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〜第四章 変わりゆく時代〜
78話✡︎アルベルトの想い✡︎
しおりを挟むシェラドが一人で野営の外で剣を振っていた……
「炎の使徒よ少しいいか?」
そう言われシェラドは声のした方を振り向いた瞬間、光の劔が振り下ろされる!
シェラドはその劔を避け、斬馬刀を上から振り下ろしその相手を斬ろうとしたが、それを光の劔が受け止めた!
アルベルトだった。
「流石だな……
オークの戦士は片手では止められないか……」
アルベルトは愛刀に魔力を込めて受けている。
「一体何のつもりだ……光の使徒よ!」
「なぁに、炎の使徒の剣どれ程の物か知りたくてな」
そう言いアルベルトはシェラドの剣を押し返し弾いた!
アルベルトは光神ルーメンだが、純粋に生前の体で戦っている……
つまり人間そのもの、それでオークの放つ斬馬刀を押し返したのだ。
シェラドは静かにナックルを装備して、斬馬刀を握る。
「貴様の戦士の誇りとやらを見せてみよ!
騎士として全力を尽くし相手になろう!」
アルベルトが叫ぶ!
シェラドが全力で斬馬刀を振り斬りかかる!
それを光の劔を使い、いなしてアルベルトが斬りかかるが、シェラドはナックルで素早くその劔を受け止める。
激しい攻防を伝える鋼と鋼がぶつかり合う音が響き渡る!
見張りの兵達があつまり、エレナにも報告が入る。
エレナ達は飛び起き、二人が剣を交えてる場所に向かい走り出す。
(あなた一体どうしたの?こんな時に!)
エレナが心で叫んだ!
エレナがついた時、二人は激しく斬り合い続けている。
アルベルトは気付いていた、もうすぐエレナ達は一旦セレスに帰る。
そうすれば、今の様にシェラドがはっきりしないのであれば、カナを連れて帰るしか無い……エルフの女性の愛は生半可な気持ちで受けるものではない、一生に一度一人しか愛せない……それはヒューマンの比では無い!
アルベルトはそれを深く知っていた……
アルベルトは人間でありながら、一歩も引かない!
何度もシェラドの剣を弾き、押し返しまるでダンガードの様に力強い……
だがカナとしては最悪である、父が愛する人と戦っている、カナは訳も解らなかったが飛び出そうとしたが……
「ほう……あれがヘブンスか人間でありながら、神聖さと希望を伝える天の称号を持つものか……」
ダンガードがそう言いながら二人の戦いを見守っている。
「ダンガード様、申し訳ありません、夫が……なぜ……」
「案ずるでない、精霊が教えてくれたヘブンスはシェラドの心を試しているとな」
カナはそれを聞き必死に死ぬ程の思いで思いとどまる……
そしてシェラドに光の劔が僅かに届き、そして叫んだ!
「シェラド!貴様の想いを全てその剣に乗せてみろ!我が娘を愛してるならば!
貴様らしく力で示せ‼︎」
(えっ……)
カナは驚いた、それと同時に何故戦ってるのかを見ようとした。
カナにとっては大切な二人の戦いを……
そして二人は激しい攻防を繰り広げ、劔と斬馬刀のぶつかり合う音が響き続ける。
だが十数回打ち合い、アルベルトが一瞬守りに遅れが見えた……
シェラドは見逃さず素早く右下から左上に切り上げ、アルベルトはそれを後ろに交わし、僅かにアルベルトの前髪を切る!
素早くシェラドは左から薙ぎ払い斬りかかり、そして更に早く大きく振り上げ、渾身の力で振り下ろそうとした時!
「ハァァァ!」
アルベルトは大きく振り上げた一瞬で間合いを詰め声を上げ殺気を放っていた!
次の瞬間、アルベルトは鞘に収めた劔で渾身の力を込めシェラド脇腹に一太刀入れた!
その一撃にシェラドは耐え切れず、斬馬刀を下ろし膝をついた……
アルベルトは星を見上げながら言った……
「久しぶりだな……俺に一太刀入れた戦士は、今のは本当に前髪で済むとは思わなかったな……」
「ヘブンス……何が言いたい……」
「シェラド、炎の使徒よそなたの思いは届いたと言う事だ……」
アルベルトはシェラドの心を見ていた、燃え盛る火炎の様に力強く、蝋燭の火の様な温もりと優しさもある確かな愛を見定めていた。
「一つ約束して欲しい……
俺の様に愛する人を悲しませないでくれ……
戦士の誇りを全てにし、死に場所を戦場に求めるないでくれ、お前は知らないかも知れないが……
私が若く命を落としたこと、カナの生まれた村のことなど色々あってな、カナはもう十分苦しんで来た……」
アルベルトの話を聞いてカナが静かに涙を流し始めていた
「そなたの力が必要な時が、
いづれ来るが……だが命を捨てる戦いは何があっても絶対にするな!
カナの涙を考えてくれ、いいな……」
(ルーメン……本当にお父さんなんですね)
オプスが微笑みながら、心でそう呟く……
トールもオプスの隣で二人の戦いを真剣に見ていて感じた、シェラドはまだまだ強くなると……
シェラドもその言葉には言い返せなかった、そして静かに立ち上がり。
「あぁ約束しよう、だが次は必ずそなたに勝って見せる」
アルベルトは微笑む。
「あぁいつでも来い俺は既に死者だ、いつでも相手になってやる。」
カナはアルベルトに駆け寄り、エレナも歩み寄りアルベルトを、もうしょうがないんだからと言う顔で見る、それにアルベルトは微笑んで応える。
カナは優しい父の顔を見ると、アルベルトはカナに静かに頷いた。
カナはシェラド寄り頰にキスをした……
武骨者のシェラドは顔を赤くし、どうしてやればいいのか解らない様だ。
「シェラド、こうするんだよ」
アルベルトは皆の前でエレナを抱きしめ、熱いキスをして見せつける。
エレナは恥ずかしがるが……
(もう……)
そう心では思っていたがそれとなく嬉しかった。
シェラドは戸惑いながらもカナを抱きしめる……
カナは両思いであった事は何となく気付いていたが、それがやっと形になり……
ただただ嬉しく幸せを感じていた。
エルフとオークの愛、見たことの無い様な光景であり、今後のアグドとセレスの関係を物語るに相応しい光景であった。
自然と拍手が穏やかに起き二人を皆が祝福していた……
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