程……と納得したがウィンダムもその竜巻に飲まれる。


「ぎゃーーーーー‼︎」


 本気で二匹は悲鳴を上げている……

 ユリナは、やり過ぎたかなと思い魔法を解き二匹は空からぼてぼてと落ちて来た。


「ごめんね、後で二人にご褒美あげるからね」
そうユリナは可愛くウィンクして謝り、屋敷に入って行った。


 丁度その頃、エレナが二階の窓を開けて爽やかな外の空気を取り込もうとして、ついでに庭を見る。
 先ほどのユリナの竜巻で芝生が大きく荒れているのが目に入り、爽やかな笑顔で二匹に言う。


「二人とも~それは何かしら?」


 リヴァイアサンは目を丸くし、ウィンダムは顎を外した、二人はあわわになり慌てる。


「お母さん、それ私がウィンダムに教えてもらったの、アンサラここ直せる?」
ユリナがアンサラを連れてきたのだ。


「ならいいよ~二人ともごめんねー」
そう言いエレナは部屋に戻って行った。


 二匹はホッとした。
アンサラが荒れている所をクンクンしながら、ふーっと息を吹きかけると、土の中にある芝生の根から葉が伸びて来てスクスクと育ち元どおりになっていった。


 その後、守護竜達にユリナとカナがクッキーを焼いてくれた。
「仲良く食べるんだよ~」
守護竜達は甘く美味しいクッキーを楽しそうに食べていると。

「さっきリヴァイアサンとウィンダムを疑ってごめんね。
これ私が焼いたんだけど、二人にあげるね」
エレナが黒い何かを持って来た。


(エェ⁉︎)
ユリナとカナが心で驚き、ユリナは頭を抱え
カナはポーカーフェイスの可愛い笑顔を素早く作る。


 リヴァイアサンとウィンダムは、チョコレートクッキーと思ってパクッと口に入れたが……二匹に衝撃が走る!それはそんな甘い物じゃなかった。


 黒く焦げた可哀想なクッキーだった、エレナは料理が出来ない……出来ないと言うレベルでは無い。どうしてレシピを見て作ってそうなるのか解らないが、そうなるのだ。

 エレナの屋敷の中に、エレナの立ち入り禁止区域がある、それがキッチンだと言う事は言うまでも無い悲しい事実である。


「きっと二人の行いが良いからだよ、良かったね」
アンサラが笑顔でそう言い、一番先にその場を離れていった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...