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第三章〜戦士の国アグド〜
41話✡︎フロースデア✡︎
しおりを挟む国王シンシルは記憶の石板(尊い者達)をエレナに譲り渡した。
それはエレナが王権に復帰する時、国王の座を譲る事を意味し、もしくはシンシルが命を落とした時に次期国王はエレナであると、シンシルが無言で伝えている。
「シンシル様、気が早いのでは?
王立図書館に血の王が居なくなり、シンシル様も命が削られる事は無くなりました。
まだまだご活躍出来ると思いますよ」
エレナは困った様に記憶の石板を返そうとする。
「そなたに必ず必要になる。
私もそなたが女王になるのも楽しみの一つ……
それにそなたの家名は女王にぴったりではないか」
シンシルは確かに二万五千歳を過ぎている、次の王の事が気になり始めてもおかしくはない、エレナはそう思ったがシンシルはそんな事よりエレナが考えてる先を見ていた。
会見は終わり夕方頃にシンシルは王宮に帰って行く。
護衛はユリナとカナが弓兵を率いて王宮まで送り、弓兵はエルドで解散させ帰りは二人で帰路につく。
カナは帰り馬を走らせながら、キョロキョロ辺りを見回している……シェラドを探してる様だ。
ユリナは疑問に思うが深くは気にせず、馬を走らせ何事もなく屋敷に帰って来た。
その夜みんなが寝る前に、エレナが三階のテラスがある部屋にみんなを呼ぶ、ガーラとカイナとアヤは記憶の間で見た歴史を知らないからだ。
エレナが話し出そうとすると……
「エレナさま~それ話すより見た方が早いと思いますよ。」
そう言いながらルクスが神の涙から出てきた。
「え?見るってどうやって?」
エレナがシンプルに聞く、ピリアもフィリアも顔を見合わせる。
「私は光竜なので光で映った物はそのまま記憶出来ます。
ずっとじゃないですけど……
なので神の涙に記憶を写しておきました!」
とルクスが元気に言うと、エレナはピリア達を見て言う。
「記憶の持ち出しって、大丈夫なの?」
そう聞いた。
ピリアとフィリアはテヘッとちょっぴり舌をだし笑って誤魔化す。
(本当はダメなのね……)
「じゃあルクスちゃんお願いね」
エレナが言う。
「あ、お母さんちょっとごめん、また後で戻って来るね」
ユリナが神の涙をテーブルに置きそそくさと出て行く。
「お母様、私も用が有りますのでユリナ様が戻る頃にまた来ますね。」
カナも召使いに成りきって出て行く……
二人ともクリタス王国の滅亡は見たくない様だ、エレナは仕方ないかと思いそのまま過去の記憶を見始める。
しばらくして、ユリナとカナが部屋に戻って来ると……二人が予想した通り、部屋の空気が重たくなっていた。
カイナもアヤも声が出せない様である……
アヤが余りにも衝撃的だったのか、カナに気付いて飛びついた。
「カナちゃんなんで!教えてくれなかったんですか友達でしょ⁉︎
アヤがこう言うの苦手なの知らなかったんですか⁉︎」
泣きながら強くカナに訴える。相変わらずその場の空気を壊すプロだ。
カイナもアヤを見て少しだけ小さく笑った。
カナはアヤをよしよし、しながら。
「ご、ごめん始めて聞いたよ」
アヤはグスグス言いながら涙を拭き始める。
ガーラがやっと口を開く。
「昔、サランにある古い経典を読み……死の炎クリアスと言う物があったが。
それも科学だったとは、一部のヒューマンも神の力として神話に変え事実を隠したのか……」
ユリナがエレナに変わって、クリアスの石版の存在と、破壊出来ない事実を伝えると。
ピリアとフィリアが自らその破壊して欲しいとガーラにも願い。
自分達がその時の生き残りである事も伝え、その悲劇と悲しみを強く、カイナとアヤにも訴える。
「大丈夫だよ、ピリアちゃんフィリアちゃんここに居るみんなはあんなの欲しがらない。
何とかしてみんなで壊そう……」
カイナが言い出す。
「その通りだ……
クリアスは自然の命、動物達はおろか、木や草、岩すら焼き尽くす様だその様な物を認める訳にはいかぬ……」
ガーラらしく大地の御使らしい怒りをあらわす。
ピリアとフィリアは嬉しかった、自分達の想いが本当に伝わった気がした。
二日後、王立図書館で国葬が行われた。
エルフ族の葬儀は早朝日の出と共に行われる。
太陽の様に新しい光りある命に生まれ変わることを願いそれが伝統になっている。
エレナを始め屋敷にいるユリナもカナも、カイナ、アヤ、ガーラ、ピリアとフィリアも出席し、アヤとカナが鎮魂のために演奏と舞を祝福を開放して披露した。
その場に居る全ての者が二人の舞と演奏の美しさと溢れる哀しみを分かち合う……
最後にシンシルから冥福を祈る言葉が述べられ、国葬は昼前に幕を降ろす。
ここでも、考えを変えてエレナの王権復帰を望む者が僅かだが増えていた、カナが養女とは言えエレナの一族だからだ。
国葬が終えても、エレナはすぐには帰らない、先にガーラとカイナ、アヤ、ピリアとフィリアを帰らせ、エレナは二人の娘を連れ一度王宮に行き遺族達への保証の件や、王宮で引き取る五人の子供達の教育や多くの事に手を回す。
ユリナとカナはエレナに用意されていた部屋で書類を整理したり、秘書の様に手伝う。
二人とも完璧に仕事をこなすエレナにまた憧れている。
「全く……シンシル様も私に女王になれって、私の性格知ってるのに……
私が女王になったら私の仕事……」
エレナがぼやく、考えたくない様だ……エレナの性格上気になったら、自分でやらないと気が済まない、大臣達も苦労するに違いないが……それだけ国が良くなって行きそうではある。
ユリナとカナも想像図が頭の中で簡単に描けて汗をかく……
「ユリナ、これのここに王族名からサインして。」
エレナがユリナにサインを求めて来た。
どの種族もそうだが王族と言っても親戚などが居てどこの一族かを見分ける為に、巨人族の時代から王族と貴族だけに家名がある。
ユリナは受け取った羊皮紙を見ると、それは王立図書館で命を落とした者達の遺族達への保証の書類であった。
既にフロースデア・エレナと王族名でサインしてある。
エレナの家名は(花の女神)と言う意味を持ち、エレナもユリナもカナも気に入っている。
その書類を魔法で印刷して遺族に届け、遺族もサインして受け取る形になっている。
「普通は大臣達の名前しかその書類ってサインされないでしょ。
お金だけで心の傷は消えないし……
何の意味も無いかもしれないけど。
せめてねこの事に関わった私達がサインしてあげたいなって……」
そうエレナが言うと。
「サインは全部手書きにしない?」
ユリナがそう言うとカナが羊皮紙を取りに行った。
エレナは微笑みながら
「よし!頑張ろうか、でも大切な書類だから丁寧に書かないとダメだからね。」
三百枚の書類をエレナが魔法で写して、サインを終えるのにだいぶ時間がかかり、既に夜になっていた。
その出来た書類を大臣に渡して、目を通して大臣が驚く、全て手書きのサインであったからだ、そして嬉しそうに言う。
「フロースデア・エレナ様、フロースデア・ユリナ様……二千年ぶりにフロースデア家の名を目にしました。」
「コールスさんも遅くまでありがとうございます。
私達の為に……いつも助かります」
エレナが礼を言う。
「いえいえ、私も仕事があるのでもう少し残りますよ」
「頑張って下さいね、私達はこれで帰ります。」
そうエレナは笑顔で言い三人はコールスにお辞儀をして立ち去る。
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