✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第四章 変わりゆく時代〜

83話✡︎パルセスの姫君✡︎

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 そしてカルデアの城で国王シンシルが出迎える。

「エレナよ
よくぞ帰った
苦難もあったであろう……
だがアグドとの友好をよくぞ結んでくれた
心から礼を言うぞ」
 そうシンシルは優しく言い、エレナを称えたがエレナは……

「私が生きて帰って来れたのは
ここに居るフェルミンのおかげです。
今のアグド国王ベルガルと剣のみで戦い
一度死を覚悟しました。
礼はフェルミンにも送って頂ければ
嬉しく思います」

 エレナは礼を取りつつそう伝えた時、フェルミンは驚いたエレナが追い込まれるとは思っても居なかったのだ……
本当にミスリルのシャツが役に立つ様な事は無いと思っていた。
 そしてそれは、居並ぶ大臣達にも衝撃であったのは言うまでも無い……

 シンシルは全てを見通していたかの様に答える。

「フェルミンよ
エレナの命と言う
素晴らしい宝を守ってくれた事
深く礼を言うぞ。
褒美も欲しければ何でも言うが良い」

「シンシル様
私は何も要りません
どうしてもと言うなら
私のお店のクアパを飲みに来て下さいね」
 そのシンシルと対等な素振りで答えた事に一同は驚き、大臣の一人が叫んだ!


「無礼ではないか!」


「ひかえよ!」

シンシルが大臣に強く言った。
大臣の方が驚く、当然だ……
大臣は知らないのだフェルミンの身分を。
「ですが、国王……」


「そなた達は知らぬ
パルセスで一件があってな
フェルミンは今、
第三位王位継承権を持つ
パルセスの姫君であるぞ……」
シンシルが明かした。


(第三位?
繰り上がった……何故?)
エレナはそう疑問に思った。
 第三位と言えば、エレナが英雄でも無くただの王族であればエレナの王位継承権は七位程である……その差は大きい……

 その言葉を聞いて大臣達は驚きを超えて驚愕した……。

 無論オークの兵達も驚いている。

 ドワーフの国パルセスはセレスと同等の経済力を持つ大国だからだ……

 軍事力ではアグドが圧倒的に高いが、パルセスはその経済力で幾らでも援軍を要請する……敵対関係になれば厄介な国だ。
 セレスとは深い友好関係にあるが、それを傷つけでもしたら大臣などは一瞬で首が飛ぶ可能性がある。

「エレナさん
何も心配する事はありません

親戚が王位継承権を放棄したのです。

誰かの不幸はありませんのでご心配なく」
フェルミンは姫らしくエレナに言葉をかけた。

「放棄ってどうして?」
ユリナが相変わらず直球で聞くと、フェルミンは笑顔で答えた。

「私と同じです。
鍛治の道を極める!
って言ったらしくて
私のお父様は困ってるようです。」

「ドワーフらしいのぉ
その気持ちは我々も見習わなくてはの」
シンシルが微笑みながら答え、その場の空気が穏やかになる。

 シンシルが仕切り直す様に話を続ける。

「エレナよカナのことは聞いておる
その時が来たら国を挙げて祝おう

オークの者達よ今日より我らは友じゃ。
長い時はかかるやも知れぬ

だが決して癒えぬ傷は無い

日が沈み必ず日が昇る様に
時と言う偉大な流れが
我らに深い絆をもたらしてくれるだろう。
そう信じようではないか」

 そして会見は終わりオーク達は、三日程滞在することになった。
 その晩、オーク達も交え宴が開かれる。
 宴の間は貴族達やオークの隊長達と賑わう。

 その宴の席でエレナはシンシルにアグドで決めた多くの事を報告した。
 穏やかに聞き続けるシンシル、セレスは昨年セレティア山脈で豊かな金鉱脈が発見され、経済基盤はパルセスを凌ぐ可能性が出て来た為に動じる事は無かった。
 そしてパルセスの領土、クリタス平原の話をした時、シンシルは口を開いた。

「エレナよ
そなたの考えは素晴らしい
恐らくそれが実現すればバディ族も多くセレスに訪れてくれるだろう。

だがパルセスを相手にするなら今のままでは、時間がかかるぞ……」
 エレナはその言葉に多少疑問を感じるが、さほど気にしなかった。

 シンシルは王の視点で見通す様に、いづれ気づくと思いそれ以上は言わなかった。


 エレナはその後、宴を楽しみながらフェルミンを探した。
 フェルミンはシンシルのはからいで綺麗な白いドレスを着ていた。
 シンシルが大臣達を黙らせる為とはいえフェルミンの身分を明かしてしまったから、そのお詫びでもある。

「フェルミン
ファルドクス様はいつも悩んでるね」
エレナが話しかける。

「私のこともあるし
でもお父さん元気そうでほっとしたよ。」
 フェルミンは宴の間のテラスで、星空を見ながらパルセスを思い出していた。

「あと……ミスリル……
本当にありがとう

一瞬気を失って気付いた時
涙が出て来たの
私生きて帰って来れた……

全部全部無くなるところだった。
ユリナともカナとも話せなくなる
風も感じられ無くなる……
苦しかったけど生きてて嬉しかった……

みんなとの楽しい時間も
一瞬で無くなる所だったの
本当に本当にありがとうね……」

 気付いたらエレナは泣きながらフェルミンを抱きしめていた。

フェルミンはエレナが涙を流すのを久しぶりに見て最初は驚いたが、エレナに身を任せて静かに抱きしめられていた。


 ユリナはそんな二人を優しく見守っていた。


 祝いの宴は最高潮に達し、オークの隊長達も力比べをしたり、エルフの女官とも親しげに話していたり、今まで誰も予想しなかった楽しげな時は流れて行く。

 エレナもフェルミンと、今までの思い出話などをして、賑やかな夜の静かなテラスで穏やかなひと時を過ごした。

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