✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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第二章〜記憶の石板〜

21話✡︎王宮✡︎

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 アルベルトが羊皮紙に戻る前にルクスの事をユリナが聞いたら、ルクスはまだアルベルトの守護竜らしく、ユリナを守る為に居るだけで、光りの祝福とは別らしい。


 アルベルトの再開から数日が経ち平穏な日々が続く、エレナは用がありカナを連れて王宮に向かった。

 セレスの国の首都エルドにエルド宮が存在する、その先を一時間程馬を軽く走らせると、王宮に着く。

 エレナは王宮に着くと王に挨拶を済ませ大臣達に、天地の間に何故入室制限がされたのかを聞いて回る。
 聞いて回るうちにエレナの王権復帰を望む者が、エレナについて回る様になる。


 エレナは人望が厚い、難しい問題をどうすれば良いのか聞かれても、リヴァイアサンがその人の心をみて、良い人かそうでないかを判断してエレナはそれを聞き答える。
 そんな事をしているうちに、一つの政党の様に人があつまる。

 エレナはそれを良く思わず、争いに巻き込まれるのを懸念し、良くしてくれた大臣や文官達に挨拶をして王宮を離れた。


「エレナ様、以前より沢山の人が集まりましたね。
シンシル様の命は本当に短い様ですね……」

 カナは少し寂しそうにする、現在の国王シンシルはエレナがカナを紹介した時に、エレナに大切にする様にと、カナをエレナの一族として認めて下さった優しい国王で、カナが小さい時に良く遊んでくれたりした。


「でも、シンシル様は穏やかだったから、今までに悔いは無さそうだし。
何も心配することは無いと思うよ、その時はカナがおじいちゃんってまた、呼んであげたら?
きっと喜ぶよ」
二人はそう話しながら馬を歩かせてエルド宮に向かう。

 天地の間の入室制限は二百年前に王宮が決定したことだが、エルド宮側から天地の間で行方不明者が続出していると、不思議な理由で入室制限を要請されたらしく、王宮がそれに答えた様である。


「エルド宮……私は来るの初めてですが、どんなところなんですか?」
カナが聞く。
「あまり来たくない所だね、特に正装じゃない時は……」
 不安げにエレナが言う。
 王宮はエレナから見れば、実家の様なものでエレナは行こうと思えばどんな格好でも気軽に行くが、エルド宮は別である。

 今日は、巫女のローブに中は水の魔法衣、クリスタルの小太刀をいつもの様にローブにしまっている。

 まぁ……完全に王族には見えない。

 カナは召使いの服で、小太刀は二本ともエレナが渡した魔法輪と言う種類の指輪にしまっている。

 まぁ……二人揃っても親子には見えない。


「エレナ様?着替えてから来ます?」
「うーん出直さず……帰りましょう」
 街中でも馬を歩かせて行く二人は目立つ、空色の髪をしたエルフはエレナしか居なく一つだけポツンと空色の髪をしている為に、時折だが……

「巫女様だ!」

「エレナ様がいらっしゃる!」
人々の声が聞こえる。


 寄って来る人には必ず笑顔で答える、そんなエルドの街をエレナは好まない。
 エレナはサイスの様な小さな村が好きで、祈りを捧げる行事以外にも、サイスには足を運んでいる。

(やっぱり疲れるなぁ……)
そうエレナが思った時に街の大通りに丁度出た。
 エレナはカナの方をチラ見してから、鐙で馬を軽く蹴りペースをあげる、カナも馬を走らせてついて行く。
 街中にエレナが居たことは直ぐに話でエルドの街に広がり、エルド宮にもその話は伝わる。


 エルドの街を出てからエレナの屋敷まで、馬で三十分程かかる、その間に何軒か茶店の様な店があり、その中の一軒にクアパと言うカプチーノの様な飲み物を出す店がある、そこをエレナは気に入っている。

 その店は屋外でも飲む席があり、心地よい風がとても気持ちよくて、エルド帰りにいつも寄っている。
 無論二人はなんの合図もなしに、そこに立ち寄ると、二人はアイスクアパを注文して屋外でゆっくりしはじめる。

「あ、エレナ様?
お父様の羊皮紙、私が持ってて良いのですか?せっかくなので、エレナ様がお持ちになられた方が……」
カナが羊皮紙を取り出して聞く。

「ううん、それはカナが持ってなさい、アヤさんとカナがミューズの力を使う時、無防備になりやすいから、アルベルトが守ってくれた方が安心出来るからね」
そう笑顔でエレナは言うと羊皮紙を見ながら


「可愛い娘を今度守らなかったら、ビンタじゃ済まないからね~あ、な、た」
そう笑顔でハートをつける様に言うがその裏に殺意が感じられ、カナは本当にハートがついてるのか疑い、羊皮紙が心なしかヒンヤリした様な気がした。


「うーん死者は死んでるから本気でやっても、時間が経てばまた戻るしね~」
カイナがそう言いながら、ユリナとやって来る。

 羊皮紙は確実に冷え冷えになっている。

「ユリナ様どうしたんですか?修練ならリヴァイアサンがエレナ様と一緒にいるから、邪魔されないのでは?」
カナが不思議そう聞く。

「うん、練習は出来てると思うけど、ちょっと息抜きにね」
ユリナはエレナの横に座り、カイナはユリナとカナの間に座る。

「いらっしゃ~い、ユリナちゃんも久しぶり元気してた~?」
明るく幼い声がする、赤茶色したポニーテールの少女?がメニューを持って来た。


「うん、フェルミンは?」
「最近新メニュー作って楽しんでるよ~」
フェルミンはドワーフの娘。

 ドワーフは物作りや商売が得意でエレナのクリスタルの小太刀はフェルミンの祖父が作った名品、フェルミンもエレナがプレゼントしてくれたこのお店を営みながら、武器防具作りを勉強している。


 ドワーフは結構長寿で千年程生きるが、やはり長寿ではエルフにはかなわない。
「冷たい飲み物ならそれちょうだい」
ユリナはメニューも見ずに注文してエレナに聞いた。
「お母さん、王宮はどうだったの?」
エレナは王宮での事を説明する。
「と言うと……警備に当たってるのは王宮の近衛兵だよね?」
ユリナはそう言うとニヤッとする。

 その顔を見たエレナは気づく、王宮の近衛兵と言う事はユリナの部下にあたる。
ユリナは弓兵師団長であり、エレナの娘つまり王族である、王宮の兵には指示を出せる。

「ユリナ悪いこと考えてるんじゃないでしょうね?」
エレナは問いただそうとした。

「ううん、全然考えて無いよ~
近衛兵に休暇をあげようかな?って考えてるだけだよ」
ユリナは明らかに考えている。
(やらせてあげたら?多分良いことになるかもよ)
 リヴァイアサンがそう囁き、エレナはリヴァイアサンが言うなら仕方ないかなと思い、あえて追求はしなかった。
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