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第二章〜記憶の石板〜
23話✡︎天地の間✡︎
しおりを挟む二人は王宮から一歩出て、ユリナが空に向けマジックアローを放つ、それを確認した弓兵隊千名が王立図書館を手際よく囲む。
王立図書館を警備する百名の近衛兵は慌てるが軍旗がユリナの旗である事を認識し、動揺は収まる、少ししてユリナとカナが王立図書館に到着した。
弓兵からマントと戦闘に必要な、小道具が入った小さなカバンを受け取り身に付ける。
警備隊の近衛隊長に急に包囲した事を詫び、国王シンシルと三日間の警備を弓兵師団が受け持つ話をした事を伝え、近衛兵を引かせる。
だがエルドの街は少し騒ぎになっていたが、百五十年前も急に王立図書館が厳重な警備になったこともあり、大きな騒ぎにはならなかった。
ユリナとカナは四百名の弓兵を連れ中に入り、兵を各所に配置させ、天地の間の前には予めごく少数の配置にした。
一度カナと二人で入る、天地の間には沢山の本棚が壁に沿って並び、本棚と本棚の間に窓があり、数多くの書物が本棚に並べられている。
机や椅子は一切なく、そして入り口の扉は一つ、その正面に書物が一つも無い本棚が一つありそれが記憶の棚だ。
天地の間の様子を調べ扉を閉めると、二人は不思議な事に気付く……
窓の向こうには弓兵隊が警備をして声を上げているが、声が聞こえないのである。ユリナは急いで扉に耳をつけ、外の音を聞こうとするが一切聞こえない。
(ここは……)
ウィンダムが悩む不意にユリナがカナに言う。
「お姉ちゃん小太刀を貸して、ちょっと斬りかかるから、小太刀で受けてくれる?」
カナは不思議に思い魔法輪から小太刀を出して一本ユリナに渡すと、ユリナはカナに斬りかかる、カナは難なく簡単に受け止めるが、キン!キン!と刃の交える音が部屋に響く、少し打ち合いユリナが引く。
「ありがとう、お姉ちゃん。」
ユリナが礼を言い小太刀をカナに返すとカナは、
「ユリナどうしたの急に?」
「お姉ちゃん、おかしいと思わない?今私なりに本気で斬り合ったけど、弓兵はそこにいるのに入って来なかった……」
ユリナがそう言うとカナもそれが異常な事に気付く、ユリナが扉を開けると窓の外の音も同時に入ってくる、そして弓兵に聞く。
「昼間にこの扉が閉まることはありますか?」
「常に開放され、閉まる事は一切無いようです。」
「わかりました、ありがとう。
私達が出るまで、中に入る事は無いようお願いします。」
そう弓兵に伝え扉を閉めると、その瞬間から音が遮断される。
弓兵も何も無かった様に答えていた。
「天地の間ってまさか……」
カナが何かに気づいた。
「天界と地界の間……そのままの意味?だとしたら扉を閉めた瞬間から、この部屋が冥界になるって事?」
カナが気付いた事をそのまま話すと、記憶の棚に書物がびっしり並べられている。
「この中にヒントがあるのかな?」
そうユリナがいい棚に近づく。
「読んじゃダメ!ユリナ、カナさんが言ってることが正しかったら、それは冥界の書物読めば取り憑かれ冥界に引きずり込まれるよ」
ウィンダムが強く言う。
ユリナもなぜそんな物がこんな所にと言う顔をして、棚から離れ床を見ると、天地の間で有名な天地図が床一面に描かれている。
天地図は天界の地図、天界の入り口から各神々の住まいや、エヴァが好む天界の川などが描かれている。
そして天井には世界地図が描かれていた。
「ねえ?ユリナこれ普通逆じゃない?なんで私達の世界が天井に描かれ、天界が床に描かれてるの?
これ……普通に考えたら、神々を冒涜してるよね?」
カナが気付く、それと同時に何の為にここに来たのかユリナは思い出した。
本当の目的は、シンシルを救うのではなく、巨人族のユニオンレグヌス、巨人族の魔法を知る為に来た事を……そう神々が生み出した種族の中で、唯一神々を絶対的に冒涜した種族巨人族……
「そうだったんだ……」
ユリナは気付き呟いた、?とカナは不思議な顔をする。
「奇跡を信じるのではなく、目の前の真実を見つめよ」
ユリナが話し出す。
「この教え……巨人族の教えだったとしたら……
おかしくない?
お姉ちゃん、何で絶対的に平和をもたらしたユニオンレグヌス……
それを作り出した賢人が、神々に何で弓引いたの?
弓を引く理由なんて考えてられない」
「そう言われれば……確かに平和が約束されているはず……」
カナも考えだすが、ユリナは結論が出ていた。
「何か天界であったんだよ、地上の平和を巨人族ですら守れなくなる何かが!
もし奇跡と言うものが神のみわざとするなら、この教えは神を否定していることになる……
お母さんが言ってた。
私達の運命は神々のしぐさ一つで決まるって……
それに意を唱えた種族……唯一神々に怒りをぶつけようとした種族が巨人族だとしたら……」
ユリナはそう言いながら記憶の棚に近づき、
「この記憶の棚は神々が作った物じゃ無い、この書物は冥界の書物じゃない!」
そう言い、書物の題名を指でなぞり題名を見ていくと一冊だけ、言葉の様な題名を見つける。カナはユリナの直感力は以前から際立っていることは知っていたが、これ程とは思っていなかった。
「お姉ちゃん、やっぱりそうだよ……記憶の棚は巨人族の遺物だったんだ……」
だがユリナにもその題名は考えてる事と繋がらなかったが、ウィンダムが……
「それを心から声に出して言えばいいんだよでも、自分が知ろうとしてること……
多分世界感が変わってしまうと思うから、戻れなくなるよ。」
「ウィンダム私が考えてること解る?あなたはウィンディアの使い……
もし巨人族がした行いが正しいと思ったら、貴方の敵になるかも知れないんだよ、なんで教えてくれるの?」
ユリナが聞く。
「ぼくはユリナが闇に落ちなければ、ずっとユリナの味方だよ例え神々を敵にしても、信じて貰えるか解らない、でも……
巨人族が神々に弓を引いた時、神々は悩み僕達守護竜が生み出されたんだよ。
ある目的の為に」
「目的?監視とか?」
カナが聞く、
「教えてあげれないけど巨人族を追放した後で神々は気付いたんだ。
神でありながら傲慢であったと、それがヒントまぁいつか知る時が来たら気付くよ。
さぁ、ユリナぼくはその棚の向こうでは力を使えない、そう言う場所だから、そしてそこにシンシルの命を削る者が必ずいる。
それでも、それが運命だと思うなら……
心から声に出せばいい、
奇跡を信じるのではなく、目の前の真実を見つめよ、
奇跡は求めるものではなく、信じるものでもない
自ら生み出すものだから」
ウィンダムはその教えの隠された続きを全て語った。
「それって……」
ユリナが驚くとウィンダムはニコッと可愛い顔をした。
「さぁユリナ、君はどうする?」
ユリナは悩まず、ウィンダムの言葉を信じ、
意志の強い瞳で心から強く大きな声で言う。
「我、知識を求める者なり!」
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