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〜第四章 変わりゆく時代〜
90話✡︎闇の街道✡︎
しおりを挟むその話を聞いて、兵達は恐怖を覚えた……
だがディアボルスが居なければ、世界はその時に地上世界が無に返されていたと言う事を知る。
過去にトールが救った地上世界、それ以前に恐怖によって救った魔王が居た。
これから彼が作った闇の街道を、種の存続に関わらない事で使う事に恐れ多い気がしたが……
「なる程、なら遠慮なく使わせてもらいましょう」
エレナが言いユリナが少し驚く。
今の話を聞いて、使って良いのかと兵達も考えていた……
「過去に私達の祖先が使った道を、世界をまとめる為に、その一歩の為に使うのです。
それ以前に買い物の為に使ってた人がここに居るんです!
私達が使って何が悪いのですか?」
エレナがそこまで言うと、ピリアは小さく可愛く微笑み、兵達にも小さな笑顔が戻る。
「我々は未来の為に通る、恐れ多いことはありません。
支度を進めましょう」
エレナがそう締めくくり、支度が再開され闇の街道は再び閉ざされた。
二日後の深夜、天地の間に二十頭の馬が連れられ記憶の棚の知識の間までゆっくりと、馬を連れて行く。
最初、不思議な空間に驚いた馬が暴れそうになったがユリナが優しくなだめ落ち着かせる……ユリナは全員が集合したのを確認する。
クリタスの棚がある、滅亡したクリタス王国の首都クリタスから、クリタス荒野までは徒歩で三日程である。
クリタス荒野にはドワーフの街タスラルフがある、まずそこまで行けば色々と調達出来る。
支度は順調に終わり。
「さて行きましょうか」
エレナがそう言い、ユリナもフェルミンも頷く。
静かに闇の街道に足を踏み入れる……
二日前と同じ、青い炎の光に包まれる闇の街道をエレナ達一行は進み続ける。
兵達も静かに進んでいく、罠などもなく本当に逃げ道として作られたのが伺える静かな街道だ。
かなり立派な柱が等間隔にあるが、やはり話を聞いた通りドワーフの作りでは無いのが見て取れる。
もう少しで一時間経つかと言う時に、水飲み場の様な所にでた、通路右側に竜の石像の口から綺麗な水が流れ出ている。
「この水は?」
ユリナが聞く。
「飲めますよ、純粋に地下水を使っています」
そうピリアが言い水を見つめる。
エレナも水の香りを嗅ぎ、危険は無いと判断する。
「少し休もうか、この街道も調べたいし……」
エレナがそう言い、その水を念のためにリヴァイアサンに確かめさせ、大丈夫とリヴァイアサンが頷いたので、まだ出発して間も無いが兵達に休息を取らせる。
エレナが壁の石を調べ、どうやら地上世界の石ではない気がした、そしてピリアが言っていた闇の大陸が気になった。そして暫くしてから出発する。
先に進むと分かれ道に差し掛かり、ピリアは迷わず左に進む。
「こっちは?」
右の道を指差してユリナが聞いた。
「そちらはアグドの西……
オプシェンに続きますが、どう言う訳か棚が無いようなのです……」
フィリアが言う。
「ふーん……ってオプシェンはあっちじゃないの?」
ユリナが考えながら聞く。
「この闇の街道は方角が変わるのです。
今私達は、北から南に向かっているのです」
フィリアが言い、エレナは考えながら歩くが、ユリナは対して気にして内容だった。
そして行き止まりになり、ピリアが壁に手をつくと、壁が音もなくスッと消え、クリタスの知識の間と言うのだろうか、似ている空間に出る。
全員が街道を出たのを確認し、ピリアが街道を閉じて言う。
「クリタスの記憶の棚に着きました。
出口はこちらになります」
そう言い同じような暗闇の階段を静かに登り一同はそれに続いた。
そして階段を登り切りクリタスの棚をフィリアが開けた。
そこは闇の大神殿大聖堂の地下、クリタス王国時代の作りだろうか、今では全く見ない作りの広間だった。
カビ臭く咳き込みそうな空気に鼻を覆う。
松明に火をつけて辺りを照らした時に、上に上がる階段が照らされ、二十名程の兵がエレナ達とその部屋に入る。
兵達は用意していた松明に次々と火を灯し辺りを照らす。
そして一つだけある階段にピリアが近づいた時に、誰も居ないはずの上の方から大聖堂を何かが歩いている足音が聞こえた。
足音が二つ近づいて来るのを感じた。
エレナは静かにと言う合図を送り、松明を全て消させる。
その部屋にいる兵達が武器を手にする、ユリナも階段に向け弓を構える。
階段に繋がる扉だろうか、重い扉が開かれる音がした。
そして足音が、ゆっくりと階段を降りて来る……松明を持ってるようだ、火の明かりが見えて来た。
相手はこちらに気付いたようで剣を抜く音がする。緊張が高まりエレナも一筋の汗を流したがその時……
「どうしたのです?」
女性の声、聞き覚えがある。
「いや、松明の匂いがする……
十万年前から誰も来てないはずだが……」
戦士の声だ。
「剣を収めなさい敵意は感じません」
剣を鞘に収める音がした。
「もう、どこを触ってるんですか」
そこまで怒って無い女性の声……
「悪い……ここが狭すぎるんだ……」
そうユリナが聞いた時に気付いて、白い目をし矢を放った、階段の岩にその矢が刺さり大きな音を立てる。
「トール!何してるのかしら⁈」
ユリナは階段に叫びながら歩み寄り、刺さった矢を抜き、そのままつがえ階段の上に向け放つ!
トールはその矢を凄まじい洞察力で掴みとる。
「ユリナか!危ねぇだろが‼︎」
そこにはトールとオプスが居た、オプスは解っていたものの、矢を放って来るとは思わなかったか流石に驚いていた。
緊張が一気にほぐれ、エレナは静かに兵達に合図を送り階段を登る。
「何でユリナ達がここに?」
トールが聞く。
「闇の街道を使ったのですね、流石です」
オプスがそう言い。
「ここじゃ狭いから上に上がりましょう」
エレナが促す。
そして大聖堂にあがり、一行全員が大聖堂に集まった。
そしてここに来るまでの経緯をエレナはトール達に話した。
フィリアはやっと闇の女神オプスと再開し、オプスもフィリアがミーシェなのを直ぐに気付いて再開を喜ぶ。
そしてトール達もここに来るまでの事を話す。トール達がここに来るまでにかなりの日数を要している、約二カ月トール達と別れてから立っている。
トールは戦っていたらしい、イミニーのネクロマンサーと……
最初は庭のようなクリタス平原を彷徨い、仕方なく地下都市トールに引き上げ、支度をしなおしまた来た時に、オプスが呪術を見破りネクロマンサーの位置を見つけるものの、オプスの言葉通り引き上げ。
日にちを置いて満月の夜に出直して、真っ先にトールとオプスはある事をしたらしい、その為にネクロマンサーは力が半減しトールが左腕を切り落とし追い払った様だ。
「死者を操りし者よ!
退きなさい!闇の女神とレジェンド相手にあなたは良く戦いました、もういいでしょう……」
オプスがそう言い、ネクロマンサーは闇の霧を使い去ろうとしたが、オプスは正体を知りたくその霧を奪うがかなりの手練れで、その者は焦り慌てながらも亡者を盾にし逃げ去ったらしい……
その話を聞いてピリアが言う。
「そのネクロマンサー……
ひょっとして……」
「そうでないと信じたいです。
私でも正体が解りませんでした……」
オプスは少し悲しい顔をして言う。
「あぁイミニーは神の敵対者の割には、オプスを目の前にして何も出来なかったな……
だから余計に気になるが……」
トールがそう言う。
(カイナ……大丈夫?何をしているの……?)
エレナが心配しユリナも俯いていた。
その晩は闇の大神殿の大聖堂で一夜を明かす。焚き火の日は絶やさず、最大限に警戒しつつ夜を明かした。
翌朝、日が昇る前にユリナは起きた……トールが剣を振っている音で目が覚めたのだ。
ユリナはすっかり星屑の劔が愛刀になっていた、劔を背負い大神殿から出る。
ユリナは以前と同じように、トールから少し離れ太刀を振る。
「毎日振ってるようだな……だいぶさまになってるじゃないか」
「うん、なんか慣れて来た気がする」
二人は朝日が昇るまで振り続け、ユリナは気付いた……少し離れた所に何かが刺さっている。
旗だ……それは見た事ある旗だった……
「あれは……」
ユリナは確かに見た黒の下地に金の六芒星、ユニオンレグヌス、ゴブリンの旗印を……
「ここに居た死霊達は、俺のせいで死んでしまったあの時代のゴブリン達だったんだ……
死が報われ無かった者達、何も知らずに命を落としてしまった者達……
そこにつけ込んだネクロマンサーが居た訳さ……
だがなあの旗を見て、我に返ってくれ俺のことも解ってくれた……」
トールが思い出す様に語る……
「この地をクリタスに返してやらないとな……
またあいつらが彷徨っちまう」
ユリナはトールの言葉から優しさと悲しみを感じた……トールはエレナ達と共に過ごし、大切な仲間を得てオプスとの愛が実り多くを知り始めていた。
心に温もりを与え続けてくれるオプス、彼女を救い彼は愛し愛される事を知り、王子であった時に彼はオプスが愛した地上を守る事しか考えなかった、それが過ちであったのかは今も答えが出せずにいた。
十万年ぶりにこの地に来て彼は気付いていた。
世界を救った事は正しい、でもこの地を滅ぼした罪は生涯、いや永遠と消えはしない、それを彼は受け止めはしたが複雑な心境を隠しきれずにいた。
「ウィンダム!らしく無いよ!
今の私達がいる、それでいいじゃない?
あの時それしか考えられなかった?
それが本当に悪いことなら、ウィンディア様もウィンダムとして生まれ変わるのを許してくれなかったかも知れないよ。
それにあの旗を見て、ゴブリン達の魂が静かになったんなら、それを皆んなが求めてるんだよ。
そうしてあげれば良いんだよきっと」
ユリナがそう優しく言いながらトールに歩み寄が石があり、ユリナは珍しくつまづき転んだ、トールが手を差し伸べユリナを起こす。
「イタタッ」
そう言いながらユリナがトールの手を取った時、トールは気付いてユリナの手のひらを見た……
そのしなやかなで、きゃしゃな綺麗な手は変わっていた。
見た目は変わらないが、戦士を思わせる様な力の入り方していた……ユリナの努力がトールに伝わった。
「ユリナ、久しぶり剣を交えてみるか」
トールが勢いよくユリナをお越し、そう言うとユリナは元気な明るい瞳で頷き、二人は美しい朝日に照らされ剣を打ち合った。
クリタスの旗がはためく空の下で……
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