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〜第四章 変わりゆく時代〜
91話✡︎乗っ取られた晩餐会✡︎
しおりを挟むそれから三日かけてタスラルフに無事につく……
エレナ達は念の為に、二十名の兵にトールに左腕を切り落とされたネクロマンサーを探索させたが、タスラルフには居ない様だ……
エレナはそのネクロマンサーがカイナではないかと言う、不安に駆られていた。
物資を補給し馬車を買い、翌日には出発出来るように支度する。
突然の水の巫女の来訪に街は驚いていたが、直ぐにパルセス首都ペルセンに早馬が送られる……無論、第三位王位継承権を持つフェルミン姫も同行している事も知らされる。
タスラルフの領主がフェルミンの護衛に一個中隊を送ってくる。
街は呑気なものだが、王位継承権が繰り上がったフェルミンはパルセスにとって、重要人物である……領主は気が気ではない。
他にも理由があるらしいが、それを詮索する必要は無かった。
翌日には補給に支払った代金はタスラルフの領主がエレナに支払い、セレスの英雄であるエレナにフェルミンの護衛を深く深く願って来た。
エレナは笑顔で答え、タスラルフを出発した。
ペルセンまでの道のりは快適であった、街道が全て手入れが行き渡っており、掛かる橋にも職人魂が見て取れるほど良く出来ている、一日程行く距離に小さな宿場が等間隔にあり、国全体が商業や観光に適している。
パルセスの経済基盤は鉱山よりも、物づくりや商業に支えられてる様にも見えるが、それは外見であり、鉱山資源での国益もかなりあるが……産出量は減少傾向にある。
それに対してパルセスは物づくりで補っている。
エレナ達は何事も無くペルセンに着き、ペルセンで盛大に歓迎された。
民衆に馬上からフェルミンが手を振ると、凄まじい歓声があがる。
流石フェルミンの国だ、神に仕える水の巫女エレナに送られる歓声もあるが、フェルミンへの歓声はそれを遥かに超えている。
エレナ達はペルセンの王宮ペルタスに迎えられる、シェティア大陸に広く流通している貨幣ペルタはここから名付けられた。
ファルドクス国王は急な愛娘の帰国にとてつも無い喜びで迎える。
フェルミンでなく国王が飛びつく様に抱きついた。
「お父さん、恥ずかしいよ!」
「何を言っておる、我が家の出迎え方じゃ~」
「解ったけど失礼だよ」
「エレナ殿にか?親戚の様な仲ではないか~」
「え、え、遠慮します。」
エレナはこっちに来るかと思い、汗を流しながら否定する。
「なんじゃつれないのぉ~」
「ってお父さん!
フェルミンはもう大人です!」
その親子のやりとりを見て、オプスがクスクス笑う、可愛いらしい声で人目を惹いた……
「お~なんと美しい人を連れているんだエレナ殿、何方じゃ紹介してくれい」
「えぇ、かけた星の一つ、六大神の一人闇の女神オプス様です。」
「何を冗談を……濃い…紫の髪…瞬く星……」
オプスが星の煌めく髪を触り微笑む……
「白い肌に瞑り続けるひと……み……」
ファルドクスはエレナに歩みより耳元で囁く……
「まことか?……」
エレナは静かに言う。
「私が嘘を言ったことがありますか?」
「ノォォー」
ファルドクスは意味不明に叫びひざまづく。
「数々のご無礼まことにまことに申し訳ありません!
どうか平にご容赦を!」
それを聞いて一斉に他のドワーフ達も跪く。
「ファルドクスさん、そこまで頭を下げないでください。
私は女神として居る訳じゃないのです。
ただ、抱きしめたりそう言う事は、私の連れが許さないので遠慮して下さいね」
トールが僅かにファルドクスに苛立っていた事を遠回しに伝えた。
そして自分にも来るのかと一瞬思ったのでエレナと同じ意味も込めていた。
「ところでファルドクス国王、なんでオプス様のこと詳しくしってるの?」
ユリナが聞く、確かにそうだ闇の女神オプスはついこの間救われた。
世界は五芒星を主流とするほど忘れてられてしまった女神だ……
「ユリナ殿、大分前に私がタスラルフに趣味で商売に行ってな、そこでクリタス平原を越えてきたゴブリンの一行にあってな。」
ふむふむとユリナとエレナが聞く。
「物盗りにあった様でボロボロでな、手当てもして助けてやったんだわい。
まともに歩ける様になるまで七日程かかったがの、その二日目に一行は礼をしたいと言ってたのだが、金もそう無かったんだろう……
経典を渡して来ての、興味があって受け取ったのだが、大切そうな物なんで五日で写しての、珍しい物を見せてくれた礼に逆に大金を払って返してやったわい。
で、暇があったら今でも読んでるんだが……
そのオプス様に会えるとは夢のようじゃわい」
「と言う事は、それは闇の経典だな、オプス様の教えを書き記した物か……」
トールが言うと、オプスはファルドクスを瞳を瞑ったまま見つめ微笑んだ、作り話でも盛った話でもない様だ。
「その経典は今ありますか?」
オプスが優しく聞く。
「おう、これじゃ」
そう言いながら、腰にぶら下げた鞄から取り出してオプスに渡した。
「確かに……これは闇の経典ですね。
ファルドクスさん、あなたの善行に祝福を……」
そう言いながら、オプスは経典に手を当てると経典の表紙が漆黒になり、星が瞬く本になった。
「この経典を広めなくても良いです。
あなた達はガイアの子らですから、ただ大切になさいそれだけで、小さな幸運が訪れるでしょう」
そう言い経典をファルドクスに渡した。
ファルドクスはかしこまって受け取り、オプスに丁寧に礼をした時に、多くの者が拍手を送った。
そしてフェルミンがファルドクスにエレナがクリタス平原の事で話があると伝え、翌日に重要な大臣も集め話し合う事になる。
オプスはファルドクスにその話し合いには参加しない事を伝えると、ファルドクスは驚いたが、オプスが地上の決め事に神が関与するべきではないと伝えファルドクスは納得する。
その日、晩餐会が盛大に行われ賑やかに時が進む……
その中でオプスは天界に帰ることを決め、それをその場にいた皆に伝え、盛大な晩餐と、もてなしに深く礼を言うと一気に送別会になりオプスは晩餐会を乗っ取った!
「今は私が主役です‼︎」
オプスは精一杯全力で主役をアピールして楽しもうとする。
周りもそれに次々と乗って来た。
オプスも女神である、天界に帰れば力を戻し暗黒の世界を束ねなくてはならない、女神としての精錬された気品と威厳そして神聖さを常に溢れ出させないといけない。
オプスは地上世界の女性達を見て触れて、神と言う存在がいかに窮屈なものか感じていた。
せめて地上世界にいる時だけでも、普通の女の子として楽しみたい、崇め信仰されるよりも、馬鹿にされてもいい沢山の楽しい思い出を作ろうとふざけ始める。
エレナが持つ羊皮紙からアルベルトも呼び出して、エレナとアルベルトの恋話をほじくり返したり、その場にいる全ての者を巻き込んで酒を飲み比べさせたり。
トールにユリナからの苦情、子供っぽいウィンダムはいつ大人になるのかなど、ついでにリヴァイアサンにも説教したりと。
古代の英雄と神の竜が説教される珍事を披露したり。
ピリアとフィリアを連れて数秒退席して、ピリアとフィリアに自分の姿にさせ現れて、本物当てクイズを開催して間違えた人は、酒壺一気させて潰したり……
ファルドクスが酒を拒むと女神につがせて飲めないのかと絡んだり、様々なことをした。
(今日の姉上は私より光に溢れて居ますね……)
闇の女神オプスの弟、光神ルーメンであるアルベルトがオプスの光輝く様な笑顔を見てそう心の中で呟き微笑んだ時、アルベルトの前に酒壺が置かれ……完全に酔ったオプスがアルベルトにからむ。
「偉大なヘブンス様なら光の速さで飲めますよね?」
酔ったオプスは弟に容赦ない様だ、エレナはアルベルトに微笑み。
「もちろん、うちの人強いんで……」
(カオス……)
アルベルトは凄まじく顔を歪めた……
会場は凄まじい盛り上がりを見せ、宴は深夜にまで及んだ……
そして深夜多くの者を酔いつぶしオプスは挨拶をして、オプス自身もかなり酔ったのだろうフラフラになり天界に帰って行った。
天界に帰る途中で風の女神ウィンディアと水の女神エヴァが迎えに来てくれた。
「お姉様珍しいですね、あんなに燥がれて」
エヴァが笑顔で言うと。
「でもこれで明日はエレナさん達の会議は無いでしょうね。
流石お姉様です。明日はエレナさんにとっては千年に一度のゴーシュの日、何事も上手くいかない日ですからね。」
「えぇ、解っていたのですが、楽しすぎて私も……ウッ……」
オプスが酔いすぎて吐きそうになった。
「お姉様、おめでたですか?」
ウィンディアもふざけて聞く。
「もう、あなた達ったら」
オプスは笑顔で言い。
クスクスと三人の女神達は最高の夜空を。
舞いながらそして、笑いながら天界に帰って行った。
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