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第二章〜記憶の石板〜
20話✡︎エレナの立ち入り禁止区域✡︎
しおりを挟むある日エレナの屋敷の庭で幼竜の姿でリヴァイアサンが日向ぼっこをしていた、そこに優しいそよ風が吹いている、春を思わせる優しいそよ風が吹いていた。
リヴァイアサンも時折、エレナの竜魔石から出てこうして地上世界を楽しんでいる。
優しいそよ風にうとうととしていたが少しずつ風が強くなって来た。
やさしい……や…さ…し……くない!
リヴァイアサンは強すぎる風に起こされた。
空は澄み渡る晴天!
木々も揺れていない!
なのに嵐の様な風がリヴァイアサンだけに吹いている、リヴァイアサンは飛ばされそうになり芝生に這いつくばり風の吹く方を見る。
ウィンダムだ、ウィンダムは怒っていた、凄まじい風を起こしリヴァイアサンを吹き飛ばそうとしていた。
抵抗出来ないリヴァイアサンを見て、ウィンダムは更に強い風を吹き、リヴァイアサンを吹き飛ばした。
リヴァイアサンは空高く飛ばされて行く……
「ふん!僕のケーキ食べて堂々とお昼寝なんてなんてヤツだ」
リヴァイアサンはウィンダムのケーキを食べたらしい。
ウィンダムはリヴァイアサンが寝ていた場所で丸くなり、猫の様にクークーと寝始める、日がぽかぽかとしお昼寝には丁度いいが、そこに雨が降って来た。
日は出ている雲ひとつない……が……
凄まじい雨がエレナの屋敷に降り始める、屋敷の庭のみに降り始めた。
ウィンダムは雨に起こされた、リヴァイアサンがウィンダムに仕返しをしに来たのだ。
ウィンダムは直ぐに突風を起こしリヴァイアサンを吹き飛ばそうとするが、雨によってリヴァイアサンは力強くなっている。
「ウィンダム!貴様ケーキぐらいで怒るとはなんたる事だ!それでも神の竜か!」
「ふざけるな!お前が盗み食いしたんだろうが!」
「はやく食べない方が悪い‼︎」
二匹は口喧嘩しながら幼竜の姿で取っ組み合い、屋敷の庭だけが嵐になって荒れて行く。
「あ~ぁ~」
ルクスが屋敷の中から二人を心配している……訳は単純だエレナの目が座っている。
そして同じ部屋にいたユリナは二人の言い合いを聞いて弓兵師団の仕事をしていたのだが……
パキッ!
字を書いてる途中で羽ペンを折り立ち上がった、ユリナは壁に掛けてある弓を取り矢も持たずに窓を開け放つ。
強い風と雨が屋敷に入って来るが、エレナはさっと魔力を使い、ユリナの仕事と自分の書物を素早く守る。
ユリナは矢を空に向けてかなりの魔力を込めてマジックアローを天に向けて放った!
そして一、二秒後に凄まじい数のマジックアローが庭に降り注ぐ!
「ぎゃーーー‼︎」
庭から二匹の悲鳴が聞こえ嵐がおさまる。
「二人とも一週間!おやつ無し‼︎
次やったら本気で当てるわよ!」
そう二匹に向かって叫び、バンッと窓を閉めた。
ユリナはやり切った気がしていた。
「お母さんありがとう、ちょっと着替えて来るね」
「うん、ちゃんと髪も拭いて来なよ」
エレナとユリナは何事も無かったかの様に振る舞う。
(まぁ…いつもの事だからね……)
ルクスは心で呟いていた。
玄関から見ていたアンサラが言う。
「ちみたち、やっぱりアホだよね」
そう言い我関せずに玄関ホールのソファーに飛び乗り犬の様に寝始めた。
エレナが静かになった庭を気にして、窓を開けて様子を見て二匹に笑顔で言った。
「庭の片付けと、芝生も綺麗にしておいてね」
青空の下に茫然とする二匹の幼竜がそこに居た。
それから数日経ち、またリヴァイアサンとウィンダムが庭で喧嘩していた、以前のことが懲りたのか、派手ではなくまだ可愛げがあった。
(まぁ、これくらいなら……)
そう思いながらユリナは小さく鼻で笑い、チラッと見てから思わず二度見した!
リヴァイアサンが小さな竜巻に飲まれ、悲鳴を上げていた、小さな風の刃に斬られているのか解らないが、リヴァイアサンから水が飛び散っている。
ユリナが慌てて庭に出ると、二匹は慌てて喧嘩を辞めた。
「僕達遊んでただけだよ!」
ウィンダムがそう言うがそれにお構いなしに、ユリナは言う。
「今の竜巻一度やってみて!」
えっ?と言う顔を二匹はするが、怒られないと思って、ウィンダムがもう一度竜巻を起こして、リヴァイアサンを少し舞いあげる。
「もっと強く出来る?」
「うん出来るよユリナの場合は、魔力の強さと心のイメージを風に送ってあげるんだよ。
風は心のイメージで操るの、風が流れやすいイメージを描けば速くなって。
持ち上げたり動かすイメージすれば力強い風になるんだよ。」
ウィンダムはユリナに教えてあげる様に説明してくれた。
リヴァイアサンもユリナが覚えようとしているので、体を張って悲鳴をあげている。
「こんな感じ?」
とユリナは魔力を込めて強い竜巻をイメージした。
それはウィンダムが起こしていた竜巻の十倍はありそうな竜巻で、ユリナは素早く距離を取り、なる程……と納得したがウィンダムもその竜巻に飲まれる。
「ぎゃーーーーー‼︎」
本気で二匹は悲鳴を上げている……
ユリナは、やり過ぎたかなと思い魔法を解き二匹は空からぼてぼてと落ちて来た。
「ごめんね、後で二人にご褒美あげるからね」
そうユリナは可愛くウィンクして謝り、屋敷に入って行った。
丁度その頃、エレナが二階の窓を開けて爽やかな外の空気を取り込もうとして、ついでに庭を見る。
先ほどのユリナの竜巻で芝生が大きく荒れているのが目に入り、爽やかな笑顔で二匹に言う。
「二人とも~それは何かしら?」
リヴァイアサンは目を丸くし、ウィンダムは顎を外した、二人はあわわになり慌てる。
「お母さん、それ私がウィンダムに教えてもらったの、アンサラここ直せる?」
ユリナがアンサラを連れてきたのだ。
「ならいいよ~二人ともごめんねー」
そう言いエレナは部屋に戻って行った。
二匹はホッとした。
アンサラが荒れている所をクンクンしながら、ふーっと息を吹きかけると、土の中にある芝生の根から葉が伸びて来てスクスクと育ち元どおりになっていった。
その後、守護竜達にユリナとカナがクッキーを焼いてくれた。
「仲良く食べるんだよ~」
守護竜達は甘く美味しいクッキーを楽しそうに食べていると。
「さっきリヴァイアサンとウィンダムを疑ってごめんね。
これ私が焼いたんだけど、二人にあげるね」
エレナが黒い何かを持って来た。
(エェ⁉︎)
ユリナとカナが心で驚き、ユリナは頭を抱え
カナはポーカーフェイスの可愛い笑顔を素早く作る。
リヴァイアサンとウィンダムは、チョコレートクッキーと思ってパクッと口に入れたが……二匹に衝撃が走る!それはそんな甘い物じゃなかった。
黒く焦げた可哀想なクッキーだった、エレナは料理が出来ない……出来ないと言うレベルでは無い。どうしてレシピを見て作ってそうなるのか解らないが、そうなるのだ。
エレナの屋敷の中に、エレナの立ち入り禁止区域がある、それがキッチンだと言う事は言うまでも無い悲しい事実である。
「きっと二人の行いが良いからだよ、良かったね」
アンサラが笑顔でそう言い、一番先にその場を離れていった……
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